ゲームジャンル「PvPvE」とは?特徴や代表作、これからの展望について
最近ゲーム業界で、「PvPvE」という言葉を見聞きすることが増えています。しかし「PvPやPvEは知っているが、PvPvEはよくわからない」という人も多いのが実情です。
そこでこのコラムでは、PvPvEの定義や似た言葉との違い、ジャンルとしての魅力や代表作などを解説します。
目次
1. ゲームジャンル「PvPvE」とは
PvPvEとは「Player vs Player vs Environment」の略語です。プレイヤー同士で対戦するPvPと、環境(システム)やAIが制御する敵と対戦するPvEを同時に体験できるゲームジャンルです。
代表的なタイトルとして『Escape from Tarkov(タルコフ)』や『Hunt: Showdown』が知られています。プレイヤー同士で戦いつつ資源を奪い合ったり、AIが制御するモンスターと戦ったりするので、緊張感の高さが特徴です。
PvPvEは、PvPとPvEという多くの人に親しまれている既存のジャンルを融合させることで、複数の要素を同時にプレイできる新たな楽しみを生み出し、近年のゲーム業界で大きな話題となっています。
1-1. PvPゲームとの違い
「PvP」とは、「Player vs Player」の略語で、プレイヤー同士が対戦するゲームやゲーム内コンテンツを示す言葉です。FPSやTPS、格闘ゲームや対戦パズルゲームなど、多くのジャンルでPvPは用いられています。
対戦相手が画面の向こうにいる人間なので、システム上の敵と違い、固定の攻略方法はありませんし、勝利するには都度考えなければなりません。そのため、緊張感やそのときしか味わえない体験があることがPvPの大きな魅力です。
PvPについて、さらに詳しく書いたコラムがありますので、ぜひ以下もご参照ください。
→「「PvPゲーム」とは?概要や開発、バランス調整の注意点などを解説」
1-2. PvEゲームとの違い
「PvE」とは「Player vs Environment」の略語で、プレイヤーが対戦するのはシステムやAIです。RPGなど、ストーリーを進めるうえでの戦闘で多く利用されます。
RPGではゲーム開始直後は倒しやすい敵が配置され、後半に進むほど強い敵が登場する流れが一般的です。そのため、相手の強さや行動が不明瞭なPvPより、PvEの方がストーリー進行上に配置する戦闘には向いています。
プレイヤーとしては、強敵に勝つための装備や戦略を考える楽しみがありますし、マッチング上のストレスがないなど、複数の魅力があります。
ただし、全体としてはPvEを採用しているタイトルに、部分的にPvPのコンテンツを盛り込んでいる例も多いので、PvPとPvEが混在するタイトルは存在します。
2. PvPvEの魅力
この項目では、PvPvEに存在する魅力を解説します。
2-1. 「その世界で戦っている」という没入感が深い
PvPvEをプレイする際は、他のプレイヤーが操作する敵と、システムが制御する敵(モンスターなど)に対して同時に警戒する必要があります。例えばAIが制御するモンスターと戦っているときに、プレイヤーが操る敵に奇襲をうけるといったこともあるからです。
これによって、従来のゲームにはなかった緊張感が生まれ、一般的なゲームより「その世界で戦っている」という感覚が深まります。
2-2. 様々な展開が期待でき飽きが来にくい
PvPvEではPvEとPvPが同時進行するため、PvEやPvPより展開の多様性が生まれます。例えばプレイヤー同士の対戦中にAIが制御するモンスターが乱入するような展開は、PvEやPvPではまずありません。しかも、制御される要素とされない要素が混在しますから、ゲーム内で同じ場所に行ったとしても上記のような展開が起こるとは限りません。
つまり、再現性がなく、予測不能な点が、PvPvEの魅力のひとつとなっています。
2-3. ゲームバランス次第で初心者と上級者がマッチングしてもどちらも楽しめる
従来のPvPは実力差が如実に表れ、初心者が不利になりやすく、参入障壁が高くなりがちです。しかしPvPvEでは、システムが制御するモンスターへの勝利条件や、得られるアイテムにランダム性があるため、運の要素を適度に盛り込みやすい構造がジャンル自体に組み込まれています。
その結果、必ずしも実力だけで決まらない展開が生まれ、初心者でも達成感を味わえる機会が増えます。
3. PvPvEの代表作
この項目では、PvPvEの代表作を紹介します。
3-1. Escape from Tarkov(タルコフ)
『Escape from Tarkov』はロシアのBattlestate Gamesが開発・運営を手がけるオンラインサバイバルFPSで、2017年7月にクローズドベータ版がリリースされています。
ゲームはロシアの架空都市タルコフを舞台にしており 、プレイヤーは傭兵として装備を確保しつつ、紛争地域からの脱出を目指す内容です。
扱える銃器の多さや装備のリアリティ、カスタマイズ性の高さなどで知られています。また、死亡すると装備をすべてロストするなどシビアで緊張感が高いこともこのタイトルの人気を高めています。
3-2. Dark and Darker
『Dark and Darker』は、韓国のインディー開発スタジオ「Ironmace」が開発したPvPvEダンジョンクローラー探索ゲームです。ダークファンタジー色が強いですが、RPG要素、サバイバル要素、ダンジョン探索、バトルロイヤルなどがミックスされています。
本作は2024年6月にリリースされました。ザコ敵でもかなり強く、生きて脱出するだけでも難しいことや、死亡するとすべてを失うことなどから、「ハードコアで容赦ない」と評されています。それだけに仲間との協力プレイが重視され、オンラインプレイならではの魅力があるタイトルです。
3-3. Hunt: Showdown
『Hunt: Showdown』はドイツのCrytekが、2018年2月にリリース(正式リリースは2019年8月) したPvPvE対戦FPSです。ゲームの舞台は、モンスターが多数存在する1895年の米国ルイジアナ州です。プレイヤーはエリアからの脱出と、モンスターのハントを目的とします。
システムで制御されているモンスターハントする部分がPvE、ほかのプレイヤーとのバトルがPvP要素で、両方を意識しなければならない緊張感があります。
4. PvPvEをプレイ・開発する上での注意点と展望
この項目では、PvPvEをプレイする際、開発する際に注意すべき点を解説します。
4-1. 人気もユーザー離れも全てバランス調整次第
あらゆるゲームにおいて、バランス調整はプレイヤーの定着率や満足度を左右するため、評価や利益に直結する要素です。
特にPvPvEでは、プレイヤー同士が対戦するPvP要素と、システムやAIと戦うPvE要素を適切に調整することで、難易度や報酬、チャンスと挑戦のバランスを保つゲーム設計が必要 です。
このバランス調整が適切でないと、長くプレイしている一部のプレイヤーに優位すぎる状況となり、初心者や中堅層が離れてしまいがちです。かといって長くプレイすることにメリットが見いだせないくらい誰でもあっさりとやられてしまうと、プレイヤーのモチベーションも損なわれます。
これらを踏まえて、人気を獲得しながらユーザー離れを防ぐためには、継続的なデータ解析と調整の設計体制が不可欠です。
4-2. 1試合あたりの時間がかかる可能性がある
PvPvEは特定エリアからの脱出と、多人数で共闘するレイド要素を盛り込むものが多いです。そのためプレイヤーは、戦略、探索、戦闘、脱出などの多くの要素を楽しめますが、その分1試合あたりの時間が長くなりがちです。
またPvE要素のAIとの戦闘や資源収集、PvPでの対人戦闘と探索の両立により、ゲームデザイン上も1プレイに要する時間が長引きやすい特徴があります。特に移動や探索が多いPvPvEは「1試合が長い」と感じられやすく、カジュアルなプレイヤーは近寄りがたいタイトルとなるリスクがあります。
このため、開発者は短時間でも満足感が得られる仕組みの実装、もしくは根本のゲームデザインの見直しを検討すべきでしょう。
4-3. 上手な人やこれまでの蓄積がある人に有利すぎると新規が参加しづらい
従来のPvPのゲームでは、実力差が勝敗に直結する傾向が非常に顕著です。また、経験値だけでなく溜め込んだリソース(装備等)も大きな要素であるため、それらが豊富なプレイヤーに対して初心者は太刀打ちしにくく、新規ユーザーを獲得しにくい問題が起こりがちです。
PvPvEでもPvPの要素が強ければ上記の問題が起こるリスクが高いですが、PvEの運要素や探索要素が介在することで、問題が緩和できます。
とはいえ、PvEの要素ばかりが強くなるとPvPvEの魅力が減ってしまうので、新規参入のしやすさに配慮したバランスを考えましょう。
4-4. 将来性があり期待されるタイトルも多いジャンル
PvPvEジャンルはPvPとPvEそれぞれの魅力を融合したもので、多様なプレイ体験や戦略性を提供できる進化系ジャンルとして注目されています。また、現在PvPvEを取り入れた新作タイトルが数多く企画・開発中であり、ジャンル自体が拡大していくことが期待されています。
5. 【2025年8月時点】期待のPvPvEタイトル
ここでは、2025年8月時点で、今後のリリースが予定されている期待のPvPvEタイトルを紹介します。
5-1. The Duskbloods(ダスクブラッド)
『The Duskbloods(ダスクブラッド)』は、フロム・ソフトウェアが2026年に、Nintendo Switch2向けにリリースを予定しているマルチプレイアクションです。
『ダークソウル』や『エルデンリング』などの世界的ヒットタイトルを生み出してきたフロム・ソフトウェアの新作というだけでも期待が高まりますが、最大8人のプレイヤーによるPvPvEという斬新さでも注目を集めています。
フロム・ソフトウェアが得意とするダークな世界観や、スタミナ管理、タイミングの重要性などが盛り込まれている模様ですが、変形する武器や呪術などの新しい要素もあり、リリースが待ち遠しいタイトルです。
5-2. Marathon
『Marathon』は、『Halo』や『Destiny』などのヒット作を連発しているアメリカのBungie が2025年にリリースを予定している脱出シューターゲームです。
プレイヤーはランナーと呼ばれる傭兵になって、3人1組のチームで、敵チームやAIと戦いながら武装を強化し、生存と脱出を目指します。
脱出シューターでは、「ゲーム内で死亡したら終わり」、「待ち時間が長くなりがち」といった傾向が見られますが、このタイトルでは死んでも仲間による復活が可能だったり、プレイヤーの意思でペースの選択ができたりするなどの工夫が盛り込まれているそうです。
6. まとめ
近年話題になっているPvPvEは、既存のジャンルであるPvPとPvEの特徴をあわせることで生み出された新ジャンルです。敵プレイヤーとAIまたはシステムを相手にしなければならないことから高い緊張感があり、ハードなゲーム性が人気を呼んでいます。
1プレイの時間が長くなりがちな点など、ジャンルとしての懸念事項もありますが、その点に配慮した大型新作も近くリリースされるようなので、ジャンルとしての今後の発展に注目です。
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