「ごく普通のシカのゲーム」に見る今時のゲームクリエイター事情


ゲーム好きなら誰しも一度は憧れるゲームクリエイターという仕事ですが、私たちにとって身近な職業になりつつあることはご存知でしょうか。

ゲーム作りに携わるためには、専門学校などでスキルを学び、資格などを取ってからゲーム制作会社に入社し、会社の中でコツコツとキャリアを積み上げることが必要だと言われる時代もありました。

しかしながら、今や趣味で始めたゲーム作りが、ある日突然脚光を浴び、一躍有名ゲームクリエイターになるというケースもあるのです。

 

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ごく普通のシカのゲーム、「DEEEER Simulator」とは?

こういったケースとして最近有名になったのが、個人で開発が進められている「DEEEER Simulator」です。

クラウドファンディングで800万円もの開発資金を集めたこのゲームの始まりは、非常に些細なものでした。

すでにファンディングは終了していますが、以下のリンク先からゲームの概要を確認できます。

https://camp-fire.jp/projects/view/114047

 

きっかけはTwitterの「バズ」だった

「ごく普通のシカのゲーム」を目指すゲームとしてTwitter上で公開されたのは、動物らしからぬ挙動で破壊の限りを尽くし、二足歩行で闊歩するシカの姿を捉えた映像でした。

この強烈なギャップが話題を呼び、ネット上では「製品化してほしい」という声が集まり、今回の本編制作にも繋がってきます。

 

Twitterの公式アカウントからは、いくつも奇抜なゲーム映像が確認できます。

 

ここから正式な開発が始まった「DEEEER Simulator」ですが、開発中もSNSのトレンドを確実に抑え、リアルタイムでゲームの中に要素を追加していく姿勢はさらに新たなファンの獲得へとつながりました。

当初クラウドファンディングで目標金額としていた100万円を大きく超え、最終的には800万円の資金調達に成功したのです。

 

大学を辞めてゲーム作りの道へ

DEEEER Simulatorを開発している阿部さんは、企画からゲーム開発、PV制作まで全てを一人でこなすクリエイターとして活動しています。

世界中の人に遊んでもらえるゲーム作りに憧れ、今では大学を退学してDEEEER Simulatorの制作に日夜明け暮れているということです。

 

クラウドファンディングを始める前の年まで大学に通っていたのが、SNSでゲームコンテンツそのものに大きな評判を集めたことで、一介の大学生から一躍注目クリエイターへと転身を遂げました。

この評判は国内だけでなく、海外にも伝わることになります。

 

有名ゲームとのコラボも実現

強烈なシカのキャラクターは海外のネット上でも話題となり、有名ゲームとのコラボレーションが発売前にも関わらず決定しています。

コラボが決定した「I AM BREAD」もまたDEEEER Simulatorと同様、食パンが自立して好き勝手に動き回るという強烈なゲームですが、DEEEER Simulator本編に彼らも公式に関わってくるようです。

 

公式ビデオでI AM BREADがどんなゲームか紹介されており、日本でも多くのYoutuberがその強烈なビジュアルからプレイ動画を投稿しています。

 

国内産のゲームが海外で成功するのは難しい時代になったとも言われますが、インターネット上で話題を集めることができれば、大手ゲーム会社を通じなくとも簡単に海外でも評判を呼ぶことができるというケースの代表的な例といえるでしょう。

 

現代のゲーム作りを支えるクラウドファンディング

クラウドファンディングはインディーゲームだけでなく、大作ゲーム制作の現場にも大きな影響を与えています。

 

あの「シェンムー」の続編もクラファンの追い風を受ける

大作ゲームがクラウドファンディングで開発資金を募った例としては、「シェンムー」の新作が挙げられるでしょう。

シェンムーはセガが1999年に発表したアクションアドベンチャーゲームで、当時としてはその作り込みの細かさとゲーム内の自由度の高さから、大きな話題を呼びました。

 

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オープンワールドの元祖としても名高いシェンムーは続編も発表され、3作目のリリースも大きく期待されたものの、開発はそこで頓挫してしまいます。

実はあまりの作り込みの細かさに、シェンムーシリーズは1作目と2作目を合わせて70億円もの開発費用がつぎ込まれており、大ヒットを記録したものの、その開発費用を回収できるほどのセールスを記録できなかったのです。

ギネス記録を更新するほどの開発費をかけ、3作目ありきでストーリーが展開されたのにも関わらず、シェンムーシリーズはそのまま10年以上続編が発表されませんでした。

熱心なファンも「シェンムーは終わった」と諦めかけていたところ、2015年に突如として開発を再開するという発表が世界中を駆け巡りました。

 

クラウドファンディングで資金調達に成功すれば開発を進められるということで発表されたシェンムー3ですが、Kickstartrで出資を募ったところ、わずか9時間で目標金額の200万ドルを達成。

最終的には633万ドル、日本円にして7億8千万円以上の資金調達に成功したのです。(1)

 

クラウドファンディングで縮まるファンとクリエイターの距離

誰にでも資金調達が行えるクラウドファンディングは、会社から予算を調達しなくても良いという面で便利であるだけでなく、クリエイターがファンの熱い声を直接聞くことができる点でも魅力的です。

あらかじめどれくらいの人たちがそのゲームを買ってくれるのか、あるいは心待ちにしてくれているのかを調達額から読み取り、そのゲームのどういうところに期待しているのかも、直接声を聞くこともできます。

 

そしてファンにとっても、ゲーム会社ではなく自分のお気に入りの作品やクリエイターを直接支援できるのは嬉しいものです。

待ち望んでいるゲームの続編へダイレクトに貢献できるだけでなく、「クリエイターを支えたい」という気持ちも届けることができるためです。

ゲーム会社の都合や売上予測に邪魔されることなく、ファンとクリエイターがお互いにコミュニケーションをとりながらゲームのリリースにこぎつけられる、二人三脚の感覚にクラウドファンディングの魅力があると言えるでしょう。

 

資格いらずの身近な職業、ゲームクリエイター

資金調達はもちろんのこと、ゲームを作るためのソフトや作ったゲームを公開する場も格段に近しいものとなりました。

例えば世界で最もポピュラーなゲームエンジンの1つである「Unity」は基本無料で、誰でもPCさえあれば気軽にダウンロードしてその日からゲーム開発を行うことができます。

公式サイトでは日本語でのガイドや、チュートリアルも充実しています。

https://unity.com/ja

 

あるいはゲームプラットフォームの「Steam」も個人のゲームクリエイターの強い味方です。

インディーゲーム の宝庫ともいえるSteamのアクティブユーザーは、2018年時点で前年比2300万人増の9000万人を超え、今年には1億人を超えるとも言われている巨大マーケットです。(2)

たとえSNSで話題を呼ぶことができなくても、Steam上でコツコツと評判を集めていくことができれば、ファンを増やしていくことは十分に可能です。

Steamを訪れると毎日数多くのゲームやレビューが公開されているので、意味もなく巡回するだけでも良い刺激になるかもしれません。

https://store.steampowered.com/?l=japanese

 

まとめ:ひょんな事から名作が生まれることも

誰でもゲームを作れる環境と、誰でもゲームを発表できるプラットフォーム、そして誰でも資金調達が行えるようになった今日では、自分がゲームクリエイターとして活躍する未来は決して夢物語ではありません。

趣味で作ったゲームでも、インターネットを通じて多くの人に知ってもらうことができれば、一本の名作として生まれ変わることもあるかもしれません。

地道な活動を続けていると、ある日突然評判を呼ぶようなシンデレラストーリーも、今の時代ならいつ起こってもおかしくないでしょう。

本気でゲームクリエイターを目指すなら、型にはまらずこんなところからチャレンジするのも良いかも知れないですね!

 

出典:

(1)Gamebusiness.jp「クラウドファンディングとゲームの関係がもたらす新たな展開」

https://www.gamebusiness.jp/article/2018/10/21/15043.html

(2)Gamespark「Steam月間アクティブユーザー数が9,000万人を突破―前年比2,300万人増」

https://www.gamespark.jp/article/2018/10/24/84735.html

 

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