AAAタイトルとは?ゲーム業界で求められる開発規模・代表作などを徹底解説
「AAAタイトル」という言葉はゲーム業界ではしばしば見聞きするので、知らない人はいないと思います。しかし、「定義や語源までは知らない」という人も多いでしょう。
そこでこのコラムでは、まずAAAタイトルについての基本的知識を明らかにしたうえで、AAAタイトルを取り巻く環境を解説、さらにAAAタイトルの代表的作品を紹介します。
目次
1. AAAタイトルとは
この項目では、ゲーム業界における「AAA(トリプルエー)タイトル」とはなにかを解説します。
1-1. AAAタイトルの定義と語源
ゲーム業界では「AAAタイトル」という言葉は頻繁に使用されますが、実は厳密な定義はありません。大きく言うと「大作ゲーム」を意味しますが、使用される場面によって若干の違いがあります。まずメディア的には「300万本以上売れた」といったセールス面で扱うことが多いです。
一方の開発側としては、大規模な予算を投じて作るゲームとして用いる場面が多く見られます。巨額の資金を投じる以上、手掛けるのは大手パブリッシャーであることが多いです。
ゲーム会社としては、予算や時間をかけている以上利益回収にも力が入りますから、リリース前に「期待のAAAタイトル」として大規模な告知を行います。
ゲーム業界でAAAタイトルという言葉を使い始めたのは、1990年代後半のアメリカであるという説が有力です。映画業界で、大手制作会社が多額の費用をかけて作る作品を「ブロックバスター」と呼びますが、それと同意語として使い始められました。
ちなみにAAAという言葉は、ゲーム業界が使う以前から債券の格付けで用いられています。作品の規模を示すゲーム業界とは異なり、債券に関しては投資対象としての信用力の高さを示す言葉ですが、ユーザーとしては一定のクオリティやある程度の時間楽しめるゲームとしての信頼性を示すという意味で共通性があるでしょう。
1-2. インディーゲームや一般的なタイトルとの違い
インディーゲームは大手ゲーム会社が関与せず(パブリッシングを除く)、個人や小規模のゲームスタジオが作るゲームを指します。そのため、大手パブリッシャーが大規模な予算をかけて作るゲームとは対照的な存在です。
AAAタイトルは予算が大きいので、有名クリエイターが参加していることが多いですし、最高水準の技術採用、有名声優の起用など、話題を呼ぶ要素がてんこ盛りです。また、投資額が大きい以上資金回収もしなければなりませんから、クオリティの高さは水準以上でなければなりませんし、多くの人に受け入れられるための綿密な市場調査を経て開発が始まります。
一方、インディーゲームは低予算で作られるので、クオリティよりアイデア重視の場合が多く、費用や手間をかけずに、クリエイターなりの「良いゲーム」「面白いゲーム」を作ることに注力されます 。
「一般的なタイトル」は上記のAAAタイトルとインディーゲームの中間的存在で、一般的予算や一般的規模で作られるゲームと考えてよいでしょう。
2. AAAタイトルに求められる開発条件
この項目では、AAAタイトルに求められる開発条件を解説します。
2-1. 開発予算と人員規模
AAAタイトルは、大規模な開発予算と数百人規模の人員を必要とします。開発期間は数年から10年近くに及ぶこともあり、その間に人件費、マーケティング費用、技術開発費などが膨大に発生するため、一般的に億を超える金額の予算が投じられます。
たとえば、ロックスター・ゲームスが2026年にリリースを予定している「グランド・セフト・オートVI」は 、2014年から開発が始まっているのですでに10年以上が経過していますし、開発費も10から20億ドルも使っていると言われています。また、「原神」の開発費は9億ドル、「コール オブ デューティ ブラックオプス コールドウォー」は7億ドルもの開発費がかかっているとされており、開発費数億ドルのゲームは珍しいものではなくなっています。
2-2. 技術力とグラフィック品質の水準
AAAタイトルには、最先端の技術力と最高水準のグラフィック品質が求められます。これは、プレイヤーを没入させるためのリアルな描写、滑らかなアニメーション、そして複雑な物理演算などを実現するためです。
最新のゲームエンジンや開発ツールを駆使し、フォトリアルなキャラクターモデルや広大なオープンワールド環境を構築します。また、レイトレーシングやAIを活用した技術なども導入され、視覚的な魅力を最大限に高めています。技術的な困難を克服し、革新的なゲームプレイ体験を提供することが、AAAタイトルの重要な要素です。
2-3. グローバル展開とマルチプラットフォーム化
AAAタイトルは、世界中のプレイヤーを対象としたグローバル展開と、複数のプラットフォームでのリリースを前提として開発されます。これにより、より多くのユーザーにリーチし、収益を最大化することが可能になります。
多言語対応はもちろんのこと、各地域の文化や慣習に配慮したローカライズも重要です。また、PC、PlayStation、Xbox、Nintendo Switchなど、主要なゲーム機やデバイスで快適に動作するよう、開発段階からマルチプラットフォームへの最適化が図られます。
この作業には、各プラットフォームの特性を理解し、開発リソースを効率的に配分する高度なノウハウを要します。
3. 代表的なAAAタイトルの実例紹介
この項目では、世界的に知られる代表的AAAタイトルを紹介します。
3-1. ファイナルファンタジーシリーズ(ナンバリング)
ファイナルファンタジーシリーズは、1987年にスクウェア(現スクウェア・エニックス)が発売した「ファイナルファンタジー」から続く、日本を代表するRPGシリーズです。美麗なグラフィック、壮大なストーリー、独特の戦闘システムが特徴です。ナンバリング作品はそれぞれ独立した世界観を持ちつつも、召喚獣やエリクサーなどのシリーズ共通の要素も登場します。
開発リソースは非常に大きく、FF4の時点では数十人だった開発スタッフ数は、FF15の時点で約2,500人にも増えています 。ファイナルファンタジーシリーズは開発費を明確にしていませんが、FF16の開発費は80億円とも推定されています。
シリーズ累計出荷・ダウンロード数は2023年の時点で1億8,000万本以上と公表されており、国内外で数々のゲーム賞を受賞しています。特にグラフィックや音楽の面で高い評価を得ており、JRPGの金字塔として世界中のファンを魅了し続けています。
3-2. グランド・セフト・オートシリーズ
グランド・セフト・オート(GTA)シリーズは、ロックスター・ゲームスが開発・発売するオープンワールド型アクションアドベンチャーゲームです。1997年に最初の作品が発売されて以来、架空の都市を舞台に犯罪をテーマにした自由度の高いゲームプレイを特徴としてシリーズ化されています。広大なマップを自由に探索し、カーチェイスや銃撃戦、ミッションの遂行など、多岐にわたるアクティビティが楽しめます。
開発には大規模なチームと数億ドル規模の巨額な予算が投じられ、特に最新作「グランド・セフト・オートV」は開発費が約2.65億ドルとも報じられました。シリーズ累計販売本数は4億本を超え、「GTA V」単体でも2億本以上を売り上げるなど、世界的なメガヒットを記録しています。
3-3. The Last of Usシリーズ
The Last of Usシリーズは、ノーティードッグが開発し、ソニー・インタラクティブエンタテインメントが発売する、サバイバルホラー要素を含むアクションアドベンチャーゲーム です。
2013年に「The Last of Us」が、2020年に「The Last of Us Part II」が発売されました。菌類によって文明が崩壊した世界を舞台に、生き残った人々の過酷な旅路や人間ドラマが深く描かれています。映画のようなストーリーテリング、リアルなグラフィック、緊張感あふれる戦闘が特徴です。
「The Last of Us Part II」の開発には数百人のチームと数年間の期間がかけられ、その予算は2億2,000万ドル以上と言われています 。
両作品ともに批評家から絶賛され、特に「Part II」は全世界で200以上ものアワードを受賞 しました。全世界で累計3,700万本以上を販売し、高い評価と商業的成功を収めています。
3-4. ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド
「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」は、任天堂が開発・発売したアクションアドベンチャーゲームで、2017年にNintendo SwitchとWii Uで同時発売されました。
広大なハイラルの大地を自由に探索できるオープンエアな世界観、物理演算を駆使した自由度の高い謎解き 、そしてサバイバル要素が特徴です。開発には任天堂社内の大規模なチームが約5年を費やし、巨額の開発費が投じられたと推測されます(開発費は公表されていません)。
その革新的なゲームプレイは世界中で絶賛され、世界累計販売本数はNintendo Switch版のみで約3,200万本(2025年3月末時点)を突破しました。国内外で数々の賞を獲得していますし 、特にその自由度の高さと探索の楽しさが高く評価され、以降の業界におけるゲームデザインに大きな影響を与えました。
4. AAAタイトルを取り巻く課題
AAAタイトルは、大規模な開発費高騰に直面しており、これがゲーム業界の大きな課題となっています。
数億ドル規模の投資が必要となる現代のAAA開発では、ヒットしなかった場合のリスクが膨大です。特に、開発期間の長期化や人件費の増加、最新技術への対応などがコストを押し上げています。市場の期待値も高く、未完成な状態でリリースすればブランドイメージの失墜につながりかねません。
結果として、開発会社はより確実なヒットを狙う傾向が強まり、新規IPの挑戦が難しくなるなど、ゲームの多様性が失われる懸念も指摘されています。
また、上記のリスクがあまりに大きいことから、AAAタイトルを作ること自体への懸念も強くなっており、ややグレードが下がっても負荷が少なく持続可能なゲーム開発にシフトすべき、という声も多数あがっています。
5. AAAタイトル開発に関わるキャリアと職種
この項目では、AAAタイトル開発に求められる人材像や関わる会社の規模を解説します。
5-1. AAA開発に求められる人材像
AAAタイトル開発には、開発を前に推し進めるハードスキルと、チームで活動していくためのソフトスキルを兼ね備えた人材が求められます。プログラマー、アーティスト、ゲームデザイナー、プランナー、サウンドクリエイター、プロジェクトマネージャーなど、どの職種でもそれぞれの専門知識が不可欠ですが、それだけではなく、大規模プロジェクトを円滑に進めるためのコミュニケーション能力、問題解決能力、そして変化に柔軟に対応できる適応力も重要です。
常に新しい技術やトレンドを学び続ける意欲も必須で、情熱を持ってゲーム制作に取り組める人材が活躍できます。
5-2. AAAタイトルを開発する会社の規模
AAAタイトルを開発する会社は、一般的に数百人から数千人規模の大企業が多いです。これは、膨大な開発リソースと専門的な知識を持つ多様な人材を要するためです。
例えば、ソニー・インタラクティブエンタテインメント傘下のノーティードッグやサンタモニカスタジオ、マイクロソフト傘下のXbox Game Studios、そして日本のスクウェア・エニックスやカプコン、任天堂などが代表的で、ほかにも多数の企業があります。これらの企業は、複数のAAAプロジェクトを同時並行で進める能力や、グローバル展開のための強固な販売網、そして潤沢な資金力を持ち合わせています。
大規模な組織であるからこそ、複雑かつ大規模なゲーム開発を実現できるのです。
6. まとめ
ゲーム業界のAAAタイトルについて、定義や語源を解説し、代表作や関わるキャリアなどをまとめました。
AAAタイトル開発に関わるには、まずある程度の規模のゲーム会社に入る必要がありますし、高いスキルも必要です。ハードルが高いと感じることもあるかもしれませんが、まずはあきらめずに目標を立て、スキルに不足があるなら前向きに補っていきましょう。
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