“音ゲー=演奏”ではなくなった? 音楽ゲームの歴史を振り返る【ゲームジャンル研究部 第4回】

 

さまざまなゲームジャンルの魅力と歴史について、連載形式でひも解いていく“ゲームジャンル研究部”。
第4回では、“音ゲー”こと、音楽ゲームを取り扱います。
本ジャンルは、タイトルによってアクションやシミュレーターと銘打たれていたり、音楽ではなくリズムという表記になっていたりと表記の幅も幅広いです。
本記事ではひとまず“リズムや音楽に合わせてユーザーが操作を行うゲーム”を音楽ゲームと定義して進めていきます。

 

なお、“ゲームジャンル研究部”のバックナンバーはこちらから確認できますので、ぜひチェックしてみてくださいね!

 

音楽ゲームというジャンルについて

単純ながら懐の深いアーケードゲームのメインストリーム

音楽ゲームとは前述のとおり“リズムや音楽に合わせてユーザーが操作を行うゲーム”のことで、一般的には音楽と一致した操作によって高い評価を得たり、楽曲の最後まで演奏を行ったりすることが目標となります。
システムはプレイ終了時のスコアを競うタイプが主流ですが、操作方法については幅広いバリエーションが存在しており、操作デバイスに大型のものや楽器を模したものが多いことから、アーケードタイトルが活発なジャンルです。
また、1つの楽曲に対して複数の難易度を設定できることから、初心者から上級者までの幅広いユーザー層に対応でき、それでいてタイトルにおけるボリュームも増量しやすいという特徴があります。

 

 

“収録楽曲”という独特のセールスポイント

他のゲームジャンルにおいてあまり見られないセールスポイントとして、収録楽曲のバリエーションがあります。
音楽ゲームにおける楽曲は、他ジャンルにおけるステージやレベルのようなものと捉えることができますが、本ジャンルにおいてはそこに話題のJ-POPやアニメソングを使うことができるのです。
最新楽曲はもちろん、過去の名作なども取り入れることができるため、“音楽ゲームが好き”という人だけでなく“特定の音楽ジャンル、楽曲が好き”という人にも魅力をアピールしていくことができます。

 

音楽ゲームの歴史

1996年~2000年:“音ゲー”ブームの立役者はコナミ

音楽ゲームの歴史は、1996年にソニー・コンピュータエンタテインメントがPS用ソフト『パラッパラッパー』を発売したことから始まります。
本作は私たちがよく目にする“音楽に合わせてボタンを押す”というタイプの音楽ゲームで、国内累計出荷本数は148万本を記録し、2009年まで“日本でもっとも売れた音楽ゲームソフト”の座を維持し続けるほどの大ヒットタイトルとなり、ジャンルの普及に大きく貢献しました。

 

その翌年となる1997年には、コナミ(現コナミアミューズメント)がアーケードゲーム『beatmania』の稼働を開始。
アーケードゲームにおける音楽ゲームの始祖となる本作は、格闘ゲームが主流だった当時のゲームセンターにおいて異質な存在であり、さらにゲームシステム自体はシンプルであることから幅広いプレイヤーを惹きつけ、音楽ゲームブームの火付け役となりました。
本作の登場後は、コナミから同シリーズのバージョンアップ版などが多数登場した他、『ダンスダンスレボリューション』、『drummania』、『GUITARFREAKS』、『KEYBOARDMANIA』といったプレイ方法が異なるバリエーション作品が多数登場し、ブームを加速させていきます。

 

2001年~2008年:より広く楽しめるジャンルへの進化

音楽ゲームのブームはゲームセンターを中心に加速し多数のタイトルが登場しましたが、同時に先達者である対戦格闘ゲームやシューティングゲームに起きた“システムの複雑化”という問題も現れ始めました。
そんな中、2001年にナムコ(現バンダイナムコアミューズメント)が発表した『太鼓の達人』は、太鼓を模した入力デバイスを採用し、操作体系を“太鼓・縁を叩く”のみに単純化、さらにキュートなキャラクターの導入することでファミリー層からの支持を獲得します。

操作の単純化は、家庭用ゲームにおいても発生します。
任天堂より2005年に発売されたニンテンドーDS用ソフト『押忍!闘え!応援団』、2006年に発売されたゲームボーイアドバンス用ソフト『リズム天国』はシンプルながら独自の操作性によって人気を獲得。
2008年には『リズム天国』の続編となるニンテンドーDS用ソフト『リズム天国ゴールド』が発売され、『パラッパラッパー』が持っていた“日本でもっとも売れた音楽ゲームソフト”の記録を塗り替えます。
操作の単純化によってユーザーに対する間口が広がった他、シンプルなシステムを補うためのキャラクターやストーリーといった装飾要素が強化されたことにより、より広く音楽ゲームが普及していくこととなりました。

 

2008年~:“脱・楽器”とスマートフォンの普及

2008年以降になると、アーケードの音楽ゲームにおいて、もともとの主流であった“楽器型のコントローラーを操作する”というプレイ方法と異なるタイトルが登場します。
実例としては、画面を直接タッチする『jubeat』(コナミアミューズメント/2008年)、大型レバーにボタンを取り付けたような形の“ブースター”を操作する『GROOVE COASTER』(タイトー/2013年)、丸形タッチパネルとその周囲8箇所の物理ボタンを使用する『maimai』(セガ※2015年4月~2020年3月までセガ・インタラクティブ/2012年)などです。
本記事で紹介する以外にも多数のタイトルが登場していますが、多くは直感的な操作やユーザーが体感する要素を重視しています。
もちろん、従来の楽器を演奏する形になるタイトルも健在ですが、新世代の音楽ゲームはテーマが楽器から音楽そのものに、システムが演奏の再現からユーザーの体感的を重視したものに変化していったといえます。

 

家庭用ゲームでは、スマートフォンの普及とアイドルコンテンツの更盛が重なったことから、アイドルを取り扱った音楽ゲームが流行しました。
代表例は、2013年に配信開始となったKlabの『ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル』と、バンダイナムコエンターテインメントの『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』で、前者は2020年に全世界のユーザー数が5,000万人を突破しています。
また、アイドルコンテンツを取り扱った音楽ゲームには『アイドリッシュセブン』(バンダイナムコエンターテインメント/2015年)といった女性向けのタイトルも登場しています。

 

 

音楽ゲームの今

企業の枠を超えたラインナップを楽しめるように

近年では、音楽ゲーム業界を盛り上げる取り組みの1つとして企業の枠を超えた楽曲提供が積極的に行われています。
2014年には、全日本アミューズメント施設営業者協会連合が、コナミデジタルエンタテイメント、セガ、タイトー、バンダイナムコの協力を得て行う全国規模の音楽ゲーム大会“天下一音ゲ祭 全国一斉認定大会”を開催しました。
イベントでは、大会用の楽曲として新曲が各社1曲ずつの全4曲、各社で既存曲の中から選定した1曲の計7曲(課題曲は合計8曲)がそれぞれの機種に配信。
コナミの『BEMANI』シリーズタイトルが他社の音楽ゲームとコラボするのは史上初のことであり、大きな驚きをもって迎えられました。

 

その後も、『チュウニズム』(セガ・インタラクティブ/2015年)の開発にコナミデジタルエンタテイメントが関与し楽曲提供が行われたり、近年の例ではブシロードより配信中のiOS/Android用アプリ『D4DJ Groovy Mix』(ブシロード/2020年)にはタイトーの『ダライアス』シリーズやカプコンの『ストリートファイター II』(カプコン/1991年)といった他社のゲームミュージックが収録されたりしています。

 

メディアミックスとしての特性を持ち始めた音楽ゲーム

スマートフォンの普及とアイドルコンテンツの更盛が重なったことから、アイドルを取り扱った音楽ゲームが流行したことは前述の通りです。
現在では、メディアミックスを意識したコンテンツ展開の1つとしての側面も現れており、CDをはじめとした商品発売やコンテンツに関連したアニメ番組の放送、あるいはその逆の展開などがよく見られます。

 

同名キャラクタープロジェクトのメディアミックスの一環として配信された『SHOW BY ROCK!!』(ギークス/2013年※2018年よりエディアが運営)や、『BanG Dream!』プロジェクトにおけるプロモーション中心となっている『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』(Craft Egg、ブシロード/2017年)の他、メディアミックス作品『Re:ステージ!』のアプリとして登場し、アニメ放送時に連動キャンペーンを実施した『Re:ステージ!プリズムステップ』(hotarubi/2017年)などの実例が存在します。
中には、800以上の関連楽曲がある『テニスの王子様』シリーズのタイトル『新テニスの王子様 RisingBeat』(アカツキ/2017年)のような、原作に音楽の要素があまりないコンテンツの音楽ゲーム化も行われています。

 

まとめ

音楽ゲームは、時代の流れの中で操作形態の変化やコンテンツのメディアミックスという特性の獲得し、“リズムを再現するアクション”や“楽器の演奏シミュレーション”だけでなく、“音楽そのものを楽しむ体感ゲーム”、“キャラクターコンテンツの一部”という要素も現れ始めてきました。
現在でもVRのような新技術が確立し、それに対応した音楽ゲームが誕生していることを考えると、音楽ゲームは時代の変化とともに絶えず変化を続けていくのかもしれません。

 

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