『ゆびゆびランナー』から学ぶ、ゲームの企画に必要な童心への帰り方
人を楽しませるためには童心に帰る事が重要、とは言われるものの、そう簡単に子ども心を取り戻せれば苦労はしないものです。
しかしスマホゲームとしていてリリースされた『ゆびゆびランナー』は、童心に帰ることの大切さ、そしてどうやって子ども心を取り戻すのかを教えてくれる、そのネーミングやゲーム性とは裏腹に、示唆に富んだ作品となっています。
目次
昔懐かしい遊びを再現する
『ゆびゆびランナー』は、あの昔懐かしい「ゆびダッシュ」を大人でも楽しめるよう、スマホに再現したチャレンジングなゲームです。
誰もがやった「ゆびダッシュ」をゲーム化
お金も行動範囲も限られているものの、時間だけは無限にあった小学生の頃、誰もが身近なもので新しい遊びを考えたものですが、大抵の場合、どの小学生も似通った遊び方に帰着することも珍しくありません。
その一つが人差し指と中指で二足歩行ができる人型のものを作り、自由に走らせるという「ゆびダッシュ」です。
正式名称はわかりませんが、その姿を見れば誰もが理解できるものであることは間違いありません。
このゲームは、そんな誰もが懐かしがるであろう「ゆびダッシュ」をゲーム化して、ハイスコアを目指すことができるスマホゲームです*1。
3Dスクロールでハイスコアを目指せ
小さい頃に遊んだ「ゆびダッシュ」と言えば、縦横無尽に世界を駆け回る「ゆび」が主人公でしたが、このゲームでは3Dスクロールで、ひたすらに世界を一直線にかけ走り続けるミニゲームとなっています。
画面の奥へ奥へとかけ続ける爽快感は、現実のゆびダッシュでは得られないものがあります。
『ゆびゆびランナー』で採用されている視点は、通常のゆびダッシュでは再現が難しいこともあり、プレイヤーは想像以上のゆびダッシュの爽快感に驚きを隠せないことうけあいです。
障害物に衝突してしまうまで、どれだけの距離をダッシュし続けられるかを競うのが、このゲームの醍醐味となっています。
手遊びをゲームし得たプロセスとは
このゲームは子どもの手遊びを元にしたミニゲームですが、ここで一度どのようにしてこのゲームが生まれたのか、クリエイターの気持ちになって振り返ってみましょう。
身の回りの物事をゲーム化
このゲームが優れているのは、子どもの頃の些細な遊びである「ゆびダッシュ」をゲーム化してしまった点にあります。
誰からも商業的には見向きもされなかったゆびダッシュという遊びに注目し、ゆびダッシュにスコアリングと、レースコースの概念を設け、いつまでも走り続けられる無限スクロールという世界観を設定することで、『ゆびゆびランナー』というゲームを作り出すことに成功しています。
また、コースや障害物の設計にも工夫が見られ、学校の机や椅子、そして鉛筆といった、小学生の頃には馴染みの深かったオブジェクトが目立ちます。
ゆびダッシュに興じていた小学生の頃の童心に帰ることができるよう、世界観の作り込みにまで目を向けている繊細さが面白いところでもあります。
全体的に鉛筆でデッサンしたようなグラフィックを採用していたり、スコア表記のフォントが鉛筆の字なのもポイントです。
ビデオゲームに必要な要素の加え方
こういった小さな手遊びをビデオゲームとして復活させるためのコツという意味でも、『ゆびゆびランナー』は的確にツボを押さえている点が見られるため、非常に参考になります。
まずは何と言っても、指遊びに目的を作っているところでしょう。
単にゆびダッシュを延々と続けられるだけのゲームであれば、シミュレーターとしての楽しみ方は生まれるかもしれませんが、受けの良いゲームならではのエキサイティングな感覚を得ることはできません。
『ゆびゆびランナー』の場合は、プレイヤーがどれくらいの距離を走行できたかをスコア化することで、ゆびダッシュにアクション性を加えることに成功しています。
また、スクロールアクションを採用し、進行方向をあらかじめ指し示すことによって、余計なことを考えなくても良い、程よい居心地の良さを提供しています。
3Dのオープンワールドは確かにトレンディで評判の良いシステムですが、あえてアーケードゲームらしい、スクロールアクションを採用することで、ゆびダッシュのアクションゲームとしての面白さに焦点を当てる方向づけを行なっています。
小さい頃に遊んだゆびダッシュも、思えばひたすらに一本道を走らせる遊びであることが多かったので、ある意味では正しい原作再現のあり方であるとも言えるでしょう。
企画には欠かせない、子ども心の取り戻し方
『ゆびゆびランナー』は単なる悪ふざけにとどまらず、SNSでも話題になる程世間の注目を浴びた、いわゆるバズ作品の一つです。
小学生時代の創造力を振り返る
このゲームはあくまでゆびダッシュを元ネタにしたゲームですが、まず目を向けるべきは、「ゆびダッシュ」という遊びを考えついた、小学生のクリエイティビティ他なりません。
小さい頃にならう、手遊びの数々は、実に創意工夫に飛んだ遊びであったことにもおどろかさられます。
「グーチョキパーで何作ろう」のように、子どもの頃の遊びというのはクリエイティビティにあふれた遊び、あるいはそれを刺激する遊びが多く、その創造性はまさに無限大とも言えます。
子供がイマジネーション豊かでクリエイティブな毎日を過ごしていたのは、彼ら自身の脳が柔らかいということももちろんですが、彼らを取り巻く遊びや教育の数々が、想像力を刺激することを目的としたものが多かったこともその要因にあると考えられます。
時には昔懐かしい、想像力豊かな時代を回顧し、あの頃の感覚を取り戻してみるのも良いかもしれません。
何もないからこそ生まれたイマジネーション
そして何より、子どもの頃はやらなければならない仕事もなく、学校にさえいっていれば何をしても良いという自由があったことも重要です。
タスクのストレスが存在しない世界で生きている時ほど、人間のイマジネーションが刺激される時間はありません。
無から有を生み出すようなひらめきを求めるのであれば、こういった環境を、大人になっても実現するためにはどうすれば良いかということから考え始めるのも、有効な手段になり得るはずです。
おわりに
『ゆびゆびランナー』は、想像力豊かな時代を切り取り、再度ゲーム化することで大きな評価を得ることに成功した企画です。
些細な気づきとひらめき次第で、一見何でもない遊びをここまで面白く仕上げることができるということに気づかされる、重要な作品であると言えるでしょう。
出典:
*1 ゲームキャスト「このセンス…! 指二本で爆走する『ゆびゆびランナー』ついにリリース。小学生の気持ちに戻って学校の果てまで駆け抜けろッ!」
http://www.gamecast-blog.com/archives/65955854.html
ライター名:Satoru Yoshimura
プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。
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