札幌のゲーム会社が勢揃い!「Sapporo Game Camp 2024」がついに開催。ゲームのまち・札幌を体感できるイベントがここに

コロナ禍による巣ごもり需要やインバウンドの影響もあり、今や国内の市場規模は2兆円を超える(ファミ通ゲーム白書)ゲーム業界。若手人材の教育や採用活動はどの会社にとっても至上命題となっているが、それらを市と連携して取り組んでいるのが、「Sapporo Game Camp 2024」だ。

 

2024年10月11日〜13日(サッポロファクトリー)で行われる本イベントは、札幌市と株式会社 セガ札幌スタジオ、市内のゲーム会社らによる実行委員会のもと開催される。札幌のゲームクリエイターの育成と、デジタルエンタテインメントの振興が目的となっており、プロのクリエイターたちと参加者が一緒のチームでゲームを作る「Game Jam」、大人気ゲーム『ぷよぷよ』の開発体験ができる「プログラミング講座」など、さまざまな取り組みが行われている。

 

今年で3回目の開催を迎える「Sapporo Game Camp 2024」。2024年9月に開催された東京ゲームショウ(以下、TGS)にも出展した本イベントについて、実行委員会である株式会社 セガ札幌スタジオの研究開発部部長・高柳智朗さんと、札幌市経済観光局産業振興部の田代純一朗さんに話を聞いた。

〇右:株式会社 セガ札幌スタジオの研究開発部部長・高柳智朗さん
〇左:札幌市経済観光局産業振興部の田代純一朗さん

※2024年TGSにて

 

札幌には、ゲーム開発の素地がある「Sapporo Game Camp 2024」開催までの道のり

近年、北海道札幌にはゲーム開発やCGアニメ制作企業等、コンテンツ関連の企業が集積しており、新たな企業の進出も加速し続けている。こうしたなか、市内のゲーム産業を盛り上げるためにゲーム会社と札幌市が連携し、2022年にSapporo Game Camp実行委員会が発足した。

 

「2021年に株式会社セガさんが札幌にスタジオを構えたことが、Sapporo Game Camp開催の大きなきっかけになりました。もともと札幌は株式会社ハドソンの本社があった地であり、ハドソンを退職した人たちが市内で起業したり、クリエイターとして活躍ていたりと、ゲーム開発の素地が整っている土地でもあります。セガ札幌スタジオさんが進出してきてくれたことでその気運が再度盛り上がり、より札幌のゲーム産業を盛り上げようということで、関係各社も交えた実行委員会発足しました」(札幌市・田代さん)

 

一度のイベント開催であれば企業の力だけでも可能かもしれない。だが、市内のゲーム産業を盛り上げ、更に教育を行うとなると、市だけでなく多くの団体による協力が必要となる。札幌市と株式会社 セガ札幌スタジオの他、株式会社ロケットスタジオ、株式会社インフィニットループなど市内のゲーム企業らが一致団結することで、2022年の初回イベント「Sapporo Game Camp2022」が開催されることになる。さらに、当初イベントの話が固まったのは夏休み直前。更に準備開始が8月だったこともあり、2か月という限られた時間で急ピッチで準備が進められることになった。

 

「2022年の初回開催時は、チームでゲーム開発を行うGame Jam、『ぷよぷよ』の開発体験ができるプログラミング講座×eスポーツ体験会をプログラムに取り入れました。『ぷよぷよ』はセガの方でパッケージ化されているので効率的に準備できる部分もありましたが、札幌市内からどれだけの人が集まるかは不安でした。

そんな中、セガの広報部の助けもあり、開催してみたら多くの学生たちが集まって頂けました。次の年はもっと規模を大きくしたいと思い、準備も1年かけてしっかり行った結果、2023年のイベントは3日間で約1,000人、前年と比べて2倍以上の人が集まってくれました」(セガ札幌スタジオ・高柳さん)

〇Sapporo Game Camp 2023の様子

 

2022年の経験を活かし、翌年2023年にはトークセッションプログラムも開催したSapporo Game Campは、その年からTGSへの出展が開始された。運営協力企業も現在は15社となり、今年も多くの人々がブースに来訪する形となった。

 

運営協力企業※50音順(すべて札幌市内のゲーム会社)

株式会社アドグローブ/株式会社インフィニットループ/株式会社エイティング/株式会社キングポーン/株式会社グルーブボックスジャパン/ゲームドゥ有限会社/株式会社サイクロンゼロ/株式会社ジーアングル/株式会社ジースタイル/株式会社 セガ札幌スタジオ/株式会社トライシス/株式会社ハ・ン・ド/株式会社pixyda/株式会社HiBiGA/株式会社ロケットスタジオ

“自分にもゲームが作れる”という成功体験を。ゲーム開発プログラム「Game Jam」

10月11日(金)から始まるSapporo Game Camp 2024ではさまざまなプログラムが行われるが、中でも開催初期から続いているメインコンテンツが「Game Jam」である。

 

今年のGame Jamは、参加者総勢100数十名を1チーム約8名の16チームに分け、10月12日(土)〜13日(日)の2日間でゲームを完成させるプログラムだ。参加するのは札幌市のゲームクリエイターを志す学生が多く、各チームには運営協力企業のプロのクリエイターが2人ずつ参加のうえ、テーマに沿って2日間でゲームを開発する。イベントの中でも特に好評で、開催当初は8チームだったのが、現在ではその倍の規模になっている。

 

またGame Jamは開発テーマが毎年変わり、初回開催時のテーマは「rebuild」、翌年開催時は「増殖」がテーマになっていた。ただ、テーマ発表時には会場のスクリーンに文字だけが提示され、その解釈は各々のチームが考えることになる。そのため去年の「増殖」というテーマでも、プレイヤーが増殖し続けることで得点を稼ぐゲームや、増殖する障害物を排除していくようなゲームなど、チームによって特色が出る。

 

「テーマは毎年、実行委員会のMTGで決めますが、私もまだ(取材日:9月27日)分かっていません。ただひとつだけ傾向を言うと、’22年のテーマは札幌の再開発が盛んになってきたという意味でのrebuild、’23年は札幌の人口が増えてきたことを指す増殖など、札幌市の時勢と絡めたテーマが多いですね」(セガ札幌スタジオ・高柳さん)


〇東京ゲームショウ2024にも出展された、2023年の「Game Jam」作品

 

イベント当日は、開会セレモニーの中で10時ごろにテーマが発表され、作業開始となる。昼過ぎまでには中間報告として各チームの開発コンセプトを発表せねばならず、企画は実質2〜3時間で決めることになる。翌日の夕方前にはゲームを完成させ、遊べる状態にしないといけないため、スケジュールはかなりタイトだ。

 

「リッチなゲームを作るのではなく、限られた時間で何をして、どこを削り、どこを尖らせるのかが問われます。またゲームの完成度で順位づけを行うことはしておらず、いうなれば完成させた全員が勝者です。2日間でゲーム開発を楽しんでもらい、完成させた成功体験を味わい、他のチームのゲームを見て刺激を貰う…。このプログラムを通して、学生たちにゲーム開発の楽しさを知ってもらいたいと思います」(セガ札幌スタジオ・高柳さん)

 

チームに入る運営協力企業のメンバーは、基本的にはチームの軌道修正や質問への回答を行うことがメインの役割。ただそのメンバーにも特色があり、あるチームにはデザイナー、あるチームにはプログラマーなど職種もさまざま。会社も違い開発への考え方も多岐にわたるため、各チームに入るプロにとっても学びのあるプログラムとなっている。

都市の利便性と自然の恵みを味わえる、北海道札幌市

札幌で開催されるSapporo Game Camp 2024は、去年・今年と続けてTGSに出展している。イベント認知も目的のひとつだが、そこにはもう一つの狙いがある。

 

「札幌市としては、“ゲームのまち・札幌”をより多くの人に知ってもらいたいと考えています。そのため、まずはたくさんのゲーム企業に札幌という土地に興味を持ってもらい、会社設立を検討している企業に、札幌に進出してもらうきっかけにしたいと考えています」(札幌市・田代さん)

 

「企業としては、中途・新卒問わず求職者の人たちに、札幌で働くことをイメージしてほしいです。興味を持っている方々に話を聞いてみると、北海道の仕事や生活をイメージできないという方もいらっしゃいます。ゲーム会社がどれくらいあるのか分からない方もいるので、どんな土地で、どんな会社があり、自治体や企業がどんな取り組みを行っているかをしっかり訴求したいと思い、TGSの出展も行っています」(セガ札幌スタジオ・高柳さん)

ブースには多数の資料が置かれ、札幌市の補助金制度/企業進出ガイド/札幌のゲーム会社がまとめられたパンフレットなどを来場者が眺める。札幌市では2030年ごろまでに大規模な再開発が続々と計画されており、持続可能な都市の実現に向けた制度も創設されるなど、成長著しい土地でもある。

 

また札幌市に企業・求職者が進出するメリットは、経済的・制度的な部分だけではない。生活するうえで重要となる住環境が非常に優れており、自然豊かな環境と都市部の利便性を兼ね備えていることで、働くメリットも非常に大きいのだという。

 

「私の生まれは新潟なのですが、大学入学を機に札幌に移住しました。あまりの居心地の良さに“どうすればずっと札幌市に住めるだろう”と考えた結果、今は札幌市役所で働いています。 

最近は日本も夏場の暑さが厳しいですが、北海道は夏でも30℃を超えることはほとんどありません。また冬は寒いイメージがあると思いますが、街全体が気候に対応したつくりになっており、電車から外に出ずともオフィスに向かえるようになっているところも多くあります。通勤時間も短く生活費も首都圏に比べて安いことも魅力の一つです」(札幌市・田代さん)

 

首都圏であれば、通勤時間が往復2時間を超えてしまう場合も少なくないが、札幌市街にはたくさんのゲーム会社が集まっていることもあり、どの会社に就職しても通勤に時間はかからず満員電車も少ない。可処分時間が増え、賃料も安く、精神的な安寧も担保されている点は、特に社会人であればどれだけ重要なことか想像がつくだろう。

 

「私は生まれが東京で、セガに入ってからアメリカ、上海、そして札幌と色んな土地で過ごしましたが、圧倒的に札幌市が好きです。みんなで集まろう!となると、直ぐにすすきのに集まれるので、人同士の距離も近く、街全体の雰囲気が心地良いです」(セガ札幌スタジオ・高柳さん)

札幌市のゲーム人材を底上げする─Sapporo Game Camp 2024を、ぜひ会場で

いよいよ今週11日(金)に開催となるSapporo Game Camp。今回はメインイベントのGame Jam、ぷよぷよのプログラミング体験やeスポーツ大会、トークセッションに加えて、「CG講座」が行われる。小学生・中学生・高校生が対象となっており、イベントとしては初の取り組みとなる。

 

また今回は、イベントに馴染みがないという人も気軽に立ち寄れるよう、さまざまな人が行き交う「サッポロファクトリー」にて行われる。

 

「会場をオープンな場所にしたのは、Sapporo Game Camp参加者以外の人々がどれくらい関心を持ってくれるかを検証するためのチャレンジでもあります。実は一度、チ・カ・ホ (札幌駅前通地下広場)で1日だけGame Jamでつくられたゲームの展示&試遊会をやったのですが、多くの人が足を止めてくれました。

 

展示会ではGame Jamに参加した学生にボランティアで入ってもらうのですが、自分が作ったゲームを一般の人にプレイしてもらい、ユーザーの生の反応を見る事が出来るので貴重な体験になります」(セガ札幌スタジオ・高柳さん

 

なおSapporo Game Campではイベントとは別に、ゲーム業界への就職を目指す学生等を対象に、プロのゲームクリエイターをレビュワーとしたポートフォリオレビュー会を月1で開催している。こうした活動を継続していくことで学生の成長が目に見えて分かり、企業側の参加者たちも刺激を受けることが多い。

 

就職活動時に非常に重要となるポートフォリオだが、現場で働くプロが直接見て意見を伝えることで、ポートフォリオの質が上がるだけでなく、学生たちの意欲も上がる。また、企業側としては早期に学生へ自社のことをアピールでき、採用活動にも繋がるということで、学生と企業の双方にメリットがある。

 

「ゲーム業界で働きたい学生たちは、“何を学べばいいのか分からない”と悩んでいるひとも沢山いて、そうしたひとたちがすぐに相談できる機会を作ってあげたいです。学生にとっても就職に繋がり、企業としても優秀な若手の採用に繋がる…。そして札幌市としては、人材の流出を防ぐこともできます。

 

また札幌市外の学生だけでなく、市内に住む学生にとっても、自分の街にこれだけのゲーム会社があるという事実を知らない人もいます。市内のゲーム企業のアピール、学生たちの教育のフィールドとなるのが、Sapporo Game Campなです」(セガ札幌スタジオ・高柳さん/札幌市・田代さん)

 

学生たちの育成や企業の採用を促進させ、札幌市の人々や観光客にも“ゲームのまち・札幌”を訴求できる重要な取り組みとなるSapporo Game Camp 2024。札幌市のゲーム人材の底上げにも繋がる本イベントは、10月11日(金)〜13日(日)にサッポロファクトリーで行われる。

 

札幌市内の人も、遊びに行く人も、札幌の地で巻き起こるゲーム業界の新風をぜひ、その目に焼き付けてほしい。

 

 

イベント概要

イベント名:Sapporo Game Camp 2024
開催日:2024年10月11日(金) – 13日(日)
会場:サッポロファクトリー(札幌市中央区北2条東4丁目)
公式サイト:https://sapporo-game-camp.com/
主催:Sapporo Game Camp 実行委員会(構成員:株式会社 セガ札幌スタジオ/株式会社インフィニットループ/株式会社ロケットスタジオ/株式会社ボーンデジタル/一般財団法人さっぽろ産業振興財団/札幌市)

 

■Sapporo Game Camp実行委員会とは?

Sapporo Game Camp実行委員会は、札幌市内のゲーム開発企業を中心に未来のゲームクリエイター育成のために活動している団体です。2022年より、「Sapporo Game Camp」を開催するほか、2023年からは、学生と企業の接点を作る取り組みである「ポートフォリオレビュー会」などを継続的に実施し、企業と学生をつなげながら、札幌市、ひいては北海道のエンタテインメントを盛り上げる活動を行っています。