ゲーム業界は地方を救えるか? NPO法人・IGDA日本による専門グループの活動とは

ゲームで地方に貢献するSIG-地方創生の取り組み

 

――SIG-地方創生につきまして、設立の経緯と役割についてお聞かせください。

 

蛭田

 

SIG-地方創生の設立経緯は先ほどお伝えした通り、ゲームを通じた地方創生という取り組みはNPO法人であるIGDA日本と非常に相性が良いのではないかという考えがきっかけです。
もともと、私は総務省の地域力創造アドバイザーという信頼性のある肩書をいただいていました。
しかし、地方創生は1人で頑張ってもどうにもならない取り組みなのでグループを作ろうと考えた時に、ゲーム開発者のための団体でありながら、それ以外の人材も許容する懐の大きさがあり、社会的信頼度の高いNPO法人であるIGDA日本ならばよりよい活動ができると考え、設立に至りました。

 

役割は名前の通り地方創生です。
有益な情報を共有したり、地方にゲームビジネスを広げたり、ゲームイベントをはじめとしたコミュニティ活動を行ったりして地方に貢献していくことが具体的な目的となります。
eSportsなどの若者を中心としたイベントで地方を盛り上げたり、経済の活性化や事業としてゲームビジネスを地方に立ち上げたりできることを考えると、ゲームは地方創生にとっての大きな力となる可能性があります。
日本だけでなく全世界的にもゲームをはじめとしたポップカルチャーによる地方創生の動きはできつつあるので、その取り組みを専門的に情報共有していくことが趣旨となります。

 

――現在の活動内容ついて、具体的に教えてください。

 

蛭田

 

現在のメインとなる活動は、勉強会を定期的に開催している他、Facebookグループでの情報共有です。
それとは別に現在は、文化庁の令和二年度の補正予算で新設された、博物館の異分野連携モデル事業への応募を目指しています。

 

本事業は、文化庁が行っている新型コロナウイルスの影響に対する補助や新たな収益源の模索に対する取り組みの1つです。
博物館の新たな収益モデルの試作としてアニメ、ゲーム、マンガなどと連携するというもので、そのための実験を行うための予算も確保されています。
16事業が採択予定で1件当たりの予算は3,000万円となっており、採択された場合には実際に事業を行ってどのような効果が発生するかを調査し、レポートを提出します。

 

これは非営利団体であり、ゲーム開発者やゲーム業界のコネクションも豊富なIGDA日本が取り組むのにピッタリな事業だと思っています。
また、本事業が成功すれば、活発になった博物館により地方創生を行えるので、SIG-地方創生の目的とも合致します。

 

現在は提案書を作成して、メンバーのコネクションがある博物館に打診中です。
興味を持っていただけた方も何人か出てきているので、その方々と一緒に文化庁に提案していくというのが今年2020年前半の大きな取り組みです。
取り組みの中では、他のさまざまなSIGの力を借りながらどれだけ博物館で楽しいことができるか、収益を上げられるかということに挑戦したいです。
うまくいけば全国の博物館に展開していきたいという話もあるので、博物館×ゲームの取り組みが日本中に広がる可能性もあるので夢が広がりますね。

 

高橋

 

IGDA日本では、まだこのような取り組みを行ったことがないので非常に楽しみですね。
新たなチャレンジにより、団体に新しい風が入ってきてくれるのはありがたいことです。

 

――地方自治体が抱える現状や、それに対してSIG-地方創生が行える貢献について教えてください。

 

蛭田

 

地方で一番危機的なのは若い人の大都市圏への流出です。
各地で若者の流出を止めようという考えからゲームに興味を持ってくれていて、応援もしてくださっている状況です。

 

この状況に対する一番の成功事例は福岡です。
産学官がしっかり連携していてゲーム産業が盛り上がっており、ゲームクリエイターが福岡で育ってそのまま福岡で就職できるという環境になっています。
日本全国の自治体が福岡のような状態を目指して取り組んでいます。

 

さまざまな地域でゲームないしポップカルチャーによる地方創生の取り組みが行われており、ゲーム会社がグループを組んでいる仙台や、ゲームやアニメによる地域活性化に取り組んでいてゲームジャムも行われている岡山県高梁市、ポップカルチャーの大規模イベントを成功させていてeSportsにも取り組んでいる徳島、ITを中心とした町おこしを目指しておりゲームにも興味を持っている高知などといった例があります。

 

実際のところ、すでに“産”と“官”の部分での連携はできている地域はある程度あります。
後は“学”の部分を取り入れて、産学官の連携を完成させることで地元に産業が立ち上がっていくのだと考えています。
教育機関がないと人材育成が継続的に行われず、持続的なビジネスの立ち上げにつながりませんからね。

 

ゲームで産学官の連携を成立させるのは難しく、“学”の部分を取り入れる際に、学校の誘致から行わなければならないケースがあります。
しかし、クリエイター同士がつながり教えあう体制や勉強会によってスキルアップを図れる環境なら学校を作らなくても人材の育成を後押しすることができます。
その形の1つがIGDA日本であり、SIG-地方創生が貢献できる点だと思います。

 

――SIG-地方創生にはどのような人が参加していますか?

 

蛭田

 

ポップカルチャーやeSportsのイベントにかかわる人や、インバウンド広告に関わっている人、大学の教員や研究者、自治体関係者や地方議員など、バラエティに富んだメンバーとなっていて、割合としてはゲーム業界以外の人が多いです。
これは私の声のかけ方が偏っているのかもしれません(笑)。
ゲーム業界とは直接関係がない人も参加していますが、ゲームが嫌い、まったく知識がない、という人はいないです。
ゲームとは関係ない立場ではあるものの、より知識を深めたいという人が多く、どなたも前向きに参加してくれています。

 

高橋

 

ゲーム業界以外の人が多いという構成は、IGDA日本の各SIGを見ても珍しいです。

 

――現在、ユーザーの参加促進のために実施していることがありましたら教えて下さい。

 

蛭田

 

先ほどお話しした博物館の異分野連携モデル事業への応募を目指した取り組みなど、新しい取り組みや話題作りを行うことで人の興味を引き付けられると思っているので、積極的な活動を通して参加促進を行っていきたいと思います。
役に立つ新しいことをやることとそれを知ってもらうことは団体にとっての両輪になると思っているので、告知の方法はSNSなどを含めて頑張っていこうと思っています。