極小ミニサイズを扱う企画がゲームでも映画でも評価されやすい理由
ゲーム作りのはじめの一歩に欠かせないのがテーマ設定ですが、ゲームであれ映画であれ、古典的に使い回されてきたテーマというものはいくつもあるものです。
目次
小さな世界を駆けるスパイアドベンチャー『Spyder』
例えば人気スマホゲームの『Spyder』は小さなクモ型ロボットを操るスパイアクションですが、ミニサイズで力強く動き回るその勇姿は、多くのプレイヤーの心を掴んでいます。
App Store :https://apps.apple.com/jp/app/spyder/id1443839718
プレイヤーはクモ型ロボットを操作
今作ではタイトル名にもあるように、全編がクモのような小型ロボットを操縦しながら進行するシステムが採用されています。
諜報機関の一員として、クモ型ロボを用いながらあらゆる場所に侵入し、コンピューターのハッキングや極秘情報の奪取に努めます。
クモらしい特徴は外見以外もそのままで、足に備えた吸盤を利用し、あらゆる場所に吸着しながら移動できます。
そのため、人間では不可能とも思われる手法であらゆるミッションをこなしていく爽快感があります。
見慣れた景色を、いつもとは違う視点でまじまじと眺められるのも、このゲームの醍醐味の一つと言えるでしょう。
レトロでどこか馴染み深いストーリーとグラフィック
Spyderの魅力をさらに高めてくれているのが、どこか懐かしく、親しみのあるストーリーやグラフィックの数々です。
クモ型ロボットを扱うプレイヤーが属する諜報機関は、イギリスの組織という設定となっています。
これは間違いなく「007」シリーズのような、ジェームズ・ボンドやMI6が登場する世界観を意識してのものでしょう*1。
加えて、クモ型ロボットが活躍する世界も、今日の現代的な世界観ではなく、どちらかというと80年代のクラシックな雰囲気が強調されたものとなっています。
妙にサイズの大きいデスクトップPCや、仰々しい巨大な装置、そこら中に灰皿が転がる煙たい空気感などもたまりません。
往年のスパイ映画や刑事ドラマに出てくるような世界で、Spyderは手のひらサイズの戦いを繰り広げていきます。
小さい頃に見たことのある映画の世界にクモのスケールで忍び込める楽しみは、このゲームを盛り上げてくれる大きな要素になっていると言えるでしょう。
映画でも人気のミニチュアサイズもの
映画の世界を覗いてみると、ミニサイズの主人公が活躍する物語は、古今を問わず発表されてきたことがわかります。
ミニサイズ系の名作『ミクロの決死圏』
ミニサイズでのドラマと戦いを描いた作品といえば、代表的なのが『ミクロの決死圏』
でしょう。
1966年に公開されたこの映画は、SFとサイエンス、そしてスパイアクションとサスペンスを融合させた映画として、広く評価された作品です。
冷戦期のサスペンスと戦いを描くスパイものかと思えば、ストーリーの大半が人体の中で描かれています。
そしてファンタジックな体内描写と、写実的な医療描写のコントラストが面白く、幅広い人に勧められる映画に仕上がっています。
人間がミクロになる、というのは現代で見ると非現時的な表現ですが、冷戦期のアメリカにおける科学の進歩は目覚ましいものでした。
そのため、もしかしたら本当に実現しているかもしれないと思わせるほどの時代だったということも想起させます。
Spyderでもミニサイズの世界を自由に歩き回れますが、ここで人間が採用されなかったのは、クモ型ロボット特有の機能性を確保するためだけではありません。
人間がミニサイズの世界で活躍する、というのが、現代では受け入れられにくいという判断もあったからでしょう。
『アントマン』のようなポピュラー作品の題材にも
しかし、特例としてミニサイズの人間が活躍する作品が、現代でも幅広く受け入れられているケースも存在します。
例えば、超人ありきの世界が当たり前となっているマーベル作品などは、その最たる例と言えます。
中でも『アントマン』は今日で最も有名な小人のヒーローとも言えます。
サイズが大きくなったり小さくなったりを繰り返し、派手なアクションを繰り広げ、時には死闘を繰り広げるのです。
ミニサイズの世界と原寸大のサイズを行き来しながら活躍するというのはなかなか斬新で、高度な映像技術がなければ実現は難しいものです。
『アントマン』ではそういったシーンの連続で、ふんだんな予算と、それが自然に行われてもおかしくない世界観を持つマーベルだからこそ実現しているとも言えるでしょう。
なぜミニサイズの企画は喜ばれるのか?
このようなミニサイズの主人公が活躍する物語が、今も昔も変わりない人気を誇るのには、どのような理由があるのでしょうか。
クリエイターは身の回りの事象を題材にしやすい
ミニサイズの世界観を描写するのは、全く現実とは乖離したファンタジーを一から築き上げるよりも、着想を得やすいと言うことができます。
ファンタジー世界を構築する上で、何かアイデアがすでにあるのなら簡単です。
しかし漠然とファンタジーを描こうとすると、世界観の作り込みに隙が生じてしまい、プレイヤーがイマイチのめり込めない事態が発生してしまいます。
そこでミニチュア世界を舞台とすることで、身近な家や学校、オフィスを題材とするのです。
そして主人公を小型化してしまえば、通常のサイズとのギャップに非現実感を得ることができ、プレイヤーに驚きを与えられるのです。
ミニチュア化というアイデアは、実に多くの作品に採用されてきました。
しかしSpyderのように、まだまだアイデア次第でこの世界観を膨らませていくことは十分に可能です。
プレイヤーは親近感を覚えやすい
ミニチュア世界は、完全なファンタジーの世界に比べ、プレイヤーが容易にその空間に溶け込みやすいと言うメリットもあります。
「ロード・オブ・ザ・リング」のように、全くのファンタジーの世界は、その世界観に馴染むため、膨大な情報をプレイヤーに提供する必要があります。
一方、ただプレイヤーを小型化したミニチュア世界であれば、説明がなくとも、ここがどう言う場所なのかということを暗に伝えることができるのです。
その分のコストを、ゲームの密度向上に当てることが可能になります。
ゲームを楽しんでもらうためには、プレイヤーにゲームの世界観に馴染んでもらう必要があります。
ミニチュア設定は、その上でも簡潔性に優れた設定ということができるでしょう。
おわりに
ミニサイズの世界で描かれるスリルは、リアルなようで非現実な、独特の世界観によって構築されています。
その上非常に使い勝手の良い設定でもあるため、ゲームのアイデアに困った時は、とりあえずミニチュアにしてみるという発想も、悪い手ではないでしょう。
併せて読みたい記事
→スター・ウォーズ/銀河の英雄に学ぶ、映画世界観を大切にしたゲーム作り
参考:
*1 ゲームキャスト「ボットを操作して極秘任務をこなすスパイアドベンチャー『Spyder』がApple Arcadeに登場。開発は『アウトラン 2』など移植のSumo Digital」
http://www.gamecast-blog.com/archives/65959893.html
ライター名:Satoru Yoshimura
プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。
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