『マジック:マナストライク』は失敗作?面白いゲームを作る上で念頭におくべきこと


ゲームを面白くする上で重要になるのが、ゲームバランスはもちろんのこと、ゲームそのものの遊びやすさです。

硬派なゲーム性ながら、そのブランドや戦略性の高さからコアゲーマーから評判を集めている『マジック:マナストライク』の例を見てみましょう。

 

MTGを元にした『マジック:マナストライク』

『マジック:マナストライク』は、大人気カードゲームである「マジック・ザ・ギャザリング(MTG)」を原作とするゲームです。

公式ページ:https://manastrike.com/ja

 

大人気カードゲームのMTGが原作

『マジック:マナストライク』の名前を聞いたことがなくとも、「マジック・ザ・ギャザリング」であれば聞いたことがあるという人は多いのではないでしょうか。

 

1993年にアメリカで誕生したカードゲームであるMTGは、世界で最も長く遊ばれているカードゲームとして、地域を問わず多くのファンを抱えています。

独特のダークファンタジーな世界観や印象的なカードのイラストは多くの人を魅了し、今も高値で取引されるカードもあるほど、存在感のあるゲームの一つです。

 

『マジック:マナストライク』はそんなMTGの世界観を踏襲し、カードゲームの世界を3Dで再現。

立体的なストラテジーゲームとして、より没入感のある作品に仕上がっています。

 

ゲームシステムはクラロワ系

『マジック:マナストライク』は、大人気ストラテジーゲームの『クラッシュ・ロワイヤル』に近しいゲームシステムを採用した作品となっています*1。

 

クラッシュ・ロワイヤル、通称「クラロワ」は、カードデッキを用意し、そこから召喚できるユニットを用いて相手のタワーの破壊を目指すストラテジーゲームです。

 

ゲーム時間の経過により、エリクサーと呼ばれるユニット召喚のためのコストが蓄積され、それらをやりくりしながら勝利を目指す駆け引きに、多くの人が夢中になっています。

 

『マジック:マナストライク』はそんなクラロワを踏襲したゲームシステムになっており、クラロワ同様、エリクサーの代わりにマナを消費し、デッキからユニットを召喚しつつ、相手陣地の石像の破壊を目指します。

 

クラロワに馴染んだプレイヤーはもちろんのこと、クラロワ未経験でもMTG経験者なら、おなじみのキャラクターや呪文をゲーム中では使用することができるため、親しみやすさを覚えることができるでしょう。

 

こういったスピンオフゲームの魅力は、何と言っても普段では見ることのできないキャラクターたちの躍動を実感することができる点にあります。

ファンサービスが旺盛なのも、『マジック:マナストライク』の魅力の一つです。

 

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『マジック:マナストライク』が抱えてしまった問題点

『マジック:マナストライク』は確かにファンには嬉しいスピンオフゲームと言えますが、一方でカジュアルゲーマーにとっては気になってしまう点も残しています。

 

複雑すぎるゲームルールと楽しみ方

第一に、『マジック:マナストライク』は初見のプレイヤーには難しすぎるゲームシステムとなってしまっているのが目につきます*2。

 

もともと、MTGはタクティカルなカードゲームであるとはいえ、スピンオフ作品である『マジック:マナストライク』ではまた新しいゲームルールが採用されているため、プレイヤーの理解力の速さが試される部分が大きすぎる節もあるのです。

 

それぞれのカードに応じて細かな能力設定がいくつも用意されているため、カジュアルに楽しめるようになるために時間を要してしまうのです。

 

クラロワに慣れていればそこまで戸惑うこともないかもしれませんが、クラロワをプレイしたことがある前提でゲームが進められてしまうように窺えることもあり、プレイヤーの負担はやや大きいようにも見えます。

 

ただしコアなゲームファンの心は掴む

ただ、こういった複雑で奥が深いゲームは、カジュアルゲーマーではなくコアゲーマーの心を掴む仕様であるともいえます。

 

やればやるほどルールが理解できるようになり、ゲームをうまく進められるようになれば、いつまでも遊べる名作になる可能性を秘めています。

 

難易度が低すぎても、高すぎてもいけないバランス感覚は、万人受けするゲームには欠かせないセンスと言えますが、コアゲーマーをターゲットにするなら、多少難しすぎるくらいの方がファンの心を掴みやすいと言えます。

 

『マジック:マナストライク』に学ぶ、面白いゲームの「ちょうど良さ」

コアゲーマーには受け入れられ、カジュアルゲーマーに敬遠される『マジック:マナストライク』ですが、このバランスはいかにして乗り越えるべきなのでしょうか。

 

システムは複雑にすれば良いものではない

一つは、ゲームシステムは難しくすればするほど面白くなるというものではないことです。

コアゲーマー受けする難しさというのは、あくまでも理解の範疇の中で提供されるべきであり、あまりに突飛なルール、例えば一手間違えると即ゲームオーバーなのに、正しいプレイングのプロセスが難しすぎるなど、ゲームの興を削いでしまうような仕組みはNGです。

 

『マジック:マナストライク』はクラロワをプレイしたことがあることを前提に作られているため、クラロワをやったことがある人にとっては程よいアレンジの効いた難しさ、未プレイの人にはやや難しいが、覚えると楽しいというバランス感覚を維持している点で優れているゲームと言えます。

 

コアゲーマーとカジュアルゲーマーのニーズをうまく汲み取る

そして、自分のゲームがどういった層に受けるのかということも、あらかじめ把握しておく必要があります。

 

MTGはもともとコアゲーマーが集いやすいカードゲームでもあるため、『マジック:マナストライク』にもそういった層のゲーマーが集うことが想定できます。

 

その前提があったからこそ『マジック:マナストライク』は、やや複雑なルールでも一定のプレイヤー層を構築できるという予測から、カジュアルゲーマーには厳しいルール設計でリリースに至ることができたのでしょう。

 

どういったプレイヤーに遊んで欲しいのか、そもそも自分の作るゲームや、自分が好きなゲームはどういったターゲットをコアに選んでいるのかを把握すれば、自ずとメインターゲットというものは決まってくるものです。

 

おわりに

面白いゲームというのは人によって異なるものですが、それはそのプレイヤーがどのようなゲームを求めているかによっても変わります。

 

自分が最も遊んで欲しいプレイヤーはどんな人たちなのかをイメージすると、正しく遊んでもらえるプレイヤーに届けやすくなることは間違いありません。

 

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出典:

*1 ゲームキャスト「プレイヤーに覚悟を求め、相応の面白さを与える『マジック:マナストライク』レビュー。思った以上に『マジック』で、それゆえに難しい」

http://www.gamecast-blog.com/archives/65957146.html

 

*2 上に同じ

 

ライター名:Satoru Yoshimura

プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。

 

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