ロックマンX DiVEから学ぶ、開発コンセプト共有の重要性
2020年10月、カプコン台湾はスマートフォン用アクションRPG「ロックマンX DiVE」をリリースしました。
本作は1993年にカプコン社からリリースされた、スーパーファミコン版『ロックマンX』シリーズをベースに、その派生作品などを取り込みスマートフォン用に設計されています。
ロックマンXシリーズは元々、その前身である「ロックマン」シリーズを元に、プレイヤーの年齢層を引きあげ、リアリティのあるシビアな世界観が特長でした。
スーパーファミコンから始まり、プレイステーションやセガサターン、近年ではNintendo switchまで、常に最新のプラットフォームでリリースされています。
本作では横スクロールアクションゲームの金字塔であるロックマンXシリーズが、スマホへの最適化にどうアプローチしているのかがポイントです。
また、歴史あるシリーズの為、登場するキャラクターにも根強いファンがついており、そういった既存ファンへのアプローチも見事です。
スマホアプリゲーム市場は常に新陳代謝が活発で、プレイヤーは新しい刺激に飢えており、供給側はその可処分時間の取り合いとなっています。
そういった中で「ロックマンX DiVE」では今後のゲーム開発に対して発見と示唆に富んだ要素が学べます。
物理ボタンから画面内ボタンにおける操作性ギャップの解消
これまでコンシューマー機からスマホアプリへローカライズされたアクションゲームや格闘ゲームは多々ありました。しかしその多くはユーザーにあまり受け入れられませんでした。
それは、コンシューマー機では当たり前だった、コントローラーの物理ボタンではなく、スマホの画面に表示したボタンでの操作が根付いていなかったからです。
また、本来はメリットとして働くはずの「原作ゲーム再現度」が、かえって操作難易度をあげてしまったこともありました。
当然、コンシューマー機でリリースされた過去作では物理ボタンを使ったコントロールが前提で設計されている為、画面内ボタンとの相性が悪い操作性がありました。
今でこそ「荒野行動」や「PUBG」といったスマホゲームでは当たり前となっていますが、デジタルネイティブではない世代にとっては評価し難い体験だったのです。
元来ロックマンXシリーズはハードな世界観の中でスタイリッシュなアクションと爽快感を与える一方で、そのアクションを実現する操作性も求められました。その為、コントローラーの物理ボタンを駆使したキャラ操作はゲームの面白さを際立たせる為に重要な要素でした。
2012年1月に「ロックマンX」の一作目を忠実に移植したアプリがリリースされましたが、こうした理由で操作性に難があり、面白さを引き出せているとは到底言えない代物でした。
しかし本作では画面内ボタンのレイアウトやボタンの役割を最適化することで、旧来の体験と変わらない非常に納得感のあるコンテンツとして仕上がっています。
例えば原作でダッシュジャンプを実現するのには方向キーとダッシュボタンとジャンプボタンを同時に押さなくてはいけません。
しかしコマンド入力に求められるタイミングはシビアな為、操作には慣れが必要です。
ダッシュジャンプはロックマンXシリーズでは基本動作の一つとなる為、この所作の操作ハードルが高くなってしまう事は、ゲームの難易度を意図せずあげてしまう事になります。
そこで、ダッシュボタンとジャンプボタンを真横に近接してレイアウトし、一回のスワイプでダッシュジャンプができる様になっています。
これにより、操作ハードルは上げることなく、ゲームの面白さを損ねないという体験を提供しています。
つまり、忠実な再現度を求めるというアプローチではなく、端末での操作を加味したUI設計で、ゲーム自体の体験にギャップを残さない、という離れ業がなされているのです。
ファンと作る理想のロックマン体験
「ロックマンX Dive」ではロックマンXシリーズがゲームとして存在している世界観にプレイヤーが干渉する、という劇中劇スタイルをとっています。
その為、シリーズ全体をメタ的に俯瞰し、本編には登場しなかった別タイトルのキャラクターを登場させることを実現しました。
これにより本編の時系列を無視したキャラの選定やキャンペーン実施を可能とし、過去作に思い入れのあるユーザーを囲い込むというマーケティング手法も可能としています。
また、原作では使用できなかったキャラクターのプレイアブル化にも注力しています。
ロックマンXシリーズでは「エックス」「ゼロ」「アクセル」という主要プレイアブルキャラクターがいます。
しかしメニュー画面でのみ登場するオペレーションキャラクターや、劇的な展開を迎える味方キャラクターが多く、それだけに根強いファンが多くついています。
本作ではそんな脇役や、悪役にもスポットライトがあたり、プレイアブルキャラクターとして実装することで、往年のファンを喜ばせます。
これには開発を手掛けたカプコン台湾のインタビューから開発に向けた思い入れが窺えます。
以下は4gamerにて行われたプロデューサーインタビューでの橋本監督からの一文です。
橋本監督
”開発コンセプトの1つに,「Xシリーズでこんなことができたらいいな」を実現する,というものがありまして。ナビゲーターのプレイアブル化,シリーズキャラの登場,そしてリアルタイム対戦など,やりたいことを全部詰め込んでいます。(中略)ファンの方を蔑ろにしないようにしっかりとご意見は聞いて取り入れていきたいですね。ファンの皆さんと一緒にいいゲームにしていきたいなと思っています。*1”
この様にまず作り手側がいちファンとしてどういう状態がベストか、という理想を開発コンセプトとして掲げ、そこに必要な機能実装をしていく、というスタンスが見られます。
こうしたアプローチは本作に限らずキャラクターを扱うIP作品において欠かせない成功要因となることでしょう。
まとめ
ロックマンXシリーズのアクション性を「コマンド入力の難しさ」という表面的な既成概念に拘らず、何がゲームの本質的面白さか、を見据えたUI設計。
そしてどういった機能・アクション・キャラクター・ゲーム体験があると理想か、を開発側でビジョン共有することはこれからのゲーム開発において求められます。
ライター名:ビットリズム
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プロフィール:国産ゲームで産湯を使ったロムネイティブなゲームエバンジェリスト。QOL向上に必要なのはワーク・ライフ・ゲームバランスだと信じている。
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ロックマンX Dive公式サイト
https://mobile.capcom.com/rxd/
GooglePlay
https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.capcom.rxdjp
Appstore
https://apps.apple.com/jp/app/id1526099327
*1「ロックマンX DiVE」プロデューサーインタビューを掲載。ゲームの生まれた経緯や,今後の登場キャラ,そしてアップデートの内容は?
https://www.4gamer.net/games/470/G047075/20201019091/
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