“C言語”という単語は、プログラミングにかかわる人ならもちろんのこと、IT関連のニュースを少しでも見ているならば目にしているかもしれない存在です。
それもそのはず、C言語はプログラミングの歴史でいえばかなりの長さを持っており、他のプログラミング言語と比べて多くのことができる言語なのです。
今ではプログラミングの世界が発展したこともあり、全盛期ほどの活躍の出番はありませんが、それでもプログラマーにとって重要な存在であるC言語について紹介していこうと思います。
C言語とは
C言語は、1972年に開発された汎用プログラミング言語です。
当時存在したB言語の改良として、UNIXの移植性を高めるという目的で誕生したという経緯があります。
コンピューターが実行する命令や手続きを順に記述していくことでプログラムを構成する手続き型言語で、人間が書いたプログラムをコンピューターが理解できる形式に変換するコンパイル型とOSを念頭に設計されています。
制御構文(構造化プログラミングのための構文)などに記述の抽象度が高いプログラミング言語と、機械語などの低水準言語の特徴を併せ持っています。
後発のC++、Java、C#といった“C系”と呼ばれる派生言語の始祖であり、ANSI、ISO、JISにより言語仕様が標準規格化されています。
C言語のプログラマー人口は熟練度を問わず多く、同時にプログラマーによるコミュニティも充実している他、使用者の多さから正負の両面を含めてプログラミング文化に大きな影響をおよぼしています。
C言語の特徴
高い汎用性
C言語は高い汎用性を特徴としています。
プログラムの自由度が高く、目的に応じた拡張も容易であるため、オペレーティングシステム(OS)やアプリケーションソフトウェアやゲームの開発、機械制御など、あらゆる分野に適応できます。
また、対応できる機器の範囲も広く、コンピューターから自動車や家電の制御系、スーパーコンピューターまで、多様なハードウェアで使用されます。
この多彩さから、コンピューターを使用する用途のほとんどに対応可能で、さまざまな環境でコード資産が蓄積されています。
その他、採用ソフトウェアの分野も広く、プログラム作成やデバッグのための補助的なソフトウェア(プログラミングツール)も豊富となっています。
なお、インターネットやWEBブラウザの普及により、C++、Java、C#、JavaScriptなどの高水準言語の利用者が増加するなど、広く利用されるプログラミング言語の数が増加傾向にあることにより、相対的にC言語が使われる場面は減りつつあります。
例として、アプリケーションソフトウェアやゲーム開発においてはC++やC#などが使われる場面が増えています。
しかし、比較的移植性に優れているという特徴から、オペレーティングシステムやデバイスドライバーの他、C++やJavaなどの処理系および実行環境の実装が困難となる小規模の組み込みシステムなどでは現在でも幅広く利用されています。
プログラミング実行速度が速い
プログラミング言語の処理系には、プログラミング言語で書かれたソースコードを1つずつ機械語に翻訳しながら実行するインタープリタ型と、ソースプログラムをすべて機械語に翻訳してから実行するコンパイル型言語が存在します。
どちらの方式にもメリットとデメリットが存在していますが、ひとまずプログラムの実行速度という観点で見るとコンパイル型のほうが優れています。
C言語はコンパイル型のプログラミング言語で、C言語で記述されたソースコードを翻訳するために使われるCコンパイラは、実行速度やコンパイル速度などが追求されているため、プログラミング実行速度が非常に速くなっています。
反面、速度を高めた代償として処理系の簡素化によりコンパイル後のコードの安全性があまり高くないという欠点も存在しています。
セキュリティーの観点で見ると脆弱性がある、バグを引き起こしやすい仕様となっている、プログラム実行時間やメモリ量の最小化といったコンパイラによる最適化が難しいというデメリットがあります。
しかし、環境やプログラムの内容によっては、それらの対策を行っても高速でプログラムを実行できる(=対策などでの多少の速度低下を無視できる)こともあります。
習得の難しい言語
C言語は、プログラマーに人気のあるプログラミング言語の中ではトップクラスの難易度を誇る言語です。
難易度の高さの理由は文法に機械語の影響が強いという点で、これはC言語が歴史の長い言語(=開発時期が古い)であることに起因しています。
これにより、C言語の習熟にはコンピューターを構成するメモリやCPUに関する知識も必要となります。
例としてわかりやすいのは“ポインタ型”で、これは特定のメモリ領域を指し示すという役割を持っています。
そのため、ポインタの働きを理解するには、コンピューターのメモリをプログラムが操作する際、どのようなに扱われるかを理解している必要があります。
その他、仕様自体は単純であるものの、記述が必要な要素が多いです。
C言語は、処理系の簡素化により安全性はあまり高くないということは“C言語の特徴”の項で説明した通りですが、その対策はプログラマー自身が記述していく必要があります。
さらに、仕様が単純とは言いましたが、難解な関数も存在しています。
詳細な説明は省きますが、プログラムにおいて最初に実行される関数であるmain関数、書式付の文章を標準出力へ書き込むprintf関数は、C言語を学習していく上での大きなハードルといえるでしょう。
参考文献の収集の難しさも習得が難しい理由の1つです。
コミュニティの充実により多数の専門書や資料が世に出ており、便利な機能の説明なども行われていますが、自分のレベルや目的にあったものが見つかるかというと、また別の問題となってきます。
C言語の用途
OS
C言語はUNIXの移植性を高めるために開発された経緯から、OSを開発することができます。
実例として、UNIXの他にMac OS XやLinuxカーネルがC言語によって記述されています。
ソフトウェア
C言語は高い処理速度を持っているため、Windows、Mac、LinuxなどのPC用ソフトウェアの開発にも使われます。
例としては、身近なメモ帳や全世界のウェブブラウザ利用シェアで6割以上を占めるGoogle Chrome、データベース管理システムのMySQLなどで使用されています。
組み込みソフト
組み込みソフトは、“組み込み機器”という特定用途向けに特化し、限定した機能を果たす機器に搭載するソフトウェアのことです。
身近な例だと、携帯電話や家電製品といった電子機器の中に入る小型の電子回路が当てはまります。
前述した通り、C++やJavaなどで実装することが困難となるとC言語の出番となります。
精密動作を繰り返し行う産業用ロボットなどの制御用組み込みソフトウェアには、C言語が広く利用されています。
“C系”と呼ばれる派生言語との関係
C++との違い
C++は、1983年に公開された汎用プログラミング言語です。
派生元であるC言語の機能や特徴を継承しつつ、表現力と効率性が向上しています。
また、C言語同様に高級言語と低水準言語のどちらとしても使用できます。
C++の一番の特徴は、複数のプログラミング手法が可能という点です
C言語のように手続き型言語として使うことはもちろん、オブジェクト指向言語としても活用できます。
これにより、C言語に比べて少ないコード量で同じ機能のプログラムを作成したり、C言語では難しいプログラムを作成したりすることができます。
その他、C++はC言語との互換性が保たれているため、C言語で記述された大半のプログラムはC++でコンパイルできるように修正できます。
ただし、一部は不正となってしまったり、動作が異なったりするため注意が必要です。
惜しむらくは、習得難易度も派生元であるC言語から受け継いでしまっているという点です。
C言語の知識に加えてオブジェクト指向言語の知識も習得する必要があるため、その難易度はC言語と並んでトップクラスであるといえます。
C#との違い
C#は、マイクロソフトによって開発され、2000年に発表されたプログラミング言語です。
ルーツとしてはC++とJava(JavaはC++に影響を受けた言語であり、遠縁ながらC言語の派生であるということもできます)の2つで、それぞれのわかりやすい部分や便利な部分が取り入れられています。
それ以外の言語機能にはDelphiというプログラミング言語の影響があります。
C言語やC++と比較してさまざまな制限や改良が加えられているものの、C言語やC++との互換性はありません。
さらに、C言語やC++の用途の1つであるハードウェアの制御にも適していないため、C言語とはまったく異なる言語といえるでしょう。
開発元がマイクロソフトであることから、Windowsアプリケーションなどのソフトウェア開発やWEBアプリ開発に向いており、検索エンジン“Bing”やMicrosoft社の公式サイトはC#を使って開発されています。
C言語を学ぶメリット
C#やC++といったC言語から派生した言語やJavaScriptなどのさまざまなプログラミング言語が普及していったことによりC言語の出番は減ってきていますが、C言語を学ぶ利点がなくなったわけではありません。
C言語の出番が減ってきているとは言ったものの、それはあくまで他のプログラミング言語の誕生によるもので、C言語の汎用性は依然として高いままです。
そのため、C言語を習得することでさまざまなプログラミングの開発が可能になり、幅広い業務に対応することができます。
日経クロステックが実施した“プログラミング言語利用実態調査 2020 夏”(調査期間:2020年6月23日~7月3日/回答者:711人)内の“利用しているプログラミング言語”の調査結果では“C/C++”は182人で4位と上位にランクインしており、いまだに需要がある言語であることがわかります。
また、C言語の習熟にはコンピューターを構成するメモリやCPUに関する知識も必要があるという点は学習難易度を上げる要因となっていますが、同時にC言語の知識はコンピューターの動作の理解に役に立つということでもあります。
C言語の学習方法
学習サイト
C言語は歴史が長く、コミュニティも発達していることから学習サイトで学ぶことが容易です。
学習難易度の高さから、学習サイトのみで理解を深めていくことは厳しいので、初歩の段階として無料レッスンだけを受けてみたり、他の方法と合わせて活用したりするのがオススメです。
ドットインストール
3分ほどの動画でプログラミング学習を行える、入門者向けの鉄板サービスです。
動画レッスンは全22回で、C言語の概要から始まり、関数やポインタといった要素について無料で学べます。
また、レッスンにおける環境やコンパイラ言語とインタープリタ言語に関する解説などの補足情報も掲載されています。
公開日が2012年と少々古い点には注意が必要です。
paizaラーニング
ドットインストールと同じく、動画を使ったオンラインのプログラミング入門学習コンテンツです。
こちらは一部有料コンテンツがありますが、全9レッスン74チャプターとボリュームは多めです。
他にも、RPG感覚でプログラミングを学べる“コードクロニクル”というゲームコンテンツも公開されています。
テキストでの学習に飽きを感じ安い人や気分転換をしたい人にオススメのサイトといえます。
プログラミングスクール
プログラミングスクールを通した学習には受講料が必要となりますが、講師のサポートという独学にはないメリットがあります。
また、外的要因により学習の習慣づけが行われるという点は、怠け癖がある人にとってうれしい要素かもしれません。
さらに、転職サポートの取り組みを行っているプログラミングスクールもあります。
日本プログラミングスクール
“C言語入門”、“C言語マスター”、“C言語応用”、“組込み系プログラミング”の4つのカリキュラムがあり、通学、自宅学習(通信)、宿泊による短期間学習のスタイルから選べるプログラミングスクールです。
学びたい内容にあわせてカリキュラムを選択することになるので、資金や時間のない人やある程度知識がある状態からプログラミングスクールを活用する人に適しています。
年間パスポート(190,000円+税)や、複数カリキュラムを学べるセットでの受講も可能です。
就職・転職者向けの“就転職応援パック”も用意されており、こちらでは受講終了後に、専門スタッフが状況にあわせた就職・転職活動サポートが行われます。
さらに、ソフトウェア会社の職場がどのようなものか体験できる“実務研修制度(インターン制度)”もパックに含まれています。
Winスクール
4カ月かけてC言語を基礎から応用まで学べるプログラミングスクールで、組込みシステムなどを学べるコースも用意されています。
授業のオンライン対応はもちろんのこと、北海道から鹿児島まで全国各地に展開しているので、教室に通いながら学習を進めたいという人にオススメです。
就職支援も充実しており、講師自身がキャリアカウンセラーとして、受講生の目標や希望職種にあわせて、重点的に学ぶべきポイントや学習内容を細かくアレンジしてくれます。
面接時に提出する卒業作品(ポートフォリオ)の改善点などをいつでも聞くことができるという点もうれしいポイントです。
KENスクール
“Cプログラマー養成コース”、“C言語プログラミング講座(基礎)”、“C言語プログラミング講座(応用)”の理解度に応じた3つの講座を選べるスクールです。
教室の多さこそWinスクールに譲りますが、いずれの教室も最寄り駅から徒歩5分圏内とアクセス性に優れています。
また、学びたい時間を予約できるフリータイム制で、当日予約も可能なので自分のスケジュールにあわせて通学できます。
その他、キャリアアドバイザーとして実際の企業の採用担当者が在籍しているため、業界情報やキャリアイメージなどの個人の転職活動では得られない情報を交えたカウンセリングを受けられます。
書籍で習得する
入門者向け:はじめて学ぶC言語プログラミング入門講座(Beginner's Book)
プログラミング未経験者向けの入門書で、提示されるサンプルプログラムを動かしながらC言語の基本を学んでいく構成となっています。
プログラミングに欠かせない表現がわかりやすいサンプルで紹介されており、各章末に練習問題もあるので、しっかりと基礎を身に付けることができます。
初心者向け:最新版 12歳からはじめる ゼロからのC言語ゲームプログラミング教室
4種類のミニゲームを作りながらC言語の基礎を学習できる一冊です。
一般的なC言語の入門書と同じ範囲を押さえつつ、イラストやキャラクターを多用しているので、テキストだけの学習所を読むのが苦手の人にオススメです。
本書のサンプルプログラムはロールプレイングゲームや恋愛シミュレーションゲームとなっており、画像や色付きのテキストを表示できる学習支援ツール“グラフィカルコンソール”が付属しています。
“グラフィカルコンソール”により、1行書くだけで簡単に画像を使ったプログラムを作成可能なので、見た目の派手さからモチベーションにつながります。
中級者向け:『プログラミング言語C』
C言語を開発したデニス・マカリスター・リッチーさんによる(ブライアン・カーニハン産との共著)C言語についての解説書です。
あらゆるプログラミングの最初の例題として定番となった“hello,world”プログラムの由来となった1冊として有名です。
本書は1989年にANSIによって規格化されたC言語(C89と呼ばれていました)を扱っているため、現在の規格には追随しておらず参考にとどめる程度の使用にしておくべきでしょう。
しかし、C言語の機能がほぼ網羅されており、C言語の歴史に関する資料という側面も持っているので、ある程度習熟してきた段階で一読したい一冊です。
C言語で仕事を得る方法
プログラミングスクールの活用
先ほど“C言語の学習方法”の項でも触れましたが、プログラミングスクールによっては転職サポートの取り組みを行っている場合があるため、それを活用してC言語を扱う仕事に就くことができます。
また、転職サポートを使用しない場合でも、自分が希望する企業が求める要件などの必要なC言語の技能のみを集中的に学習して転職のための準備を行うという方法もあります。
さらに、後述するポートフォリオの開発サポートも受けられるので、資金面での問題がなければ、積極的にプログラミングスクールを活用していくことが望ましいでしょう。
ポートフォリオを作成する
実績をアピールするためのポートフォリオを作成し、就職サイトなどに登録する方法です。
イラストレーターならば自分の作品の一部などが当てはまりますが、C言語の場合は自身で開発したアプリやプログラムとなります。
本記事で何度も説明してきたことですが、C言語は高い汎用性を持つ一方で非常に高い難易度の言語となっているため、必然的にこの方法はC言語でアプリやプログラムを開発できる=中級者以上の人が行う手段となります。
この方法を取るのであれば、初心者は素直にプログラミングスクールを活用するべきでしょう。
C言語に強いおすすめ求人
本記事を掲載しているG-JOB転職はもちろん、本サイトを運営するリンクトブレインでは、ゲーム業界に特化した転職エージェントサービスを提供しています。
“G-JOBエージェント(https://game-creators.jp/g-job-agent/find_jobs/search?ai=&jc=&kw=C言語)”から求人情報を確認できるので、ぜひチェックしてみてください。
まとめ
記事冒頭でも述べたとおり、プログラミング言語の発達によりC言語の活躍の場は相対的に減少しており、まったく覚えないままでもプログラマーとして活動していくことは可能でしょう。
しかし、C言語の学習を通して学べることは多く、C言語からの派生となるC++の習得の際にはその知識が活用できることなど、決して学ぶ意義を失った言語ではありません。
学習難度についても、見方を変えればなかなか習熟できなくても大抵の人がそうであると気楽に構えることができます。
まずは、プログラミングスクールや学習サイトを通して、マスターできるまで学ぶ意欲を持てそうか試してみるのも悪くはないでしょう。