『Unmaze』に見る、ハードの性能を引き出すゲーム設計の魅力


美麗なグラフィックはそのゲームのクオリティの高さを示す指標の一つですが、ハードウェアの性能は必ずしもグラフィックだけで決まるものではありません。

 

特にスマホはディスプレイ以外にも様々な機能を備えていますが、『Unmaze』はそんなスマホのポテンシャルをうまく引き出す作品となりそうです。

 

スマホ特化の作品である『Unmaze』

今作はギリシア神話をモチーフにしたアドベンチャーですが、ありきたりな謎解きやシナリオにとどまらない、魅力的なシステムを導入しています。

 

光と闇の世界を行き来するアドベンチャー

『Unmaze』はスマホ専用のゲームとして発表され、その名の通り迷宮を潜り抜け、物語を解き明かしていく作品です。

 

ギリシア神話の「ミノタウロスの迷宮」をモチーフとした作品ということもあり、作風としてはモノクロの世界観とミニマルなビジュアルで、どこか高尚な空気を思わせます。

 

英雄テセウスとミノタウロスのアステリオンが迷い込んだ迷宮から、プレイヤーがうまく彼らを出口へと導く作品となっています。

 

スマホの光センサーを活用して謎を解け

二人の主人公が登場する作品ということもあり、今作ではプレイヤーは二つの迷宮を攻略することになります。

一つが光の迷宮、もう一つが闇の迷宮とステージが用意されているわけですが、これらの迷宮を攻略する鍵となるのが現実の「光」の要素です。

 

今作はスマホが吸収している光センサーと連動しており、現実世界でスマホに光を照らすことで、ゲーム内の迷宮に様々な影響を与えられます。

 

例えば、テセウスが迷い込んだ光の迷宮においては、現実世界の光を当てることで、クリアのためのサポートを得ることができます。

 

光を上手にコントロールすることで、ステージクリアを促せる仕組みです。

 

しかし、スマホへ光を与えることだけが、必ずしもクリアの鍵になるとは限りません。

テセウスが光の恩恵を受けているその頃、闇の迷宮へ迷い込んだアステリオンを助けるためには、異なるギミックを介助する必要があります。

 

闇の迷宮と光の迷宮は表裏一体でありながら、プレイヤーはそのどちらか片方ずつしかその正解に介入することはできません。

二つの世界をうまく行き来しながら、時には光の力もかりつつ、物語を進めていきます。

 

実在の「光」を使った作品の面白さとは

一見すると斬新なアイデアである『Unmaze』の光システムですが、現実の光をゲームに取り入れるというアプローチは、かつては日本のゲーム作品にも見られました。

 

2000年代を代表する『ボクらの太陽』の革新性

光を使った日本の代表的なビデオゲームといえば、『ボクらの太陽』が挙げられます。

『ボクらの太陽』は、「メタルギアソリッド」シリーズでおなじみの小島秀夫監督が手掛けた作品で、2003年に登場したGBA専用ソフトです。

 

主人公である太陽少年ジャンゴは、ヴァンパイアやアンデッドといった闇の世界の住人と戦うべく、「ガン・デル・ソル」と呼ばれる武器を手にするのですが、これは実際の太陽光と連動して動作するという、ユニークなシステムを導入していました。

 

『ボクらの太陽』のカートリッジには専用の太陽光センサーが搭載されており、ここで得た日光が作品内に反映され、太陽エネルギーを的に照射する仕組みを実現しています。

 

このようなインタラクティブな設計は当時としては珍しく、まだハードウェアの性能も今ほど高性能ではなかったため、高い評価を集めた作品です。

 

一作目の反響を受け、その後も数年にわたって続編が製作されるなど、2000年代を代表するゲームとなりました。

 

「光」を使ったロールプレイングの妙技

太陽光を使ったゲーム、と聞くと地味な印象を受けてしまうかもしれませんが、実際にプレイしてみると、光が持つ役割の大きさと、世界観への没入を大いに手助けしていることに気づかされます。

 

主人公は太陽光が味方であり、敵は太陽光に弱いという設定は、光をどんどん取り込んでやろうというモチベーションをもたらしてくれます。

まるでプレイヤーが本当に太陽少年になったかのような、見事な設計です。

 

おまけ程度の「光」要素にとどまらず、大胆にも「光」をゲームの中心に据えることによって、全く新しいゲーム体験をもたらしました。

 

『ボクらの太陽』は当時全く新しいIPであっただけに、驚異的なセールスを記録したというわけではありません。

しかしゲームの完成度を含め、その出来は不朽の名作と言うにふさわしいクオリティに仕上がっていたのです。

 

立体的な体験を与えるゲームの魅力とは

スマホやソフトのパフォーマンスをフル活用する上では、ディスプレイ上の表現にとどまらないという発想も大切です。

デジタルコンテンツでありながら、現実と深くリンクする体験は、今後も重要視されることになるでしょう。

 

ゲームに奥行きを与える「光」の要素

従来のビデオゲームというものは、ディスプレイの中で世界が完結しているものであり、コントローラーを使ってそこにアクセスし、プレイを楽しむというものでした。

 

それがスマートフォンの登場により、スクリーンをタッチしてプレイするという遊び方が一気に普及し、カメラやジャイロセンサーを使った立体的な遊び方も次々と採用が進むなど、ゲームの遊び方は大きな変化を遂げています。

 

『Unmaze』の光を使った遊び方もまた、ゲームに新たな奥行きをもたらしてくれる遊び方です。

 

光の強弱や有無がどれほどゲームに影響を与えるかはまだ分かりませんが、こういった自然現象をうまくゲームに取り込むことができれば、新しいゲームの可能性を探ることもできるでしょう。

 

ARやVRとの融合にも期待

ゲームに奥行きを与えるものとして、今最も注目されているのがARやVRといった、新しい視覚技術です。

 

現実世界にバーチャルな物体を投影するAR、プレイヤーが仮想現実に入り込み、まるでその場所に足を踏み込んだかのような錯覚を引き起こすVRは、いずれもビデオゲーム体験を大きく変える技術であることに違いはありません。

 

現在、これらの技術はまだまだ初期のステップであり、本格的な普及はもう少し先になると考えられます。

 

しかしそれでも、光や音など、現実に存在する事象をARやVRにも取り込むことができるようになれば、これらのゲーム作品はさらなる進化を遂げることは間違いありません。

 

新しい技術は別個にその将来に期待するのではなく、いずれは融合し、全く新しい体験を提供してくれることに期待したいところです。

 

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おわりに

『Unmaze』はどこにでもあるパズルアドベンチャーになりそうなところを、光を取り込む技術を活用することで、独自のユニーク性を獲得しています。

 

今後もスマホやハードの性能が向上することで、このような新しい取り組みはますます勢いを増やしていくに違いありません。

 

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ライター名:Satoru Yoshimura

 

プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。

 

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『Unmaze』公式サイト:https://www.upian.com/en/project/unmaze

 

『Unmaze』Twitter:https://twitter.com/upian

 

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