ゲーム業界は地方を救えるか? NPO法人・IGDA日本による専門グループの活動とは

世にも稀な“ゲームのNPO法人”IGDA日本の活動とは

 

――IGDA日本の活動目的や設立の経緯についてお聞かせください。

 

高橋

 

IGDA日本は2002年4月に任意団体として発足し、今年2020年で活動開始から18年目となります。
2012年12月にはNPO法人格を取得し、現在8期目です。
組織の目的は、ゲーム開発者個人を対象にコミュニティを作り、ゲーム開発を盛り上げ、社会に貢献することです。

 

設立のきっかけは、全世界のゲーム開発者が集まり、開発技術について議論したり、情報を共有したりする国際会議 “Game Developers Conference(GDC)”に新さんが参加したところ、驚くほど高度な内容だったことや、「何故ゲームの国である日本にIGDAがないのか?」と疑問を投げかけられたことにあります。

 

※Game Developers Conference
世界各国のゲーム開発者を中心とした会議。
展示やさまざまなチュートリアル、ゲーム業界人によるプログラミング、デザイン、製品、ビジネスなどのゲーム関連の話題に関するカンファレンスや討論を行う。

 

蛭田

 

GDCといえば世界最大のゲームに関するカンファレンスですが、そのような疑問が投げかけられるということはIGDA本体がGDCと密接な関係にあったということなのでしょうか?

 

高橋

 

GDCは開始直後からIGDAが密接に関係していました。
今でも会場でIGDAのブースがあったり、各専門部会が主催するラウンドテーブルが何セッションも存在したりするのは、その時の名残ですね。
その後、規模がどんどん大きくなっていった結果、主催がInforma plcに移り、現在の形になりました。
ちなみに一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が主催している、日本のゲーム開発者会議「CEDEC」も、GDCから影響を受けています。
CESAは企業の集まりで、IGDAは個人の開発者の集まりというイメージですね。

 

――次に、IGDA日本の活動内容についてお願いします。

 

高橋

 

IGDA日本には、専門部会であるSIGが13個、広報などSIGを横断して話し合う場となるタスクフォースや、SIGの下部組織であるワーキンググループが3つ存在します。

 

活動が活発なSIGですと、ゲームAI研究で有名な三宅陽一郎さんが主導するSIG-AIがあります。
SIG-AIでは人工知能の分野に取り組んでおり、“人工知能のための哲学塾”という連続セミナーを行い、書籍化もされました。
第3弾となる『人工知能のための哲学塾 未来社会篇 ~響きあう社会、他者、自己~』は2020年7月21日に発売されました。

 

最近だと、SIG-NAZOという“謎解き”と銘打つミッションクリア型の参加・体感ゲームの開発者が集まるSIGも活発です。
毎年夏に中高生向けに、学園祭などで行う謎解きゲームや脱出ゲームを作るためのワークショップを開いています。

 

また、ゲームを研究している学者が集まるSIG-AcademicというSIGも存在します。
主な活動は現在行われているゲーム研究やGDCの発表内容などの報告で、日本デジタルゲーム学会(Digital Games Research Association Japan/DiGRA JAPAN)の関係者も参加しています。
ここでいうゲーム研究はゲームがおよぼす社会的影響などの研究なので、ゲーム開発において即座に役に立つものばかりではないですが、ゲームを取り巻く情勢に大きな影響をおよぼすことがあります。

 

ゲーム研究の分野の書籍としては、SIG-Indieの正世話人である小林信重さんが書いた『デジタルゲーム研究入門』も出版されています。
こちらは、卒業論文でゲームの研究をしたいという学生の人に向けたマニュアルのような一冊です。

 

蛭田

 

ゲーム研究の例としては、“ゲーム脳やゲーム中毒と言われるものの実態はどういったものなのか”というテーマなどがあります。
結果によってゲーム開発や業界を取り巻く環境に良い影響を与えたり、逆に規制ができるきっかけになったりもします。
客観性や公平性が必要となる、非常に重要な分野だといえます。

 

高橋

 

その他、ゲーム開発者が次世代の若者へできることを考えるSIG-for NextGeneration(SIG-4NG)という専門部会もあります。
ゲーム業界志望の学生に対して、CEDECやTGSへの参加機会を提供するスカラーシップなどの活動を行っています。
実際にイベントに参加してもらい、ゲーム業界の現状やゲーム開発技術について学んでもらったり、ゲーム開発者とコミュニケーションを取ったりしてもらうことが目的です。

 

残念ながら、今年2020年は新型コロナウイルスにより両イベントがオンライン開催となってしまったため、実際に会場に行くスカラーシップができなくなってしまいました。
しかし、オンライン開催により参加へのハードルが下がったという面もあるので、スカラーシップへの応募を考えていた方々はぜひとも参加していただきたいですね。

 

お話しした以外にも、eSportsに関する最新の知見を集約するSIG-eSports、ゲームシナリオに関する勉強会などを行うSIG-GameScenario、代替現実ゲーム※に関する現状の調査・情報発信をするSIG-ARG、東京ゲームショウのインディーゲームコーナー出展タイトルの選定などを行なっているSIG-Indieなど……さまざまなSIGがあります。

 

※代替現実ゲーム
日常世界をゲームの一部として取り込んで現実と仮想を交差させる体験型の遊びの総称。
例として、現実世界を舞台とした数百~数百万人規模でプレイするアドベンチャーゲームや作品世界の住人として推理に参加できるミステリー/サスペンス ドラマなどがある。

 

――IGDA日本にはどのような人が参加していらっしゃいますか?

 

高橋

 

セミナーやイベント参加者の年齢層は30歳代が中心で、20歳代、40~50歳代がそれぞれ2割程度といったイメージです。
職種に関しましては、プログラム関係ならプログラマー、音楽ならば音楽関係の人というように、各分野に関係のある人が多いですね。

 

――参加される理由にはどのようなものがありますか?

 

高橋

 

WEBでIGDA日本を知り、参加してくれるというケースが多いように感じます。
また、参加した知人からの口コミで来てくれた人もいらっしゃいます。

 

蛭田

 

組織のイメージが勉強会の集合体なので、勉強会のトピックスによっては予想以上に人を引きつけることがあります。
例えば、SIG-地方創生では2回準備会を行っているのですが、2回目でバンダイナムコエンターテインメント様が行った地方創生の取り組みについて紹介したところ、取り組みの内容が本格的だったこともあり、初参加の方が多く集まりました。
正直に言えば、現在よりも参加の間口を広げたいところではあります(笑)。

 

高橋

 

参加される方は、情熱があるという人が多いです。
私自身、活動やさまざまな情報を得られることが楽しいから続けています。

 

蛭田

 

人とのつながりという面でも、SIG内での交流会や人との出会いが多いので刺激的ですね。
ゲーム開発者は孤立しがちなのでコミュニティは重要ですから。

 

 

高橋

 

個人の開発者は1人で黙々とゲームを開発することも多いので、同じようにゲーム開発を行う情熱がある人たちと会話ができて、元気をもらえたり、あげたりできる場として機能していると思います。
同好の士というのはなかなかいないので、話ができるだけでもとても楽しいです。

 

蛭田

 

日本では情報を社外秘とする考え方がありましたが、段々と海外のように情報をオープンにして発信しようという考えに変わってきています。
上質な情報は、情報を発信している人のところに集まるものなので、海外の考え方のほうがメリットは大きくなってきています。
ですから、おもしろい話や有益な情報をどんどん発信して、その情報に惹かれて集まってきた人たちとつながることでますます発展していくという形がIGDA日本の理想形なのではないかと考えています。

 

――各国との連携面についてもお話をお聞きできればと思います。

 

蛭田

 

正会員になる前からの話ですが、小野事務局長とのつながりで、IGDA本体や各国の支部からのゲストが参加する懇親会によく呼んでいただいていました。
私はカナダに5年間住んでいた経験から英語はできるのですが、実際に使わないと英会話の能力も衰えてしまうので、英語を話せる場があるという点はありがたかったです。
また、ゲストはゲームに関係している方が多いので、海外の最新情報を得られる他、海外へのつながりも構築できるので非常に有益な場だと思います。

 

高橋

 

具体的な数字ですと、IGDAの支部は全世界で122団体確認されており、本体に存在するSIGは25となっています。
会員数はアメリカを中心に正会員だけで1万人以上、無料参加者を含めると5~10倍近い数になると思われます。
ちなみに、IGDA日本には会員組織がありませんので具体的な総数は不明ですが、メールマガジンの登録者数だけで3,000人程度います。
つながりそのものは少し緩く、好きな時に参加できて、モチベーションが下がった時などには離れてもいいというイメージです。

 

蛭田

 

その点でいえば、基本的には無料で、ほぼ実費だけの負担で勉強会に参加できるというのもありがたいですよね。
非営利で活動を行うNPO法人だからこそできることだと思います。