
ゲーム配信者とゲーム会社のマーケティングの関係性とは?新しい時代のコミュニティ
ゲーム配信は、ここ数年で多くの人にとって身近なものとなってきました。そのため有名ゲーム配信者は、ゲームのマーケティングに影響を与える存在として、ゲーム会社が配信を依頼する動きも一般化しています。
このコラムでは、まずゲーム配信者とはどんなものかを説明し、マーケティングとのかかわり方を解説していきます。
目次
1. 「ゲーム配信者(ゲーム実況配信)」とは?
ゲーム配信者、またはゲーム実況者とは、IT・Web系の動画共有サービスやライブ配信プラットフォーム(YouTubeやTwitchなど)で、コンピューターゲームのプレイ実況を配信・投稿する人を指します。
  
 ライブ配信でリアルタイムに実況する人や、録画・編集した動画を投稿する人がおり、海外では「ストリーマー」と呼ばれることも多いです。動画投稿サイトには多くのゲーム配信動画がアップロードされ、幅広い世代に楽しまれるエンターテイメントとして浸透しています。
  
1-1. ジャンル別有名ゲーム配信者
ここでは2025年現在のジャンル別有名ゲーム配信者を簡単に紹介します。
  
 【FPS】
 ・Shroud(シュラウド)…カナダ出身の元プロゲーマーで、ゲームプレイのうまさとトークの巧みさの両面で人気があります。
 ・兄者弟者(あにじゃおとじゃ)…兄弟による掛け合いの面白さや協力プレイの魅力などで多くの人に評価されています。
  
 【多ジャンル】
 ・HikakinGames(ヒカキンゲームズ)…エンターテイメント性が強く、大人も子供も楽しませるスタイルが人気です。
  
 【ホラー】
 ・キヨ。…ハイテンションでユーモラスな実況が人気で、ファンとのコミュニケーションも巧みなことで、多くの視聴者を獲得しています。
 ・ポッキー…ホラーゲームやインディーゲームのプレイで人気があり、視聴者参加の企画も多数扱っている配信者です。
  
 【年少者向け】
 ・まいぜんシスターズ…キャラクターやストーリー性などで年少者に人気があります。扱うタイトルも、「マインクラフト」や「フォートナイト」など、年少者がプレイするものが多いです。
  
1-2. ゲーム配信に使われる主なプラットフォーム
・YouTube Live
 世界最大級の動画投稿・共有サービスが提供するライブ配信機能です。幅広い視聴者にリーチでき、配信のアーカイブや動画投稿も可能です。収益化のハードルは高いですが、広告収入や投げ銭、メンバーシップなど多様な収益方法があります。
  
 ・Twitch(ツイッチ)
 Amazonが運営する、特にゲーム配信に特化したプラットフォームです。高画質配信やリアルタイム交流が活発で、海外ユーザーが多いのが強みです。収益化の仕組みも整っており、プロゲーマーも多く利用しています。
  
 ・ニコニコ生放送
 画面上に視聴者のコメントが流れる独特なシステムを持つ、国内のプラットフォームです。ゲーム配信や雑談配信が盛んで、視聴者との一体感を重視する文化があります。収益化のハードルは比較的低いとされます。
  
 ・OPENREC.tv(オープンレック)
 日本企業が運営しており、高画質なゲーム配信が特徴のプラットフォームです。国内ユーザーが多く、プロ実況者向けのパートナー制度など、ゲーム配信に特化した機能やサポートが充実しています。
  
 ・ツイキャス
 スマートフォンから手軽にライブ配信ができるプラットフォームです。SNS連携が強く、カジュアルな配信に向いています。ゲーム配信に特化した「ツイキャスゲームズ」もあり、初心者にも人気です。
  
2. ゲーム配信者が持つマーケットへの影響力
近年、ゲーム配信者がマーケットに及ぼす影響は無視できないものになっています。この項目では、その影響のポジティブ面とネガティブ面をそれぞれ解説します。
  
2-1. ポジティブな影響力
ゲーム配信はマーケットにプラスの影響をもたらすことが多いと考えられています。
  
 視聴者は配信を通してゲームの内容や魅力を知ることができ、これは強力な販促効果を生み出します。特に、「好きな配信者がプレイしていたから気になって買う」という動機は購買行動に直結し、新規ユーザーの獲得に貢献します。
  
 また、配信による話題性や盛り上がりはゲームの認知度を高め、市場全体を活性化します。
 2020年の調査ではありますが、Marketing Research Campの「動画&動画広告 月次定点調査」によれば、ゲーム配信動画を視聴した後、「そのゲームを購入した」人は22.1%存在しています。これはゲーム配信がゲームの購買意欲向上に貢献していると考える根拠となっています。
  
2-2. ネガティブな影響力
ゲーム配信は宣伝効果を持つ一方で、購買意欲を低下させる側面も指摘されています。シドニー大学のジョンソン氏とイギリスのオープン大学のウッドコック氏の研究によれば、視聴者が実況やストリーミングを通じてゲーム内容を把握する(いわゆるネタバレ)と、実際に購入してプレイする必要性を感じなくなる傾向があると報告されています。
  
 特にストーリー性の強いタイトルでは、配信視聴だけで満足してしまうケースが考えられるため、結果として売上機会の損失につながる可能性があります。また、配信者との心理的距離が近いほど「観るだけで楽しむ」傾向が強まり、ゲーム市場全体の収益性に負の影響を与える懸念が示されています。
  
3. ゲーム配信によって売上アップにつながりやすいジャンル
ゲーム配信によって売上アップにつながりやすいジャンルには、以下の特徴があります。
  
 ・オープンワールドなど自由度の高いジャンル
 決まった攻略法が存在しないため、配信者が新しいエリアを探索し、予期せぬイベントに遭遇する様子が視聴者を引きつけます。視聴者はその多様な遊び方を見てゲームに魅了されやすいです。
  
 ・アクション要素のあるジャンル
 スピード感があり、観るだけでは満足できず「自分も試したい」と感じさせやすいです。配信者の高度なテクニックや検証プレイを見て、視聴者はプレイへの欲求を強く刺激されます。
  
 ・オンライン対戦・協力ゲーム
 視聴者自身が参加して楽しめるマルチプレイヤーコンテンツや、仲間との協力・対戦のドラマが生まれやすいジャンルでは、コミュニティの盛り上がりが促進され、購入意欲も高まります。
  
 これらのジャンルは配信を通じてゲームの多様な楽しみ方を具体的に伝え、視聴者のプレイ意欲を促すため、販売促進に効果的です。
  
4. ゲーム配信によって売上に悪影響を与えやすいジャンル
ゲーム配信は多くのジャンルで売上を伸ばす効果がありますが、特定のジャンル、特にシナリオが肝となるゲームにおいては、その影響が悪く働く可能性があります。
  
 具体的には、ストーリーが核心にあるシナリオ重視のゲームやサウンドノベル系のゲームが挙げられます。これらのジャンルは、配信によってゲームの重要な部分がネタバレされてしまうリスクが高いです。
  
 視聴者が配信を通じてストーリーの内容を知ってしまうと、「自分でプレイする楽しみ」や「購入意欲」が大きく低下し、結果として売上に悪影響を与えることが少なくありません。そのため、販売元はネタバレを回避するための配信ルールを設けるなど、慎重な対応が求められます。
  
5. ゲーム配信者にプレイ依頼をするゲーム会社が増えている?新しいマーケティング戦略
ゲーム配信がマーケティングに大きな影響を与えることがわかってきたため、ゲーム配信者にプレイを依頼するゲーム会社が増えています。ここでは、その内容を3つの方向から解説します。
  
5-1. マーケティング例①先行プレイ権利(メディアコード)の提供とプレイ依頼
近年、ゲーム会社は新たなマーケティング戦略として、影響力のあるゲーム配信者に新作の先行プレイ権(メディアコード)を無償で提供し、プレイを依頼する手法を積極的に採用しています。
  
 これは、従来の広告では伝わりにくいゲームのシステムや臨場感を、配信者の視点で効果的に紹介することを目的としています。発売前の段階からインフルエンサーにゲームを体験させ、その生の声やプレイの様子を視聴者に届けることで、新作タイトルの認知度向上や事前予約の促進に大きな効果を発揮します。
  
 特に、視聴者がゲームを「自分のこと」として感じる効果があり、信頼する配信者のプレイを見て購入意欲を高めます。この手法は、リリース後の話題性維持やアクティブユーザーの獲得にも繋がる、重要なプロモーション戦略の一つとなっています。
  
5-2. マーケティング例②ストリーマー主催イベントなどへの協賛
ゲーム会社はマーケティングの一環として、著名なストリーマーやゲームチームが主催する大規模なイベントやゲーム大会への協賛を強化しています。この戦略は、従来の広告ではリーチしにくいデジタルネイティブな若年層や、熱量の高いコアなゲームコミュニティに直接アプローチすることを可能にします。
  
 協賛の形態は、イベントの冠スポンサーとして名を連ねるほか、大会参加者や配信者へのゲーミングPCや機材の提供、イベント会場でのブース出展など多岐にわたります。協賛を通じて企業のロゴや製品を露出させることで、特定のゲームコミュニティ内でのブランド認知度を向上させ、「このメーカーはゲーマーを応援している」という共感や連帯感を生み出します。
  
 eスポーツ市場が世界規模で拡大する中、ストリーマー主導イベントへの協賛は、若年層への効果的なブランディング手法として、その重要性を高めています。
  
5-3. マーケティング例③コラボレーションイベント
ゲーム会社はゲーム配信者と協力し、コラボイベントを企画することで、強固なコミュニティを持つ配信者のファン層を取り込むマーケティングを推進しています。この戦略は、単なるPR動画の制作に留まらず、ゲーム内での限定イベントやアイテムの実装、VTuberとのコラボ配信といった多角的な展開を特徴とします。
  
 配信者をゲームのキャラクターやテーマに起用することで、ファンは「推し」が関わるゲームに強い興味を持ち、新規プレイヤーとして流入します。また、複数の人気配信者を集めた合同でのゲーム配信企画は、視聴者に連帯感と大きな話題性を提供し、SNSでの拡散力を高めます。
  
 さらに、配信者がゲーム周辺の商品や他業界のブランド(アパレル、飲料など)とタイアップすることで、ゲームを起点としたブランドイメージの波及も狙えます。これにより、ゲーム外の市場にまで影響力を拡大し、売上や企業認知度の向上に繋がる相乗効果を生み出します。
  
6. これからのゲーム配信者とゲーム会社の関係性
ゲーム配信者とゲーム会社の関係性は、単なる宣伝手段を超えた共創的なパートナーシップへと進化しています。
  
 かつてゲーム会社が新作を告知する際、多くの人が見ていたテレビ番組でゲームのCMを流していたのと同じように、主要なユーザー層がストリーミングプラットフォームへと移行したことに伴う媒体の変更と捉えられます。
  
 現代の若年層は、テレビCMよりも、信頼するストリーマーの実況を通じてゲームの魅力や価値を認識します。これにより、配信者は単なる広告塔ではなく、「視聴者の購買行動に影響を与える存在」として位置づけられます。ゲーム会社は、新作の先行プレイ提供やイベント協賛を通じて配信者を積極的に活用し、コミュニティとの接点を築きます。
  
 一方で、シナリオ重視のゲームのネタバレ問題や、収益配分、著作権(IP)の取り扱いなど、新たな課題も発生しています。そのため、今後は配信者と企業の間で、継続的な成長に寄与する透明性の高い契約やガイドラインが整備され、長期的な信頼関係を築くことが重要になると考えられます。
  
7. まとめ
近年はゲーム配信者の認知度が上がり、ゲームマーケティングに影響を与える存在となりました。そのため、ゲーム会社はゲーム配信者をマーケティングに取り入れる動きを活発化しています。
  
 ただし、単純にゲーム配信者に協力を求めれば売り上げや利益が上がる、というほど簡単なものではありません。このコラムでは、ゲーム配信がポジティブな影響を与えやすいジャンルや、ゲーム配信者との連携の仕方を解説しています。ぜひマーケティングを行う際の参考にしてください。
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