“育成ゲーム”と“育成できるゲーム”の違いとは【ゲームジャンル研究部 第7回】
さまざまなゲームジャンルの魅力と歴史について、連載形式でひも解いていく“ゲームジャンル研究部”。
第7回で取り扱うジャンルは、通称“育成ゲーム”、“育てゲー”こと“育成シミュレーションゲーム(以下、育成ゲーム)”です。
近年では、ゲームシステムの中に育成要素があるタイトルも多くなってきました。
本記事では、育成ゲームとその他のジャンルではどのような点が違うのかについても紹介していきます。
なお、“ゲームジャンル研究部”のバックナンバーはこちらから確認できますので、ぜひチェックしてみてくださいね!
目次
育成ゲームというジャンルについて
“育成”そのものを楽しむジャンル
育成ゲームは、対象を育成することやその過程に主眼を置いたジャンルで、名の通りシミュレーションゲームから派生したジャンルです。
育成対象は人間(プレイヤー自身や子どもなど)、ペット、競走馬、架空のモンスターなどバラエティに富んでおり、能力や技術、規模の変化を育成ととらえて、野球やサッカーなどのスポーツチームを育成する場合もあります。
ゲームの目的は、育成すること自体の他にも、育成によって何らかの成果を上げることを目的としている場合もあります。
ゲームの流れも目的に応じて異なり、育成対象の成長の終わりをもって結果に応じたエンディングが表示されたり、育成対象が変更されたりします。
また、大抵の場合は育成期間が決まっており、その中でよりよい結果を出すためにその時々で最適な選択を取っていくことがゲームの醍醐味の1つです。
“育成ゲーム”と“育成できるゲーム”の違いとは
成長要素をシステムに組み込んだ他ジャンルのゲームとの違いは、育成することそのものが目的となっていることです。
例えば、RPGにおける成長要素はあくまでゲームの目的を達成するための手段の1つであり、ゲームシステムやプレイスタイルによっては成長要素の一切を無視してプレイすることも可能です。
対して、育成シミュレーションゲームは育成対象を成長させることや、その過程での出来事を楽しむスタイルとなっています。
育成ゲームの歴史
1991年:世界初の育成ゲームが誕生
育成ゲームの歴史の始まりは意外と新しく、1991年5月24日に発売されたPC-9801用ソフト『プリンセスメーカー』が世界初の育成ゲームとなっています。
本作はガイナックスが製作、ゼネラルプロダクツが販売を担当したタイトルで、中世ヨーロッパ風ファンタジーの世界を舞台に、戦災孤児の少女を娘(養女)として育て上げていくという内容でした。
ゲームシステムとしては、勉強や習いごと、アルバイトなどのさまざまな育成方針を選択し、それによって少女の性格やステータスが形成され、最終的なステータスに応じたエンディングが表示されるというシステムでした。
本作は、現在までタイトルが作成されるほどの人気シリーズとなった他、育成ゲームの元祖でありながら高い完成度を誇ったことから同ジャンルを確立することとなりました。
1996年:『たまごっち』の登場で社会現象に
『プリンセスメーカー』の発売から5年後となる1996年11月23日に、バンダイより携帯ゲーム『たまごっち』が発売され大ブームとなりました。
本シリーズは、画面の中に登場する“たまごっち”と呼ばれるキャラクターにえさを与えたり、遊んだりしながら育てていくというシステムで、お世話の内容によって異なるキャラクターへと成長していき、お世話を怠ると死に至ることもあるという内容となっていました。
もともと本作は女子高校生をメインターゲットとして開発されましたが、発売から翌年となる1997年には想定していたターゲット以外にも広まり、社会現象になるほどの爆発的な人気を誇りました。
また、このブームに呼応する形で『デジタルモンスター』をはじめとした携帯育成ゲームが登場。
その際には、多くのタイトルが『たまごっち』と同じ白黒液晶画面とコマンド選択、決定、キャンセルを行う3つのボタンを備えた操作体系で登場しました。
育成ゲームの今
ブームは去ったが一定の地位を維持
1998年に入り『たまごっち』のブームが終了して以降は、育成ゲーム単体としての大きなブームこそ発生してはいません。
しかし、前述の『プリンセスメーカー』シリーズやコーエーテクモゲームスの『ウイニングポスト』シリーズなどの人気タイトルは続編が出続けるなど、一定の地位を保ち続けています。
また、ゲーム内のモードの1つとしての“育成ゲーム”は多くのタイトルで取り入れられており、『実況パワフルプロ野球』シリーズにおけるサクセスモードは有名です。
スマホゲームへの進出で新たなスタイルが誕生
スマートフォンの普及に伴い、さまざまなジャンルのゲームアプリが配信されるようになりました。
これにより、スマホ用の育成ゲームも配信されるようになっており、バンダイナムコエンターテインメントが2018年4月24日にサービスを開始したenza用タイトル『アイドルマスター シャイニーカラーズ』やサクセスより2020年4月28日に配信されたiOS/Android用アプリ『なめこ栽培キット Deluxe 極』のような新作タイトルが登場。
その他、コーエーテクモゲームスより2020年9月17日に配信されたiOS/Android用アプリ『モンスターファーム2』のような移植作も配信されています。
また、スマホ用育成ゲームの登場からしばらくして、育成ゲームにおいて“放置系”という新たなスタイルも登場しています。
放置系の育成ゲームは、ユーザーが操作を行うのではなく、ゲーム画面を一定時間放置することによってゲームの状況が変化するというスタイルで、前述した『なめこ栽培キット Deluxe 極』もこのスタイルを採用しています。
まとめ
育成ゲームの歴史は意外と新しく、また“育成そのものや育成過程に主眼を置く”という定義から意外とタイトル数は少ないジャンルです。
現在では1タイトルのボリュームも増えてきたことで、ゲームモードの1つとして“育成ゲーム”を楽しめることも少なくはありません。
一方で、スマホゲームへの進出に伴い、“放置系”という新たなスタイルが登場するなど、育成ゲームの在り方も変化しています。
プレイする際にはタイトルごとの重視しているポイントについて注目してみるのもおもしろいかもしれません。
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