『FAR:Lone Sails』に見る“何もしない時間”すら楽しいゲームの作り方

 

終末世界は人間の想像力を刺激される作品ですが、『FAR:Lone Sails』ではそんな設定を上手く活用し、無心でゲームに没頭できる面白さを備えるキラータイトルとなっています。

 

 

終末世界を旅する『FAR:Lone Sails』

今作ではその名の通り、人類が滅亡した世界を特殊な船に乗ることで、その世界の広大さを存分に体験することができるように仕上がっています。

 

舞台は人類滅亡後の世界

『FAR:Lone Sails』の主人公となるのは、人類が死に絶えた中でどういうわけか生き残っていた少女です。

 

家族にも先立たれた彼女は、馴染みがあるであろう家も引き払い、あてのない旅へ出かけることを決意します。

 

家から歩いた先にあるのは、見慣れない形をした一隻の船。船といっても水上に浮かんでいる一般的なものとは違い、地上の上を走ることのできるランドシップです。

 

プレイヤーは、この船をうまく操作しながら冒険を続けることが求められます。

ジブリ映画の『ハウルの動く城』を彷彿とさせるスチームパンクなデザインに、どこか親しみを覚える人もいるのではないでしょうか。

 

 

モノクロームな地球を航海するアドベンチャー要素

少女が一人船に乗り込み、地球を旅して回るというのは、一見すると壮大なアドベンチャーを感じさせる触れ込みに聞こえますが、このゲームではそう楽しげなものでもないようです。

 

舞台となる地球ですが、多くの色が失われており、世界の大半は白黒のモノクロームに覆われていることがわかります。

 

 

 

 

少女や船のパーツの赤色が目立つ仕様とも言えますが、世界の全てが白黒で表現されるわけでもありません。

 

旅を続けていくと、一部草原が残る地域や、夜は船の淡いブルーのライトが頼もしく輝くなど、彩色表現の豊かさにも気づけるようになってきます。

 

色が大きくゲームシステムに関わってくるわけではありませんが、白黒ばかりでは飽きてしまうところを、うまく盛り上げてくれる要素として機能しています。

 

 

『FAR:Lone Sails』はなぜ面白いのか

淡々とゲームでできることを紹介しているだけでは、この作品からはいまひとつ刺激に足りなさそうな印象を受けてしまいます。

 

しかし、今作の目玉はそんな「やることのなさ」に大きな仕掛けが隠されています。

 

船の操縦の趣深さ

まず、『FAR:Lone Sails』の最大の魅力となっているのが、船の操縦に一手間かかるところです。

 

一般的なゲームであれば徒歩の主人公が一度乗り物に乗り込めば、まるで手足のようにビークルも自在に扱えてしまうことがほとんどです。

 

しかし、今作においては船の操縦にも一苦労が必要です。

 

エンジンは常に作動していることを確認しなければならず、定期的に減圧操作も行わなければ爆発し、停止してしまうこともあります。

 

燃料も常に管理しておかないとなくなってしまうため、定期的に補給してやらなければなりません。

 

これらの作業は移動やジャンプといったシンプルなボタン操作で行うことができるものの、常に動かしておかなければならないのは手間がかかるところです。

 

しかし、今作の魅力はそんな操縦の忙しさにあるとも言えます。

 

船の形状やその仕組みこそ現実離れしているものですが、基本的なエンジンの動作などは現代人にとっても馴染みのあるもので、操縦しがいのある設計になっています。

 

スマホの単純操作とは言え、遊んでみるとまるで本当に船を操縦しているかのような満足感を覚えることもでき、遊びがいのある仕組みに仕上がっているのです。

 

 

終末世界を味わうことに特化した設計

また、船の操縦に疲れたと感じたら、周りの景色に目をやってみても良いでしょう。

あてのない旅に出たとは言え、船の移動を続けていくと、徐々にその世界が変わっていく様子を楽しむことができます。

 

また、船は風景に気を取られているとすぐにエンジンが止まってしまうため、操縦しながら景色を楽しむというのは少し難しい仕様になっています。

 

これも一つのリアリティある表現として機能しており、実際に少女は機関部を走り回りながら船をコントロールしているため、景色を楽しむ余裕はありません。

 

船を漕ぎ続けなければゲームオーバーになる、というわけではないため、時にはあえて船を停止し、景色を楽しむのも良いでしょう。

 

むしろ、操縦をややこしくすることで、景色を楽しむことを促しているようにも見ることができます。

 

「何もしなくても面白い」仕掛けを作るコツ

『どうぶつの森』やオープンワールドゲームのように、近年は気ままにゲームの世界を堪能し、目的に囚われない作風が評価される傾向にあります。

 

しかしこういった作風で評価されるためには、クリエイターがちょうど良いバランスでプレイヤーに何らかのアクションを提供してやる必要があるのです。

 

「本当に何もしない」のではよろしくない

『FAR:Lone Sails』は、言ってしまえば船に乗って2Dスクロールの世界をただ回遊するだけのゲームです。

 

そこに大きなアクション性やドラマティックな展開もなければ、最後にどんでん返しが待っているわけではありません。

 

しかしそれでもゲームとして成立し、一定のプレイヤーを集めることに成功しているのは、「何もしない時間」をうまく作り出すことに成功しているためです。

 

仮に、本当に何もしない、あるいはできないゲームがあるとすれば、それはまだ未完成のゲームであると言えます。

 

何もしないというのは、プレイヤーは主人公を直立不動のまま動かさなかったり、仮に動いたとしても真っ白な空間の中で何もやることがないという状況です。

 

しかし、『FAR:Lone Sails』においてはその状況とは少し異なります。

終末世界があって、主人公である少女がいて、操縦する船があって、楽しめる景色があります。

 

今作における何もすることがないというのは、古典的なゲームクリアの目標が大きく存在しないというだけであり、ゲームとしては優れた作品に仕上がっています。

 

意図的に無心でいられるタイミングを作り出す

大きな目標がなくとも楽しめる仕様になっているのは、クリエイターがうまく何もしなくて良い時間を意図的に設計しているところにヒントがありそうです。

 

今作では目的もなく船を走らせることができる代わりに、船の操縦は極端に手間のかかる仕様になっています。

船の操縦は作業そのものですが、うまく動かせることに喜びが感じられる仕様となっており、しっかりと見張っておかないとすぐにエンストしてしまうシビアな設計も搭載されています。

 

しかし、エンジンが止まることは必ずしも悪いこととは限りません。

船のことは忘れてしばし悠久の世界の景色を眺める時間を得られることで、心を無にすることが可能になります。

 

船の操縦という忙しい時間と、船を止めて景色を楽しむという静かな時間の緩急の中に、大きなドラマは生まれません。

 

しかし人間の原始的な喜びの一つとも言える、労働と休息を繰り返す行為に身を投じることで、プレイヤーにはある種の充実感を与えることができるのです。

 

おわりに

一度終点までたどり着いてしまえばゲームクリアとなる今作ですが、その道中では有意義な時間を過ごすことができます。

 

ひたすらに船を操り、景色に目をやることで、シネマティックな展開やハイスコアを目指さなくとも楽しめる、マインドフルネスなゲームのあり方を提示してくれています。

 

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ライター名:Satoru Yoshimura

 

プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。

 

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『FAR:Lone Sails』PS4版紹介ページ
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