古典アクションゲーム・スパルタンⅩに学ぶゲームの作り方


ファミコン初期の名作アクションゲーム・スパルタンⅩをご存知でしょうか?

元々はジャッキー・チェンによる同名映画を題材としたアーケードゲームでしたが、1985年に任天堂がファミコンソフトとしてリリースしました。

任天堂の目論見どおり、ファミコン版のスパルタンⅩは少年ゲーマーの心をつかむことに成功し、横スクロール型アクションの名作としてゲーム史に残る存在となったのです。

 

大昔のファミコンゲームが、なぜ時を越えてゲーマーたちに語り継がれているのか?

そこにはバラエティーに富んだ敵キャラの存在がありました。

いまからスパルタンⅩを紹介するとともに、敵キャラを通じてゲームを魅力的にするコツを探っていきたいと思います。

 

◆敵キャラの個性付け1「武器のバリエーション」

スパルタンⅩは横スクロール型のアクションゲーム。

主人公のトーマスが、誘拐された恋人・シルビアを助けるために立ち上がるというストーリーです。

 

シルビアを連れ去った悪の親玉こそが、このゲームのラスボス・ミスターⅩ。

トーマスは恋人を取り戻すため、難敵の待ち構える全5階のダンジョンに挑みます。

各フロアのラストにはステージボスが控えており、5階のミスターⅩを倒せばゲームクリアとなります。

 

スパルタンⅩが初期ファミコンにおける名作の地位を得たのは、ミスターⅩをふくむ5人のボスキャラが、非常に個性的かつ魅力的だったからです。

いまから彼らをひとりずつ紹介することで、ボスキャラに込められた作り手の意図を探っていきましょう。

 

 

【1階・棒術使い】

1階のラストにいる最初のステージボスは、棒術使いです。

なんとも単純というか、そのまんまなネーミングに思えてしまいますが、初期ファミコンはライトユーザーがほとんどであるため、分かりやすさが重視されたのでしょう。

2階~4階のボスも、それぞれの得意とする武術を元にネーミングされています。

 

本題にもどり……1階の棒術使いがどんな攻撃をしてくるのかというと、きわめて単純な攻撃しか繰り出してきません。

上から棒をたたきつけてくるだけです。

スタンドの状態からの攻撃と、しゃがんだ姿勢での攻撃がありますが、どちらもやってくることは同じです。

 

ステージボスとしてはなんとも単純な攻撃パターンに思えますが、ザコキャラとは色の違うグリーンの武道着を身にまとうなど、初期ファミコンなりに精一杯の演出がされているのは見逃せないポイントでしょう。

 

【2階・ブーメラン使い】

続く2階のボスはブーメラン使いです。

こちらも武器を用いるラスボスですが、棒術使いとは大きな違いがあります。

それはブーメランという飛び道具を用いてくる点です。

それも2つのブーメランを時間差で投げてくるのですから、棒術使いとは大きな違いです。

 

もっとも、ブーメランの速度自体はゆっくりしているので、かわしながら距離を詰め、接近戦で倒すことは簡単です。

初期ファミコンのターゲットがライトユーザーであることから、難易度を考慮した設定がされたのだと考えられます。

序盤のボスが強すぎては、そこで挫折するプレイヤーが出てしまいますし、ゲームのバランスも崩れますからね。

 

【武器による個性付け】

棒術使いもブーメラン使いも、特殊な武器を用いる点は共通しています。

ザコキャラにはない武器を持たせることで、ボスキャラの格上げと差別化を図っていることがよく分かります。

 

さらに見逃せないのは、この2人のステージボスがそれぞれ正反対の武器を持っている点です。

かたや接近戦の武器、かたや飛び道具であり、ともに武器を用いる彼らもまた、違う個性を与えられていることになります。

 

こうして考えると、敵キャラを武器で個性付けするポイントがよく見えてきます。

まず一般のザコキャラと違う武器を持たせることが、ボスキャラの差別化になります。

さらにはボスキャラ個々に違う特色の武器を持たせることで、それぞれを個性付けすることも可能になるのです。

 

◆敵キャラの個性付け2「パワーファイター」

【3階・怪力男】

3階に行くと、今度は明らかに系統が違うボスキャラが待ち構えています。

色黒&スキンヘッドの巨漢という、見るからに強烈なキャラクター、怪力男です。

 

武器は持っていませんが、その強さはこれまでのボスの比ではありません。

敵を倒すには距離を詰めて攻撃する必要がありますが、それは怪力男の打撃の間合いに入ることにもなります。

強烈無比なパワーが怪力男の持ち味であり、キックもパンチも一発の重さが強烈です。

よってせっかく間合いを詰めても、モタモタしていたら怪力男の打撃ラッシュを喰らい、2~3発でKOされてしまうこともあります。

この怪力男との対決以降が、まさにスパルタンⅩの本番とも言えるでしょう。

 

【パワー型という個性】

怪力男のようなパワー型の敵キャラは、多くのゲームで登場します。

特にボスキャラで登場する場合、この系統のキャラは強烈な攻撃力が特徴であり、主人公の大きなカ比ベとなることがよくあります。

 

ドラクエシリーズでいえば、Ⅱのアトラス、Ⅲのボストロールがこのタイプのボスキャラです。

いずれもきわめて高い攻撃力を持つうえに、痛恨の一撃まで繰り出してくるため、ちょっと油断していては防御力の低いパーティーが一発で死んでしまうこともあります。

まさにスクルト必須の強力ボス。一発の怖さをユーザーに印象付ける点は、怪力男と共通しています。

 

【スキンヘッドの巨漢の魅力】

もうひとつ、怪力男のビジュアル面で注目すべきは、スキンヘッドの巨漢であることです。

こうしたビジュアルの大物キャラは、ゲームはもちろん、多くのエンタメジャンルに登場します。

 

たとえば漫画・北斗の拳の序盤に出てくる拳法家・ハートなどが、その典型的なひとりでしょう。

ハートの最大の武器は、その肉体にまとった分厚い肉でした。

その肉体であらゆる攻撃を吸収し、主人公のケンシロウを苦しめたため、ハートは北斗の拳の大物キャラとして長く語り継がれています。

 

さらには現実世界でも、スキンヘッドの巨漢は強烈な存在感を放っています。

プロレスラーのアブドーラ・ザ・ブッチャーなどがその代表例です。

実力派レスラーの彼は、日本でもジャイアント馬場・アントニオ猪木のライバルとして不動の地位を築きました。

ブッチャーが悪役レスラーとしてトップに立つうえで、実力はもちろん、悪役としての魅力的なビジュアルもプラスになったのでしょう。

 

以上見てきたように、パワー型の設定を与えることでも、キャラクターを大いに個性付けすることができます。

その設定から、強烈な攻撃力はもちろん、悪役らしいビジュアルなど、作り手の思うがままに個性を膨らませることが可能だからです。

RPGや格闘アクションで敵キャラを考案する際は、ぜひとも頭に入れておきたいパターンといえます。

 

◆敵キャラの個性付け3「弱点を知らないと勝てないボス」

【4階・妖術使い】

4階に上ると、いよいよミスターⅩ軍団の大幹部・妖術使いが待ち構えています。

 

見た目は小柄な老婆ですが、さすがに敵のナンバー2だけあって、なんともいえないクセモノ。

炎や蜂などの飛び道具で攻撃してくるうえ、瞬間移動、さらには分身の術まで繰り出してくる、恐るべき相手です。

まさに妖術のエキスパート!しかし! 妖術使いの恐ろしさはこれだけではありません。

彼女はある特定の弱点を見破らない限り、倒せない相手なのです。

 

試しに、妖術使いを相手にハイキックを喰らわせてください。

なんと相手の首がもげ落ちてしまいますが、ダメージはまったく与えられません。

さらにはローキックを出しても効きません。

つまりこの妖術使いという相手は、頭部や下半身への攻撃をすべて無効にしてしまうという、恐るべき特徴を持つボスキャラなのです。

 

妖術使いの弱点は胴体です。

しゃがんでのパンチ、すなわち下段突きで攻撃しない限り、この相手を倒すことはできません。

初期ファミコンのゲームながら、なんとも奥深い設定のキャラがいるものですよね。

 

【弱点を攻めないと勝てないキャラ】

このように、特定の弱点を見抜かないと勝てない敵キャラは、スパルタンⅩ以外にも多く登場します。

アクションゲームのボスキャラに、たとえば頭が弱点などという弱点が設定されていて、そこに集中攻撃をかけないと勝てないパターンがありますよね。

こうした敵は、他のどこを攻撃しても無効なのですから、プレイヤーに強大なボスキャラとして印象付けられます。

さらには敵の弱点を探すという謎解きの要素を、ゲームに加えることも可能なわけです。

 

このように、特定の弱点を設定することでも、敵キャラを個性付けることができます。

 

◆敵キャラの個性付け4「テクニシャン型のボス」

【5階・ミスターⅩ】

5階では、いよいよラスボス・ミスターⅩとの対決。

フロアの最奥部に進むと、これまでしつこかったザコキャラが一斉に逃げ去ってしまい、一騎討ちのムードが高まります。

 

ミスターⅩは、主人公トーマスと雌雄を決する拳法の達人だけあって、優れたテクニシャンとして設定されています。

なんといっても優れているのはガードの技術です。

これまでのボスキャラとは違い、通常のミドルキックを当てているだけではガードされてしまい、なかなかダメージを与えられません。

 

【テクニシャンという個性】

基本的にゲームのラスボスは、攻撃・守備の両面に優れ、高い生命力を誇っています。

そしてなにより、多彩な攻撃パターンを持っているのが一般的です。

そのなかでも特にミスターⅩは技に優れたラスボスですので、テクニシャン型のラスボスといえるでしょう。

 

人気の漫画でたとえるなら、キン肉マンに出てくる悪魔将軍や、キン肉マンマリポーサがそれに近いでしょう。

彼らは豊富な技で正義超人(※)を苦しめ、ストーリーのヤマ場を作ることに成功しました。

特に悪魔将軍のテクニックに裏打ちされた強さは、同漫画のファンに強い印象を残しており、ラスボスならではの重厚な存在感を放ち続けています。

 

※正義超人……漫画・キン肉マンにおける、主人公キン肉マンを中心とする善玉超人の総称。

ここで触れている悪魔将軍はキン肉マンと、キン肉マンマリポーサはロビンマスクと、それぞれ激しい戦いを展開した。

 

【ラスボスの残念なオチ】

テクニシャン型のボスキャラとして、卓越した技術を持つミスターⅩ。

本来ならば人気ゲームのラスボスとして評価されるべき存在でしたが、彼には残念な弱点がありました。

 

なんとミスターⅩは、下段蹴りすなわちローキックの連打で簡単に倒せてしまうという、情けないオチがあったのです。

任天堂での最終チェックが不十分だったのか、真相は分かりませんが、これだけの存在感とカッコ良さをもつラスボスだけに、ちょっと残念なオチですよね。

 

◆まとめ

スパルタンⅩはボスキャラの個性はもちろん、ザコキャラにも様々な攻撃パターンを持たせ、バリエーションに富んだ格闘アクションの世界を作り上げています。

ファミコンのスペックは現在のゲームとは比較にならないほど低く、ゲーム制作において多大な制約がありました。

だからこそクリエイターたちは、いかにゲームの世界を豊かにするか、制約の中で知恵を絞ってきたといえます。

そこには現代のクリエイターにとっても、学ぶべきアイデアがあることでしょう。

 

なおスパルタンⅩをより楽しむには、下段蹴りすなわちローキックを禁じ手にしてプレイすると、敵の歯ごたえが増すと思われます。

また、何周もクリアしていくうちに難易度も上がっていくため、やりこみ要素も十分です。

現代のゲーマーでも楽しめることでしょう。

 

ライター情報
ライター名:ボストロール太郎
ファミコン以降の名作ゲームを幅広く愛好しています。好きな作品はドラクエシリーズ、シャドウハーツ、ペルソナ4、探偵神宮寺三郎シリーズ、つっぱり大相撲など。好きなヒロインはドラクエⅢのイシスの女王、シャドウハーツ2のカレン、ペルソナ4の天城雪子、探偵神宮寺三郎の御苑洋子。結局はヒロインにビビッときたゲームが好きということですね。

 

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