ヒストリアが主催するUnreal Engine 4学習用コンテスト「UE4ぷちコン」。ゲーム開発会社がコンテストを開催し続ける理由とは。

 

株式会社ヒストリアはどんな会社?

ゲームエンジン「Unreal Engine」を専門として、ゲーム開発事業、エンタープライズ事業を行う株式会社ヒストリア。ゲーム、VRなどの開発事業のみならず、Unreal Engineコミュニティを盛り上げるため、定期的なイベント”UE4ぷちコン”を開催しています。
今回はヒストリア代表の佐々木様、広報担当の有末様に、”UE4ぷちコン”の開催意義や特徴、今後のご展望について詳しくお伺いしました!(※以下敬称略)

 

〇左:佐々木様  右:有末様

 

――初めに株式会社ヒストリアについて教えて下さい。

 

佐々木:株式会社ヒストリアは、”Unreal Engine”専門のソフトウェアデベロッパーです。事業としてはゲーム開発事業/エンタープライズ事業の2軸を展開しています。

 

ゲーム開発事業については、主にUnreal Engineを使用してコンシューマーゲーム、アーケードゲーム、VRコンテンツを開発しており、直近では学園ジュブナイルRPG『Caligula2』の開発を担当しています。

 

エンタープライズ事業は、近年ゲーム制作以外の用途でも注目されるようになったUnreal Engineを用いて、様々な産業にコンテンツを提供しています。建築ビジュアライゼーションソフトウェア”Solid Vision”の提供や、テレビ番組用コンテンツの制作、自動運転のシミュレーション環境の構築など、とても多岐にわたります。

 

――佐々木様のご経歴について教えてください。

 

佐々木:株式会社ヒストリア代表取締役、佐々木瞬です。
高校卒業後にアミューズメントメディア総合学院のゲームクリエイター学科に入学し、社会人になってからはずっとゲーム開発に携わってきました。
主にコンシューマーゲームのプランナー、スクリプター、エンジニア、リードエンジニア等を経験し、Microsoft社やUBISOFT社といった会社からリリースされている音楽ゲーム等も作っていました。

 

ゲーム開発に携わる中で、もっと裁量を持ってゲーム開発や組織の構築をやってみたくなり、2013年に株式会社ヒストリアを立ち上げました。

〇株式会社ヒストリア代表 佐々木様

 

――ゲームは元々好きだったのですか?

 

佐々木:ゲーム自体は小学生のころから好きでした。遊んでいたタイトルは『ドラゴンクエスト5』、『スーパーマリオカート』、『ファイナルファンタジーVII』などで、ジャンルとしてはRPG、アドベンチャーゲーム、音楽ゲームを好んでやっていました。
中学の時不登校になった時期があったのですが、特にその時に触れた多くのアニメやゲームから、多大な影響を受けました。
高校の時に進路を考えた時に、自分もゲーム作りを生業にしていきたいと思っていました。

 

――Unreal Engine専門で開発をされている理由について教えてください

 

佐々木:理由はシンプルで、Unreal Engineが好きだからというのが大きいです。
巨大なゲームエンジンでありながら、搭載された機能がそれぞれ成り立つように丁寧に設計されていて、かつ各機能同士の連携も見事に設計されています。いちエンジニアとしては、ソースコードがすべて公開されているため、それを元に勉強できる点も魅力の一つです。
また、会社を立ち上げるうえで、会社のコンセプトとしてとがったもので勝負したかったという思いもありました。Unreal Engineに特化する事で、Unreal Engine の盛り上がりと共に会社としても波に乗れたのかなと思っています。

 

――有末様のご経歴についても教えてください

 

有末:広報を担当している有末けいです。2019年12月ヒストリアに入社し、自社の関連しているタイトルの宣伝、プレスリリース、ホームページの更新、Unreal Engineコミュニティを盛り上げるイベントを行っております。
ヒストリアに入社する前は、フリーランスでゲームのイベントや番組出演などのタレント活動をしていました。

〇株式会社ヒストリア広報担当 有末様

 

――ゲームは元々好きだったのですか?

 

有末:そうですね。私は元々視力が悪くて、昔から家庭でゲームが禁止されていました。でも従兄弟がゲーム好きでこっそり一緒に遊んでくれたりしてくれて、ゲームという存在に対して特別感を感じていました。
おばあちゃんに初めて買って貰ったゲームが『トレード&バトル カードヒーロー』というゲームで凄くハマりましたね。中学の時に壊れしまったのですが、中古屋さんを巡ってお小遣いで買いなおしました。

 

あとは小学生の時に遊んだ『メイプルストーリー』。初めて触れたネットゲームで、顔も知らない年上の人とのコミュニケーション出来ることが新鮮でした(笑)。

 

――実際にゲームを仕事にしようと思われたきっかけについて教えてください

 

有末:ゲーム自体は好きでしたが、高校や専門学校に通っていたころは、ファッションに興味が向いていたこともあり、ゲームとは違った分野でのタレント活動を行っていました。ゲームは趣味の領域で、自分が仕事で関わるという事をイメージ出来なかったのです。

 

当時お世話になった人からの誘いでゲームに関わるお仕事を始めることになり、多くのゲーム好きの方との交流が増えていきました。それをきっかけにボードゲームカフェに通ったりゲームの大会に出たりと仕事だけではなくどんどんゲームにのめりこんでいきました。
この時に「もっと色んな形でゲームに関わってお仕事をしていきたい!」と強く思いました。

 

――ヒストリアを選んだ理由もお聞かせいただければと思います。

 

有末:ゲーム開発会社なのにコミュニティに力を入れている部分に惹かれました。
ゲーム開発という事業軸だけでなくゲーム開発者との関わりを大切にしていて、イベント主催や技術ブログ投稿などのコミュニティ活動に重きを置いているのが珍しいと思ったんです。佐々木が会社立ち上げ前から主催イベントを開催していたり、コミュニティ活動が好きだったというのが今もコミュニティ活動を続けている原点と聞きました。好きだから、おもしろいから続ける事を大事にしているという考えが素敵だなと思いました。
自分の人生観みたいなものなのですが、仕事もプライベートもおもしろいことや新しい事に挑戦して生きていきたいという思いがあります。それがヒストリアであれば叶えられると思い、ご縁があって入社させていただきました。

 

――会社の目指す方向性について教えてください。

 

佐々木:ヒストリアのゲーム開発事業部には“人生観を変えるようなコンテンツを”というビジョンがあります。
前述の通り、自分がゲームによって人生観を変えてもらった経験があります。ゲーム好きであれば少なからず似たような経験があるのではないでしょうか。そのような経験を世の中にもっと増やしていきたいという思いから、このビジョンを策定しました。
また、ヒストリアの価値観として、“イノベーション(革新的である)”、“カラー(一人一人開発者の色を出す)“、“シナジー(多様多種の人が協力することで新たな価値が生まれる)”という価値観が存在しています。
その価値観とビジョンを元に、会社の物事を決定しています。

ヒストリアが主催する『UE4ぷちコン』とは?

 

――ヒストリアが主催、運営しているイベントやコミュニティ活動について教えていただければと思います。

 

有末: Unreal Engine 4の学習用コンテスト“UE4ぷちコン”、週1回更新で約400回続いている“Unreal Engine技術ブログ”、参加費無料の勉強会“出張ヒストリア”の3つが毎年決まって行っているもので、それ以外にもエピック ゲームズ ジャパン様が主催する” UNREAL FEST”の1コーナーを企画から携わらせていただいたり、その他にも様々なイベント及びコミュニティ活動を行っています。
ゲーム開発やエンタープライズといった開発事業だけでなく、Unreal Engineにまつわる様々な領域で企画を練って行っています。

 

――今回のメインテーマである『UE4ぷちコン』について教えてください。

 

有末:Unreal Engine 4の学習用コンテストという事で、Unreal Engine 4を学ぶきっかけや、新しい技術を覚えるきっかけに利用して欲しいというコンセプトで開催しております。
年に2,3回開催しており、ゲームや映像を始めとするUnreal Engineを用いた作品を応募していただいております。

 

――コンセプトを”学習”にした理由について教えてください。

佐々木:Unreal Engine 4は2014年にリリースされましたが、当時はまだ一部を除いて知名度が低いゲームエンジンでした。業界人は最先端の機能と技術が搭載されている事を知っていましたが、デモがハイエンド寄りのため初学者にとってはどうしても“敷居が高い”というイメージを持たれてしまうので、その敷居を下げたいという思いがありました。

 

当時、Unreal Engineに注目していただいても、ダウンロードをしてサンプルを眺めて終わりになってしまう人が多いのではないかと思ったこともきっかけの一つです。ゲームエンジンは自分で何かを作ってみて初めて理解が進むものなので、コンテストという形式で1作品を作るきっかけになればと。
またUnreal Engineのイメージとして、ハイエンドでしか使わないというイメージが多少あったと思います。そういったイメージを払拭し、趣味で少し触ってみようと思える雰囲気を作りたかった事もあり、「ぷちコン」というキャッチーな名前にしました。

 

――開発期間はどの程度設けていますか?

 

有末:大体1カ月半くらいですね。1つの作品を作るうえで、期間が短すぎると学習としては期間が短く、長すぎると“大作を作らなければいけないのでは?”という疑念が生まれ、参加するための敷居が上がってしまいます。
そのため、初学者でもなんとか1つの作品を完成できるくらいのちょうどいい期間で行おうということで1カ月半としています。開発に一定の時間を割ける様に、大型連休をなるべく挟んで開催することも心掛けています。

 

――直近の開発テーマは“かわる”というテーマでしたが、テーマはどのように決めていますか?

 

有末:テーマ決めには2つのパターンがあります。1つ目はテーマの言葉がいろいろな意味に捉えられるというパターンです。例えば第13回だと“さく”というテーマだったのですが、人によって“花が咲く”、“柵”、“サクサク”などさまざまな形に派生すると思います。着眼点が参加者によって違うので、我々も毎回驚かされています。
2つ目はさまざまなゲームデザインのアイデアが浮かびやすい様に意識したパターンです。今回の“かわる”を始め、”ループ”や”60秒”などがそれにあたります。
2パターン共に初心者でも考えやすいか、使いやすいアセットはあるかなどの点も気を付けて最終的にテーマを決定しています。

 

〇第15回UE4ぷちコン 最優秀作品『入替人-Replacer-』

 

〇第15回UE4ぷちコン 準最優秀賞作品『Depths Chain』

 

 

――どのような方が“ぷちコン”に参加されていますか?

 

有末: 約3分の1が学生で、残りは社会人です。また、3分の1以上の方が初参加です。参加者のうち、約半数の方がUnreal Engine歴1年未満の事もあり、Unreal Engineを学習するきっかけにお使いいただけているのかと思います。

 

佐々木:肌感だと常連参加者が多いと思っていたのですが、統計を取ってみるとそうでもありませんでした。そういった意味では、敷居を下げたいという目的は果たせているのではないかと思っています。

 

その他、ゲーム業界の人ばかりというわけでもなく、ゲーム業界外の方も多く参加され、よく受賞もされています。
また、ゲーム業界でもサウンドクリエーターやシナリオライターといった職種の方が、この機会にプログラムやグラフィック制作を勉強したいと参加いただくケースも少なくありません。

 

――“ぷちコン“がきっかけでゲーム業界へ進む人は多いのでしょうか

 

佐々木:“ぷちコン”に参加する事でポートフォリオが出来るので、新卒だけでなく中途の方でも未経験からゲーム業界へ進むきっかけになったという声はちょこちょこお聞きします。
イベントの時に「“ぷちコン”に参加したおかげでゲーム会社に入社出来ました、ありがとうございます!」という声をもらうことがあるのですが、やっててよかったと、とても思う瞬間です。
自分自身、“ゲーム業界の人口を増やしたい”という思いがあるので、そういう間近な声を聞けるのはモチベーションに繋がります。もちろん、本人のポテンシャルと努力が大前提としてありますが、それを発揮する機会の1つに“ぷちコン”がなれたというのは、開催している意義もあったのかなと。

 

――“ぷちコン”の審査基準について教えてください

 

有末: “総合完成度”、“オリジナリティ”、“UE4使いこなし度”、”映像クオリティ”、“テーマに沿ってる度” を基準に審査を行っていて、その5つの基準もサイトで公開しています。

 

佐々木:最優秀賞は総合力が高い作品が選ばれることが多いです。最近ですと、第15回最優秀賞の「入替人 -Replacer-」はそのまま販売されていてもおかしくないレベルです。
ただ、総合力がないと受賞しないかというとそうではなくて、アイディアが秀逸だったり、Unreal Engineの使いこなし方が突出していたりと、目立つ何かがあれが受賞のチャンスはあります。たとえば、第6回受賞の「飛翔」という作品は、単純なのにシュールさが極まっていて、いまでも忘れられない1作です。
とはいえ、あくまで学習用コンテストなので、参加賞目当てで参加いただけると嬉しいです(笑)

 

――参加者もかなり多くなってきましたか?

 

佐々木:そうですね、直近の開催時は春開催のぷちコンの中で一番参加者が多かったですし、Unreal Engineの広まりとともに年々増えていってます。

 

ゲームを一つ作り切るのはかなりの労力がいる作業です。それ故に、ぷちコンのために参加者の方々がしっかり作ってきてくれるのは嬉しいです。Twitterで作品の進捗を共有してくれたりする方もいらっしゃいます。
ゆるいコミュニティですが、主催、スポンサーの方々、参加者がゆるく繋がって情報交換をする事で、周りにもっと併走感を持たせていきたいなと思っています。

数々の協賛企業/学校から支えられる“ぷちコン”の今後について

 

――“ぷちコン“は毎回沢山の団体から協賛を受けていますね。

 

有末:そうですね。スポンサーの方々にも“ぷちコン”を盛り上げていただいていて、今回のイベントだとエピック ゲームズ ジャパン様も含めると全18社に参加いただいています。
スポンサーの方々も“ぷちコン”のTwitterや動画をかなり見てくれていまして、直接メールで「この作品が好きでした!」と報告してくださる方もいます。

 

――支援をしてくださる理由はどんな点だと思いますか?

 

佐々木:もちろん自社の製品PRという思いもあるとは思うのですが、”面白い取り組みですね!“と言って頂く事が多く、コミュニティ活動を応援する意味合いでも協賛して頂いているのかなと思います。

 

ヒストリア、スポンサー/学校の方々、参加者の3者全体で盛り上げようという空気ができているので、更にこの輪を広げていきたいですね。

 

――“ぷちコン”の今後の展望について教えてください

 

有末:先日初めてUnreal Engine初心者として自分もぷちコンに参加しました。実際に参加してみて、1つの作品を作ることの大変さ、そして完成した時の達成感を実感しました。その経験を経て、皆さんの制作の助けとなるような技術ブログやUnreal Engine初心者に向けたコンテンツを増やしていきたいと感じました。
学生の参加者も増やしていきたいと考えており、UE4ぷちコン アカデミックパートナー校にUnreal Engine 4初心者向けの冊子を配布しておりますが、まだまだリーチが少ないと感じているため強化していきたい点の一つです。

 

佐々木:裾野が広いコンテストにしていきたいですね。Unreal Engineの敷居は下げつつ、Unreal Engineガチ勢の方々でも楽しめる、両方の層がいるからこそ価値がある”お祭り”にしていきたいです。
一般的なコンテストって、上を目指す事が目的のことが多く、スポットライトが当たるのも上の層が多いと思います。しかし、“ぷちコン”はあくまで”学習用のコンテスト”です。上級者でも初学者でもどこにでもスポットが当たるというのは、“ぷちコン”の重要な部分だと思います。
それでいて同時にすごい人もいて、そんな人や作品に憧れたり、切磋琢磨するような場でいられたらいいなと。

 

ぷちコンは、私と有末以外にも、毎回ぷちコンに使えるテーマにちなんだブログの執筆や、ゲームジャムや生配信、景品の発送などを、ヒストリアの開発メンバーやバックオフィスメンバーにも協力してもらっています。今後もこの運営チームでもっと楽しいイベントにしていけたらと思っています。

 

またそれと同時に、Unreal Engineの広がりがそのまま“ぷちコン”の広がりに繋がると思っています。アカデミックパートナーの皆様との連携や情報提供をはじめ、Unreal Engineをもっと多くの方々に触れてもらうための活動は今後も行っていきたいです。
Unreal Engine 5も発表され、注目度はどんどん高まっていくので、我々も一緒に業界全体を盛り上げる活動していきたいですね。

 

――ありがとうございました!