アンチチートとは?ゲーム業界で求められる不正対策の基礎知識と実例解説


 
チートはゲームの公平性を損なうだけでなく、ゲーム会社や開発者が苦労して作り上げたゲームにただ乗りして利益を得る人を生む許しがたい行為です。しかし、どれほど対策しても、脆弱な部分を見つけてチートを仕掛けるチーターは後を絶ちません。
 
そこでこのコラムでは、チート対策のひとつであるアンチチートについて解説します。不正対策の基礎知識や実例も紹介しますので、ぜひご一読ください。
 

1. アンチチートシステム(ソフト)とは

ここではまず、アンチチートの定義や目的、種類を明確にしたうえで、ゲームジャンル別のチートの手口などを解説します。
 

1-1. アンチチートの定義と目的

アンチチートシステムは、オンラインゲームにおける不正行為(チート)を検知・防止するための仕組みです。その主な目的は、ゲームの公平性を保ち、すべてのプレイヤーが平等に楽しめる環境を提供することにあります。
 
チート行為は、一部のプレイヤーに不当な優位性を与え、他のプレイヤーのゲーム体験を損なうだけでなく、ゲーム全体の健全なコミュニティを破壊する可能性があります。
 
アンチチートシステムは、これらの不正行為を技術的に阻止し、ゲームの経済システムやランキングの信頼性を維持する上で不可欠な存在です。また、チート対策はゲーム開発者にとってもゲームの寿命を延ばし、プレイヤーの満足度を高めるために重要な取り組みです。
 

1-2. クライアント型とサーバー型

アンチチートシステムには、大きく分けてクライアント型とサーバー型の2種類があります。
 
クライアント型は、プレイヤーのゲームが動作している端末に直接導入され、不正なプログラムや改ざんを検知します。ゲーム起動時に自動的に動作し、リアルタイムで監視を行うものが多いです。
 
一方のサーバー型は、ゲームサーバー側でプレイヤーの挙動やゲーム内のデータを監視し、通常の範囲を超える異常な動作を検出することで不正を特定します。
 
クライアント型は即座の検知に優れ、サーバー型はより大規模なデータ分析に基づいた検知が可能です。両者を組み合わせることで、より強固なチート対策が実現できます。
 

1-3. ジャンル別主なチートの種類と手口

ゲームのジャンルによってチートの種類は異なるので、ここではジャンルごとのチートの手口を解説します。
 

1-3-1. TPS・FPS

TPSやFPSゲームにおける主なチートは、プレイヤーの射撃精度や視認性を不当に向上させるものです。
 
代表的な手口として「エイムボット」があり、自動で敵に照準を合わせることで、初心者でも正確な射撃が可能になります。「ウォールハック」は、壁越しに敵の位置を視認できるようになり、待ち伏せや奇襲を容易にします。また、移動速度を速くする「スピードハック」や、反動をなくす「ノーリコイル」なども頻繁に見られます。
 
これらのチートは、公平な競技性を著しく損ない、健全なゲームプレイを阻害します。
 

1-3-2. MMORPG・MORPG

MMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)やMORPG(多人数同時参加型オンラインRPG)では、ゲーム内の経済システムやキャラクターの育成に関わるチートが中心です。
 
自動でキャラクターを操作し、経験値やアイテムを稼ぐ「ボット(マクロ)」は、長時間プレイできないプレイヤーとの間で大きな格差を生み出します。また、ゲーム内の通貨やアイテムを不正に複製する「デュプリケーション」も深刻な問題です。これにより、ゲーム内経済が崩壊し、アイテムの価値が暴落する可能性があります。
 
これらは、地道な努力でキャラクターを育成しているプレイヤーのモチベーションを低下させます。
 

1-3-3. モバイルゲーム

モバイルゲームにおけるチートは、PCゲームと同様の原理を用いるものから、モバイル環境特有の脆弱性を突くものまで多岐にわたります。
 
代表的なのは、ゲームデータの改ざんによる「パラメータ改変」で、キャラクターの能力値やアイテムの数を不正に増やす手口です。また、時間操作によって待ち時間をスキップしたり、スタミナを回復させたりする「時間チート」も見られます。さらに、自動操作やマクロを利用してゲームを有利に進める「オートプレイ」も存在します。
 
これらのチートは、手軽に利用できる反面、カジュアルなプレイヤー層にも影響を与え、ゲームの公平性を損なう原因となります。
 

2. アンチチートが果たす役割

ここでは、アンチチートが果たす役割を、公平性、ゲームの収益性、eスポーツや大会シーンという3つの切り口から見ていきます。
 

2-1. プレイヤーの公平性維持

アンチチートシステムは、オンラインゲームにおいてすべてのプレイヤーが公平な条件でゲームを楽しめる環境を維持するために不可欠な役割を担っています。
 
チート行為は、一部のプレイヤーに不当な優位性を与え、他の真面目にプレイしているプレイヤーの努力や楽しみを台無しにしてしまいます。これにより、不公平感から多くのプレイヤーがゲームを離れてしまう可能性があります。
 
アンチチートシステムは、不正行為を検知し、該当するアカウントにペナルティを課すことで、そのような不公平感を解消し、プレイヤーが安心してゲームに没頭できる健全なコミュニティを育む土台を築きます。
 

2-2. ゲームのブランド価値と収益性の保護

チート行為が横行するゲームは、そのブランド価値を大きく損なう可能性があります。プレイヤーは不正が野放しになっているゲームに対して不信感を抱き、新規プレイヤーの獲得が困難になるばかりか、既存プレイヤーの離反を招くことになります。これは、課金アイテムの売上減少など、直接的な収益性の低下に繋がります。
 
アンチチートシステムは、ゲームの健全性を保つことで、プレイヤーからの信頼を獲得し、ブランドイメージを向上させます。結果として、安定したプレイヤーベースを維持し、長期的な収益性を確保するために極めて重要な役割を果たします。
 

2-3. eスポーツ・大会シーンの活性化

eスポーツや大規模なゲーム大会において、アンチチートシステムは競技の公正さ、健全性を保証するために不可欠です。高額な賞金や名誉がかかるプロの大会でチートが発覚した場合、大会の信頼性だけでなく、eスポーツという文化そのものの信用を失墜させてしまいます。
 
アンチチートは、このような不正行為を未然に防ぎ、あるいは迅速に検知することで、選手が純粋な実力で競い合える公平な場を提供します。これにより、eスポーツの健全な成長を促し、観客やスポンサーからの支持を得て、競技としての魅力を最大限に引き出すことに貢献します。
 

3. 代表的なアンチチートシステムの種類

ここでは、アンチチートの中でも代表的なものを紹介します。
 

3-1. BattlEye

BattlEyeは、非常に多くのPCオンラインゲームで採用されている実績あるアンチチートシステムです。その特徴は、カーネルレベルで動作し、システムの深層部にアクセスして不正なプログラムや改変を検知する点にあります。常に更新されることで新たなチート手口に対応しており、リアルタイムでの監視と自動検出により、プレイヤーがチートを使用するのを防ぎます。
 
BattlEyeは『PUBG: BATTLEGROUNDS』や『レインボーシックス シージ』など、競技性の高いFPSゲームで広く利用されており、公平なゲーム環境の維持に貢献しています。その高い検出能力は、多くのゲーム開発者から信頼されています。
 

3-2. Easy Anti-Cheat(EAC)

Easy Anti-Cheat(EAC)は、Epic Gamesの子会社であるKamuによって開発されたアンチチートシステムで、BattlEyeと並び、多くの人気オンラインゲームに導入されています。
 
EACもカーネルレベルでの保護を提供し、チートツールの検出と阻止に特化しています。特徴としては、2022年9月にリリースされているので技術的に新しく、高い検出能力を持つ点が挙げられます。これにより、プレイヤーのゲーム体験を損なわずに効果的なチート対策を実現しています。
 
『Apex Legends』や『フォートナイト』など、様々なジャンルの大規模タイトルで利用されており、その普及率は非常に高いです。継続的なアップデートにより、進化するチート手口に対応しています。
 

3-3. Vanguard(Valorant)

Riot Gamesが開発したVanguardは、同社の人気タクティカルFPS『VALORANT』のために特別に設計されたアンチチートシステムです。
 
Vanguardの最も特徴的な点は、Windows起動時に常駐するカーネルモードドライバーとして動作することです。これにより、ゲームが起動していなくてもチートプログラムの活動を監視し、不正行為を未然に防ぐことを目指しています。
 
その強力な常駐監視機能は、一部のユーザーからプライバシーに関する懸念の声も上がりましたが、Riot Gamesはセキュリティとプライバシーへの配慮を表明しています。この徹底したアプローチにより、『VALORANT』の競技シーンの公平性を高いレベルで維持しています。
 

3-4. Ricochet(Call of Duty)

Ricochetは、Activisionが『Call of Duty』シリーズ向けに開発・導入した独自のアンチチートシステムです。このシステムは、サーバー側の監視機能とクライアント側のドライバーを組み合わせた多角的なアプローチを採用しています。
 
特に注目すべきは、サーバー側でプレイヤーの挙動データを詳細に分析し、AIや機械学習を活用して異常なパターンを検出する点です。これにより、既存のチートだけでなく、新たなチート手口にも柔軟に対応しようとしています。
 
また、不正行為が検知されたプレイヤーに対して、ゲームプレイに不利な影響を与える「ゲーム内軽減策」を適用するユニークな機能も持っています。
 

4. アンチチート導入の課題

アンチチートシステム(ソフト)の導入には課題もあるので、ここで記載します。
 

4-1. 誤検出・過検出の可能性

アンチチートシステムの導入には、誤検出や過検出のリスクが伴います。高性能なアンチチートほど、正規のソフトウェアや一般的な操作をチートと誤認識し、無実のプレイヤーを不正行為者として一時的または永続的にバンしてしまう可能性があります。
 
例えば、特定の周辺機器ドライバーやバックグラウンドで動作するアプリケーションが、チートツールと似た挙動を示すことで誤検出されるケースがあります。このような誤検出は、プレイヤーに不信感を与え、ゲーム体験を著しく損ないます。
 
開発側には、誤検出のリスクを最小限に抑えつつ、高い検知率を維持するためのバランスが求められます。
 

4-2. アンチチートシステム作動による負荷

アンチチートシステムは、その特性上、プレイヤーのPCリソースに一定の負荷をかけることがあります。特にカーネルレベルで動作するシステムの場合、システムの起動時やゲームプレイ中にCPUやメモリを消費し、フレームレートの低下やゲームのクラッシュなど、パフォーマンスに悪影響を与える可能性があります。これにより、一部のプレイヤーは快適なゲーム体験を得られなくなるかもしれません。
 
ゲーム開発者は、アンチチートの機能を維持しつつ、システム負荷を可能な限り抑えるための最適化に常に努める必要があります。
 

4-3. チーターとのいたちごっこ

アンチチートシステムは、常に進化するチートツールとの「いたちごっこ」を強いられています。アンチチートが新たなチートを検出して対策を講じると、チート開発者はそれを回避する新しい方法を見つけ出します。
 
この終わりのない競争は、アンチチート開発者にとって継続的な投資と研究開発を必要とします。完璧なアンチチートシステムは存在せず、常に新たな脅威に対応していく必要があります。
 
このため、ゲーム開発者は、技術的な対策だけでなく、コミュニティの報告システムやペナルティの強化など、多角的なアプローチでチート問題に取り組むことが重要になります。
 

5. まとめ

アンチチートシステム(ソフト)についての概要や具体例、課題などをまとめました。チート行為はゲームの公平性を損なうばかりでなく、ゲーム会社が本来得られるべき収益を奪う卑劣な行為です。そのため、各ゲーム会社は様々なチート対策に取り組んでおり、アンチチートシステムもそのひとつです。
 
対策をしてもチーターは巧妙な手口でチートを仕掛けてきますが、放置するわけにはいかないので、今後も様々なアンチチートシステムが作られていくことでしょう。
 

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