ゲームの「ダウンロード(デジタル)販売」の現状は?小売との違いや今後について


 
ゲーム業界では、近年ソフトのパッケージ販売が減り、ダウンロード(デジタル)販売が増えている現状があります。
 
このコラムでは、ダウンロード販売のメリット・デメリットを、ユーザーやゲーム会社の目線からそれぞれ解説し、ダウンロード販売が増えていく先の未来予想も加えていきます。ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
 

1. ゲームのダウンロード(デジタル)販売とは

そもそも「ダウンロード(デジタル)販売」とは、ゲームをオンライン上で決済し、データをダウンロードしてプレイする販売方法です。その対義語は「パッケージ販売」です。こちらはディスクを物理的にパッケージして物品として販売します。
 
スマートフォンが普及して以降、ゲームをダウンロードして楽しむ人は増え続けてきました。それでも、家庭用ゲーム機向けのソフトに関しては、2023年現在もパッケージ版での販売もまだ存在しています。
 
とはいえ、ここ数年は家庭用ゲーム機もオンライン環境下にあることが通常化しており、ダウンロードしてゲームを楽しむことが珍しくなくなっています。そのため、新規に開発されるソフトではダウンロード版しか存在せず、パッケージ版は発売されないケースも現れています。
 
なお、ダウンロード版がどの程度増えているかは、当コラムの「現状におけるゲームのダウンロード販売と小売(物理パッケージ)の割合」にて詳しく記載します。
 

2. ゲームのダウンロード販売が台頭するメリット

ここからはダウンロード販売のゲームが台頭することで得られるメリットを、ユーザーとゲーム会社、流通(小売店)に分けて解説します。
 

2-1. 消費者(ユーザー)にとってのメリット

消費者(ユーザー)にとって、ダウンロード版を購入することにはさまざまなメリットがあります。
 
まず、ダウンロードなら品切れするリスクが無いので、欲しいと思ったソフトは確実に入手できます。また、オンラインで購入すれば家にいながら入手できるので店頭に行く必要がありませんし、通販購入のように配送を待つ必要もありません。欲しいと思った時にすぐに手に入れられることはダウンロード版ならではのメリットです。
 
さらに、物理的なパッケージを作る工程が無い分、安く入手できるケースが多いのも利点のひとつでしょう。もう一点、ダウンロード版はパッケージがかさばる心配がありませんし、置き場所を考える必要がないというメリットもあります。
 
長くゲームをしている人なら、「中古として売る気はないけど実際にプレイするわけではない」というソフトが押し入れや棚を占領している、ということは珍しくないでしょう。ダウンロード版なら、このような物理的スペースが必要となるような問題は皆無です。そのため、狭い部屋に住んでいる人にも有利という考え方もあるでしょう。
 

2-2. ゲーム会社(メーカー)にとってのメリット

メーカーにとっては、ダウンロード販売をすれば物理的な在庫管理が必要ないというメリットがあります。パッケージ版は物品であることから、移送や管理場所の問題がありますし、パッケージの不良などに手を取られることもあり得ます。
 
パッケージングや移送にかかる費用を低減できることもゲーム会社にとっては利点でしょう。原価が少ない分、価格設定を低めにしてユーザーが入手しやすい方向でセールスを伸ばす方法や、従来のタイトルと価格を大きく変えずにデジタル版ならではのサービスを追加する、といった選択も可能です。そのため、販売方法の幅が広がり、他社との差別化をするチャンスにもなります。
 
また、パッケージ版は中古品が出回ることで、リリースからしばらくすると、プレイはされているのに購入数が減る、というリスクがありますが、デジタル版なら中古が販売されないので、その心配はありません。
 

2-3. 流通(小売店など)にとってのメリット

小売店にとっては、物品の販売が無くなることはデメリットの方が多いかと思います。とはいえ、パッケージ版を扱うことが減れば、過剰在庫や欠品のリスクがなくなるメリットはあります。
 
また、新作のパッケージ版が姿を消しつつある現在、ダウンロードカードの販売に力を入れる小売店も増えているようです。
 

3. ゲームのダウンロード販売が台頭するデメリット

パッケージ版が減ることには、メリットだけでなくデメリットもあります。ここからはダウンロード版の販売が増えていくことのデメリットを解説します。
 

3-1. 消費者(ユーザー)にとってのデメリット

かつて、「プレイしたあと中古品として売って新たなゲームの購入費にする」ことは一般的でした。しかし、ダウンロード版は中古販売ができないという大きなデメリットがあります。また、パッケージ版であれば、友人同士で貸し借りをして、同じゲームを楽しむ文化もありましたが、データでは貸し借りもできなくなっています。
 
ほかに物品としてのコレクションができないことや、通信環境が良くない場合、ダウンロードに時間がかかるというデメリットもあります。さらに、クラウド利用でない場合、データがストレージの容量を食うこともケースによっては難点となるでしょう。
 
それ以外では、小売店が独自で行っているセールなどの恩恵を受けられないことに加えて、小売店で情報を得ていた(店頭で欲しいゲームと出会うなど)文化もなくなっていくでしょう。
 
物理的なパッケージはハードとソフトが健在であれば、何年経っても遊ぶことができますが、ダウンロード版の場合、ゲーム会社がサービスを終了すると、遊ぶことができなくなるという特徴もあります。
 

3-2. ゲーム会社(メーカー)にとってのデメリット

ダウンロード版は小売店が介在せず、消費者が直接購入するスタイルです。これまでは小売店が有力なソフトをまとめて購入してくれることで、販売数の目途を立てやすいというメリットがありました。しかし、ダウンロード版のみになるとそのメリットは失われ、どの程度売れるのかがわかりにくくなります。
 
また、Steamなどのダウンロードプラットフォームに対して、手数料を払わなければならないというデメリットもあります。この手数料分が販売価格に転嫁できると良いですが、それができない場合は手数料の分利益が減るので、ゲーム会社にとっては良いことばかりではありません。
 

3-3. 流通(小売店など)にとってのデメリット

流通、小売店にとって、パッケージ版がなくなってダウンロード版だけに収束していくことは死活問題と言っても良いでしょう。パッケージ販売がなくなれば中古品販売もなくなりますから、商品そのものがなくなってしまうという危機があるからです。
 
物品によりますが、実は新作のゲームはメーカーからの購入価格が決まっているうえに販売価格も競争原理が働くので、決して利幅が良い商品ではありません。一方、中古品なら売値も買値もある程度幅を取ることができます。そのため、小売店にとっては中古販売の方が利益が高い、というのが日本のゲーム業界の実情です。
 
今後はその中古販売も減っていくことが予想できますから、ダウンロード版の増加は日本のゲーム業界にとって良いことばかりとは言えないでしょう。
 

4. ゲームのダウンロード販売の今後と課題

この項目では、ゲームアプリのダウンロード販売における未来予想や、今後の課題を記載します。
 

4-1. 現状におけるゲームのダウンロード販売と小売(物理パッケージ)の割合

ソニーが行った2022年度の決算には、ゲームソフトのパッケージ販売とダウンロード販売の売り上げ比率が掲載されており、何とその年度のダウンロード販売は93.6%だったそうです。
 
この比率は会社によっても異なるようで、任天堂ではここまでの差はないようです。とはいえ、日本を代表するゲーム会社ソニーで、ソフトの9割以上がダウンロード販売だったことは事実です。
 
この数値を見ると、いよいよパッケージ版が減り、ダウンロード販売に急速に置き換わっていくのではないか、という予想もできます。そのため、パッケージ版が無くならないとしても、ダウンロード版が主流になっていく未来を考えないわけにはいかなくなっているのが現状です。
 
次の項目からは、ダウンロード販売の今後と課題を具体的に記載していきます。
 

4-2. 「ダウンロード専用のハード」という選択肢が一般的になる

パッケージ版がなくなる時代がくれば、ハードウェアを作っている側、購入する側の双方で、ダウンロードできることが当たり前になるでしょう。
 
例えばPlayStation5 デジタル・エディションやXbox Series S、Steam Deckなどが標準となり、今後開発されるハードウェアもソフトをダウンロードしてプレイする形が受け継がれていくでしょう。
 

4-3. 物理パッケージが不要なため個人・中小企業開発のインディーゲームが盛り上がる

インディーズ会社やインディーズクリエイターにとって、物理的なパッケージングを行って流通に乗せるのはかなりハードルが高い項目でした。
 
しかし、多くのゲームがダウンロードして楽しまれるようになった昨今、インディーゲームのクリエイターには巨大なビジネスチャンスが広がっています。これによってゲーム作りが高額予算を伴うAAAタイトルだけに収束せず、安価に作ってもアイデア次第で勝ち残れる時代に突入していくでしょう。
 

4-4. セキュリティリスクなどにより一層配慮する必要がある

店頭でパッケージ版を購入する場合、セキュリティは特に問題になりませんが、ダウンロード購入の場合、ネット上で個人情報がやり取りされる機会が増えます。もしゲーム会社としてユーザーの個人情報を管理するのであれば、セキュリティへの配慮を強化する必要があるでしょう。
 
過去に大手ゲーム会社がサイバー攻撃を受けて数十万人の個人情報が流出するという事件は実際に起こっていますから、ゲーム会社はセキュリティ管理に神経を注ぎ続ける必要があるでしょう。
 

5. まとめ

ゲームのダウンロード(デジタル)販売について、その概要やメリット・デメリットをまとめ、ゲーム業界のダウンロード販売に関連する未来予想をしてきました。
 
ゲームプレイにおいてオンライン環境があることが当たり前になった昨今、パッケージ版が減り、ダウンロード販売が増えていく傾向は明確です。この傾向は、ユーザーにとってもゲーム会社にとってもそれぞれメリット・デメリットがありますが、ゲーム開発者にとっては損益への影響やセキュリティへの配慮など考えることが多数あります。
 
ぜひ時流に乗り遅れないように、ダウンロード販売が主流となる未来の予想図をしっかりと把握しておきましょう。
 

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