ゲームを学校で教える時代の到来

ゲームと言えば漫画や携帯電話と並んで学校への持ち込み禁止物品の代表格だったというイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

しかしそんなイメージとは裏腹に、実は近年の教育現場ではゲームが珍しいものではなくなりつつあります。

ゲームによる対戦競技をスポーツとして捉える「eスポーツ」という言葉の本格的な浸透と共に、ゲームは教育にも取り入れられ始められているのです。

 

・eスポーツの波が教育の現場にも

これまでもプログラマーやデザイナーとして「ゲームを制作する」ことをカリキュラムとして採用している専門学校はいくつもあり、多くのクリエイターを輩出してきました。

しかし近年、この若者を中心にカルチャーとして定着しつつあるeスポーツの波は教育の現場にも押し寄せており、学校の情報の授業でゲームについて取り上げるケースが生まれ始めました。

学校という場で「ゲームをプレイする」ことが正式に認められようとしているのです。

 

業界もこの流れをバックアップしており、株式会社サードウェーブのゲーム用PC販売ブランド「ドスパラ」は「eスポーツ部 発足支援プログラム」という制度を展開しています。

これは高校でeスポーツを行う部活動を設立する際に必要な条件を満たせば、高性能のPCを5台も一定期間無料でレンタル出来るというシステム。

条件はあるものの初期投資を格段に抑えることが可能で、学校所有のパソコンで部としての活動が出来るようになります。

 

制度だけでなく実践の場も高校生を受け入れようとしています。

2018年からは毎日新聞とサードウェーブの二社主催により高校年代の教育機関を対象とした「全国高校eスポーツ選手権」が、2019年からはテレビ東京によって同じく高校生を対象とした全国大会「Stage:0」も始まっています。

どちらもチーム戦で、部活動だけでなく校内で有志を集めて参加することも可能なので在籍している学校に「eスポーツ部」がない学生にも広く門戸が開かれています。

 

2019年からは“国体”こと国民体育大会の種目のひとつ、文化プログラムとしても採用が決まっています。

国体は学生以外の一般ユーザーも出場できますが、全都道府県で代表者を選出できるほどに競技者が増えていることの現れでしょう。

 

国内ではこうした規模の活動でもセンセーショナルに感じられますが、海外の学生eスポーツ事情はその先を行っています。

ペンシルベニア州のロバート・モリス大学では学生のeスポーツアスリートに奨学金が払われるだけでなく、学校に専属のコーチまで配属されています。

デジタル分野に力を入れているカリフォルニア大学アーバイン校ではデジタル部門のデザイナーや研究者と同様にeスポーツに対しても奨学金が支払われ、ゲーム会社からも直接支援を受けています。

このカリフォルニア大学は州立の公立校であることからもアメリカでどれだけeスポーツが当たり前になっているかが分かるでしょう。

アメリカ政府もeスポーツを手厚く支援しており、eスポーツの選手がアスリートビザを獲得できるようになっています。

 

・コミュニケーションツールとしてのゲーム

ここまでは競技としてのゲームにおいて優れた技能を持つ学生をサポート・育成していくケースを紹介しました。

しかし、ゲームが教育の現場で用いられる理由は何も競技としての面をピックアップした場合に限りません。

 

例えば授業についていけない、クラスになじめないなど様々な理由で学校に通えなくなってしまった生徒への支援のきっかけとしてゲームが使用されることがあります。

面と向かってコミュニケーションを取ることが苦手な子供でも、ゲームを通じてならば問題なく意思の疎通が図れるというケースもあるでしょう。

勉強が得意ではなくてもゲームなら得意という生徒にとっては、部活動やカリキュラムとして認められるだけでも大きな進歩に感じるはずです。

部活動に所属することで学年を超えた交流が生まれ、学校生活に復帰するキッカケが生まれることもあるでしょう。

 

eスポーツの中でもチーム戦で取り組む競技であれば、団体の中で連携を取る能力や責任感が養われるという点はスポーツと変わりません。

ゲームに集中して取り組むことによって結果的に学業に対する集中力が向上するという効果も期待出来ます。

実際に部活動として導入している学校からは「勝負に勝つために戦略を立てる思考力が身につく」という声も挙がっています。

 

勿論、ゲームさえ出来れば学校の勉強は出来なくても良いということにはなりません。

それでも、eスポーツという競技が学校で認められるだけで大きな変化を感じる学生がいることも事実です。

野球部に所属する生徒が全員プロ野球選手を目指しているわけではないように、学校でeスポーツをプレイする生徒も必ずしも職業としてプロゲーマーを目指す必要はありません。

あくまで教育の一環として、ゲームという競技が注目されています。

 

・原因はゲーム内容のレベルアップ

日本でもゲームが競技として受け入れられるようになったのは最近のことですが、あっという間に学校現場まで取り入れられるようになりました。

これはゲームが若い世代に人気があるカルチャーだからという理由もありますが、それだけではありません。

教育に携わる立場からも、eスポーツの競技としての複雑さや魅力が体育科・部活動に採用されている競技に劣らないと判断されたということの証拠なのです。

 

eスポーツは室内にいながらでも訓練を重ねることで自分の技術を向上させ他人と競い合うことが可能で、身体的なハンディキャップや年齢・性別の差による影響が非常に小さいことも魅力のひとつです。

それでいて、シンプルに長い時間プレイすれば簡単に上達するわけでもありません。

上達のためには分析を繰り返して戦略性や知識を向上させる必要があり、現にプロゲームチームでも指導役のコーチを採用するなど単純なプレイ以外のアプローチ策を設けているところが殆どです。

 

こうした複雑な戦略性は最新のタイトルではeスポーツを意識して盛り込まれることも増えました。

しかし、こうしたブームが訪れる以前は決してeスポーツのためにゲームが作られている訳ではなかったはずです。

 

では何故、こんなにもゲームは複雑かつ魅力的なものになったのか。

それはゲームを作るクリエイターの人々が遊んでくれるユーザーのためにゲームの「楽しさ」を追求し、遊びごたえとして様々な技術を駆使した「難しさ」を取り入れてきたからです。

そうした作り手の努力の繰り返しに加え、ゲーム機の性能向上もあってその「難しさ」は飛躍的に向上。

次第に競技性に繋がり、今では教育に一役買っているわけです。

 

まとめ

eスポーツを学校での活動の一環として取り入れようという動きは徐々に全国に広がりつつあります。

公立校では予算でゲームをする環境と整えることに対して理解を得る難しさなど、まだまだ全ての場所で導入されるには障害が残っているのも確かです。

ただ学校全体でeスポーツに力を入れていることをアピールし生徒を確保しようとする動きも見られ、自由度の高い私立高や専門学校ではこれからも実践する学校が増えることでしょう。

 

このペースで普及していけば、いずれ学校でゲームについて習うということも当然になっていくでしょう。

学校生活の一部になるということは、そこで学ぶ生徒たちにとって常識のひとつになるということでもあります。

 

世の中には、ゲームは好きな人だけが遊ぶ単なる娯楽だと思っている人もいるでしょう。

ただ、いつの間にかゲームは玩具からスポーツになり、気づけば学校で習うものという域まで来ています。

eスポーツを知らないで済まされる時代はもう終わろうとしています。

 

・参考サイト

2019年度 eスポーツ部発足支援プログラム|ガレリアゲームマスター公式サイト【GALLERIA】

https://gamemaster.diginnos.co.jp/top/esports_club/

eスポーツが部活動に。導入した高校からは「勝負に勝つための思考力や戦略を立てる力なども身につく」の声 | ハフポスト

https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5c8b4c4ce4b0d7f6b0f1cdc5

米国の大学で増えつつある「プロゲーマー奨学金制度」。将来有望な若きe-Sports選手、結果を残せば学費が免除される

https://automaton-media.com/articles/newsjp/columbia-colleges-esports-scholarships-will-start/

カリフォルニア大学アーバイン校がe-Sports奨学金を今秋より開始。公立校では初、『League of Legends』のRiot Gamesも後援

https://automaton-media.com/articles/slr/uci-start-esports-scollarship-in-fall/

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