人間を機械で表現?『Homo Machina』に見るゲームの面白いアイデアの作り方
人体は24時間休むことなく動き続けることで、心身を健康な状態に保ってくれているわけですが、『Homo Machina』はそんな人体の働きをゲームにした、表現力豊かなアイデアが詰まった作品です。
『Homo Machina』App Storeでのダウンロードはこちら:https://apps.apple.com/jp/app/homo-machina/id1341706265
『Homo Machina』Google Playでのダウンロードはこちら:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.ArteExperience.HomoMachina
目次
人体の仕組みを機械化した『Homo Machina』
『Homo Machina』が描くのは、人体の各器官の働きを機械に見立てたフィクションです。
人体の各パーツを工場に見立てたアイデア
人間の体は、各器官やパーツごとに恐ろしく役割分担が施されており、どれか一つでも欠けてしまうと正常な活動を行うことが難しくなってしまいます。
そんな精密機械のような繊細さを持つ人体の神秘を、あえて機械的に表現し、それぞれの器官の働きを工場のように疑似体験することを可能にしたのが、この作品です。
もともと、『Homo Machina』はドイツの化学作家であるフリッツ・カーンのアイデアから着想を得ています*1。
カーンの人体解剖図は非常に精密に描かれていることもさることながら、それぞれの器官の役割がより明快になるよう、機械に見立てて描いていたことが話題になったのです。
『Homo Machina』はフランスのDarjeelingというゲームスタジオが製作したゲームですが、今作ではカーンの世界観を流麗なグラフィックと音楽、そしてナレーションと共に楽しむことができるようになっています。
体の働きをストーリー仕立てのパズルゲームに
この作品は、いわゆるパズルゲームの一種です。
ゲームは司令官となる脳から各器官へと伝達がいく流れの中で展開され、鼻の中に飛び込んできた粒子をバルブによって受け止めたり、中から外へ出したりといった作業を体験することができます。
眼球に設置されたレンズを操作し、ピントを合わせるという作業を求められることもあります。
人体がいかにして私たちの生活を成立させてくれているかということを、機械的に再現しているのです。
他にも、外部の刺激から予想して一体何の匂いなのかをパズル形式で推測したり、排尿装置を起動して老廃物を外に出したりなどのイベントもあります。
このように、生活に関わるあらゆる部分をゲーム化し、私たちにシミュレーションさせてくれます。
一体その器官が働くことで、どのような結果が待ち受けているのか。
そして、これらの働きの全体図から、そもそもこの体の持ち主である人間は、一体何をしている最中なのか。
いろいろと予想させられる仕組みになっているのも、ユニークなゲーム性の一面をかいま見せる点と言えるでしょう。
『Homo Machina』がプレイヤーに伝えてくれること
人間の体を工場に見立てることで、プレイヤーにはどのような感覚を提供することができるのでしょうか。
人体の仕組みを再認識させてくれるゲーム
『Homo Machina』は、一言で言えば人体の仕組みを機械的にシミュレートする、保健体育的な教育価値を持ったゲームと言えるでしょう。
義務教育の過程で、私たちは人体の働きに関する一般的な知識を身につけることができます。
しかし、体の器官の名称をそのまま教えられたとしても、知識として覚えたり、その仕組みを理解したりするということは非常に困難を伴います。
体の内部がどのように動いているかを俯瞰して生で見ることはそうそうできることではありません。
非常にグロテスクなシーンも伴うため、意欲的に学習をしようというモチベーションも上がりにくいものです。
しかしこの作品では、スタイリッシュなアニメーションによって、機械化された各器官の働きを楽しむことができ、リアルな人体のグロテスクさは皆無です。
そんなデフォルメが行われていながら、機械化された身体の働きは、現実の働きと瓜二つです。
豊かなアニメーションでしっかりと身になる知識を身につけ、機械を通じて体の働きを再認識できるのです。
機械的な側面も多い身体の神秘
そもそも、人間の身体はビジュアルで工場や機械に変換しなくとも、非常に洗練されたメカニズムで働いているものです。
生身の身体というのは、工業的な世界観や機械とは相容れない存在のようなイメージを抱かれがちですが、実態はその逆です。
私たちの暮らしを支える現実世界の工場の方が、よっぽど不安定で、うまく機能していないことも多々あるという事実に気付かされます。
実は人間の身体こそ、この世で最も洗練された工場であるのかもしれません。
生命を機械化するアイデアの名作は様々
『Homo Machina』以外にも、人間の体の機械化がテーマとなった作品はいくつも存在します。
映画やアニメで表現されてきた「機械化人間」
人体を機械化するという愛では、昔から様々なエンターテイメントで採用されてきました。
最も代表的な例としては、士郎正宗氏の漫画を原作とする『攻殻機動隊』シリーズが挙げられます。
人体の一部を機械化(作中では義体化と呼ぶ)し、日常生活から戦争まで、現実のあらゆる側面が電脳化し、人間とロボットの線引きを常に問いかけ続けてきました。
この作品のインスピレーションもまた、『Homo Machina』の元ネタとなるカーンの人体解剖図に由来しているのかもしれません。
「機械化」が決して陳腐な企画にならない理由
そして、カーンを発端とする人間を機械化するというアイデアはこの先も廃れることはないでしょう。
というのも、未来的な価値観として考えられてきた人間の機械化というアイデアに、現実世界のテクノロジーが追いつき、本当に体の機械化が進みつつあるためです。
義手・義足はまるで本物の手足のように動かすことが可能となりました。
臓器についても人工的に生成したものを移植できるようになりつつあることで、本来は唯一無二だった体のパーツが、まるで工業製品のように付け替え可能となってきているのです。
身体機能の重要性は変わらなくとも、本当に人間の価値を高めてくれるものは何なのかということを、人体の機械化というテーマは伝え続けてくれるでしょう。
おわりに
人間の体の機能を向上に見立てた『Homo Machina』は、そのデザインもさることながら、示唆に富む描写に優れた作品の一つです。
ゲームを楽しむというよりも、むしろこの作品が表現しようとしたことについて注目してみれば、新しい知見を見つけることができるかもしれません。
出典:
*1ゲームキャスト「人体の動きと感情を機械で表現する『Homo Machina』レビュー。フリッツ・カーンの人体機械構造図をゲーム化」
http://www.gamecast-blog.com/archives/65920573.html
ライター名:Satoru Yoshimura
プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。
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