【後編】『バーチャファイター』『シェンムー』を生み出した伝説のゲームクリエイター・鈴木裕氏へインタビュー!

『バーチャファイター』や『シェンムー』を生み出した伝説のゲームクリエイター、鈴木裕氏。

2019年11月に待望の『シェンムーⅢ』が発売され、いまますます注目を浴びている鈴木裕氏に、ゲーム制作への姿勢や今後の展望、またゲーム業界のキャリアについてお話を伺いました。

 

後半では『シェンムー』の開発秘話や、鈴木裕氏の今後について詳しく聞いています。またゲーム業界を目指す方に向けてもメッセージもあります!

 

(前編はこちら)

 

●リサーチ半分、クリエイティブ半分

 

――次は『シェンムー』についてお話を聞きたいと思います。

 

『シェンムー』には何個かキーワードがあって、シームレスというのもそのひとつでした。

それも統一感を持たせるためのシステムです。

 

プレーヤーが参加できないムービーが嫌で、理想を込めてフルリアクティブという単語を使いました。

カットシーン中でもなるべく、カメラを動かせるといいなと考えていました。

 

『シェンムーⅡ』だとエスコートシステムというのがあって、キャラが自動的に歩いて行くんですが、その最中も周囲を見回したり、看板を見たりできます。

 

インタラクティブというのがゲームの一番の強みなので、自分が介入できないシーンをなくす。

介入できるシーンを増やすという考え方です。

 

――ゲームの世界により入っていけるということですね。

 

小さい子どもにおもちゃを与えると、早く飽きてしまいすよね。

でも、触ると音が出て反応するようなソフトを起動したタブレットを渡しておくと、いつまでも触っていたりするんです。

自分がやったことにいろいろ反応が返って来ると、それだけで楽しいと感じるからなんです。

 

そういう世界を箱庭で用意できたら楽しいと思いました。

 

町の住人が話をしていて、たわいない話なんだけど「このおっさんに話しかけたら結構面白いこと言うぞ」みたいなね。

 

旅の体験。ストーリーというより、エクスペリエンスなんですね。

『シェンムー 横須賀ぶらり旅』というプレイ動画のシリーズがあるんですが、いい名前をつけてもらったな、と思っています。

 

――『シェンムーⅢ』はブランクが空きましたが、クラウドファンディングが上手くいっていましたよね。

 

いろんな施策をしたり、パートナーになりそうな人と話を続けたんだけど、最終的に折り合いがつかなかった。

いろんなことをやっていくなかで、一番可能性を感じたのがキックスターターでした。

 

ただ『シェンムー』はスマホのゲームではないので、フルで作ろうとなると結構なお金がかかる。

だからいくらあっても足りない。

キックスターターっていうのは本当にスターターという認識でしたね。

 

最終的に満足いくレベルに持って行くためには、その後もパートナーを探す必要がありました。

 

――『シェンムー』は世界に通じるゲームという印象ですが、その理由は何だと考えていますか?

 

世界共通のテーマがあります。

だから、愛と勇気とか、友情とか、男の人だと車とかゴルフとか、どこかで共通部分を持たせようとはしています。

 

根底の部分は抑えたうえで、ゲームの世界観に特徴をつけてゆく。

シェンムーでは日本という、海外の人から見た異国の文化に興味を持ってもらえるような内容です。

 

だから僕のゲームはマーケットリサーチ、いわゆる顧客志向が半分とクリエイティブが半分です。

 

これは技術に関しても似ています。

ゲームってユーザーが楽しければそれでいいので、技術は0でもいい。

でも僕は、技術とセンスが50%ずつのバランスでゲームを作りたいんです。

●若い人は突き抜けるまでとことんやる

 

――今後、鈴木裕さんがやりたいことについて教えてください。

 

たくさんあります。

『シェンムーⅢ』はファンに対する責任感でやったという面が大きかったのですが、本来は毎回違うものを作りたいんです。

 

ひとつは、ちょっと柄じゃないように見えるけど、ファンタジーを作ってみたい。

 

これはいまに始まったことじゃなくて、25年前くらいから、最終的にはファンタジーをやりたいと思っていました。

1995年くらいには、一番やりたいのはファンタジーだったんですよ。

 

でもファンタジーって逃げ道が多い。

例えば乗り物が滅茶苦茶な挙動してても、そういうものだからって逃げられちゃう。

技術的に逃げ場が多いから、自分を鍛えるという意味ではあまり良くない。

 

逃げ場のない舞台で技術訓練をして、そのノウハウをベースに、ちゃんとしたファンタジーを作ってみたいと考えて、まず最初に逃げ場のない『シェンムー』を作ったんですが……。

第一作は現実路線で~と考えていたら、20年経ってしまいました(笑)。

 

 

――ゲーム業界自体について、今後どうあるべきだと考えていらっしゃいますか?

 

「失敗したくない」ばっかりだと先がなくなるので、ゲームを作るなかでもチャレンジを2~3割入れてみるとか。

 

リスクを犯したくないからシリーズ物にするとしても、全部守りに入ると面白くないと思います。

 

――業界全体で、そのチャレンジがあまり許されなくなっているなと感じます。

 

それは残念です。

成功失敗と別に、チャレンジに対して褒めてあげる文化がないと。

 

失敗は成功のプロセスだという考え方にならないと、チャレンジできなくなってしまう。

100の失敗の上に1の成功がある訳だから。

この辺はアメリカの文化を見習ったほうがいいですね。

 

ただバランス感覚は大事です。

チャレンジ100%だとリスクしかない。

だから硬くいくところと、チャレンジするところのバランスです。

 

大体ざっくり3割くらいはチャレンジする。

全体予算のなかで3割くらいはもう、チャレンジに使う予算だと決めちゃうといいかもしれませんね。

 

――次にいまゲーム開発を頑張っている人、これから開発をしたい若い人に向けてのお話を伺いたいと思います。どういう人にゲーム業界に入ってもらいたい、という希望はありますか?

 

頭でっかちにならないほうがいいかな、とは思っています。

いまは情報の時代でいろんな情報が入って来る。

 

知識はつくけど、自分がなくなっちゃうんですね。

だからある程度、情報を遮断するなりなんなり、自分でコントロールしないといけない。

少し乱暴ですが、自分の好きなことをやったほうが良いし、結果も悪くないと思います。

 

好きな事にむかって突き進んでみると個性が出て、人と違う部分が武器になって、尖ったことが成功につながる。

 

何にせよ、中途半端でやめると何者にもなれない。

だからとりあえず一回、突き抜けちゃうことです。

 

若いってことは何回でもやり直せるってことです。

もし失敗したらとか、この会社で給料どこまで伸びるかなとか、そんな風に考えてると全力が出ないですから。

 

「自分のやりたいこと」って言われても、やりたい事が明解でない人もいます。

誰かのために何かをやるでもいいし、誰かを喜ばせようとしてもいいし、自分がやりたいならそれでいい。

 

原動力はなんでもいいけど、突き抜けるまでとことんやることです。

そうすれば何か見えて来ます。

 

――ありがとうございました。