たった一つのアイデアで変わる?『まものローグ』に見る新鮮なゲームの作り方


ユニークなアイデアは、いつの時代でもゲームに求められる要素ですが、常に斬新なアプローチであるとは限りません。

 

『まものローグ』は従来のローグライク作品に「一工夫」を加えただけで、独自の世界観と面白さを獲得した名作です。

 

ローグライクアクションの『まものローグ』

『まものローグ』の基本的な遊び方は、至って普通のローグライクと言えるでしょう。

ダンジョンへ潜るたびに装備は初期状態へと戻されますが、冒険の過程で徐々に強化されていくところに醍醐味が見られます。

 

デッキを作ってダンジョンに挑め

プレイヤーは、冒険を通じて得られるカードからデッキを構築することで、ステータスを強化することができます。

 

カードの効果には攻撃系、防御系、特殊系など様々な種類が用意されており、自身のプレイスタイル、そして手に入ったカードの中から、これだと思うデッキメイクで戦いを進めます。

 

カードの種類が豊富なだけに、その組み合わせも自由自在です。

攻撃に一点集中したビルドや守りのビルド、そして攻守のバランスに優れたビルドまで、様々なプレイスタイルを楽しめます。

 

手に入るカードはダンジョンに潜るたびに異なってくるため、即興で最善の手段を生み出す手腕も問われます。

その場その場でベストな選択肢を選べるかどうかという、将棋のような戦略性が問われるのも魅力です。

 

また、今作はローグライク作品であるだけに、ダンジョンの構成がプレイのたびに変化する部分も特徴的です。

同じダンジョンでも、新鮮な気持ちで何度でも挑むことが可能です。

 

ターン制を撤廃した意欲作

『まものローグ』はローグライク作品でありながら、ターン制を廃止した意欲作でもあります。

「ローグ」系統の作品にこれまで継承されてきたのは、自分が動けば敵も動くという、ターン制の伝統です。

 

これは逆を言うと、こちらが動かなければ相手も動かないので、次の一手はじっくりと時間をかけて選べると言う魅力でもあります。

この戦略的な遊び方もローグライクの魅力の一つでしたが、今作ではこの要素を丸ごと排除し、リアルタイムで戦闘が繰り広げられます。

 

従来のローグライクに慣れていた人からすれば、ターン制を想定していたら、リアルタイムでの戦闘が発生したことで、少々困惑したと言うケースもあるのではないでしょうか。

 

『まものローグ』が取り入れたリアルタイム制で実現したこと

従来のターン制を撤廃したことにより、今作ではどのような変化がもたらされたのでしょうか。

 

新たに加わる「時間」という要素

今作の戦闘は、まず戦闘が開始すると同時に4枚のカードがデッキから配られ、時間経過と同時にマナが貯まります*1。

 

マナを消費することでカードを使用でき、カードに応じた効果でプレイヤーは相手に攻撃を繰り出したり、あるいは防御したりとアクションを展開できます。

 

また、マナをためなければ行動ができないというのは、敵にとっても同じことです。

相手がマナを貯めた瞬間、どのような手を選んでくるのかも予想しながら戦う必要があり、ジャンケンのようなスリルを味わえるのも特徴です。

 

これまでは自分が行動しなければ相手も行動しないため、好きなだけ時間を使うことができました。

しかし今作では時間が有限となっており、相手にやられる前に行動し続ける必要があります。

 

従来のローグライクとは、大きくシステムが異なる作品とも言えるでしょう。

 

状況判断力がものを言う、エキサイティングな作品に

『まものローグ』では新たに時間の概念が有限となっただけに、プレイヤーの巧みな状況判断の能力が問われることとなります。

 

これまでは緻密に一手ずつ有効な手段を進めていくことがよしとされて来ましたが、今作では「時間内で思いつく最善の手段」が求められるようになります。

 

時間が有限となると、必ずしもその一手がベストな選択肢であるとは限りません。

その時間内で考えつくベターな一手となるため、優れた状況判断能力が試されると言うわけです。

 

しかしこのリアルタイムの戦闘こそ、ローグライクに新しい風を吹き入れる要素として活躍しています。

まるでスポーツのような一分一秒をめぐる攻防が、ゲームに大きなエキサイティングをもたらしています。

 

派手な演出や重厚なストーリーで高い表現力に慣れ親しんでいる現代の消費者にとって、これくらいスポーティでなければローグライクに興味を持ってもらうことは難しいのでは、とも考えさせられるゲームシステムです。

 

ゲーム作りに欠かせない新しいアイデアの作り方

『まものローグ』のようなアレンジは、実はちょっとした工夫で十分に再現可能な仕掛けであるとも言えます。

 

ゼロからゲームを作る必要はない

面白いゲームを作るとなると、多くの人が注目する傾向にあるのがオリジナリティです。

どんな作品にも類似しない、全く新しいゲームの登場は多くの人が待ち焦がれているものですが、そう簡単にそのようなイノベーティブな作品が登場するとは限りません。

 

そのため、新しいゲームを作る上では従来の作品を参考にすることが最もポピュラーな方法です。

 

現に、ビデオゲームは大きなジャンルの枠がいくつも存在しているため、多少、他の作品と形式がかぶることは大した問題にはなりません。

 

例えば「ローグライク」と呼ばれるジャンルもそうですが、このジャンルに分類されるゲームもまた、共通するゲームシステムを備えています。

 

ゲームのシステム面で仕様がかぶることは、そこまで問題ありません。

骨格が同じだからといって、人間は皆「人間」一括りとなることがないように、ゲームのオリジナリティも別の部分で評価されます。

 

ちょっとしたアレンジも、大きなオリジナリティへ昇華

オリジナリティを意識して作品を制作する場合、ちょっとしたアレンジや工夫が大きな武器になってくれるでしょう。

 

『まものローグ』ではローグライクでお馴染みのターン制を排除し、リアルタイムバトルを導入したことで、全くの新感覚ゲームを生み出すことに成功しました。

 

逆を言うと、このゲームはリアルタイムを導入したこと以外については、他のローグライク作品と大差はありません。

嫌な言い方をすればありきたりのゲームではありますが、リアルタイム戦闘を導入したことが、大きなオリジナリティとして輝いています。

 

小さな工夫が、大きなオリジナリティを獲得した代表例と言えるでしょう。

 

おわりに

ローグライクは優れたゲームシステムを有したジャンルであるだけに、改良の余地を見出すのが難しいところでもあります。

しかし根本的な要素からアレンジの検討を進めていくことで、これまでにない新しい道を見つけ出すことができるはずです。

 

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参考:

*1 ゲームキャスト「デッキビルド+ローグライクRPGの新星『まものローグ』レビュー。ワンアイデアで面白さの方向がガラリと変化した『Slay the Spire』系ゲーム」

http://www.gamecast-blog.com/archives/65974196.html

 

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ライター名:Satoru Yoshimura

 

プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。

 

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『まものローグ』開発者Twitter:https://twitter.com/daikikizu

 

『まものローグ』App Store:https://apps.apple.com/jp/app/%E3%81%BE%E3%82%82%E3%81%AE%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B0/id1533382633

 

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