人気シューティングの『たわし』から学ぶ、「本物」のゲームの作り方
多くのスマホゲームが日夜リリースされ、面白い作品を探すのが難しくなってきている昨今ですが、『たわし』はそんなゲームラッシュの中でも埋没しない、個性的なキャラクターを放つ作品となっています。
目次
古き良き時代のシューティングを再現する『たわし』
このゲームはいわゆる2Dシューティングゲームですが、雰囲気だけにとどまらない、まるで1990年代にタイムスリップしたかのようなプレイングを楽しめるのが特徴です。
公式ページ:https://tawashi.mutoys.com/
キャラはゆるいがゲームは硬派
『たわし』という気の抜けたネーミングもさることながら、登場キャラクターもどこか懐かしい、ファンシーないでたちが特徴のこのゲームですが、内容は弾幕系の2Dスクロールシューティングとなっています。
次々と現れる敵キャラクターたちに接触してしまうとダメージを受けるのはもちろんですが、迫り来る弾幕を回避しつつ、相手を攻撃しなければならないスリルと爽快感は、まさに往年のシューティングゲームそのものです。
ゆるキャラたちが繰り広げるシューティングゲームの緊張感は、その組み合わせのギャップから、多くの人を魅了するでしょう。
シューティングファンも大満足の内容に
このゲームは弾幕の激しさが何よりの魅力となっており、古くからのシューティングゲームファンをがっかりさせない仕上がりになっているのが特徴です。
敵機と自機の判別、そして弾幕の把握は非常に明瞭となるよう作られており、目まぐるしく展開されるゲームプレイ中も、自機を見失ってしまう心配はありません。
弾幕系シューティングはプレイヤーの技量以前に、途中で自機を見失ってゲームオーバーとなってしまうこともあるものです。
このゲームではそういった不慮の事故のリスクは小さく、プレイヤースキルを全力でぶつけてプレイングにあたることができるため、ストレスは最小限度に留められています。
ステージ数は5つと、スマホゲームとしては平均的なボリュームにとどまってはいるものの難易度の幅広い変更が可能ということで、初心者から上級者まで、誰でも何度でも楽しめるよう設計されているのが嬉しいところです*1。
最高難易度でどこまで進められるか、そしてどこまでハイスコアを目指せるかという、昔ながらのチャレンジを、心ゆくまで楽しめます。
併せて読みたい記事
→2Dシューティングゲームの設計に見る、国内外プレイヤーのニーズ
→一番最初のFPSタイトルを知ってますか?【ゲームジャンル研究部 第2回】
『たわし』が放つ本物のシューティングらしさの正体
レトロゲームリバイバルを狙う作品が数多く出回る中、なぜ『たわし』がその中に埋没しない個性を有しているのでしょうか。
イラストは本当に90年代に描いたものを使用
このゲームは90年代風のイラストとキャラクターが魅力の一つですが、面白いのはこれらのキャラクターが本当に90年代に描かれたものであるという点です*2。
製作者本人が、90年代に手動でドットを打ち込み、当時の空気感をそのままに現代のゲームへと採用するという手法は、手軽に他のクリエイターが真似できる所業ではありません。
また、90年代風のゲームやキャラクターデザインを行うことはできても、所詮は「90年代風」にとどまり、今の時代にリバイバルを行なっても、どことなく「今っぽさ」が現れてしまうものです。
一方の『たわし』は90年代のイラストをそのままスマホゲームに移植した作品となっているため、90年代の空気感を如実に残したゲームに仕上がっています。
90年代の作品をスマホに移植したわけでもありませんから、『たわし』は90年代と現代らしさが融合した独特の空気感を秘めているところが魅力になっているのです。
スマホゲーらしからぬ難易度
また、このゲームはスマホゲーとしては非常に高い難易度でプレイできるところも押さえておきたいポイントです。
アーケードゲームが主流だった90年代前後の時代では、何度もプレーヤーにリトライを強要するため、比較的難易度は高めに設定されていることが多かったものです。
しかしながらスマホや家庭用ゲームが主流の現代では、プレイヤーに満足感を与えることに重きを置いているため、難易度は全体的に低くなってきている傾向にあります。
しかし『たわし』はそういったトレンドと逆行し、アーケードゲーム全盛の時代のような高難易度でのプレイングを実現してくれており、何度もゲームオーバーを繰り返して上達を繰り返す、90年代当時のプレイングをも再現させているのです。
暇つぶしではなく、「本物」のゲームとして遊んでもらうために
このゲームの個性は単なるユニークさにとどまらず、コアなゲームファンの心を掴むのにも一役買っているのが特徴です。
個性的で真正性のあるビジュアル表現
このゲームが特徴としているのは、90年代に描かれたキャラクターをそのまま使用しているところですが、90年代を「復活」させたのではなく、現代になって初めて日の目を浴びたことで、まるで30年近くかけて制作していたかのような真正性を伴うこととなりました。
90年代に自作で販売していては他の作品に埋もれていたかもしれませんが、意図していたにしろしていないにしろ、何十年も作品化がお蔵入りになっていたことで、「こんなゲームあったなぁ」というコアなファンの心をつかむことに成功しています。
当時人気だったゲームの復刻版作品も数多く存在しますが、何度もリメイク、再販されている作品は、どことなく手垢のついた印象も受けてしまうものです。一方の『たわし』は現代に突如として登場した「90年代の生き残り」として、どのようなゲームか想像もできない好奇心もくすぐってくれるのです。
プレイヤーに迎合しないゲーム作り
そして何より、『たわし』はその難易度によって、プレイヤーに決して迎合しない作品として、コアゲーマーの心をつかむことにも成功しています。
何度も遊べる、何度もリトライして攻略法を編み出す楽しみを、現代に復活させているともいえるでしょう。
すでに遊んだことのある懐かしのゲームなら、「こうきたらこう」というセオリーが頭の中に残っていることもあるものですが、『たわし』という完全新規のゲームでは、こういったことができないため、かえってそれがプレイヤーに新鮮さを与えているのです。
おわりに
『たわし』は確かに懐かしさのあるゲームではありますが、90年代当時には誰も遊んだことのないゲームでもあります。
このゲームの懐かしさがどのようにして構築されているのかを考えることは、名作を名作たらしめている要素を理解する上で、大きなひらめきを与えてくれるはずです。
併せて読みたい記事
→『アーチャー伝説』に学ぶ、飽きないゲームの作り方
→ポケモンに学ぶ、学校では得られないゲーム作りのアプローチ
→難しいほど面白い?『Getting Over It』にみるプランナーが考えるべきゲームの作り方
出典:
*1 ゲームキャスト「199X年シューティング『たわし』がiOS/Androidに登場。見た目は緩くも、シューター向けのネタと面白さが光る良作」
http://www.gamecast-blog.com/archives/65957485.html
*2 上に同じ
ライター名:Satoru Yoshimura
プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。
ゲーム業界経験者が転職するなら
GAME CREATORSを運営しているリンクトブレインでは、ゲーム業界に特化した転職エージェントサービスを提供しています。
ゲーム業界に精通したコンサルタントが、非公開求人を含む3,400件以上の求人の中から、あなたの希望や適正にあった最適な求人をご紹介します。
あなたの転職活動を成功に導くためにサポートいたしますのでお気軽に登録してください!