THE KING OF FIGHTERS ALLSTAR から学ぶ過去体験の活かし方


Netmarble社とSNK社がタッグを組んで2018年にリリースした「THE KING OF FIGHTERS ALLSTAR」(以下 KOF-ALLSTAR)。

既存IPの格闘ゲームがスマホ向けアプリゲームに参入する事例はこれまでにも存在しました。

カプコン社の「ストリートファイター4 CHAMPION EDITION」、バンダイナムコエンターテインメント社の「TEKKEN」といった事例です。

本ゲームはこれら競合の国産タイトルとは一線を画す設計がなされており、その要素をひも解く事で既存IPゲームのスマホゲーム化に必要なポイントが見えてきます。

 

旧SNK社の歴史が重くのしかかるKOF-ALLSTAR

本ゲームはSNK社が1994年に国内向け対戦型格闘ゲームとしてリリースした「ザ・キング・オブ・ファイターズ」を基にしたスマホ向けアクションRPGです。

1作目の「’94」から最新作の「XIV」まで、ナンバリングタイトルでは14作リリースされており、本ゲームではその連綿と連なるシリーズから様々なキャラクターや設定を引き継いでいます。

そんな「KOF-ALLSTAR」をより深く知る為に、運営元の株式会社SNKが置かれていた状況を知る必要があります。

 

株式会社SNK(旧社)は1970年から2001年までゲームソフト、ハードの開発やアミューズメント施設の運営などを幅広く手がけていましたが、2001年に破産宣告を受けて倒産しています。

この倒産した原因は複数要因あると言われていますが、最も影響が大きかったのは、既にその時潮目であった2D格闘というジャンルにこだわりすぎてしまったことであると考えられます。

 

金のなる木である事業への投資判断が出来ておらず、既存IPという資産とシナジー効果の薄い事業に資金投下し、またNEO-GEOという成功体験から脱却できなかったのだと推測されます。

その後株式会社プレイモアが知的財産権を所有し、実質ここからが新生SNKとしてスタートし、2016年には株式会社SNKとして旧屋号と同じ会社名をつけて今に至っています。

 

ここで注目すべきは、もとよりアジア圏に人気を博していたKOFシリーズを足がかりに中国や韓国での商品展開を行っていたことです。

これにはNetmarble社のワールドワイドな視座の高さが効果的に活きています。

以下はファミ通APPによるネットマーブルジャパン代表の遠藤氏のインタビュー内容です。

 

「遠藤:当初はオリジナルIPによる格闘ゲームの開発を進めていたのですが、日本市場・グローバル市場の攻略を考えた際にきびしい戦いになるなと。

そこで別案として挙がったのが既存のIPを用いたゲームでした。

IPタイトルなら一定以上のファンがいるので、多くの方にプレイしてもらえるかもしれない。

しかし、そのためには、そのIPのファンの方々を満足させるものを生み出さなければならない。

(中略)『KOF』シリーズは世界中で高い人気を誇るIPとなっています。

そのうえ、アジア市場では『KOF』シリーズの人気も上昇しつつありますので、今後のワールドワイド展開も考えると……といった考えですね。」*1

 

実はこの時に広がった視野の広さ、要素同士の食い合わせの良さこそが本ゲームの多様性を生む重要な要素となります。

 

思い切ってジャンル自体をスライドさせるドラスティックなゲーム設計判断

前述の通り、KOFシリーズは韓国・中国で市民権を得ていました。

この地域では格闘ゲームの熱量もさることながら、オンラインネットゲームの文化も同様に絶大な支持を得ていました。

その為、このエリアで精力的にマネタイズを行っていた同社にとってみれば、オンラインネットゲーム、つまりスマホのソシャゲに求められるUXを調査しやすい状況にあったと考えられます。

 

タイトルの知名度とエリアへの知見という成功要因が図らずも揃ったことで、他の国産競合ゲームタイトルとは大きく異なる、思い切ったゲーム制のローカライズが行われています。

スマホ版「スト4」、「TEKKEN」と決定的に違うのは格闘ゲームを横スクロール型アクションRPGに変えてしまう、というゲームジャンル自体をシフトチェンジしたことです。

これはかつて経営破綻の一因となった2D格闘ジャンルに固執した、という手痛い失敗からのケーススタディが活きていることに疑いはありません。

 

競合タイトルはいずれも従来の対戦型格闘ゲームをほぼそのままスマホに持ち込んでしまった為に、スマホの操作性の悪さに引っ張られてしまい、ゲームそのものの面白さが薄まっていました。

複雑なコマンド入力はワンタップのカード選択型UIに変わっていましたが、ほとんどそのカードのタップし合いという対戦型格闘ゲームユーザが求めている体験とは言い難いものでした。

その対戦型格闘ゲームXスマホという食い合わせの悪さを払拭するために本ゲームが選択したのが、横スクロール型アクションRPGでした。

 

対戦型格闘ゲームの醍醐味は敵との手の読み合いや、リアルタイムで自分が判断・操作した結果が美麗なグラフィックと共に派手に画面を彩る爽快感、魅力的なキャラクターといったものです。

これらをスマホに最適化する際に、対戦型格闘ゲームお約束の1VS1という構図を切り捨て、ステージ制にすることで、画面内で自分VS複数のザコ敵を用意。

ザコ敵を増やす事で格下の相手に技を出すという機会が増え、綺麗に技がたくさん決まるという体験を提供することでコマンド操作による爽快感の代用としています。

 

ワンタップで必殺技を発動できる、という対戦型格闘ゲームの設計思想と対極の操作性を強いますが、これにより従来の利用者よりもグッとライトなユーザも囲い込む事が出来る様になります。

旧来のファンへのサービス提供だけでなく、新規ユーザも取りに行く2段構えの姿勢が意識されている事がわかります。

これらはオンラインネットワークゲームでどういった要素がプレイ動機になるか、をリサーチできるエリアにいたことが一日の長となっていたことは明らかです。

 

ゲームの歴史そのものをゲームの目玉として使うシナジー効果の高い資産運用

KOFシリーズは94年からほぼ毎年マイナーチェンジを繰り返している為、バリエーションが複数存在しており、同じキャラクターでも技が若干違っていたり、フォルムが異なっています。

従来のプレイヤーは自分がハマっていた時期によって、それぞれ思い入れが年度ごとで区切られるのもタイトルが持つユニークな点です。

以下はファミ通APPにて行われたインタビュー内で同ゲームの事業開発室部長の椎名氏による発言です。

 

「椎野:『KOF』は歴史あるシリーズですので、リリースされた年代やナンバリングに応じて、登場キャラクターたちの見た目やモーションに違いがある場合もあります。

そういった細かい違いがあるものに関しては、たとえばロバート(’95年版)、ロバート(’96年版)といった形で、名前は同じでも見た目やモーションが違うキャラクターとして実装しています。

シリーズファンの方には、その違いを楽しんでいただいたり、それらを集める楽しさを感じていただければと。」*1

 

「俺が一番やったのは’98だな」「俺はやっぱり’94が忘れられない」といった会話がなされるのは、ここまで細かく年度で刻んだタイトルならではの風景です。

 

本ゲームではその年度でキャラクターが作り分けられおり、それぞれストーリーモードでなぞることもできます。

これはシリーズを総括できる俯瞰したゲームならではの趣向です。

プレイヤーは同じキャラクターを選ぶにも、当然自分が最も入れ込んだ年度のバージョンを探し、愛着を持ちます。

その年度のキャラクターが自分自身の思い出にもリンクするという反則的な利用動機を作れるのは、細かく年度ごとにバリエーションが存在するタイトルの最大の強みと言えるでしょう。

 

こういったタイトルが持つ歴史を力に変えたコンテンツ資産を運用する手腕に長けている開発陣にも、過去に活かしきれなかった失敗が活かされている様に思えてなりません。

 

まとめ

成功体験に固執してしまい、新しい一手に窮してしまうということはどの様なジャンルでも発生するジレンマです。

ドラスティックなハードウェアの変更やそれに伴うマーケット需要に合わせて、その時までに培った手段と、勝つ為に必要な要素をシビアに勘定し、時に要素を切り捨てる勇気も必要です。

 

KOF-ALLSTARでは過去に起きた経営破綻をケーススタディに、これからのマーケットで戦って行く為の要素がゲームに反映されていました。

コンシューマーゲームからスマホに既存IPで勝負を仕掛ける時などに、心にとどめておきたい事例ですね。

 

[出典]

*1 納得がいくものを作り届ける!『KOF ALLSTAR』発表会イベント後に行われたショートインタビュー1

https://app.famitsu.com/20180620_1311427/

 

ライター名:ビットリズム

プロフィール:国産ゲームで産湯を使ったロムネイティブなゲームエバンジェリスト。QOL向上に必要なのはワーク・ライフ・ゲームバランスだと信じている。

 

関連記事一覧