500万DL突破!ジャンプチヒーローズの快進撃から学ぶIP作品のスマホアプリに必要な事
スマートフォン向けゲームアプリの中でも、パズルゲームはサクッと遊べるゲームとして今やほとんどの人がインストールしているのではないでしょうか。
パズルゲームはちょっと一息つく時や、電車の待ち時間など、ミクロな可処分時間を使って本腰を入れずに楽しめます。
その為スマホとの親和性がとても高く、いまや一大ゲームジャンルとしてその存在を確固たるものとしています。
「キャンディークラッシュ」や「ツムツム」、「パズル&ドラゴンズ」といったタイトルがユーザの取り合いをしていました。
さて、そんな戦国時代とも言える苛烈なレッドオーシャンに2018年、「ジャンプチ ヒーローズ」という新作タイトルがリリースされました。
その後破竹の勢いで進軍したこのタイトルは、1年で500万ダウンロードを突破するという結果を残しています。
勢いは止まらず今年6月には早くもアジア圏(台湾・香港・マカオ・シンガポール・マレーシア)に向けてローカライズ版を出す運びとなりました。
後発にも関わらず、順当に成長していくゲームアプリにはどういった成功要因があるのでしょうか。
ゲームの概要
ジャンプチヒーローズは、これまでに週刊誌少年ジャンプで掲載された古今東西の作品に登場したジャンプキャラクターが登場するパズルゲームです。
プレイヤーはゲームオリジナルの世界でジャンプキャラクターの力を借りながら、自分だけのお気に入りキャラクターで構成したデッキを組んで魔王を討伐するという物語です。
原作を再現する台詞の応酬や必殺技の数々、ステージに至るまでファンならグッとくる要素がちりばめられています。
しかしただキャラクターを使っただけのゲームではこれほどまでユーザを増やすことは叶いません。
その裏にはキャラの魅力だけに頼らないゲームそのものの面白さ、マーケットを捉えたキャンペーン実施など、着実にファンを増やす要素が潜んでいました。
キャラゲーxパズルゲームの妙技
これまでジャンプのキャラクターを一同に会したゲームは様々なジャンルで作られていました。
ファミコンでは「ファミコンジャンプ」、ニンテンドーDSでは「ジャンプアルティメットスターズ」、PS3では「Jスターズビクトリーバーサス」、PS4では「ジャンプフォース」など。
スマホでも「週刊少年ジャンプ オレコレクション!」がリリースされていました。
これまでのタイトルではRPGや格闘アクションなど、作品のイメージとゲーム性がリンクしているものが多く、バトル漫画が多いジャンプ作品では作品の枠を超えた夢の競演が名物でした。
しかし一方でバトルジャンルではないタイトルは明らかに割を食っていたという側面がありました。
ド派手に殴り合うルフィと悟空の間に湘北高校のバスケット部がいても普通に考えれば勝負にならず、ただひたすらシュールなだけだったのです。
その中でジャンプチヒーローズはパズルという要素を用いて戦闘力を均衡に表現することで、作品のジャンルを問わず共生しても違和感にならず、むしろ持ち味を十分に活かす見せ方が可能になりました。
従来のゲームでは悟空のかめはめ波に対して画的には反撃に無理のあったスポーツ系作品、日常系作品のキャラクターも、それぞれの原作の必殺技がパズルになって反映されます。
その結果、光弾技と3ポイントシュートが同じ画面にあってもどちらもパズルの効果として処理されるため、異なる要素が両立しても説得力が生まれています。
こういった面から見てもジャンプ作品という強烈なIP要素と、スマホゲームとしても馬力をもっていたパズルゲームという組み合わせは成功要素たる掛け算であることは間違いありません。
クロスオーバーゲームの根底を支えるシンプルでわかりやすいシステム
パズルゲームという観点で見てみましょう。
システムは同じ色のパズルをなぞる事で連鎖が起き、そのコンボの総量がダメージとなって敵の体力を削るというシンプルなものです。
このシンプルさが故にキャラクターの必殺技や特殊効果がスパイスとして利いてくるのです。
通常攻撃ではいわば運だよりのパズル配置ですが、キャラクターの特殊効果で同じ色の出現率を変動してコンボを繋げ易くしたり、特定の色のみ攻撃力をあげたり、といった戦略性が生まれます。
ゲーム側で敷いたルールにキャラクターが原作で使用していた技が効果となって乗っかるという構図はゲームに「説得力」を持たせます。
この「説得力」こそがなんでもありのお祭りキャラゲームに一貫性と法則を持たせて、キャラの魅力に頼るだけでなくゲームそのものの面白さもきちんと担保する重要な要素となります。
多作品を取り扱う事のジレンマ
クロスオーバーを取り扱うゲームでは、その作品数がゲームの魅力の一つとなりますが、諸刃の剣とも言えます。
ユーザ像がある程度見えていないと取り扱う作品の需要と供給が合わないという問題が生まれるからです。
このジレンマに対してプロデューサーであるワンダープラネットの鷲見政明氏、LINEの白井雄一朗氏両名のインタビューから当事者からの貴重な声が見られます。
「リリース当初はユーザー像がふわっとして苦労しました。
ですが、最近はジャンプ作品を複数タイトル知っていて、かつパズルRPGが好きな方であることが見えてきました。
そして、広く浅くIPを出すよりも、定期的に1つの作品を深掘りしていくスタイルが、最もユーザーさんが盛り上がってくれるんです。」※1
「鷲見さんが仰った通り、全体を薄く扱うのではなく、深掘りすることだと思います。
例えば、最初の大特集祭では、『幽☆遊☆白書』の暗黒武術会編を大きくフィーチャーしました。
原作の絵も多く使わせて頂き、ストーリーを追って楽しめるような内容にしたんです。
作品を知っている方は「そうそう、こんな感じだった! やっぱり幽☆遊☆白書って面白い!」という楽しみ方ができたと思いますし、知らない方は「なるほど、こういう内容なのか」と新鮮な気持ちで楽しめたのかなと。
運営側としては、ちゃんと週刊少年ジャンプに対して愛情を持って、ユーザーさんに楽しく伝えたいという思いが伝えられたかなと思います。」※1
このインタビューでとても興味深いのは、フェーズによってマーケットへの戦略が巧みに使い分けられているということです。
つまりリリース当初は最低限薄く広く作品を取り扱う事で間口を広げ、次の一手として既に一定層の顕在客が見込まれる作品を深く掘って行く事でゲーム未見の新規客も取り込みつつ既存プレイヤーにもアプローチしている、といった具合です。
また、キャラクターゲームの命運を左右する作品選定方法だけでなく、ゲーム全体の改善に対しても以下の様に回答しています。
「我々運営側が主体となって,ゲームをどのように改善していきたいのかと考えることは必要だと思うんです。
企画,運営のメンバーから出てくる意見を踏まえて,現状のプレイヤーさんはどう思っているのかを汲み取るという形で,皆さんの声をゲームに反映しています。」※2
この様に面倒がらずに頻繁なユーザコミュニケーションを実施することで、ミクロなPDCAを行う事が出来、ニーズにあったサービス提供が実現できたことは想像に難くありません。
まとめ
ジャンプチヒーローズの快進撃を因数分解し、IP作品を取り扱うスマホアプリに必要な成功要因をひも解きました。
原作のトーンマナーとゲーム性の調和、作品の持味が活きる様、ゲーム側のシステムはシンプルにする、市場の成長で戦略を変える、常にユーザを巻き込むといったメソッドが不可欠な様です。
巨人の肩の上に立つ、という言葉があります。
これは先人の積み重ねた発見に基づいて何かを発見することを表す西洋の慣用句です。
スマホアプリ開発においては既存の人気IPを取り扱う事として適切な表現に思えます。
この巨人の肩の上に立つという戦略における有利さと同時に重く伸し掛かる責任が、IP作品のゲーム開発の苦悩であり醍醐味ではないでしょうか。
独自のスマホアプリゲーム開発にもロマンが溢れますが、IP作品を使ってそのファンを喜ばせつつゲームのファン化することもきっと同じくらい面白いのではないでしょうか。
併せて読みたい記事
→ゴジラディフェンスフォースから学ぶ原作ファンを納得させるスマホゲーム開発
→ウルトラ怪獣バトルブリーダーズが示すIPスマホアプリゲームにおける生存戦略
→ロマサガRSから学ぶ既存ゲームIPで新規ファンを掴む為に必要な開発スタンス
[出典] ※1 【インタビュー】1周年を迎えた『ジャンプチ ヒーローズ』のプロデューサーが語る、作品のこれまでとこれから
https://gamebiz.jp/?p=235690
※2 「ジャンプチ ヒーローズ」サービス1周年記念インタビュー。クリエイターに聞く,多彩な作品のファンに応える秘訣とは
https://www.4gamer.net/games/409/G040907/20190415040/
ライター名:ビットリズム
プロフィール:国産ゲームで産湯を使ったロムネイティブなゲームエバンジェリスト。QOL向上に必要なのはワーク・ライフ・ゲームバランスだと信じている。
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