ソーシャルゲーム(アプリ)における「イベント」の在り方を考える
このコラムでは、ソーシャルゲーム(アプリ)に実装される各種「イベント」について、その種類や意味を解説します。また、ユーザーやゲーム会社へのメリット・デメリットを整理したうえで、ゲーム開発者が「イベント」とどのように向き合っていくべきなのかも考察しますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
目次
1. ソーシャルゲーム(アプリ)における「イベント」とは
ソーシャルゲームで「イベント」というと、季節や周年記念など定期的に行われる特定の催しを想像する方が多いと思います。しかし、広い意味ではRPGの通常クエストも「イベント」に含まれます。
そもそも英単語の「event」には、「催し物」的な意味だけでなく、「種目」「でき事」という意味もあるので、特別な催しだけとは限らないのです。そのため、ソシャゲの中でプレイする項目のほとんどは「イベント」と言うこともできます。また、「でき事」という意味では、RPGの途中でキャラクターに遭遇することも含まれます。
とは言え、通常クエストまで解説すると領域が広がり過ぎるので、このコラムでは通常クエストを除く特定の「イベント」を中心に解説していきます。
2. ソーシャルゲームにおけるイベントの種類
ここからは、ソーシャルゲームにおけるイベントの種類について解説します。
2-1. ユーザーメリットイベント(感謝祭ガチャ石配布やピックアップなど)
ユーザーメリットイベントは、ガチャで使える石やゲームアイテムの配布、ゲーム開始直後の初心者応援的内容、ピックアップガチャなど、さまざまな形に分類できます。
また、ログインボーナスとしてプレイするだけで無料配布されるケースが多い一方、「お得パック」「福袋」「特別販売SSR指定チケット」などの課金を伴うもの、特別なクエストのクリア等なんらかのプレイの報酬として与えられるものなど、入手経路も分かれます。
2-2. コラボイベント
他のゲームやアニメ、マンガや映画などと、コラボして行われるイベントです。
他のIPとコラボすることで、それぞれに関心を持つユーザーやファンが、もう一方を認知することにつながります。そのため、新たなユーザー獲得につながるメリットがあるでしょう。
2-3. PvEランキング形式イベント(マラソン系・レイド系)
PvEとは、「Player Versus Environment」の略で、プレイヤーがプログラム上の敵と戦う形式を指します。期間限定の特殊イベントもPvEを含みますが、通常のクエストは基本的にPvEが続きます。
またランキングシステムを伴う場合、期間中より多くの討伐数(ポイント)を稼いだ順にランク付けされ、上位層には特別報酬が送られることもあります。そのため、多くの場合で周回が必要になることから、「マラソンイベント」と表現されることもあります。
一方、レイドイベントもPvEに含まれますが、レイドには「強襲」という意味があるので、常時プレイできるイベントではなく、急遽現れる強敵に複数のプレイヤーが挑む、というスタイルで実装されることが多いです。
2-4. PvPランキング形式イベント
PvPとはプレイヤー対プレイヤーを意味する略語です。オンライン上でプレイヤー同士が対決するイベントですが、1対1の場合やギルド同士(GvG)での対戦など、形式や参加人数は多様に設定できます。
例えばマップを攻略しながら対人戦を行うスタイルや、リストに上がっているプレイヤーに戦いを挑むスタイルなどがあります。こちらもランキングベースで競い合い、上位層に限定報酬がもらえるケースが多いです。
3. ソーシャルゲームにおけるイベントのタイミング
ここからはソーシャルゲームにおいて、イベントが行われるタイミングについて解説します。
3-1. 季節イベント
季節に応じたイベントは、ソーシャルゲームにおいて行われないことはないというほど浸透しているイベント形式です。シンプルに新年や春夏秋冬を踏まえたイベントのほか、クリスマスやバレンタイン、ハロウィンなどが代表的です。
季節イベントは、単純に楽しげな雰囲気でユーザーの興味を誘う効果もありますが、クリスマスや正月などはユーザーの購買意欲が上がるので、利益確保の意味でも非常に重要です。
また、各タイトルのゲーム性やターゲットに合わせてイベントを開催することも欠かせない配慮です。例えば男性ユーザーをターゲットとしたタイトルであれば、女性キャラクターを絡めたバレンタインや夏の水着キャラガチャなどは季節感を無理なく利用できるでしょう。
3-2. ◯周年イベント
リリース開始からの周年イベントには、多くのソーシャルゲームが力を入れています。一般的な季節イベントよりもサービスが続いている「感謝」を表明する傾向が強いので、ユーザーも豪華な特典を期待します。
それだけに課金を促すチャンスでもあり、近年は一年ごとだけでなく、例えば1.5周年など、半年刻みで行う場合も増えています。
3-3. メディア展開記念イベント
ゲームから派生してアニメ化や実写映画化などが決まった場合や、なんらかのリアルイベントが行われる場合などもゲーム内イベント開催のタイミングです。
ゲーム自体の話題作りになりますし、ゲームをプレイしていなかった人も映像作品で好きになってゲームを始めた、ということも少なくありませんから、相互にメリットがあります。
3-4. SNS連携イベント
近年はツイッターなどでリツイートが一定数に達したら、全ユーザーに石をプレゼントする、といったSNS連携イベントも増えています。
リツイート数に応じて石の獲得数を上げることで、既存ユーザーが報酬を目当てに拡散してくれます。すると、まだユーザーではなくても、興味の対象が近い人の目に止まり、ゲームへの参加を促すことが期待できます。
4. 運営会社の目線で考える!ソーシャルゲームでイベントを実装するメリット
ここからは運営会社の目線で、ソーシャルゲームでイベントを行うことのメリットを考えていきましょう。
4-1. ユーザーのアクティブ率が増える
ひとつのゲームを続けていると、どうしても中だるみする時期は来ます。そのように、離脱しつつあるユーザーも、イベントを行うことで関心を継続できます。そのためイベントは既存ユーザーのアクティブ率を上げることに役立ちます。
4-2. 新規ユーザーが参加するきっかけになる
日常的にさまざまなイベントを開催することで、どれかが興味を誘って新規ユーザーの獲得可能性が上がります。また、より積極的に新規ユーザーに特典が多いイベントを開催することや、既存ユーザーが友人を招待することで既存・新規双方のユーザーにメリットがある方式もあります。
4-3. 課金が増える傾向にある
イベントの形式によりますが、限定のキャラクターやアイテムを獲得できるイベントであれば、ユーザーの課金促進に役立ちます。
また、個人やギルドのランキングをつけることも、課金率向上に役立ちます。ゲームを継続的にプレイしているユーザーであれば、「より高いランクに上がりたい」、「より多くの報酬を獲得したい」という気持ちが少なからずあるからです。
5. ソーシャルゲームでイベントを実装する際の注意点
ここからはソーシャルゲームでイベントを開催する際に気をつけるべきポイントを記載します。
5-1. 頻繁にイベントを開催すると飽きられる・疲れてやめるユーザーが増える
イベントは課金を促す目的を持っているので、種類や開催数をしっかり考えないとユーザー離れに繋がることがあります。
例えば同じ内容のイベントばかりでは、やがて飽きがきてプレイする楽しみが減り、ログインしなくなるかもしれません。また、ランキングや対決イベントなどはユーザーに金銭面や時間面での負担を強いることが多いので、「ついていけない」と感じて遠ざかる人もいるでしょう。
運営としては課金率が高いイベントは頻発したくなるでしょうが、短期間に多く課金を要求されるイベントはメリットとデメリットが背中合わせであることを意識しましょう。ユーザーのアクティブ率が減っているとき、収益が落ちているときなどはイベントに頼ることもあるでしょうが、それだけに通常運営がイベント頼みになることは避けるべきでしょう。
5-2. イベント別に特色や差別化をしないとサプライズ感が薄れ影響力が薄まる
多くのソーシャルゲームは、常時何らかのイベントを開催しているのが実情です。それだけに内容が固定化してしまうこともあり、「テンプレイベント」などと言われて軽んじられることもあります。そのため、定期的にサプライズを挟み込む工夫が重要です。サプライズの内容は、新キャラクターや新クエスト、新しい対戦方式の実装などさまざまに考えられます。
ストーリー性があるRPGなどであれば、物語自体を一旦決着させて新ストーリーに突入するという展開もサプライズになるでしょう。
5-3. イベント限定要素を豪華にしすぎたりイベント自体のメリットが多すぎると、イベントをしていない期間のユーザーのモチベーション低下につながる
イベントでユーザーを盛り上げすぎると、通常のプレイがつまらなく感じてしまうことがあります。また、あまりに豪華な特典があると、瞬間的喜びがあるでしょうが、「次の豪華イベントまで課金は控えよう」という気持ちも起きてしまいます。
さらに、イベント期間中に何らかの理由でプレイできず豪華特典を得られなかったユーザーが離れてしまうこともあるので、「豪華さ」には注意が必要です。
周年イベントなど、豪華特典を用意するタイミングもあるでしょうが、その後のバランスはしっかりと考えておきましょう。
5-4. がめつさが出るとユーザーの運営への信頼がなくなる
基本無料で始めるソーシャルゲームは、ユーザーに課金してもらわなければ利益を上げられないので、課金要素があることは当然です。しかし、課金をあおる要素が強すぎると、ユーザーからの信頼を損なうリスクが常にあります。特にピックアップガチャなど課金要素のテコ入れを高頻度を行うと、「収益がかんばしくないのでは?」と訝しむユーザーも出てきます。
そのため、課金をあおりすぎないことや、ユーザーが重課金におちいらないよう配慮を欠かさないようにしましょう。また、直接的なイベントのことだけでなく、日頃からユーザーの問い合わせに早めに対応すること、イベントやトラブルに対する告知を丁寧に行うことなども重要です。
ユーザーの不満は小さなことからでもたまりますが、それが噴出するのは課金への対価が正当に思えないと感じた瞬間です。
6. まとめ
今回はソーシャルゲームのイベントについてまとめました。「基本無料」のソーシャルゲームにとって、各種イベントは課金を促して利益を回収するための重要な手段です。
ただし、イベントの内容が陳腐であったり、課金をあおりすぎたりするとユーザー離れにつながるので、メリットとデメリットが同時に含まれる実情があります。
イベントを企画・運営する際は、守るべき利益とユーザー満足度のバランスを考えていくことが重要でしょう。
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