ゴジラディフェンスフォースから学ぶ原作ファンを納得させるスマホゲーム開発
日本が世界に誇る特撮の祖とも言える「ゴジラ」シリーズ。
1954年当時、戦後わずか9年後に作られたというのも驚きですが、特撮のクオリティの高さや、反戦への強いメッセージ性に世界中が度肝を抜かれました。
以降、今日に至るまで、様々な形でシリーズのバトンを繋ぎ、その時代その時代で求められる形に姿を変えてファンを楽しませています。
さて、そんなゴジラシリーズも時代の流れに合わせてスマートフォンアプリのゲームがリリースされました。
それがネクソン社の「ゴジラディフェンスフォース」です。
身長55m~100mを誇る怪獣達を手のひらで遊ばせる、なんて考えると罪なゲームですが、非常に遊び易く最適化されています。
今回は原作ありきのゲームにおいて、特に年齢層が幅広い作品を取り扱う上でより多くのファンを納得させる最大公約数なゲームの作り方をテーマに「ゴジラディフェンスフォース」をひも解いて行きます。
ゲームの概要
ゴジラディフェンスフォースはプレイヤー自身が地球防衛軍の司令官となり、エイリアンが操る怪獣から地球を守る事を目的としたゲームです。
システムはシンプルなタワーディフェンスで、雑魚敵を倒す、ゲーム内で動画広告を閲覧する、といった方法で資金を集め、兵器を強化していきます。
ボスを倒すと怪獣や兵器のカードが手に入り、次回以降の戦闘で自分の必殺技として発動することができる為、いかに最小労力で強力なカードを手にするか、がプレイヤーの腕の見せ所となります。
本ゲームでは同様のゲームではよく見られる「スタミナ」という概念が無い為、プレイヤーの集中力が持続する限り永遠とプレイすることが出来ます。
しかし、ボス級の敵が出てきた時に戦局を優位にする「カードシステム」に利用制限が設定されており、一度使うと一定時間使えなくなる為、このカード回復に課金の機会が設けられています。
引き算で構成されたタワーディフェンス
そもそもタワーディフェンス型のゲームは日本ではあまりメジャーではありませんでした。
しかしスマートフォンというデバイスの特性と適合している為、一気に普及したという背景があります。
今では「クラッシュ・ロワイヤル」や「にゃんこ大戦争」、「セブンガーディアンズ」といったタイトルがランキングを賑わせています。
さて一般的なタワーディフェンス型ゲームでは、兵士の徴用や施設配備のポジショニングなど、まるで現実であるかの様な高度な戦略性が醍醐味でした。
しかしゴジラディフェンスフォースでは、これらの専門性が高い要素は世界観に合わせて排除され、引き算された結果だけが残されています。
特に興味深いのはプレイヤーが強化する兵器の数々。
従来のタワーディフェンスや戦略シミュレーションゲームでは、まず自分の国土の中で攻め込まれる場所から逆算して兵器の場所を考慮し、投入して行きます。
しかしこのゲームでは事前に兵器の場所はフィールド内で決まっており、あくまでその火力を資金投与でアップグレードしていくことに面白みを設けております。
また、マップ内もマス型に敵が配置されているわけではなく、画面に入ってきた外敵をすべて豪快にタップして倒す、というシンプルな操作性になっています。
こういった調整によりシビアなタワーディフェンスフリークには物足りなさを残しつつも、ライトなユーザには手軽に空き時間に肩肘張らずプレイする、というUXを提供することに成功しています。
ファミ通APPが行ったインタビューで、開発ディレクターであるファン氏、監修を担当した砂子達也氏から興味深い裏話がありました。
砂子達也氏「従来の『ゴジラ』のゲームはクラシックタイプのものが多く、我々としても新規層の獲得が難しいと感じていました。
ですが、今回の作品は毎日遊べるカジュアルタイプのゲームなので、新たに『ゴジラ』を知っていただくキッカケになってくれると期待しています。
それでいてマニアックな兵器や怪獣も出てきますので、おもしろい形になっているという印象ですね。」※1
ファン氏「私のスタジオでは複雑な操作を必要とせず、簡単に遊べる放置型のダイナミックな作品を作ってみたいと思い、プロトタイプを製作していました。
そのタイミングでネクソンさんから『ゴジラ』のIPを使用できるという話が入ってきたのがキッカケです。
さっそく製作していたプロトタイプに『ゴジラ』を加えたところ、いい作品に仕上がりネクソンさんからも承認を受けられました。」※1
ゴジラシリーズの様に10代〜60代まで幅広く分布するターゲットにキャラへの思い入れのみを利用動機としてプレイさせるのはたやすくありません。
その為に機能の取捨選択による難易度の操作はゲームの成否を決める重要なファクターです。
また、長寿シリーズのジレンマとして新規層獲得という課題がありますが、これらを昇華させる為にシンプルな操作性はマストであったと考えられます。
スマートフォンのCPUを駆使すればいくらでも複雑なルール設計のゲームを作ることができます。
しかしあえてターゲットから逆算し、要素を引き算することで過不足ない機能実装をする事は継続的なプレイを提供するのに必須である事は疑いがありません。
原作のコンセプトをゲーム化するということ
ゴジラをモチーフとしたゲームはこれまでにハードを変えていくつも作られてきました。
それらの多くはプレイヤーがゴジラや怪獣達を操作して戦うゲームが多く、ゲームとしての娯楽性を第一に考えられたものでした。
しかしそれが必ずしも映画の作風までもを再現しているとは言い難いものがありました。
時代のニーズに応えてゴジラはいつからか人類の味方となっている作品もありましたが、それは本質的なテーマではありませんでした。
初代ゴジラから連綿と受け継がれる根底のテーマはゴジラの脅威にあったからです。
ゴジラディフェンスフォースではこの本来のゴジラのテーマをゲームコンセプトに据え置いている事が、従来のゲームから一線を画す存在たらしめています。
これについては4gamer.netのインタビューから徹底したこだわりが見受けられます。
ファン氏「僕はゴジラが飛び蹴りしたり,攻撃されてダウンしたりするのは「なにか違う……」と思っていました。
やはり怪獣ですから,ものすごく強くて,ちょっとやそっとじゃ倒れない,そういう強大な存在として表現したかったんです。
それに,ゴジラ映画は人類側の視点で描かれています。
こうした世界観に即すとなると,自分が怪獣になるのではなく,人類としてゴジラに立ち向かうべきでしょう。
そこで,都市の防衛施設をアップグレードして,ユニットを生産し,怪獣たちに立ち向かうゲームを選んだんです。」※2
従来の様な「ゲームとしての娯楽性」を追い求めて対戦ゲーム化することもできたはずです。
しかし、本物志向をゲーム化するというコンセプトが置かれる事で、ゲームとしての面白さと原作とのシンクロ率が上がり、高い次元で満足度の高いコンテンツが生み出せています。
まとめ
ゲーム性だけを追い求めても原作のファンから納得が得られず、長期的に楽しんでもらうことは困難です。
また、原作愛により過ぎても新規層の開拓ができません。
ゴジラ本来のテーマが持っている「人類への脅威」を「タワーディフェンス」という最適なゲームシステムに落とし込む。
これにより生まれた説得力こそがゴジラディフェンスフォースの高い完成度に繋がっているのです。
こうした原作のテーマを最適なゲームジャンルに落とし込むというアプローチが、ファンを納得させ、原作ありきのゲームアプリをヒットさせる為に必要不可欠である事は間違いありません。
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https://www.4gamer.net/games/452/G045248/20190524100/
PN:ビットリズム
国産ゲームで産湯を使ったロムネイティブなゲームエバンジェリスト。QOL向上に必要なのはワーク・ライフ・ゲームバランスだと信じている。
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