ゲームにおけるドット絵の歴史と2DCGクリエイターとは?


 
「ドット絵のゲーム」というと、”昔ながらのもの”と思う人がいるかもしれません。しかし、ゲームの中のドット絵はある時代に2DCGクリエイターの努力によってアートの域に達していますし、近年も複数のゲームに取り入れられています。
 
このコラムでは、ゲームにおけるドット絵の歴史や、近年のドット絵ゲームを紹介しますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
 

1. ゲームにおける「ドット(絵)」とは

この項目では、まず「ドット」という言葉の意味や定義を解説し、ドット絵が登場して広まった理由などを説明します。
 

1-1. ドット(絵)の定義

実は「ドット絵」自体には厳密な定義はありません。そもそもドット(dot)という英単語は、小点や小数点、付点や水玉模様を意味します。
 
アナログの絵でも、点の配置や密度、配色を工夫して絵画にする手法はあります。また、壁の複数の汚れや石の配置が顔に見える、という錯覚は誰もが体験するものなので、「点」が配置によってさまざまな意味を持つことは容易に理解できると思います。
 
コンピューターで描画する「ドット絵」も、基本的には点の配置や色を工夫してキャラクターやアイテム、景色などを表現する手法です。そのため、ドット絵も2DCGというジャンルに含む技術のひとつと言えるでしょう。
 
ただし、単なる技術的選択肢ではなく、ドット絵だからこそできる味わいも追及されており、ピクセルアートという芸術のジャンルとしても成り立っています。
 

1-2. なぜ当時はドットでゲームを書いていた?

ドット絵が登場したのは、1944年だと言われています。近年はモニター画面の解像度が高いので、写真や一般的な絵画のような画像を描画できますが、昔はモニターの解像度やCPUの性能が低かったので、そもそもモニター画面上には現代のように細かい描画ができませんでした。
 
つまり、当時はあえてドット絵をかいていたのではなく、カクカクとした画像しか描画できなかったのです。
 
それでも、その時代の環境下でできる表現のひとつとしてドット絵は登場します。そして、ドットの集まりに意味が付与されるとそれ自体の「味わい」も発生します。また、2000年代にはドット絵ならではの味わいを積極的に活かす手法も確立され、「ピクセルアート」という呼称も生まれました。
 

2. ドットとゲームの歴史

ファミコンが登場した1983年ですら、モニター画面は横256ドット×縦240ドットでしか描画できませんでした。このため、1970年代にはゲーム画面でキャラクターを視認させることや細かく動かすことは困難でした。そういった背景から、初期のゲームは『ブロック崩し』などのように、複雑なキャラクターが登場しないゲームがほとんどだったのです。
 
そんな中で1980年には『パックマン』が登場します。デザインがシンプルなのでキャラクターとして描画可能ですし、ゲームの面白さやかわいらしさもあったので当時のユーザーに高く評価されました。
 
パックマンのようなドットキャラクターが障害物を吸収しながらプレイするゲームは、「ドットイートゲーム」というジャンルを形成します。ドットイートゲームについて書いたコラムもあるので、興味がある方は以下をご参照ください。
「ドットイートゲーム」
 
その後、1990年代になると技術の進歩と2DCGクリエイターの努力によって、ドット絵でも細かい描写ができるようになります。この時期に開発されたゲームの中には「芸術」と言われるほどドット絵を発展させたタイトルも存在します。その代表的な作品はこのコラムの「ドットの完成度が評価されているタイトル」という項目で紹介します。
 
現在はモニターの描画能力やCPUの性能が発達したため、リアルさを追求する場合、ドット絵は選択されません。それでも、ドット絵が依然として存在しゲームに採用されているのは、ドット絵が2DCGの一つのジャンルとして確立されており、そこに味わいを感じる人が多いからでしょう。
 

3. ドット(ピクセルアート)をゲーム開発に活かす魅力

この項目では、ドット(ピクセルアート)をあえて導入することで、ゲームにどのような魅力が出せるかを解説します。
 

3-1. 制限がある中で描くことで見る人の想像を広げてくれる

キャラクターの細かい表情が十分に伝わる情報量が多いドット絵もありますが、あえて情報量が少ないドット絵を使えば、ユーザーの想像力を利用できるメリットがあります。
 
例えば1986年リリースの初代『ドラゴンクエスト』のドット絵キャラクターを画像だけで見た場合、人かモンスターかの判別はできても、細かい表情を読み取ることはできません。
しかしユーザーは、テキストデータやゲーム展開などから、勇者のりりしい表情を想像しますし、女性キャラクターは美しいと認識します。
 
これを意図的に利用すれば、開発者は膨大なデータを扱う必要がなく、表現に伴う開発の苦労を低減できます。
 

3-2. レトロ感でプラスの評価を得られる可能性がある

ドット絵は1980年代から1990年代に多く使われた技術で、現在は決して主流ではありません。そのため、ドット絵が採用されているだけで、ユーザーは2000年以前の時代や「昭和」を想像し、レトロ感を味わうことができます。
 

3-3. ゲーム開発の際、コストを抑えられる可能性がある

近年のゲームは非常に多くのデータ量を扱いますが、情報量を抑えたドット絵なら、ゲーム開発のコストを抑えられる場合があります。
 
ただし、ドット絵がすべて低コストというわけではありません。近年、3Dモデリングの技術を習得している人は非常に多く存在しますが、需要の面からドット絵をうまく扱える人は減っています。
 
また、ドット絵も凝ると無限に凝ることができるので、こだわりを持ってドット絵を扱おうとすると、むしろ費用が掛かるケースもあります。さらに、3Dをサポートするゲームエンジンが開発されたことで、3Dの方が少ない手間で済むケースもあり得ます。
 
これらを総合すると、単にコストダウンの方法としてドット絵を採用するのはリスクを伴うことを記憶しておきましょう。
 

4. ドットが有名なタイトル

この項目では、ドット絵を使っていることで印象的なゲームを紹介していきましょう。
 

4-1. ドットの完成度が評価されているタイトル

まずは、ドット絵の完成度が高いことで評価されている1990年代の名作を紹介します。
 

4-1-1. FINAL FANTASY VI

日本を代表するRPG、『FINAL FANTASY』シリーズの第六作目として1994年にリリースされています。
 
スーパーファミコン向けにリリースされた『FINAL FANTASY』、ナンバリングタイトル最後の一作です。リリース当時、ドット絵が非常に精密なことでも評判となり、「ドット絵の最終到達点」とまであがめられたタイトルでもあります。
 
近年スマートフォン向けに移植され、画像の解像度は間違いなく上がっていますが、「スーファミ版のドット絵は味があってよかった」という意見も存在するようです。
 

4-1-2. ストリートファイターIII

世界に知られる格闘ゲームの代表的タイトル『ストリートファイター』シリーズの一作です。大人気だった『ストリートファイターⅡ』の正式な続編として1997年にリリースされています。「キャラクターが地味」と言われることも多い本作ですが、ドット絵に関しては非常に細かく仕上げられていました。
 

4-1-3. メタルスラッグ

SNKが1996年にリリースした、横スクロールのミリタリーアクションゲームです。攻撃方法が自在で操作性が良かったことなどからアクションゲームファンの人気を獲得し、シリーズ化されています。またドット絵の美麗さでリリース時に非常に高く評価されました。
 
『メタルスラッグ』シリーズの1~3でドット絵を担当していたakio氏が、2023年にX(旧Twitter)で当時のドット絵を上げたところ、非常に多くのリアクションがありました。このことから、当時のファンの心には今も『メタルスラッグ』のドット絵が深く刻み込まれていることや、四半世紀以上が経過した今でも評価される芸術的ドット絵であることが伺えます。
 

4-1-4. タクティクスオウガ

1995年にリリースされたRPGで、『オウガバトルサーガ』シリーズの一作でもあります。
 
プレイ上の自由度の高さや、戦略的選択肢の多さ、やりこみ要素の豊富さ、ストーリーの面白さなど、さまざまな点で評価されています。その人気の高さから2010年、2022年とリメイク版が作られており、2023年現在も新たなファンを獲得し続けているタイトルです。
 
また、システムやストーリーの秀逸さに加えて、ドット絵についても高評価を得ています。緻密で美しいうえに、動作のレベルも高く、うつむいたり振り返ったりするような動きまで盛り込まれていました。ドット絵を使ったアニメーションにはかなりのマンパワーがつぎ込まれており、そのレベルを高めるためにリリースが1年遅れたとも言われています。
 

4-2. あえてドット(ピクセルアート)で世界が描かれた最近のタイトル

ここからは、最近のタイトルでありながら、あえてドット絵を採用しているタイトルを紹介します。
 

4-2-1. オクトパストラベラー

2018年にスクウェア・エニックスがリリースした王道RPGです。ドット絵を採用していながらも、レトロさだけを強調した作品ではありません。開発時に「最新技術のドット絵」を作ることはコンセプトレベルで盛り込まれていたらしく、2Dのドット絵と3Dの背景のハイブリッドが絶妙なバランスで実現されています。
 

4-2-2. コーヒートーク

『コーヒートーク』はインドネシアのゲーム会社が2020年にリリースしたノベルゲームです。サキュバスやエルフが登場するのでファンタジー要素もありますが、バトルや冒険はありません。プレイヤーは夜のカフェのバリスタとなって客に飲み物を提供し、心地よく過ごしてもらうことを目的とします。そのため、会話劇が中心の癒し系ゲームです。
 
緻密なドット絵は、芸術性もありながらある程度の年齢の人なら懐かしく感じられることでしょう。表情やしぐさは時間をかけてしっかりと書き込まれていますから、単なるレトロ思考の作品でもありません。
 

4-2-3. Eastward

2021年にリリースされたアクションアドベンチャーゲームです。崩壊した世界で希望を持って旅する男女が主人公で、冒険アリ、心温まる展開アリ、ダンジョン探索アリ、謎解きアリとユーザーを楽しませる要素が豊富に詰め込まれています。
 
ドット絵を担当したHong Moran氏は、ビジュアルのなめらかさにこだわって、非常に多くの画像を書き込んだと語っています。背景や小物まで細かく書き込まれたビジュアルが、ユーザーのワクワク感を刺激することに貢献しています。
 

4-2-4. テラリア

2011年にリリースされて以降、自由度が非常に高いサンドボックス(砂場)ゲームの代表的なタイトルとして多くの人にプレイされています。モンスターとのバトルやサバイバルを楽しむこともできますが、探索やモノづくりを楽しむ人も多く、遊び方の幅広さが魅力となっています。
 
『テラリア』の世界を構築するブロックは破壊して再利用することができるので、自分なりに再構成することで、ある意味ドット絵作りに参加しているような気持ちにもなれます。
 

5. まとめ

ゲームにおけるドット絵について解説しました。ゲームのドット絵は、登場当時はほかに手段がなかったために選択されたものです。とはいえ1980年代には、ゲームのキャラクターが動く最新技術として、多くの人を感動させました。
 
時代が進んでドット絵以外の方法でゲームのキャラクターは描かれるようになりましたが、ドット絵は2DCGのひとつの形として評価を受け続けています。
 
ドット絵と言うと「カクカクしているし、細かい情報は伝わらない」というイメージもあるかもしれませんが、細かく書き込まれた美麗な作品も多数あるので、ぜひこの機会にドット絵を使ったゲームをプレイしてみてください。
 

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