日本初のゲームローカライズ専門会社、アクティブゲーミングメディアの樋口さんへインタビュー!同社が手掛ける翻訳事業について詳しく聞いてみました!


BOUNDLESS ENTERTAINMENT(国境なきエンターテインメント)を使命として、ローカライズの全工程をワンストップで提供する株式会社アクティブゲーミングメディア。ゲームサイト、『AUTOMATON』、インディーゲームパブリッシングブランド『PLAYISM』の運営でも知られる同社ですが、日本初のローカライズ専門会社として、長きにわたり翻訳サービスを提供している事をご存じでしょうか?
今回は業界30年のベテラン、樋口雅敏さんに、アクティブゲーミングメディアが手掛けるローカライズ事業について詳しくお伺いしました!

ローカライズ歴30年~事業開発室室長 樋口雅敏さん~

・はじめに樋口様の現在のご担当業務について教えて下さい。
ローカライズ部門の本部長、営業部門の本部長を経て、去年の9月から新たに設立された事業開発室の室長として、新しいサービスの創出、新しい技術の調査や研究をパートナーさんと組んで行っています。

〇アクティブゲーミングメディア 事業開発室室長 樋口雅敏さん

 

・事業開発室での新サービス、技術調査とは具体的にどの様な領域が対象になるんですか?
AI翻訳であったり、言語に関わるデバッグなどを調査しており、これらの業務効率化を目指して様々な取り組みを行っています。最近だと外国人テスター集めに苦労することも多いので、リモートデバッグ体制の構築支援も行いました。

 

また、新しいサービスとしては、SNSやライブストリーミングサービスなどの監視業務も始めており、DeNAさんのPocochaでは、24時間、日英対応で監視業務とカスタマーサポート業務を行っています。

 

・監視業務とはどんな業務ですか?
ライブ配信で、応援するためのシステムってあるじゃないですか? 視聴者がアイテムを利用したり、コメントなどの応援を貰う事でライバーさんはダイヤというポイントを獲得することが出来るのですが、なかには、過激なパフォーマンスをしたり、発言をするライバーさんも出てきます。我々が担当しているのは、ガイドラインに抵触するアカウントを見つけて報告等の対応をするといった業務になります。こちらを、24時間365日行なっています。

 

・翻訳関連の事業でいうといかがですか?
ローカライズ言語のゲームへの組み込みサービスですね。
従来のローカライズの工程では、ローカライズが終わったらそのデータをクライアントに納品し、クライアント側でプログラムに組み込んで、外国語版のビルドを作ってもらい、当社がLQA※するという流れになります。この組み込み部分も、当社で請け負う形になります。

 

※LQA=Linguistic Quality Assuranceの略語。言語に関するデバッグ、品質管理の意味

 

ローカライズに関する一連の工程をトータルサポートする事で、クライアントの業務効率化にも繋がります。ただ組み込みに際しクライアントからソースコードの提供が必要になります。パブリッシャーからすると、ソースコードは大事な資産なので、ある程度の関係を構築していないと導入が難しい部分もありますね。

 

・ありがとうございます。次に樋口様のご経歴についてお伺いします。まずはアクティブゲーミングメディアにご入社されるまでの経緯について教えて下さい。
ゲーム業界には30年近くおりまして、ローカライズという単語ができる以前から、ゲーム翻訳業務に携わってきました。

 

中古のゲームショップでのアルバイトから始まり、その後老舗のアーケードゲームメーカーに就職して海外営業を担当していました。

 

・海外営業時はどんな業務内容だったんですか?
当時アーケードゲームの筐体内にある基盤の販売をアジア向けに行っていました。海外版のロケテストも行っていました。
馴染みのお客さんのゲームセンターに開発中の基盤を設置してもらい、ユーザーのプレイ時間や離脱ポイント等のデータを記録。その日の夜に記録したデータを日本の開発側にレポートとしてFAXするという作業を、中国、韓国、台湾などアジア全域のゲームセンターを対象に行っていました。

 

その後、海外のPCゲームの版権を買い付けて、当時販売されていたPlayStationやセガサターンに移植するプロジェクトも進めていました。海外のデベロッパーに常駐させてもらい、ゲーム内のテキストの翻訳からデバッグまでを現地で行いました。毎日、デバッグしてバグレポートを提出して、また新しいビルドをデベロッパーから貰う、の繰り返しです…大体1ヶ月間位続けていましたね。その時の業務が最初にローカライズという仕事に出会うきっかけでした。

 

・その後アクティブゲーミングメディアに入社された理由はどんな理由だったんですか?
その後大手デバッグ会社に転職、そこでも海外事業部でローカライズを主に担当していましたが、アクティブゲーミングメディアとは元々お付き合いがあり、縁あって入社しました。
会社云々というよりかは人が良かったのが入社理由ですね。当時のローカライズ部門のマネージャーや代表のイバイとも仲が良く、どうせ働くなら働きやすい会社で働きたかったので。

国境なきエンターテインメントを届ける-アクティブゲーミングメディアの始まりと現在-

・続いて、アクティブゲーミングメディアの事業概要について教えて下さい。
大きく分けると、BtoBとBtoCの二つの事業に分かれます。

 

BtoBの方は、ローカライズやカスタマーサポート、コミュニティマネージメント、監視業務、PRマーケティング代行などの、コンテンツの海外進出や、海外のお客様の国内進出支援を行っています。

 

一方のBtoC事業では、ゲームメディア『AUTOMATON』、インディーゲームパブリッシングブランド『PLAYISM』の運営です。読者の方からするとこちらの方が聞きなじみがあるかもしれませんね。

 

・グローバル×多角的な事業内容という印象ですが、アクティブゲーミングメディアの理念、コンセプトについても教えて頂けますか?
アクティブゲーミングメディアのモットーは、「BOUNDLESS ENTERTAINMENT」。国境なきエンターテインメントという意味があります。

 

言語、文化、宗教といった様々な障壁を超越し、国内外問わずワンストップで世界にサービスを届ける会社として、ローカライズを始めとした事業を展開しています。

 

・日本初のゲームローカライズ専門会社として設立された経緯について教えて下さい。
アクティブゲーミングメディアは、当社代表のイバイが家庭用ゲームのローカライズをメインに行う会社として、2008年に設立されました。

 

2008年当時はスーパーファミコンやPlayStationのローカライズが主流で、ローカライズというと、日本語からEFIGS※が中心。現在のようにアジア言語を含めた多言語対応は一般的ではありませんでした。当社の代表もそうですが、設立当時は会社の中も、欧州系のスタッフが多くを占めていました。

 

※注:EFIGS=English(英語)French(フランス語)、Italian(イタリア語)、German(ドイツ語)、Spanish(スペイン語)の頭文字を取った用語

 

現在は社内の7割以上が外国人スタッフ、内3割が日本人で構成されており、事業部門のみならず、管理部門でも活躍しています。

 

・ゲームメディア『AUTOMATON』、インディーゲームパブリッシングブランド『PLAYISM』についてもご紹介下さい。
2014年から運営を開始したゲームメディア『AUTOMATON』ですが、他のゲーム系メディアに比べて、非常に中立性のあるメディアです。ライターの知見も深いため、より深掘りされた内容のコンテンツを提供しており、ゲーム業界内でも多く読まれています。SNSへの拡散性が高い事も大きな特徴です。現在は毎月1,000万PVを記録しており、去年8月から英語版の運営も開始しています。

〇ゲームメディア『AUTOMATON』

 

2011年から運営を開始したインディーゲームパブリッシングブランド『PLAYISM』は、国内外の優れた小規模開発のゲームを取り扱っているプラットフォームです。運営開始当時に比べて、現在は少人数で開発したとは思えない様なクオリティのゲームが増えており、現在150タイトル以上の作品を取り扱っています。

〇インディーゲームパブリッシングブランド『PLAYISM』

 

ただどうしても、『AUTOMATON』、『PLAYISM』を知っていても、アクティブゲーミングメディアがローカライズの会社だと知っている人はあまり多くありません。
今回はそのあたりがしっかり伝われば良いなと思っています。

アクティブゲーミングメディアのローカライズについて

・ローカライズ作業の一般的なお仕事の流れについて教えて下さい。
まずは受注までの流れについて触れます。
コロナ禍以前から傾向はあったのですが、最近クライアントの発注動向が変わってきていまして、ある程度クライアントの方でローカライズ会社の比較検討をされた上でご連絡頂くというケースが増えてきたと思います。

 

お問い合わせを頂いた後は、作品の内容、文字数、希望納期、予算感などヒアリングさせて頂き、お見積書を提出、一緒に翻訳のトライアルを行う場合もあります。
逆にDMなどのプッシュ型営業は、実は受注率が低い。コロナ禍で物理的に会えなくなった事も大きく起因していると思うので、新人の営業にとってはタフな環境だと思います。

 

・受注後のフローについても教えて下さい。
受注後は、翻訳者、チェッカーをアサインし、仕様把握後に翻訳作業に入ります。翻訳だけを行うケースもあれば、翻訳後に音声収録を行ったり、組み込み後にLQAを行うケースもあります。翻訳は、あくまでローカライズ工程の一部分で、上記の作業を全部ひっくるめてローカライズだと思っています。最近は、作品のソースコードをお預かりして、我々で組み込みや移植を行うケースも出てきています。

 

・LQAに際し、特定のチェック項目などは設けているんですか?
通常のシステムデバッグの様なテストケース等はありませんが、デバッグモードを駆使して様々な観点からチェックを行います。

 

文字化けしたり、改行位置がおかしくなっていないかといった見た目の部分を、実際にゲームをプレイしながら、意図した表示になっているかを確認していくのですが、そもそもの翻訳が間違っている場合や、セリフの性別が間違っているケースもあります。

 

翻訳を行うテキストファイル上では、そのキャラが男性なのか女性なのかも分からないケースもあり、言語によっては女性が使う場合と男性が使う場合で単語が違ってくる場合もあります。

 

この辺りはテキストだけを見てチェックしても分からず、実際にゲームに組み込んでからチェックしないと分かりません。

〇【動画】1分で分かるLQAサービス

 

・実際お客様からご相談頂く際、どのような悩みを持っている会社が多いですか?
海外展開したいけど、ローカライズや海外マーケティングの知見が無く何をやればいいのかわからない。とりあえず英語版は出したいけど、他の言語はどうすればいいか?というケースが多いですかね。

 

また、既にローカライズしているけども翻訳がめちゃくちゃなので整えてほしいというご依頼もあります。

 

・アクティブゲーミングメディアがお客様に選ばれる理由として、どんな強みがあると思いますか?
ゲームやIPに強い翻訳者が多く、ローカライズの全工程を日本国内で完結できる点、あとは日本語能力の高い翻訳者が多いので、英語を介さずに他の言語に翻訳できるという点が大きな強みですね。

〇【動画】1分で分かるアクティブゲーミングメディアの翻訳サービス

 

・英語を介さず翻訳できるメリットはなんですか?
一番は納期面。一般的な翻訳会社さんでは、ソース言語から英語へ翻訳し、英語から多言語に翻訳をしていきますので、弊社の場合は英訳の工程が無くなる分、納期が半分で済みます。

 

また、仮に日本語から英語に翻訳した時にミスがあると、そのミスが他の言語にも引き継がれてしまう。それを回避するのにも英訳を介さず翻訳できる事は大きなメリットだと思います。

 

また英訳を介して翻訳作業をしていくと、本来の言葉のニュアンスからずれてしまう事がありますが、これは英語のフィルターが他の言語に影響してしまう事に起因します。言語によっては、少しニュアンスが変わるだけで違う意味になってしまいます。英語を介さない直接翻訳は、納期とクオリティの双方でメリットがあると思います。

 

・ありがとうございます。複数のローカライズをする中で、世界観や独特な文化的ニュアンスをローカライズするうえでのこだわりについて、具体例を基にお聞かせください。
すごく分かりやすい例だと、日本語の「先生」と言う単語一つとっても、それが「Teacher」なのか、「Doctor」なのか、「Lawyer」なのか文脈を見て判断する必要があったり、英語の「You」も、「あなた」、「お前」、「貴様」、「テメェ」など、キャラクターの個性に応じた訳出が必要になります。

 

日本でよく使われる「女子力」という言葉も、海外だとそれがスラングとして認識されたりそもそも差別用語に値する場合がある。ジェンダー問題を始めとしたセンシティブな部分や、国ごと時代ごとに変化する言葉のトレンド面は、翻訳者が常にアンテナを立てないと対応出来ません。我々が抱えている翻訳者さんがその辺りはキャッチアップしてくれるので、お客様にとっても安心して任せてもらえる部分なのかなと思います。

 

・アクティブゲーミングメディアならではの強みということですね。扱うゲームジャンルや言語数についてもお伺い出来ますか?
現在取り扱っている言語数は約35言語ですが、希望があれば他の言語も対応しています。世界20カ国以上の常勤スタッフに加え、日本・海外を含め5,000人以上のフリーランス翻訳者が登録されているため、最適な翻訳者をアサインすることが出来ます。

 

ジャンルは多岐に渡りますが、機種で言うと、圧倒的にSwitchとSteam。言語的には、英語、中国語などのアジア言語です。前まではアプリゲームやソシャゲもありましたが、最近は少なくなっている印象ですね。

 

・印象的な案件などあれば教えて下さい
大型のタイトルを手掛けたケースで、合計7言語へのローカライズ案件がありました。
そのタイトルはシナリオの量がとにかく膨大で、しかも書き直しが頻繁に発生して、最初に頂いた70万ワードのテキストも、マスターアップの直前には100万ワードを超えていました。LQAの際も、1言語あたり3人くらいで対応していたので社内も大変なことになっていました。人が多すぎて社内の通路で対応せねばならず、トイレに行くにも一苦労。今だと考えられないですけどね(笑)最終的に翻訳からLQA含めて1年位かかったと思います。

 

他にも皆さんが知っている様なゲームを手掛けているので、是非実績ページも参考にしていただければ幸いです。

 

実績情報ページはコチラ→https://activegamingmedia.com/portfolio/service

アクティブゲーミングメディアで働く人々、そしてこれから

・続いて社内の事についてお伺いします。貴社に入社される方はどのような理由で入社されるんですか?
海外の方の場合は、日本のゲームや漫画、アニメがきっかけで日本語を勉強して、日本のゲーム業界で働きたいという理由で入社する人が一番多いと思います。

 

また東京にもローカライズの会社が多い中、大阪の弊社が選ばれているのには立地的な要因もあると思いますね。東京に比べて満員電車は少ないし、衣食住も整っていて物価も安く、外国人のコミュニティも多い。欧米の大学からインターンで入社して、そのまま社員になる子も多いです。

 

・貴社で活躍される人材にはどのような特徴がありますか?
コミュニケーション能力の高い人ですかね。とかくメールやチャットに頼りがちですが、それを送った後にちゃんとフォローができる人。これは、営業だけでなく、ローカライズの現場にも言えることだと思います。
とはいえ何よりも重要なのは責任感。翻訳や言語デバッグと言った業務において、品質に責任をもって仕事ができる人は、やはり社内でも活躍している印象です。

 

・樋口様の事、会社の事、働く人たちなどお聞かせ頂きありがとうございました。
最後に、ご自身のこれからのキャリアご展望、またローカライズの仕事に興味があると考えるユーザーへ一言頂けますでしょうか。
まず業界展望からお話すると、昨今AI翻訳や、QAの自動化が登場し、人間じゃなければ出来ない仕事と言うのは、今後どんどん減って行くのだろうなと思っています。

 

その上で個人としては、そこを悲観的に考えるのではなく、人間にしかない「こだわり」を持って、AI翻訳のような新しいテクノロジーと上手く共存していけるような業務に携わっていきたいですね。

 

AI翻訳も、まだまだクリエイティビティの高い翻訳は難しい領域なので、会社としてもそういう共存体制を作って、ローカライズ事業に貢献していきたいと思います。

 

また、ローカライズに興味のあるユーザーさんへのアドバイスですが、外国語に慣れる意味でも、とにかく国内外問わず多くのコンテンツに触れておいた方が良いと思っています。ゲームでも、漫画でも、アニメでも、新聞でも、映画でも。触れてみて損になるものは絶対にないと思っているし、観たもの聞いたものと言うのは必ず自分の肥やしになると思います。

 

私がバイトで働いていた中古のゲームショップには常に300本以上の中古ソフトがありましたが、毎晩借りて帰って、全部プレイしましたからね(笑)コンテンツの本質や審美眼はそこで養われた感覚があるので、ローカライズに限らずエンタメ業界を目指す方は、好き嫌いせず何でも吸収していく事で、自分の得意分野も見つける事が出来ると思います。

 

・ありがとうございました!

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