「8番ライク」(8番出口ライク)とは?人気ゲームのジャンル化に見る流行と傾向


 
近年、ゲーム業界内で「8番ライク(または8番出口ライク)」と呼ばれるジャンルが出現し、量産されています。とはいえ、「8番ライクってどんなゲーム?」と思う人も多いでしょう。
 
そこでこのコラムでは、まず「8番ライク」の特徴を解説したうえで、このジャンルの代表的なタイトルや、開発者目線から見るこのジャンルの優れた点や注意点などを紹介します。
 

1. 「8番ライク」(8番出口ライク)とは

「8番ライク」(8番出口ライク)とは、個人ゲーム開発者であるKOTAKE CREATE氏が開発しPLAYISMからリリースされた『8番出口』に似たゲーム群を指しています。
 
『8番出口』は異変を見分けながら駅構内からの脱出を目指すシンプルなゲームです。2023年にインディーゲームとしてリリースされ、実況動画などで話題を呼んで人気タイトルとなりました。その後Nintendo Switch版のリリースや、有名俳優を起用した映画化によって認知度が高まっています。
 
『8番出口』を開発したKOTAKE CREATE氏は、「類似作品が増えてジャンル化するなら、語呂が良いので「8番ライク」でお願いします」と語っているので、これ以降は「8番ライク」という言葉を使っていきます。
 

1-1. 「間違い探しゲーム」ジャンルとの違い

『8番出口』は駅構内のビジュアル的な異変に着目し、異変がなければ進む、異変があれば戻る、という判断を8回連続して成功することでクリアできます。
 
いわゆる「間違い探しゲーム」と似た面はありますが、『8番出口』はリリース元であるPLAYISMの表示ではシミュレーション / ホラーに分類されています。また、脱出を目的としている点で「間違い探しゲーム」とは異なります。
 
間違い探しゲームについて詳しく書いたコラムがありますので、ぜひ以下もご参照ください。
「「間違い探しゲーム」とは?アイデアによって進化するジャンルを紐解く」
 

1-2. 8番出口の人気理由

『8番出口』がヒットした理由は、以下のように複数考えられます。
 
・ルールがシンプル
・テクニックが不要なので誰もが楽しめる
・ホラー要素も楽しめる
・低価格なので入手しやすい
・リアルなビジュアル
・駅というよくある風景なので、似た画像をSNSにあげる人がいて、認知を広げた
・脱出に成功した後も繰り返し楽しめる工夫がある
・動画配信、ゲーム実況などの後押しが効いた
・動画配信などで異変をわかっていても実際に探すのは苦労するので、他者に勧めやすい
・早期に類似したゲームが開発されたので、ジャンルの始祖として位置づけられた
 

2. 代表的な8番ライクゲームタイトル

ここからは、代表的な8番ライクゲームを一部紹介します。
 

2-1. 8番のりば

『8番のりば』は『8番出口』の公式な続編であり、開発は『8番出口』と同じKOTAKE CREATE氏です。本作では永遠に走り続ける電車に閉じ込められた設定ですが、脱出を目指すことや異変に注意すべき点は『8番出口』と類似性があります。
 
ただし、前作より探索要素は控えめになっている一方、ホラー要素が強く押し出された内容となっています。
 
ちなみに、KOTAKE CREATE氏は「8番シリーズは本作で終了」と明言しており、さらなる続編を作るつもりはないそうです。
 

2-2. Shinkansen 0 | 新幹線 0号

『Shinkansen 0 | 新幹線 0号』は、ホラーゲームを多数手がけてきた日本のインディースタジオであるChilla’s Artが開発・リリースしています。異変があれば前進、異変がなければ後退という2択を連続正解すればクリアできる点で、『8番出口』と大きな類似性があります。
 
ただし、ゲームを進めるうえで前進と後退のルールが逆転して混乱を招きます。また、3回ミスするとホラー現象が起こる仕組みも実装されています。
 

2-3. ATTA ~世にも奇妙な間違い探し~

『ATTA ~世にも奇妙な間違い探し~』は、IDEA FRUITIONが開発・リリースしたタイトルです。
 
異変を探す点で『8番出口』と似ていますが、本作は最初に見た画像と異なる部分の数を答えて進んでいく点で、間違い探しゲームの要素が強いです。そのため、記憶力を問われますし、リアルな雰囲気の『8番出口』に比べるとファンタジー色が強い点で独自色を出しています。
 

2-4. 偽夢

『偽夢』は個人ブランドであるテンカイゲームズが開発、リリースしています。プレイヤーは夢の中に閉じ込められており、多数の異変を見つけて現実に帰ることを目的とします。
 
ノーマルモードでは一定時間ごとに異変が起こるのでトライしやすいですが、異変が起こるタイミングが読めないモードもあります。
 
「8番ライク」ゲームの中では比較的日常感が強いですが、それだけにふいに起こる異変が恐怖感を演出します。
 

2-5. 孵道(かえりみち)

『孵道(かえりみち)』は法螺会(ほらかい)が開発、リリースしているアンリアルホラーアドベンチャーゲームです。
 
文字情報を読んで選択するノベルゲームのスタイルをとっており、答え方の違いによるストーリー分岐もあります。そのため、複数のエンディングが存在する点でこのジャンルでの独自性を強めています。
 
また、レトロ感のあるマンガ的表現が不気味さを増しており、立体音響によって恐怖を盛り上げる演出も秀逸です。
 

2-6. Who’s at the door?

『Who’s at the door?』は韓国のゲーム会社であるSKONEC Entertainmentが開発、リリースしているPC向けホラーゲームです。
 
主人公は精神の病を患っており、たびたび幻覚に悩まされます。消える幻覚がある一方、消えずに襲いかかってくる幻覚があります。その場合逃げたり隠れたりする対応が求められる点に独自性があります。これらの幻覚に対応しながら正しい選択を続け、ゲーム内で8日間過ごせれば精神病が回復する、というのが大きな流れです。
 
訪問者が危険な相手か安全かを判断する過程があり、安全な相手なら薬をもらえますが失敗すると初日に戻るので、何度もループしないためには幻覚の見極めが重要です。
 

3. 開発者目線で見る8番ライクゲームの良さ

ここでは、ゲーム開発者目線で見る8番ライクゲームのメリットを解説します。
 

3-1. ゲームシステムのテンプレートができているため作りやすい

8番ライクゲームは、異変の発見や判別を繰り返してゴールに至るループ系脱出ゲーム、というテンプレートが確立しています。また、始祖となった『8番出口』の開発者であるKOTAKE CREATE氏が類似する作品が増えることを容認していることもあって、インディーゲーム開発者は、安心してテンプレートの利用が可能です。
 
そもそもシンプルなゲーム性なので作りやすいですし、既存のテンプレートに自分なりのアイデアや個性を乗せる喜びもあります。
 
また、シンプルだからこそ開発が早く、ジャンルとしての確立が早かったことも開発者にとって発信しやすい要因となっています。
 

3-2. 元々がインディーゲームのためグラフィックへの期待値が控えめ

近年、ゲーム開発のコストは増え続けており、特にグラフィックにかかる費用やマンパワーは開発の負荷になる傾向が顕著です。これによって開発の遅延や企業としての負荷の増大がゲーム業界共通の問題となっています。
 
一方、「8番ライク」はグラフィックに過度な期待が寄せられないため、個人開発者やインディースタジオが手を付けやすいジャンルとして確立しています。
 
このジャンルの始祖である『8番出口』は、KOTAKE CREATE氏という個人開発者が作ったインディーゲームであり、グラフィックへの過度な期待がない状態で作られました。このため、「8番ライク」にはグラフィックの高度さが求められない環境が形成され、このメリットを生かしたインディータイトルが次々と生み出されています。
 

3-3. 配信に映えるタイトルのためユーザーに拡散されやすい

8番ライクゲームは、ゲーム実況動画やライブ配信と相性が良いことを特徴としています。プレイヤーが異変を見つけて驚くリアクションは視聴者を引きつけますし、配信者が視聴者とコミュニケーションを取りながら異変を探すスタイルは盛り上がりやすいからです。
 
また、SNSでのファンアートや感想の投稿がゲームの拡散を加速させるケースも多数見られます。特に『8番出口』は駅というどこにでもある場所を舞台としているので、誰もが画像を投稿しやすい点が認知拡大を後押ししました。
 
このように、配信やSNSを通じて自然にゲームが広まっていくため、マーケティング費用を抑えながら多くのユーザーにリーチできる点が大きな強みです。
 

4. 8番ライクゲームを作る上での注意点

ここでは、「8番ライク」ゲームを作るゲーム開発者に向けての注意点を記載します。
 

4-1. ホラーにどれだけ振るかのバランス感覚が問われる

始祖となった『8番出口』にホラー要素があったため、「8番ライク」の中には恐怖を扱うものが多く見られます。このため、「8番ライク」を作る際にはどの程度ホラー要素を強くするかが問題となります。
 
恐怖の度合いが高いことをウリにする手もありますが、ホラー性が強すぎると多くの人にとって近寄りがたいものになります。また、ホラーと言ってもジャパニーズホラーのような怖さと、ジャンプスケア(瞬間的なでき事や大きな音で驚かせる演出)では方向性が異なるので、ゲーム性やユーザー層を考えて開発することをおすすめします。
 

4-2. ゲームシステムが完成されているためオリジナリティを出さなければ埋もれてしまう

「8番ライク」は異変の発見、脱出、ループ、ホラー要素と書き表せる特徴が明確でフォーマット化ができています。また、高品質のグラフィックを求められない傾向もあるので作りやすいジャンルとなっています。
 
上記はメリットである一方、多くの作品に埋もれやすい状況を形成しています。そのため、何らかの独自性をもって開発しなければ、ヒットは難しいでしょう。
 

4-3. 細かすぎる異変などゲーム難易度が理不尽にならないよう注意する

異変の発見しやすさをどの程度に設定するかも、「8番ライク」を作る際の重要な検討事項です。異変の発見が簡単すぎると面白味が出ませんが、難易度が高ければ良いわけでもありません。「ポスターの一部の数字が変わっている」など些細過ぎる変化を変化としてカウントしてしまうと、ユーザーは面白さより理不尽さを感じてしまうリスクがあるからです。
 

5. まとめ

近年、ジャンル化して多数のタイトルが生み出され続けている「8番ライク」について解説しました。
 
「8番ライク」は『8番出口』を始祖とするゲーム群で、異変の発見、ループ、ホラー要素などを特徴としています。インディーゲームから始まったので、大作ゲームのように高精細なグラフィックを求められませんし、フォーマットが明確なので作りやすいことが、ジャンルとしての認知拡大を後押ししています。
 
ただし、オリジナリティがないと埋もれやすいなど注意点もあるので、「8番ライク」を開発する際には、このコラムを参考にしていただければ幸いです。
 

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