”エゴに従え。狂気を統べろ。”異界とつながる学園RPG『モナーク/Monark』制作会社のフリューに、作品への想いと今後の展望について聞いてみました!
フリュー株式会社は、『人々のこころを豊かで幸せにする良質なエンタテインメントを創出する!』という企業理念のもとで様々なエンタテインメントに関わる事業を展開、今年4月に設立15周年をむかえました。
商品・サービスは2つの領域を強みとしており、「ガールズトレンドビジネス」ではプリントシール機および専門店、アプリ等WEBコンテンツ、カラーコンタクトを。「世界観ビジネス」では、アミューズメント景品、フィギュアおよびEC、家庭用ゲームソフト、スマートフォンゲーム、アニメを提供しています。
今回は2021年10月に発売された学園系RPG『モナーク/Monark』のプロデューサー兼ディレクターである林様に、本作の開発秘話や作品に掛ける思い、今後のフリューとしての取り組みについてお伺いしました!
目次
『モナーク/Monark』プロデューサー兼ディレクター 林風肖(31)
・林様のご担当業務について教えて下さい
林
現在はコンシューマゲーム部のプロデューサーとディレクターを担当しています。オリジナルゲームの企画立案とディレクション(監督業)、発売に合わせたプロモーション活動まで、ゲームが誕生してから広がり、皆さんに遊んでいただけるまでの全工程が業務範囲になります。
直近2月には『CRYSTAR -クライスタ-』のNintendo Switch™版、また『モナーク/Monark』のSteam版と北米欧州版のリリースを行いました。今現在は新規タイトルの準備をしているかも…といった感じです。
・フリューに入社したきっかけについても教えて下さい
林
理由は2つあって、1つは、当時企画立案者としての経験を積みたいと考えているなかでフリューではその経験が早くに積めると考えたからでした。
自分は学生時代にインディーゲームを作っていたのですが、企画者としてゼロからゲームを制作して発表できたときに「自分がいたからこそ、このゲームが生まれたんだ!」という達成感を強烈に感じることができて好きでした。仕事でも、企画立案してゼロからゲームを作ることの出来る会社を探していました。
当時のフリューは設立間もない時期で、新人でも上流に携われるチャンスがある状態。どうしても大手は著名なクリエイターが上にいる事で、中々若手にチャンスが回ってこない事もあると思いますが、フリューであれば自分の能力次第で早期に自分のやりたいゲーム作りが出来るかもしれないと思った事が理由です。
2つ目は、『人々のこころを豊かで幸せにする良質なエンタテインメントを創出する!』という理念に惹かれた事です。
インディーゲームを作り始めたのも、自分自身これまでゲームに救われた経験が過去にあり、そういうゲームを作りたいと感じた事がきっかけでした。
その時、会社として“良質なエンタテインメント“を作りたいという理念を掲げている会社であれば、周囲との相乗効果で自分のモチベーションを維持できて、高いパフォーマンスを発揮できると思った事がもう一つの入社理由です。
・林さんにとって、“良質なエンタテインメント”は何だと思いますか?
林
基本、良質じゃないエンタテインメントは世の中にないんじゃないかと最近思っています。
そのうえで僕自身が「作りたいと思っている良質なエンタテインメント」は、後程紹介する『モナーク/Monark』にも反映されている部分でもありますが、遊んだ後に「生きたい」と思えるコンテンツですかね。
・気になるキーワードが出てきたので、後程詳しく聞かせて頂きます。ちなみに、作品全体に関わる立場として、職務上はどんな点を意識されていますか?
林
ディレクター、プロデューサー両方の立場として一番意識しているのは、作品コンセプトの部分ですね。コンセプトとは、本質的にこんなゲームである。こういう面白さがある。という事を一言で言えるものを意味しています。
『モナーク/Monark』であれば、「理不尽に打ち勝つ達成感」というコンセプトがあり、それがストーリーやシステムにも反映されています。ディレクターとしては、そのコンセプトが要所で伝わっているかどうかをチェックしていました。
またプロデュース面では、そのコンセプトが刺さるターゲット層にいかにゲームを届けるか、という点です。
『モナーク/Monark』は、ダークな世界観で様々な個性と背景を持ったキャラクター達が、理不尽に抗い打ち勝つ姿を描いています。その姿を見て勇気を貰いたいと思っている人がターゲットとしても想定されています。
また、本作は『真・女神転生if…』にインスパイアされた作品として、実際にシナリオを担当された伊藤龍太郎さんにも参加して貰っています。その世界観が好きな方々にも刺さる作品になっているかと思います。
「エゴに従え。狂気を統べろ。」学園RPG『モナーク/Monark』開発秘話
〇異界とつながる新御門学園を舞台に、己のエゴと狂気を糧とする悪魔のちから「権能」を駆使して戦う学園RPG『モナーク』
精神を狂わせる謎の霧。異界に繋がる着信。学園を孤立させる不思議な力場。
様々なユガミがもたらす異常事態を解決すべく、主人公と4人のバディは、その運命に抗う。
・改めて、『モナーク』はどんなゲームですか?
林
「エゴに従え。狂気を統べろ。」というキャッチコピーが体を成している作品だと言えます。
七つの大罪をテーマとした傲慢、憤怒、嫉妬、色欲、強欲、暴食、怠惰などを軸であらわすパラメータ「EGO」が主人公の力の要素となり、作中に登場する“狂気”の力を糧としながら、様々な理不尽に打ち勝つ事で進めていく学園系RPGになります。
主人公は、学園に発生した異常事態を解決するために「真生徒会」の副長として4人のバディと共に戦っていきますが、バディの中で誰と組むかによって物語は変化していきます。
・本作開発のきっかけ、経緯についても教えて下さい
林
今回開発を担当してくれたランカースさんと、一緒にオリジナルRPGを作りたいねとお話をしはじめたことがきっかけです。その際に代表の星野さんと話が盛り上がり、先ほど紹介した『真・女神転生if…』のようなダークな雰囲気のゲームって、最近ないよね?と言う話になり、別途元々考えていた学園系RPGの企画を調整して制作がスタートしました。
ダーク系に限らずですが、コンテンツはシリーズが続けば続くほど尖りが落ちていく傾向があると思っています。それは一般化して、より多くのひとに楽しんでもらうためには重要なことです。
ただ、尖りが落ちた結果、当初の尖った世界観だからこそ救われていた人達は報われないこともあります。今作は、新規IPということもありますし、尖ることを恐れず大切にして作品を作りたいと思って生み出された作品です。
・テキストや設定部分もかなりこだわって作られていますね
林
シナリオ制作のコアメンバーは、自分とシナリオライターの伊藤龍太郎さん、鈴木一成さんです。シナリオに関する会議には、他にもフリューのメンバーやランカースのスタッフさんも参加して皆で内容についての議論を交わしました。
今作は、別途シナリオ制作会社さんに発注して、上がってきたものをディレクターや担当者が上辺だけチェックして……という、業界的にまま聞く流れでの制作はしていません。ゲーム中に表示されるテキストのすべてを私と伊藤さんのほぼふたりだけで、完全に書きました。苦しくもありましたが、全身全霊で挑めたのでとても楽しかったです(笑)
・主要キャラクターには七つの大罪に沿った権能の種類があります。七つの大罪からキャラクターに落とし込んだのか、その逆かでいうとどちらですか?
林
両側面があります。バディを男2、女2にするという配分は決まっていましたが、それ以外はしっかり決めていませんでした。
例えば、怠惰の権能を持つ駿河台こころの場合は、怠惰な女の子という設定の方が萌えるし面白そうという所から始まり、それであれば知的な部分とルーズな服装を組み合わせたほうがキャラクターとして個性が際立つ。
また、こころは苗字が決まっていなかったのですが、「台」の下に心という文字を入れる事で「怠」になる。じゃあ、苗字は駿河台にして…という流れで双方向から決めていきました。
〇「駿河台こころ」
・開発しながら、ご自身が苦労された部分についても教えて下さい
林
納期と物量かもです。今回はディレクター、プロデューサー、シナリオと全て担当していたのですが、自ら設定した納期を、自らで守らなくちゃいけなくて。納期ギリギリになってしまうときには、罪悪感でしんどかったです(笑)
まじめな話で言いますと、本作はSRPGパートとお化け屋敷的な探索パートがあり、また、全般に絡んでくる診断要素もあります。こうした構成の類似したゲームがなく、開発チーム内での「他社作品だとこれっぽい感じ!」という共通言語となる比喩やベンチマークがなくてディレクションに苦労しました。
・生徒たち100人にも細かな設定があるなど、ものすごい物量ですね
林
伊藤龍太郎さんが頑張ってくれました。
せっかく学園を舞台にしているのだから、その場が生きた世界観にしたいし、キャラの設定やシチュエーションもこだわりたい。サブキャラのストーリーが変わるのも良くない?とシナリオ関係者で盛り上がるなか、伊藤さんがかなり頑張って下さいました。
ゲーム作りは、1つの世界を作る事だと思っていて。ユーザーが能動的に動く事で、見える世界がどんどん広がる双方向的なモノだと考えています。その世界に出来るだけリアリティーをもたらす為に、出来る範疇は全てやりましょうという中で生まれた部分でした。
緊張感の高い探索パート、盤面を支配するSRPG要素
・探索パートのドキドキ感も本作の魅力ですね
林
そうですね、ただ探索パートはSRPGとのバランス調整が難しかったです。
探索パートには、霧に覆われた不気味な空間で、狂気に囚われた不気味なNPCがたくさんでてくるお化け屋敷的要素があります。開発当初には「バイオハザードのようなアクション」「メタルギアのようなステルスゲーム」的要素をいれたらどうか?というアイデアが議論のなかで出ることもありました。ただ、探索パートが「探索パート単体で遊ぶカロリーの高いもの」になってしまうと、SRPGパートと完全に分離してしまいますし、とてもプレイの疲れるゲームになってしまう問題が生まれます。
ですので、探索パートをプレイしたときのカロリー感をどうするか。ユーザーに与える体験のバランスをどうするかという点はチームで試行錯誤しながら進めました。探索とSRPGの両要素のある作品も中々無いので、参考元が見つからず開発序盤は苦労しましたね。
・SRPGパートで採用された戦闘システムについても教えて下さい
林
戦闘はフリームーブのターン制コマンドバトルになっています。背後からの攻撃でボーナスが入ったり周辺の味方との連携攻撃がある等、味方と敵の位置を意識した状況判断等、盤面をいかに支配するかが勝利の鍵を握ります。
『モナーク』という英単語にあるような君主感を戦闘でも表現したいと思い、盤面を支配する感覚を楽しめるよう開発を進めていきました。以前弊社がランカースさんと一緒に作ったゲームで、イメージ通りのシステムがあったので、それを参考にしつつ開発を行っており、行動済みの味方を再行動させる“リオーダー”、仲間や敵と状態を共有する“共感” というシステムを実装する事になりました。
また、権能の力を使用し続ける事でキャラクターが発狂状態となり、敵味方関係なく襲う代わりに強力な力を得る事が出来るシステムも搭載しています。
・ハイリスクハイリターンである狂気というシステムはかなり印象的でしたが、どのような思いで実装に至ったんですか?
林
理不尽や辛い状況を打破する力は、結局狂気の力しかないと思っています。僕にとって狂気という概念は、モノを歪める……現状をどういう形であれ変える力だと考えています。共感いただけない方もいらっしゃるかもしれませんが。
その感覚をゲームに入れたいと思った時に、権能が狂気の力になり、MAD値というパラメータが上がったら発狂する、それを覚醒という意志のちからでコントロールできれば相乗効果でより強くなる……といった要素が生まれました。アイデアを実際にゲームに落とし込むことは大変で、ランカースさんとたくさん協議して現在のシステムを作っていただきました。
・“長く遊んで貰う“という観点で、工夫した部分は他にもありますか?
林
今作の一番のウリはキャラクターの個性や世界観だと思っています。
そのため、買ってくださった方が長いスパンで楽しめる様、季節に合わせたキャラクターの会話イベントが都度解放される要素が入っています。
例えば1月なら新年、2月ならバレンタイン、3月なら花粉ふざけんなよ、みたいな(笑)季節に応じて各キャラクターがどんな反応をするかという部分が垣間見えてきます。
我が儘でも良い。エゴばっかりでも良い。
・『モナーク/Monark』を通して、ユーザーさんに抱いて欲しい感情みたいなものはありますか?
林
一番は、エゴで良いじゃん。という事ですかね(笑)
この世界に絶対的な善悪は無いし、本質的には全部虚無的で、意味のあることなんてなにもないと思っています。だからこそ、実感できる唯一たしかなものである、あなたのエゴを一番大切に扱って欲しい。そして、願うならそのエゴが綺麗なものなら嬉しいなーと思っています。
・哲学者ニーチェの思想に共感されたと他のインタビューでも答えられていますが、どんな部分でしたか?
林
能動的ニヒリズムという概念があります。世の中虚無的で、絶対的な物差しは存在しない。じゃあどうするかというと、自分の哲学と自分の価値観で、自分の正義を行うべき。そして、そういう人間が超人である、的な。そんな考えが格好良くて好きだし、彼の思想に触れるまえから考えていたことに似通っていたので共感しています。
昔からよく悩む子供だったんですけども、その時に読んだ小説のセリフに、「エゴで何が悪い。エゴがなければ人間じゃない。エゴがなければ機械かモノだ。」みたいなセリフがありました。絶対的な正しさとか真理的なものに縋ろうとして苦しんでいた当時の自分にとっては、その吹っ切れたスタンスが小気味よくて、とても救われたんです。この作品はニーチェの著書ではなかったのですが、その後にニーチェの考えを知って、より知名度のある著者と概念だったのでよく参照してお話しています。
・冒頭で仰っていた、“「生きたい」と思えるゲーム作り”には、その様な背景もあったんですね
林
そうですね。自分が過去に衝撃を受けたり、自分を変えてくれた体験をゲームに入れた結果、『モナーク/Monark』のコンセプトでもある、“エゴに従え“を体現したゲームになったと思います。
〇本作主題歌でもある、KAMITSUBAKI STUDIO 花譜による楽曲『ニヒル』
フリューで働く人たち、そして今後
・改めて、フリューの事について教えて欲しいのですが、フリューにはどんな人が多い印象ですか?
林
人間力の高い人が多いですね。コミュニケーション能力は言うまでもなく、基本的に性善説に則っている人が大半なので、倫理観がしっかりしているし、喋った時に嫌悪感を抱く人がいないので働きやすいです。
また、ゲーム事業でいうと、自分の色を出しやすい社風なので、タイトルを立ち上げたいという志向の人がアグレッシブに働いている環境だと思います。
・社風的にも積極的な提案が通りやすい環境ですか?
林
はい。風通しの良い職場だと思います。
自分が新卒入社して3ヶ月位経ったときに軽い気持ちで、誰に言われるでもなく勝手に企画書を書いて上司に提案をしたことがありました。そうしたら上司がその企画書に前向きになってくれて、とても具体的に話が進んだんです。入社3ヶ月なんて、まだ素人みたいなもんじゃないですか(笑)でも、そんな人間の企画書にも偏見なく耳を傾けてくれて、建前ではなく本当に社員の意見や提案を受けとめてくれる職場なんだと、当時感動しましたね。少数でフラットなフリューの規模感だからこその良さなんじゃないかなと思います。
・ご自身として今後フリューでどう働いていきたいか教えて下さい
林
今も昔も変わらず、自分の企画立案した作品で、より多くのひとに良質な体験をして欲しいという気持ちがあります。だから今後も、実直に続けていきたいです。
最終的にはチームかレーベルを擁立して「フリューといえばあのチーム or あのレーベル」と言われるブランドを生み出せる存在になりたいと思っています。
・本記事を見て、『モナーク/Monark』に興味を持った方や、モナークファンの方々に一言お願いします!
林
皆様の声援のおかげで、『モナーク/Monark』の北米/欧州版やSteam版といった横展開が出来ており、作品が良い形で発展していっています。期待してくれている皆さんに、SNS等を通じて新しい展開や新しい情報を届けられるよう、引き続き頑張っていきますのでどうか応援してくださると嬉しいです。
また、今回はじめて『モナーク/Monark』に興味を持ってくださった方々に向けては、本作はコンセプトが一貫しているので、ビジュアルやキャッチコピーに惹かれた人の期待を裏切る作品ではありません。なので、是非遊んで楽しんでいただけると嬉しいです。
・ちなみに、『モナーク/Monark』の新シリーズみたいなお話も…?
林
僕の体が持てば(笑)
・期待しております!(笑)ありがとうございました!
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