「共闘ことばRPG コトダマン」はどのようにファンを増やすことが出来たのか?


セガゲームス社が2018年にリリースした「共闘ことばRPG コトダマン」。

事前登録者数50,000人以上、サービス開始3ヶ月で800万DLを突破するという快進撃で業界から注目を受けました。

強豪ひしめくパズルゲーム市場で躍進しているのは、その独自性もさることながら、ユーザとのインタラクティブなコミュニケーションによるムーブメント生成にあります。

 

文字の組み合わせを使った直感的に気持ちよい操作性

本ゲームはステージ毎に7枠の空欄が表示され、ユーザが任意で1文字ずつワードを割当てることで言葉を作り、その連鎖コンボで攻撃しステージをクリアするパズルゲームです。

自分が意図した言葉の組み合わせはもちろん、文字がユーザの想定を超えて組み合わせを作りコンボを作る意外性は直感的な爽快感を楽しめます。

また、言葉を新たに知る事でユーザのボキャブラリー追加の新たなリソースとも成り得る為、教育的観点としても意義のあるゲームになっています。

 

以下は開発者であるセガゲームス社のプロデューサーである中村たいら氏によるインタビューの内容です。

 

「タイトル発表したときのインタビューでも話したんですけど、○○○×RPGというスタイルはいまは基本的に売れないんですよね。

(中略)開発しはじめてからも社内からの否定的な意見は多かったけれど、僕だけは”言葉”そのものの魅力と、このゲーム性の組み合わせなら「イケる!」って思ってました。

なので、いまの状況には驚いているというよりも、ホッとしている感じですね。」※1

 

RPGという育成要素とパズルゲーム要素の掛け合わせは既に市場にありましたが、そこに「言葉」というスパイスが掛かる事で唯一無二のゲームになっています。

 

このジャンルではかつて2001年12月にナムコからリリースされた「もじぴったん」というタイトルがありました。

アーケード機、PS2,ゲームボーイアドバンスとハードを変えて楽しまれましたが、2012年のAndroid機を最後にシリーズは一旦終了しています。

他社作品ではありますが、コトダマンではこうしたもじぴったんの要素が今の時代に則してローカライズされたUXを提供しています。

 

友達4人と同時プレイ可能なマルチプレイ

基本的なゲームとしての面白さと共に、リアルタイムで他のプレイヤーと協力プレイをするマルチプレイも人気の要素です。

もはや売れっ子タイトルのスマホゲームでは恒例となっている、ユーザ間でのマッチングは本ゲームでも効果的に機能しています。

 

共通のお題に対してグループで文字を掛け合わせて解いて行くUXは、さながらネプリーグなどのテレビ番組でタレントがおこなっていたゲームに類似しています。

ユーザはかつて見ていたテレビ番組のコーナーに参加しているかの様にゲームに興じる事ができるのです。

時間制限の中で自身のボキャブラリーから組み合わせられるであろう言葉の組み合わせをひねり出し、文字をあてていくプロセス。

この中にある、学校の試験を思い出す焦燥感と回答した時の爽快感がユーザの癖になっていきます。

 

実際にプレイしてみると、ソロプレイをしているよりも協力プレイを行っている時の方が緊張感が高まり、それがゲームの面白さに昇華されている様に感じます。

ゲームのテクニックよりも言葉のボキャブラリーのセンスがゲーム上での強さに比例します

このことがプレイヤー自身の自己肯定感も高めることとなり、他のパズルゲームと明確に異なる競合優位性となることでしょう。

 

ソーシャルメディアを使ったユーザとのコミュニケーション

ゲームの面白さは勿論のこと、いかにユーザがゲームをしていない時間もゲームの事を考えさせられるかもユーザの帰属意識を高める上で重要な要素です。

この帰属意識を高める、いわばゲームに参加しているライブ感はSNSという双方向性の強いメディアと非常に親和性が高く、上手く使う事で一方的な広告よりもユーザにリーチすることができます。

 

リリース前からβ版のテストなど早い段階でコトダマンはTwitterを使ったユーザへの呼びかけがなされていました。

以下、中村たいら氏によるインタビュー内容です。

 

「そうですね、中の人は5ヵ月ぐらい休日返上でTwitterやってますからね(笑)。

エゴサして意見にひとつひとつ丁寧に返したり、リツイートしたり。

マーケティングを自分でここまでガッツリとコントロールしたのって今作が初めてだったんですよ。

ふつうのことをふつうにやってもまったく目立たない。

ネットワーク広告などはお金をかけた分しか効果がないので、いっこいっこの施策をいかにバズらせるかを真剣に考えていました。」※2

 

通常ビッグタイトルのリリース時期は広告代理店にバジェットを渡して広告配信をするのがマーケティングの定石とされています。

しかし、コトダマンでは泥臭く、しかし確実にユーザに熱量を伝達させる為の地道なコミュニケーションがなされていた事がわかります。

 

また、コトダマンでは過去にライブ動画配信サービス「ミラティブ」でタイアップ動画配信をしたことでも非常に話題を呼びました。

下記はミラティブとの共同インタビュー内での中村たいら氏による回答です。

 

「配布したのは、22万アゲダマですね。つまり、期間中、配信が2200回あったということです。

当初の想定は300回くらいで、「アゲダマは3万くらいの配布なら特に問題にならないだろう」と思っていました。

はじめての体験ですので、上限を設定していなかったのですが、予想外に伸びて困ったのは事実です(中略)その効果はというと、アゲダマを配布した日にDAU(日次アクティブユーザー数)が1万人増えました。

これはちょっとした事件ですよね。

 

(中略)『コトダマン』のユーザーがいかにゲーム公式Twitterをチェックしているのか強く感じました。

配信が一気に増えて、想定を超えるとニューワード(公式Twitterのキャラクター)が「ワシはクビじゃ」などとツイートするので、ユーザー間で共謀感や参加意識が醸成されて盛り上がりにつながったと思います。」※2

 

これはライブ動画配信が持つポテンシャルもさることながら、それまで地道に積み上げてきたユーザとの関係構築ノウハウが運営側に備わっていた事で相乗効果を発揮した希有な事例です。

この事例を表面的になぞってライブ動画配信をしたとしても、リアルタイムにネットを介したユーザとのコミュニケーション力がなければ同じ効果は期待できないことでしょう。

 

また、以下はゲームクリエイターとして忘れては行けない示唆に富んだ同氏によるインタビュー回答です。

 

「『コトダマン』では運営方針として、ゲームだけで完結しないようにしています。

数多くあるゲームのなかから選んでいただいているわけですから、長く付き合っていただくため、ゲーム以外の部分で面白さや事件性、お祭り性なども提供したいと思っていました。

その意味で、ミラティブさんとはすごく相性が良かったですね。」※2

 

このインタビューを見るに、ゲームをしている時間だけでなく、ゲームから離れている時間までも可処分時間を占有する事で、ゲームへの熱や愛を維持させ、コンテンツとしての成功を裏付けていることは明らかな様です。

 

まとめ

「共闘ことばRPG コトダマン」の驚異的な成長には、国内大手ゲームメーカーセガという看板にあぐらをかくことの無い、着実な要素の積み上げがありました。

ゲームに対する哲学や、マルチプレイを実現する為のインフラ。

そしてゲーム愛をより高める為のユーザを動かすインタラクティブなコミュニケーション。

スマートなインタフェースの裏で泥臭い地道な人間関係構築が、ゲームの内容と同じ様に連鎖していく事で競合ひしめくマーケットでの飛躍に繋がっていました。

 

「モノではなくコトを売れ」という言葉があります。

これはフリーミアムという概念が世に生まれてから提唱されている言葉です。

基本無料のアプリゲームがデファクトスタンダードになっている今だからこそ、作り手の胸に深く突き刺さる金言の様に思えます。

これからアプリゲームで世に打って出るクリエイター各位においては、この「コトを売る」大切さをコトダマンのケーススタディから学べることでしょう。

 

併せて読みたい記事
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ロマサガRSから学ぶ既存ゲームIPで新規ファンを掴む為に必要な開発スタンス

 

関連インタビュー

 

[出典]

※1『コトダマン』大ヒットの秘訣は?中村たいら氏インタビュー

https://app.famitsu.com/20180507_1286284/

※2【インタビュー】目標を7倍上回り1万人のDAU増加をもたらした『コトダマン』×『ミラティブ』コラボに迫る

https://gamebiz.jp/?p=216028

 

ライター名:ビットリズム

プロフィール:国産ゲームで産湯を使ったロムネイティブなゲームエバンジェリスト。QOL向上に必要なのはワーク・ライフ・ゲームバランスだと信じている。

 

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