スター・ウォーズ/銀河の英雄に学ぶ、映画世界観を大切にしたゲーム作り
2019年12月にその一大サーガの幕が降りる事で話題沸騰中のスター・ウォーズ。
アメリカの映画監督、ジョージ・ルーカスが1977年に発表し、以降30年以上にも渡って世界中にファンを創り続けているスペースオペラ作品です。
ただの映画に留まらず、その独特な世界観、デザイン性から、フィギュアやなりきりおもちゃはもちろん、アパレルファッションなどにもモチーフとして使用されています。
これにより、映画ファンだけでなく、作品を知らずともキャラクターは知っている、というアイコンとして認知されることとなりました。
「遠い昔、遥か彼方の銀河系で」というナレーションは、ファンでなくても一度は聞いた事があるのではないでしょうか。
さて、そんな映画史に輝く名作ですが、本格ターン制戦略ゲームとしてスマートフォンゲームアプリがリリースされています。
前述の通り、原作は世界中にファンを持っていますが、歴史の分だけ「厄介なファン」が多い事も事実です。
シリーズものとなると、一人一人が思い描く理想が異なる為、「こんなのスター・ウォーズじゃない」という意見が出ます。
しかし、スマートフォンという土俵はライトなユーザーも囲えることが魅力です。
その土俵で如何に既存ファンのニーズへ応えつつ新規ファンを作って行けるか、ということは他の映画モチーフのゲームでも課題となります。
今回はその為に必要な要素をスター・ウォーズ/銀河の英雄から学んで行きます。
ゲームの概要
スター・ウォーズ/銀河の英雄は、これまでのシリーズから、作品の垣根を超えて様々なキャラクターを収集、育ててパーティを組み、様々なバトルを行います。
通常、こういったゲームではエピソード1~8の正史となるナンバリングタイトルからキャラクターが選出されることが多いですが、番外編からも選出されています。
これにより、ファンなら一度は想像したであろう、理想のチームアップが可能となりました。
こういった細かい理想実現はファン向けコンテンツには欠かせない要素となります。
オールドファンはゲームの中で自分が描く理想像を目指し、新規ファンはこのゲームを経てスター・ウォーズを知る事になるでしょう。
ユニバーサルに遊ばれる為に求められるシンプルさ
スター・ウォーズは世界中にファンを持つという点で最も有名なIP作品だと言えます。
これまでPCやXbox、PlayStationなど主にハイエンド機向けにゲームが開発されてきました。
これらは作品の持つ壮大な世界観やビジュアルの優れたデザイン性を再現する為に必要なスペックを持つ為、プラットフォームとしてはうってつけです。
しかし、その弊害として操作性が複雑になってしまい、プレイヤーを選んでしまう、という側面がありました。
確かに劇中で使用される「フォース」や「ライトセーバー」、高速で飛行するマシンなど、現実には存在しない物質・概念の操作をコントローラーで再現する為、仕方のないことです。
これにより一定層のニッチなファンへのサービス提供に向けて尖ってしまうことは避ける事の出来ないジレンマとなっていました。
スマートフォン向けにスター・ウォーズのゲームを再定義しようとすると、上記課題は避けられないイシューとなります。
遊ばれるエリアは世界中、スマートフォンでの操作を加味したUIと、既存モチーフのゲームからは異なる設計思想を求められるからです。
これに関して4gamerの開発者インタビューにて、エレクトロニックアーツ社リードプロデューサーであるグスコス氏により興味深い証言がありました。
「スター・ウォーズは巨大なIPで、また本作のプラットフォームはスマートフォンということもあり、とても幅広いプレイヤー層が触れるでしょう。
そのため、ゲーム開始直後のハードルは極力下げる必要がありました。
そのうえで奥深い戦術も両立させるべく、プレイヤーが基本システムを一通り理解して「ああ、シンプルなゲームなんだな」って思い始めたタイミングで、ゲームの深みに気付いてもらえるように調整しました。」※1
「今回もっとも意識したのは、余計な部分をそぎ落とし、シンプルなゲーム内容にすることでした。
自分がこれまで携わってきたPCゲームなどでは、面白いと思ったゲームシステムやコンテンツなどはどんどん追加でき、それを良しとしていました。
ですがスマートフォン向けアプリでは、複雑になると敬遠されてしまうんです。(中略)
スター・ウォーズの壮大なストーリーを楽しむには長いテキストが必要になりますが、モバイル端末でそれを読んでもらうのは無理があります。
なのでご存じのとおり、いきなりバトルが始まるようにしています。」※1
この言葉に裏付けられる様に、「センスと愛」が求められた従来のゲームから、よりカジュアルさを目指した設計がなされていることがわかります。
確かにゲームをしてみるとわかりますが、最初はこれでいいのか、というくらい簡単にサクサクと進行することができます。
しかし、徐々にプレイヤーに考えさせる機会が増え始め、気付いたらどっぷりハマってしまっている、という状況が生まれます。
表面をシンプルにすることで奥深さにふれさせるハードルを下げ、プレイヤーの達成感につながるバランスの取り方になっているのです。
併せて読みたい記事
→「シンプルで奥深いゲーム」の作り方とは? 「DownWell」から学ぶ“多目的”ゲームデザイン
オールスターものとして納得させる為の土台作り
本ゲームではシリーズの垣根を超えて様々なキャラクターが一堂に会しますが、こういったオールスターものは諸刃の剣な為、ゲーム設計に最大限の配慮が必要です。
というのも、キャラクターが沢山でてくることでゲームは華やかになりますが、正史では出会わないキャラクター達が共に存在する事実に対して厄介なファンを納得させる理由がなければいけません。
このゲームでは「ゲーム内の出来事としてテーブルゲームをしている」といういわば劇中劇のスタンスをとっています。
その為、スター・ウォーズが史実として存在している世界にプレイヤーは介入し、過去にいた英雄達を駒としてテーブルゲームの様に遊ぶ、という構造になっています。
しかし、そのテーブルゲームが置いてある空間は劇中でおなじみの酒場である為、世界観を損なわずにゲームシステムとのバランスをとりつつ、キャラが混在する理由に納得感を持たせています。
これについて上記の同インタビューにて
「「スター・ウォーズ/銀河の英雄」は、映画などの有名キャラが勢揃いする、まるで“スター・ウォーズのおもちゃ箱”のようなゲームです。」※1
とある様に、まさにおもちゃ箱というイメージが最も近い表現になります。
あたかもファンが自分の持っているおもちゃ同士でチームを作り、ごっこ遊びに興じる構図を最新鋭のシステムを使って再現している、という事になります。
ここでポイントになるのが、テーブルゲームとして存在している駒がきちんと原作の設定をゲーム寄りにアレンジできているか、という点です。
この点についてもインタビュー内で触れられています。
「開発作業がもっとも難航するのは、たとえばR2-D2のような“バトルが得意でないスター・ウォーズの人気キャラ”を開発するときです。
開発スタッフによってさまざまなアイデアが出てくるのですが、ゲームバランスも含めると、どれを採用すればいいか本当に悩まされます。(中略)
あとは、映画における印象的な要素をゲーム内のアビリティで実装したくても、ゲームバランスの両立が難しいケースもあります。」※1
いくら沢山のキャラクターがゲームに登場しても、そこに原典を再現した、いわば「魂」が宿っていなければ本当の意味で登場させた、とは言えません。
これは本作に限らずあらゆる原作ありきゲームにおいて成否を占う重要なポイントな為、最も開発側が神経を使うところです。
と同時に、原作を再現しすぎてゲームのパワーバランスが崩れてつまらなくなってしまっても本末転倒です。
本ゲームではルーカスフィルムからの厳しい監修を受けることでファンを納得させる世界観を担保しつつ、ゲームとしても面白さを両立させる、という離れ業をやってのけています。
まとめ
スター・ウォーズ/銀河の英雄ではIPゲーム開発に必要な勘所を窺い知る事が出来ました。
複雑な原作設定の数々を思い切ってシンプルにする勇気と、説得力を持たせる世界観設計、納得感のある原作キャラクターのゲームシステム化、という点です。
これだけ世界中に濃いファンのいる映画はありません。
その映画を基にしたゲームを因数分解することでこれから映画作品をゲーム化する際にお手本とすることができます。
もし、こうした栄誉ある機会に恵まれた際は、このゲームから学びを得る事で、より沢山のファンを喜ばせる事ができるかもしれません。
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https://www.4gamer.net/games/324/G032406/20180828055/
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