プレイヤー自ら遊びを作る、ARゲーム『らくがきAR』の魅力とは
ARは、近年最も注目されているテクノロジーの1つですが、実はかなり身近な技術で、個人でも気軽に開発し、遊ぶこともできます。
目次
ARゲームとは
今回のメインテーマである『らくがきAR』の紹介の前に、まずはARゲームの説明をしておきましょう。
ARとはAugmented Reality(拡張現実)の略で、人が知覚する現実環境をコンピューターにより拡張する技術や、拡張された現実環境を指す単語です。
VR(virtual reality/人工現実感)の変種で、周囲の現実環境に対して情報を付加・削除・強調・減衰させることで、人間から見た現実世界を拡張します。
ARゲームはその名の通りAR技術を使用したゲームで、例としてはカメラから映し出される現実世界の映像に、実際には映っていない情報を重ねて表示させるというものがあります。
自分の描いたイラストが動き出す『らくがきAR』
2020年11月にリリースされたスマホ向けARゲーム『らくがきAR』は、シンプルながらも目を引く遊び心地が注目を集め、SNSで話題となりました。
流行りのARをお手軽に手元で実現
ARの醍醐味といえば、やはり実際の現実空間に突如として現れる仮想の3Dオブジェクトです。
あるときはネコやイヌといった動物、ある時にはポケモンといったように、今日では様々なARアプリが登場し、日々進化を遂げています。
従来のARは、スマホカメラへ単に3Dキャラクターを表示させただけ、というものも少なくなかったのですが、近年ではもう少しアップグレードされています。
ARが現実のオブジェクトを認識し、物陰にキャラクターが隠れることができるようになったり、地面を認識してその場に立つようになったりといった様子が観られます。
『らくがきAR』はそんなARの進化をさらに突き詰めたアプリで、なんと自分が書いた絵を読み取り、自動的にARキャラクターとして出力してくれるところがポイントです。
切り抜かれたARキャラクターは自由に現実空間を歩き出し、突如として命を与えられたかのような挙動を見せてくれるのです。
自分のイラストが動き出す楽しさ
ARを自動的に生成し、動き出してくれるという喜びや楽しさは、自らやってみなければわからない体験でもあります。
しかし、以前からも似たようなアイデアのゲームは存在し、話題となったこともあったのです。
例えば2002年に発売された『ラクガキ王国』は、まさに『らくがきAR』のはしりということができる作品でしょう。
プレイステーション2向けに発売された今作では、ゲーム内の専用のノートにラクガキを書き込むことで、プレイヤーはそれを召喚し、自由に戦わせることができます。
当時はARはおろか、3D技術もままならない時代であったため、2Dの世界でのみラクガキは具現化されていました。
しかしそれでも、自分の描いたラクガキが3Dとなって切り抜かれ、実際に3Dの世界で生き物のように動き出す様子は、なんとも言えない喜びをプレイヤーに与えていたのです。
『らくがきAR』の思わぬ「失敗」が作るSNSのバズ
自分の描いた絵が動き出すというのはなんとも夢のある話ですが、このアプリが大いに人気を博すことになるのは、とある事件がSNSを賑わせたからなのでした。
「違う、そうじゃない」が産んだARならではのおかしさ
様々なイラストがまるで命を受けたかのように駆け回る中、一部のイラストには正しく認識されず、想定とは異なる挙動を示すものも現れました。
https://twitter.com/s_ami_staff/status/1290261831919865858
例えば、本来肩があるべきラインは『らくがきAR』において線の足と認識され、せわしなく駆け回る様子が捉えられています。
イラストの切り抜きは自動的に行われるため、必ずしも正確にイラストが切り抜かれるとは限りません。
人間では想像もつかないような結果をもたらしてくれるのが AIの面白いところで、そんなアプリの痛恨のミスが、かえってユーザーを楽しませてくれています。
このゲームはむしろ、そんないびつな切り抜きが行われることの面白さによってSNSでバズが起こり、大いにその名を世間に知らしめることになったとも考えられるでしょう。
これも3Dならではの面白さの1つということができます。
自分でも試したいという好奇心を作るきっかけに
SNSで上のようなAIのミスが生まれていく様子がバズったのは、自分のイラストで試してみるとどうなるのだろう、という好奇心を刺激したことも大きいでしょう。
常にこのアプリがイラストを完璧に読み込み、動作させていれば、それを遊んだことがない人であっても、「これはこうなるだろう」という予想ができます。
つまり、直接自分でプレイしなくとも人が遊んでいる様子を見るだけで、視聴者はある程度満足してしまうのです。
一方、『らくがきAR』は意図しないミスが多いに話題を集め、「このアプリで自分のイラストを読み込んだらどうなるんだろう」という、素朴な疑問と好奇心を刺激しました。
これにより、自分でもこのアプリを試そうとダウンロードをする人が続出し、一躍ARゲームとしての知名度を一気に高めていったのです。
昨今はシネマティックで思わず見入ってしまう作品も多くありますが、ゲームにおいて肝心なのは、いかに「遊んでみたい」という好奇心を刺激するかです。
意図的であったかそうでないかは別にして、この作品はある意味アプリの不完全性が、キャラクターの一部として受け入れられていった例ともいえるでしょう。
つまり、完璧にゲームは動作しなくとも、遊びの場を与えれば、あとはプレイヤーが自由に楽しんでくれる、という前向きな解釈を後押ししてくれてもいるのです。
スマホならではのARゲームの可能性
ARゲームはゲーム市場においても新しい存在であり、その可能性については誰にも予測できないものがあります。
高性能なスマホがもたらすARゲームの未来
ARは一昔前まではハイテクと言われてきましたが、今や『ポケモンGO』などの登場により、すっかり身近な技術となりました。
その要因は、スマートフォンの普及と高性能化にあります。
高性能なコンピューターを、こんなにも手軽に、かつ安価に手に入るようになった現代は過去に例を見ないハイテク化が進んだ世界であるとも言えます。
高価なゲーム本体を買わなくとも、スマホがあれば十分な質と量のゲームを心行くまで楽しむことができます。
ARゲームについても、スマホを生かしたさらなる作品の数々が、私たちを待っていることでしょう。
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まだまだ実験段階、可能性は無限大
ARは日々進歩を続ける技術ですが、伸び代についてもまだまだ底が見えません。
登場したばかりの技術であるため、その用途もまだまだ十分に見極められていないのです。
そのため、この技術そのものには高いポテンシャルが潜んでおり、その可能性は無限大に広がっています。
アイデア次第で、手軽に楽しめる人気作品を生むことも夢ではないといえるでしょう。
話題のARゲーム
『ポケモンGO』
Niantic, Inc.とポケモンより2016年7月22日から配信中のiOS/Android用アプリです。
AR機能はポケモンの捕獲、“GOスナップショット”によるポケモンの撮影、相棒ポケモンと触れ合う際などに使用されています。
また、“AR+”によってポケモンを見下ろしたり、横から眺めたりすることもできるようになっています。
『フィッシングストライク』
Netmarble Gamesより2018年4月13日から配信されているiOS/Android用アプリです。
500種類以上の魚を釣り上げるフィッシングゲームで、アングラーの成長、スキル&装備などの強化といった要素も盛り込まれています。
また、釣り上げた魚を水槽に入れて“アクアリウム”を作り、360度カメラやVR、ARなどの機能を用いて鑑賞することができます。
『妖怪ウォッチワールド』
ガンホー・オンライン・エンターテイメントより2018年6月27日から配信されているiOS/Android用アプリです。
全国各地に『妖怪ウォッチ』シリーズの妖怪たちが隠れており、カメラ越しの風景に隠れている妖怪に端末を向けることで発見し、バトルに勝利することで友だちになることができます。
おわりに
ARゲームはスマホを中心に充実しつつありますが、お楽しみの余地は十分に残されています。
ARを使ってどのような体験ができるようになるのかということを、消費者はワクワクしていることも知っておくべきでしょう。
併せて読みたい記事
→世界中を熱狂させたポケモンGoに必要なことは全部20年前に構成されていた
→VR(仮想現実)ゲーム制作の仕事に就くには?必要な技術なども説明
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ライター名:Satoru Yoshimura
プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。
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『らくがきAR』公式サイト:https://whatever.co/post/rakugakiar/
『らくがきAR』AppStore:https://apps.apple.com/jp/app/%E3%82%89%E3%81%8F%E3%81%8C%E3%81%8Dar/id1515215584
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