箱庭ゲームに他の呼び方があるって知ってました? 【ゲームジャンル研究部 第9回】

 

さまざまなゲームジャンルの魅力と歴史について、連載形式でひも解いていく“ゲームジャンル研究部”。
第9回で取り扱うのは“ミニスケープ”です。
いまいち聞きなじみのない名称なので、どのようなゲームが本ジャンルに当てはまるのかイメージがわかないという人もいるかもしれませんが、実はさまざまな人気タイトルが属するジャンルでもあります。
本記事ではミニスケープに当てはまるゲームの特徴や魅力などを紹介していきます。

 

ミニスケープゲームというジャンルについて

日本における“ミニスケープ”の呼び名とは

ミニスケープは、リアルタイムで進行する特定の環境を舞台に、ユーザーがゲーム内の環境を操作したり、キャラクターなどがその影響を受けて自発的作業を行ったりすることで、状況の変化をもたらすゲームのことです。
日本では一般にシミュレーションゲームの一種として扱われていますが、欧米では独立したジャンルとして扱われており、地域によって解釈が異なります。

 

都市や島、会社といった対象の経営および育成するタイトルが多く、キャラクターがその中で生活しているような情景を楽しめるため、“ミニスケープ(小さな情景)”と呼ばれます。
日本での呼び名は“箱庭ゲーム”で、『牧場物語』シリーズや『どうぶつの森』シリーズといった人気タイトルが該当します。

 

 

ミニスケープゲームの歴史

1989~1990年:2つの傑作により“ミニスケープ”というジャンルが確率

ミニスケープゲームの歴史は、1989年にマクシス(日本版はイマジニア)より発売された『シムシティ』と、アートディンクより1990年12月発売に発売された『A列車で行こうIII』により始まります。
『A列車で行こうIII』より以前の『A列車で行こう』シリーズタイトルにも箱庭要素は盛り込まれていましたが、1つのゲームジャンルとして認識されたのは『シムシティ』が初めてでした。

 

『シムシティ』は、税収で得られる予算内でさまざまな建築物を建造しながら都市を発展させていくというゲームです。
都市造りが中心というゲーム性や、都市が発展する様子を眺めるという楽しみ方などの本作以前のゲームが持っていなかった魅力を有する本作は、ユーザーに大きな驚きを与えるとともに人気を博し、さまざまなハードに移植される人気作となりました。

 

『A列車で行こうIII』は、目的地に向けて線路を建設していく以前までのパズルゲーム的なスタイルから鉄道経営をメインとしたスタイルへと変化。
“ログインベストヒットソフトウェア大賞シミュレーションゲーム賞”を、1991年と1992年の連続で受賞。
海外でも“EXCELLENCE IN SOFTWARE AWARDS Best Strategy Program”を受賞するなど、日本国内に止まらないほどの評価を受け、ミニスケープゲームの楽しさを世界に伝えました。

 

 

1990年代後半:“ほのぼのライフ”を楽しめる人気シリーズが登場

1996年8月6日にパック・イン・ビデオよりスーパーファミコン用ソフト『牧場物語』が発売されます。
荒れ果てた牧場を再建することを目的とした本作は、“ほのぼのとした生活を送る”ということに重きが置かれている点が特徴です。
四季や時間の概念が存在しており、目的も設定されていますが、基本的には自由に作物や家畜を育て、女の子と恋愛してのんびりした暮らしを楽しむことができます。
このゲームシステムはユーザーに大きく評価され、ゲーム誌『ファミ通』の“クロスレビュー”ではゴールド殿堂を獲得するなど大きな支持を集めました。
その後、『牧場物語』は数々の続編を発表していき、20作以上続く人気シリーズとしての地位を獲得していきます。

 

 

2000年代前半:『どうぶつの森』シリーズで人気急上昇

2000年代前半に入ると、任天堂の『どうぶつの森』シリーズが誕生したことにより、日本におけるミニスケープの知名度(あくまで“”)は爆発的に上昇することとなります。

 

同シリーズは2001年4月14日に発売されたNINTENDO64用ソフト『どうぶつの森』が元祖です。
主要な施設は抑えつつ近代的な施設や物は無闇に出てこない、スローライフに絶妙に適した雰囲気を備えつつ、収集要素によるやり込みゲームとしての側面を持つ本作は、口コミで評価が広まりました。
その評価は、発売から8カ月という短期間で続編のニンテンドーゲームキューブ用ソフト『どうぶつの森+』が発売されたほどです。
2005年11月23日に発売されたニンテンドーDS用ソフト『おいでよ どうぶつの森』は、携帯機との相性のよさに加えて、通信によるリアルタイムでの交流やWi-Fiで遠くの友達とも遊べるという点から熱い支持を受け、国内約500万本、全世界約1,100万本以上の売上を記録するメガヒット作となりました。

 

ミニスケープゲームの今

オンラインプレイで箱庭を見せあえる時代に

ミニスケープゲームに影響を与えた要素は、システムやグラフィックよりも、マルチプレイやオンライン機能といったプレイ環境にかかわるものが大きいといえるでしょう。

 

マルチプレイでNPCだけでなく実際のユーザーとも楽しめるようになったことで、よりキャラクターが生活する情景を楽しめるようになった他、プレイ状況を見せあうというSNSのような楽しみ方も可能になりました。
SNSのような楽しみ方の例としては、米市場調査会社NPDが2020年3月20日に発売されたNintendo Switch用ソフト『あつまれ どうぶつの森』の売れ行きについて、“新型コロナウイルス流行に伴う外出規制措置により人々がつながりを求めたことで、その需要を満たす本作がヒットした”と分析しています。
世界中の人とつながりやすくなったことで、ミニスケープゲームはSNS的な要素も持つようになったのかもしれません。

 

まとめ

ミニスケープは、初期のころこそ硬派で知る人ぞ知るジャンルというイメージがありましたが、現在では『牧場物語』シリーズや『どうぶつの森』シリーズのように、老若男女問わず高い支持を受けるタイトルも存在する有力ジャンルの1つとなっています。
また、基礎的な部分こそ変わらないものの、ジャンルに求める要素などは時代とともに変化している節もあり、シンプルながら開発時にはユーザーが持つ需要の把握やアイデアのひらめきが重要だといえるでしょう。

 

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