牧場ゲーム『Stardew Valley』に学ぶ、嫌にならない仕事との付き合い方
eスポーツのように、ゲームの中で激しい競争に晒される世界が脚光をあびる一方、日々の仕事に追われ、ゲームに緩やかな癒しを求める人も多いものです。
ファーミングシミュレーションゲームの『Stardew Valley(スターデューバレー)』はそんな忙しい毎日を忘れさせてくれるようなゲームとして人気を博していますが、ゲームの内容を見てみると、穏やかならぬ要素が盛り込まれている点は無視できません。
目次
大ヒットを生んだ『Stardew Valley』
『Stardew Valley』は、国内外で大人気を博した国産ゲームに強くインスパイアを受けた作品です。
「牧場物語」シリーズにインスパイアを受けた作品
その日本産人気ゲームというのは、「牧場物語」シリーズです。
牧場物語は、その名の通りプレイヤーが牧場主となり、家畜や農作物を育てていくシミュレーションゲームの仲間です。
都会の喧騒から離れ、こころ穏やかに田舎生活を楽しむことができるこのシリーズは、すでに20年以上続く大ヒット作品となっています。
ゲームシステムもさることながら、ファンシーなキャラクターたちは多くの人を虜にしました。
その人気は日本国内のみならず、海外でも根強いファンを捉える作品です。
そんな牧場物語のエッセンスが、海外のクリエイターによって吸収、再構築された作品が、この『Stardew Valley』というわけです。
現代的なテーマも多く盛り込まれる
『Stardew Valley』もまた牧場物語シリーズと同様、人里離れた自然の中で、立派な農地を開拓していくことが主な目的となるゲームに仕上がっています。
コツコツと農作物を育て、家畜に餌をやるだけでなく、時には洞窟を探検するなど、アグレッシブな側面が盛り込まれているのは海外ゲームらしい仕上がりと言えます*1。
そして、所々で妙に現実的なシーンを見かけるのもこのゲームの特徴です。
物語は、主人公がブラック企業の仕事を通じて心身ともにすり減ってしまったところ、祖父から古い農場の再生を頼まれるところから始まります。
都市での生活に疲れたサラリーマンが、田舎で農業を始めるというのはよく耳にする話ですが、このゲームもまた、現代社会に疲れてしまった人たちに向けられて作られていることがわかります。
また、ゲーム内では恋愛や結婚を行うことも可能です。
恋人関係や夫婦になるためには、そのキャラクターの好みや要望に応える必要があるのですが、それを乗り越えれば子供をもうけて円満な家庭を築くことができます。
また、恋人は異性だけでなく、同性を選ぶこともできます。
もちろん結婚も同性で行うこともできるため、多様性に対してかなり敏感なシステムになっているのは国産ゲームではあまり見られないシステムです。
そもそもこのような牧歌的なゲームに恋愛要素を持ってくるというアイデアも、これまでに無かった点と言えるでしょう。
『Stardew Valley』がはらむ「忙しさ」
プレイしてみるとわかるのですが、このゲームはその自由度ゆえに、とにかくボリュームのある作品となっています。
とにかくやることが盛りだくさん
毎日の農作物や家畜の管理はもちろんのこと、魚釣りや坑道探検、古びてしまった村の施設の再生、村人のリクエストに応えるなど、とにかく多くのタスクがゲーム内に存在します。
極め付けには恋人作りと、もはや現実世界と変わらない忙しさを、『Stardew Valley』の中でも再現しようと思えばできてしまうのがこのゲームの特徴です。
単調な作業の連続
そして、特別なイベントはさておき、このゲームの基本は単純作業の連続です。
毎日の農地の管理は特に代わり映えすることもなく、せいぜい動物が成長したり、農作物が実をつけるといった程度の変化です。
農業は現実世界でもこういった作業の連続となるわけですが、『Stardew Valley』は農業シミュレーションとして、このような単調さも再現してくれています。
実際の農業においても、新たに農業を始めた人はこの作業に苦痛を感じ、農家になるのを諦めてしまうという人もいます。
『Stardew Valley』の仕事はなぜ辛くならないのか
牧場を育てて洞窟を探検し、結婚までできる。
まるで現実世界と変わらない忙しさと、作業の単調さをはらんだゲームですが、そんな作品をいつまでもプレイできるどころか、癒しさえ感じてしまうのはなぜなのでしょうか。
ガーデニングのような癒しの提供
『Stardew Valley』の作業がプレイヤーにとって苦痛とならないのは、一つに作業そのものに癒しを感じられるほどの余裕があるという点が大きいでしょう。
『Stardew Valley』はあくまでもゲームの世界なので、そこで起こったトラブルや損失が、実際の世界に影響を与えることはありません。
たとえ農作物が枯れたり、家畜が病気になったとしても、そのケアのために必要以上にストレスを抱えたり、経済的な損失に悩む必要がありません。
現実世界でもガーデニングやペットの育成に憧れる人は多いですが、購入を踏みとどまってしまうのは、彼らを死ぬまできちんと世話しなければならないという負担がのしかかってしまうためです。
それもまた一つの楽しみといえばそれまでですが、『Stardew Valley』の場合はスマホでどこでも育成ができるだけでなく、原因不明の病気などに悩まされてしまうこともありません。
気軽に癒しのルーティンを楽しめるのが、牧場シミュレーションの作業の醍醐味と言えるでしょう。
無理にクリアする必要のない「タスク」
そして、『Stardew Valley』には多くのタスクが山積している一方で、それらを全てこなす必要はないというのも特徴です。
この世界で存在するミッションは、あくまでもそこに用意されているだけで、プレイヤーにクリアを強制することはありません。
農業に集中したいという人はそれだけをこなしていれば良いし、ひたすら坑道を探検するのでも構いません。自分がやりたいことだけひたすらに突き詰められるのが、このゲームの魅力と言えるでしょう。
現実世界でできることは、ほぼ全て『Stardew Valley』でも体験することは可能です。
ですが、それができるからといって誰かに強制されることはありません。
気が向いた時に新しい仕事へトライすることができるシステムが、「作業」や「仕事」を苦痛に感じない仕掛けとして機能しているのではないでしょうか。
おわりに
『Stardew Valley』は、現実世界の仕事に疲れた現代人のために用意されたゲームと言っても過言ではないでしょう。
そして、このゲームはただ現実逃避のために作られたのではなく、現実世界をうまく生きるための処世術を伝えてくれる側面を持つことも、注目しておいて損はありません。
下記記事ではどうぶつの森ポケットキャンプを例に、スローライフなゲームを解説しています
→どうぶつの森 ポケットキャンプで見る現代人の生活様式にハマるアプリに必要な事
*1 参考)電ファミニコゲーマー「多忙な人にこそスローライフで息抜きを。海外版『牧場物語』といえる大ヒット農場運営ゲームのモバイル版【レビュー:Stardew Valley】」
https://news.denfaminicogamer.jp/iphoneac/181101
ライター名:Satoru Yoshimura
プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。
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