『Wonderputt』に見る、動きのあるゴルフゲームの作り方
世界で最もメジャーなスポーツであり、ビデオゲームとしても楽しまれているゴルフ。
スマホにも数多くのゴルフゲームが存在しますが、中でも『Wonderputt』は新鮮な体験を提供してくれます。
目次
ミニマルなパターゴルフゲームの『Wonderputt』
今作はいたって普通のパターゴルフで、ゲームシステムそのものに目新しさはありません。
ルールはいつものパターゴルフ
『Wonderputt』で遊ぶことができるのは、至ってシンプルなゴルフの世界です。
しかしパターゴルフとしては非常に良くできており、指でボールをホールドし、少しづつスライドして力加減を調整するパチンコ方式で、ホールを目指します。
少し遊べば、たとえゲームに慣れていない人でも気軽に遊べてしまうこの仕様は、まさに万人に開かれたポピュラーなゲームらしいシステムと言えます。
パターゴルフの利点は、ゴルフをやったことがないという人でも気軽に楽しめる点にあります。
どれくらいの力加減と角度でボールを放てば良いのかという駆け引きは、一度遊べば誰しもが熱中する理由がわかるはずです。
誰でもルールが理解できて、すぐに楽しめるという強みは、スマホゲームにも生かしやすいポイントと言えるでしょう。
徐々に、大胆に変化するステージ
そんなパターゴルフをテーマにした今作ですが、最大の見所は徐々に、そして確実に変化していくステージにあります。
ステージをクリアすると、ホールへ入れたボールはどこかへ吸収されていき、ステージの大改造が行われます。
畑を牛が走り回り、ボールを転がすための道をならしてもらうことで新しいステージが完成し、再びゲームが始まります。
通常のゴルフとは違い、ゲームはゴルフ場ではありません。
日常的な景色を模しており、コミカルで可愛らしい世界観でプレイヤーを魅了してくれるのが特徴です。
宇宙やファンタジーの世界を舞台にしているわけではありませんが、そんな世界にも劣らないエネルギーを、今作の世界から感じ取ることができるでしょう。
なぜ『Wonderputt』はダイナミックなのか
ゲームそのものは変哲もないパターゴルフでありながら、なぜこの作品はプレイヤーをワクワクさせてくれるのでしょうか。
多彩なアクションが盛り込まれたステージの遷移
1つは前述のように、このゲームのステージ遷移における工夫が秀逸な点にあります。
プレイヤーがホールへ入れるたびにスコアが加算され、ステージが進んでいく仕組みになっている今作ですが、ステージの遷移はリアルタイムでその場で行われます。
従来のゲームであれば、ステージが終われば暗転、再びステージは生成され、新しくゲームをスタートさせることを繰り返します。
しかし、『Wonderputt』では違います。
ボールをホールに入れるとステージの仕掛けが作動し、徐々に世界の様子が少しづつ変化していく様子を楽しむことができるのです。
目の前でステージがダイナミックに変動していく様子は、そのアニメーションを見ているだけで高い満足度を与えてくれるほど、優れた出来となっています。
ステージのテーマもそれぞれ決められており、アニメーションも1つずつ異なるので、常に新しい体験をプレイヤーは得ることができるのです。
ゴルフのルールはそのままに、演出で世界観を構築
そして、今作はシンプルなパターゴルフを徹底して貫き、スコアの表示やステージ遷移の際のアニメーションで、大きなエンターテイメントの感動をプレイヤーに与えています。
パターゴルフの最大の盛り上がりは、ボールがホールに落ちる瞬間にあります。
ビデオゲームが果たすべき役割は、この瞬間をいかにして盛り上げるかにかかっています。
『Wonderputt』においては、ささやかなアニメーションでスコアが表示された後、ダイナミックにステージが変動していく様子を楽しむことができます。
実は、このステージの遷移シーンもまた、プレイヤーにホールインの喜びを高めてもらうための施策として機能しています。
次にどんなアニメーションを見ることができるんだろう、早くホールインして続きを見たいという世界観と演出を、小さな画面の中で実現しているのです。
ゲームでプレイヤーを楽しませるためには、何もゲームを複雑にしてやる必要はありません。
肝心なのは、プレイヤーがもっと遊びたいと感じるような仕掛けを、いかに用意してあげるかというところにかかっているのです。
新鮮なゴルフゲームの作り方とは
ゴルフはスポーツとして完成された遊びである以上、ここになんらかの変化を加えることは難しいものです。
しかし、工夫次第ではどんな遊びも、今までに見たことのないような感動を与えられる、新鮮なエンターテイメントへとなり得ます。
ルールはシンプルでいい
今作では、ゲームとして基本的なパターゴルフが採用されていますが、既存のスポーツやゲームをテーマとした遊びを提供したい場合、基本ルールに忠実な方が良いと言えます。
複雑なゲームとなってしまうと、プレイヤーはまずゲームのルールを覚えるところから始めなければならず、余計なストレスを感じてしまうことになります。
『Wonderputt』の場合は、パターゴルフというテーマが色濃く反映されており、ゲーム体験そのものに目新しさは作っていません。
この思い切りが、むしろゲームの評価を高める上で大いに役立っていると言えるでしょう。
よほど面白いアイデアが出てきた場合を除き、ゲームシステムはわかりやすく、シンプルなものを選ぶようにすると良いでしょう。
ステージや演出に「遊び」を作ってみる
いくら基本に忠実がベターであるからといって、基本しか抑えられていないゲームは話題の作品となることはできません。
そこで今作が力を入れているのは、どうやったらパターゴルフの楽しみを最大化することができるか、というところです。
このゲームではステージの遷移を盛り上げ、まるでジオラマを眺めているかのような視聴体験を取り入れることで、ホールインの喜びを最大化することに成功しています。
ゲームにおいて重要なのは、どれだけプレイヤーに心地よい体験を届けるかどうかにあります。
そして心地よい体験を届けるためには、必ずしも斬新なプレイ体験である必要はありません。
むしろ、ある程度馴染みのある遊びを基盤に、エンターテイメントを届けることが重要になります。
スマホで大ヒットした「パズドラ」や「モンスト」といったヒット作品は、そのジャンルを紐解けばブロックパズルとおはじきです。
ゲームの体験価値は、必ずしもゲームプレイの斬新さで決まるものではなく、むしろ伝統と前進性のバランスから生まれるとも言えるでしょう。
どのくらい馴染みのある遊びで、どれくらい目新しいのか、というところに注目することが、ヒットするゲーム作りの第一歩なのです。
おわりに
面白いゲームは、紐解いてみると実は誰もが遊んだことのあるゲームに近しい要素がコアにあることがほとんどです。
肝心なのは、いかにしてクラシックなゲームの楽しさを最大化し、プレイヤーに高い満足度を得てもらうかというところにあることは、覚えておいて損はないでしょう。
併せて読みたい記事
→「はむころりん」に学ぶゲームを一人で作る方法
→見て楽しい、遊んで楽しい、スマホゲーム『Alphaputt』に見るプロの仕事
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ライター名:Satoru Yoshimura
プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。
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『Wonderputt』Appstore:https://apps.apple.com/us/app/wonderputt-gameclub/id539499112
『Wonderputt』Twitter:https://twitter.com/wonderputt
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