『Reigns』に学ぶ、スワイプの「重み」が大きくなるアプリの作り方
スマホゲームやアプリではおなじみのスワイプ操作は、感覚的な操作を可能にする手段として人気の高い操作方法です。
しかしRPG作品の『Reigns』においては、従来のスワイプよりも大きな重みの伴う操作感を実現しています。
目次
転生モノの国王RPGを楽しめる『Reigns』
今作ではプレイヤーが選択肢を選びながら、その結果に応じてストーリーが変わってくるという、マルチエンディングな物語が展開されます。
昔懐かしい紙芝居方式のRPG
歴史とは多くの人間の死によって紡がれるとも言えますが、プレイヤーは呪われた一族の末裔となり、祖先である王たちがいかにして国を統治してきたのかを、回想しながら振り返るゲームです*1。
しかし振り返るというのはあくまでもゲームのストーリー上の話。
実際のプレイにおいては、自らが国王となって、あらゆる判断が委ねられる立場から物語は進みます。
現代とは打って変わって、当時の国王というものはあらゆる判断を求められる重要な立場でもありました。
軍事や政治、財務に人民と、各大臣がその仕事をサポートするとは言え、最終決定権は常に王のもとにあります。
今作では、基本的にそんな最終決定をYesとNoで提示することにより、物語が進む仕組みとなっています。
イエスかノーかを選ぶだけであれば簡単なもののように聞こえますが、究極の二者択一を常に迫られる緊張感は、独特の遊び心地と言えます。
何度も転生し、最高の国づくりを目指せ
常に大きな決断を選ばなければならない国王としての務めは、常に最善の結果につながるとは限りません。
時として大きな失策へと繋がり、王国の崩壊や、自身の運命に多大な影響を与えてしまうこともあるものです。
他国からの侵略や、人民のクーデターなど、王としての責務を果たせなければ、悲惨な最後が待ち受けています。
このような事態は不可避でもありますが、主人公は国王が死んでしまっても転生を続ける事が出来ます。
これまでの王の過ちや成功を糧にしながら、最終的にはグッドエンドを迎えられる王の誕生を、自らの手で生み出す事が目標です。
『Reigns』が力を入れた斬新なゲームシステム
シンプル操作の代表格であるスワイプ操作ですが、『Reigns』ではこの動作をより慎重なものとするためのシステムが導入されています。
ゲームオーバーのたびに味わえる成長の感覚
今作ではゲームオーバーのタイミングをメーターによって把握する事が出来ます。
ゲーム中には教会、人民、軍事、国庫という4つのパラメーターが存在し、いずれかが0になる事で、ゲームオーバーとなってしまいます。
上手にプレイするためには、パラメーターのバランスを考えながら、うまく選択肢を選んでいく必要があるのですが、初見プレイではその全てを見切ることは難しいものです。
あっちを立てればこっちが下がり、こっちを上げればあっちが立たずと、どんな選択がどんな結果をもたらすかということは、選んでみなければわからないことも多いものです。
また、これらのメーターは上限に達しても、ゲームオーバーとなってしまいます。
あまりにも勢力が強くなりすぎたために、国王の権力を上回ってしまうという事ですが、どっちつかずな均衡を常に保つ事が、王の役割という事なのでしょう。
そうして、初めてのプレイのうちは満足に国を操ることもできないまま、悲惨な結末を迎えてしまうというプレイヤーは少なくないでしょう。
しかし、このゲームは何度もプレイすることを前提に作られているため、ゲームオーバーがストレスになることはありません。
むしろ「ああいう時はこういう決断をすれば良いのか」というノウハウを身をもって知る事ができるため、次に生かそうというモチベーションにつながります。
ゲーム中のアクションをスワイプに集約
『Reigns』の特徴的なところは、基本的にあらゆるゲームプレイングをスワイプで完結するように作られているという点です。
なぜならゲームの選択肢は、イエスかノーを選ぶだけであるため、スワイプ操作で全ての物事が決められます。
言うなれば、マッチングアプリの金字塔である『Tinder』の使い心地に近いとも言えそうです。
気軽にスワイプで気になる人を選ぶ事ができるTinderですが、あまりに簡単にスワイプで出会いを見つけられるという事で、倫理観を疑ってしまう人もいるほどです。
リアルな人との出会いが気軽に行われる一方、『Reigns』では国の方針がスワイプで行われるという、重みのある行為が強いられるところも、面白さを引き立てます。
スマホのスワイプを重く、豊かなものにするための秘訣
たった一回のスワイプで大きく未来が変化するという今作ですが、スマホユーザーの当たり前を大きく覆すようなゲームに仕上がっているところから目が離せません。
スワイプ操作に特化したゲーム性
今作を通じて気づかされるところは、結局のところ、物語性のあるゲームはスワイプ操作だけで完結させてしまう事ができるという点です。
どれだけのドラマや壮大な権謀術数がその背景に描かれていても、国王の役割は最終決定を下すだけです。
『Reigns』に関しても、スワイプにこだわらず、様々なアクションや豊富な選択肢をプレイヤーに提供することは十分に可能な物語性を備えています。
しかしそれでもスワイプで二択を選ぶゲームプレイに絞ることで、もちろん開発予算の都合もあるかもしれませんが、密度の高い体験をうまく提供する事ができています。
「たかがスワイプ」なのに頭を使わされる設計
あらゆるゲーム要素をスワイプに集約したことによって、今作ではスワイプ操作に重みをもたらすことにも成功しています。
このゲームのプレイ中、行われる操作はスワイプだけではあるものの、自分の判断次第で物語は大きく変化していき、自分の命運を握るパラメーターの様相にも影響します。
果たして本当にこの選択で間違っていないのか、意図した通りの結果をもたらせるかなどと考えることに、このゲームの醍醐味はあります。
そうしてスワイプ一つに熟考を重ねている様子は、普段のスマホの使い方からは想像もできないほど繊細な行動であることも興味深いポイントです。
いつもなら何気なく行っているスワイプ操作にも、ゲームの設計次第で重みは変わってくるものです。
単純操作がウリのスマホゲームですが、シンプルな操作でも深くのめり込めるゲームづくりのヒントを与えてくれる作品とも言えるでしょう。
おわりに
スワイプ操作は私たちが普段の生活で慣れ親しんだスマホの扱い方ですが、ゲーム次第でその動作に大きく影響を与える事がわかります。
スマホゲーは操作コマンドが限られており、重厚なゲームを作るには向いていないようにも思えますが、操作の一つ一つに重みを持たせる事で、思わず没頭してしまう作品を作ることは、十分に可能なのではないでしょうか。
併せて読みたい記事
→『アーチャー伝説』に学ぶ、飽きないゲームの作り方
→ポケモンに学ぶ、学校では得られないゲーム作りのアプローチ
→難しいほど面白い?『Getting Over It』にみるプランナーが考えるべきゲームの作り方
出典:
*1 ゲームキャスト「呪われた王となり、国という化け物を治めよ。『Reigns』レビュー」
http://www.gamecast-blog.com/archives/65874674.html
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ライター名:Satoru Yoshimura
プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。
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『Reigns』 App Store:
https://apps.apple.com/jp/app/reigns/id1114127463
『Reigns』販売元 Twitter:
https://twitter.com/devolverjp
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