人事が生み出すゲーム会社の「働きやすさ」! 株式会社ダンクハーツの担当者に聞く人事のパワー!!
大阪にて有名IPや自社オリジナルタイトルの開発・運営を行う、株式会社ダンクハーツ。
ゲームだけでなくVtuber事業も展開し、多くのクリエイターが社内で活躍しています。
今回は、ダンクハーツで働くクリエイターにとって大切な「働きやすさ」を提供する、人事の長谷川春菜氏に、社内の取り組みについてお話を伺いました。
プロジェクトマネージャーから人事に転身
――まずはダンクハーツがどんな会社なのか、教えてください。
ダンクハーツは受託とオリジナル、両方でゲーム開発・運営をやっている会社です。
受託タイトルは名前を表に出せないのですが、有名IPにいくつも携わらせて頂いています。
オリジナルだと、『ヒーロー’sパーク』というアプリを運営中です。
そのひとつ前には、160万DLを達成した『輝星のリベリオン』を運営していました。
――開発会社はアクションやRPG、女性向け、ローティーン向けなど得意ジャンルがあるものですが、ダンクハーツは幅広いですよね。
はい、めちゃくちゃ幅広いんです!男性向けもやっていますし、自社タイトルは女性向けです。
開発ではなく運営代行としてお受けすることもありますし、なんでもできるというか、幅広くやらせて頂いています。
いつも説明するのは、ダンクハーツはオリジナルと受託、両輪でやっている会社だということです。
いまは受託が多いけれど、大事なのはバランス。
オリジナルばかりだとかなりエネルギーを使うし、ソーシャルゲームは浮き沈みが激しいので、受託や運営、協業を混ぜたほうが金銭面で安定します。
ゲーム会社に就職を希望される方って、お金の面が不安だと思うんです。
その点、ダンクハーツは受託で必要経費を賄ってしまって、その上でオリジナルを伸ばしていこうというやり方で安定化を図っています。
――Vtuber事業もその一環でしょうか? 有名どころだと、にじさんじの静凜、樋口楓の3Dを制作されていますよね。
Vtuberは常時稼働しているメインの事業というわけではないのですが、お仕事を頂けた際には稼働しています。
実は、社員が「やりたい」と言って始まった事業なんです。
私たちはいま市場が何を求めているのか、どこに需要があるのかを分析してから動いています。
Vtuber事業が始まったときにも、Vtuber関連のお仕事の需要にスタッフが目を付け、その上で社長が「やってみよう」と仰ってくださった経緯で始まりました。
『ヒーロー’sパーク』にしても、「乙女×遊園地×ヒーロー」という新しさと市場の需要を分析して立った企画です。
分析した結果と合わせて声を上げれば、社長も向き合ってくださいます。
――企画のスピード感はどんな感じでしょうか。
私がVtuberという言葉をきちんと知った時にはもう動き始めていたので、かなり早かったと思います。
大手さんのように承認のフローが何段階もある訳ではなく、みんなで集まって話し合う機会が多いので、プロセス自体が少ないんです。
スタジオ長という各スタジオを統括する人たちは頻繁に集まっていますし、上長と一対一の面談も月一であるので、思っていることを伝えやすい環境は整っていますね。
――次に長谷川さんの経歴を教えてください。
もともと新卒の時は別のゲーム会社にクリエイターで入りました。
ゲームプランナーで2年。
そのあとプロジェクトマネージャーで2年働いたあと、転職活動をして、ダンクハーツにたどり着きました。
――ゲーム会社に入ろうと思ったきっかけは?
私は小学校3年生からいままでずっと小説を書いているんですが、そうやって世界を作るのが昔から好きだったんです。
就職する時にも世界を作り続けたいという想いがあり、クリエイティブな業界を指向しました。
その上で、大学は教育学部だったので、自分が誰かの成長に携わることにはこだわりを持っていました。
そう考えた時に、私の成長にゲームは欠かせない存在だったと気付いたんです。
小学生時代にスクウェア・エニックス様の『FINAL FANTASY Ⅸ』をやっていた時に、台詞に出てきた熟語の意味を調べたり、経験値の計算を暗算でずっとやっていたりしました。
気付かないうちに私には国語や算数の知識がついていったんです。
また人間的な部分でも成長させてもらいました。
口に出すと小恥ずかしいですが、私がいま生きる上で一番大切にしていることって「仲間を守ること」なんです。
それもゲームの主人公を見て、小学生の時に決めたことなんですよ。
その時は楽しいだけだったけど、あとから考えたらゲームにすごく成長させてもらったんです。
だから世界を作る、誰かの成長に携わるという意味で、ゲームに関わりたいと考えました。
――前職からダンクハーツに転職したきっかけは何だったのでしょうか。
プランナーをやっていた時から、人事に興味があったんです。
それでプロマネになってからは、人事の業務をお手伝いしていました。
会社説明会とかが中心でしたが、ゲームの専門学校以外から来ているというある種、例外的な立場だから言えることもあるんじゃないかと考え、楽しんでやっていました。
そこで4年を区切りに転職する時に、人事で職を探したんです。
自分としては、すごくいいキャリアの描き方ができていると思っています。
プランナー時代はプランナーセクションの中を知ることができた。
プロマネになって、チーム全体が見れるようになった。
それが人事になって、会社全体を見るようになった。
プランナーのこともエンジニアのことも、デザイナーのこともある程度わかった上で人事をやれているのは、すごく大きいと思います。
働きやすさへの3つの取り組み:採用/教育/評価
――ダンクハーツさんに入ったあとは、クリエイティブはまったくしていないんですか?
ゲーム開発という意味では、現状はまったくしていません。
プライベートで小説を書くくらいですね。
――スパッとクリエイティブを止めるのは珍しいですね。
人事になってからもいろいろ作っているので、欲求自体は満たされているんですよね。
クリエイティブというか、研修の内容なんかをゼロから自分で構築しています。
この会社に何が必要かを考えて、そこから社員に何を伝えなくちゃいけないかを作る。
必要な資料も用意して、ゲームは必ず混ぜるようにして……。
――ゲームというのは、グループワークですか?
そうです。
例えばコミュニケーションの研修をした時は、『人間知恵の輪』というゲームをしました。
このゲームは8人くらいで輪になって、ぐちゃぐちゃにつないだ手を一度も放さずに一つの輪になるようにほどくというゲームです。
ゲーム中、参加者はみんな手をつないだまま「自分から見た手の絡み方がどうなっているのか」を周りのメンバーに伝えて、どうしたいかを発言する。
でもその言葉を受け取ったメンバーから見ると状況が違っていて、その通りには動けなかったりする。
自分と他人が見えているものは違っていて、それを解消するのがコミュニケーション。
情報の理解に齟齬が起きると、どうしようもない。
……そういったことを体験してもらうために導入しました。
いくら知識を頭に入れて理解しても、自分で体験しないと納得には落とし込めない。
納得まで落とし込むために、体験をしてもらうというのは大事にしています。
――教育学部で学んだ知識が活かされているのでしょうか。
活かせていると嬉しいんですが(笑)。
実は、教育学部といっても教師になるための学科じゃなくて、いじめとか不登校とか教育上の問題にどう対処するか、ということを勉強する学科だったんです。
親と教師と子供、それ以外というそれぞれの立場から何ができるのかということを学んだので、ひとつの物事に対して複数の角度からアプローチをすることは今も心掛けています。
プロマネの時にもこの学びは活きていました。
――そういった教育への取り組みが働きやすさを生み出すことにつながっているのですね。
ゲーム業界は自分が作りたいものを作るというより、チーム開発の色が強い。
全然違うスキルを持った人たちが別のパーツをひとつずつ組み上げる、総合芸術なんです。
だからこそコミュニケーションが必要になるし、他社と関わることも多いからマナーも必要になる。
開発手法やツールの使い方はOJTで学べるので、私がやっている研修はむしろそういったコミュニケーションやマナーに関するものです。
ダンクハーツは特に中途採用がメインなので、それまでの会社と違う部分、同じ部分が出てくる。
それが曖昧だと理解するまでストレスになるので、ダンクハーツはこう、という基準がはっきり示せるのはいいことだと思います。
――採用でこだわっている部分について、平たく言うとダンクハーツに入ろうと思ったら何が必要なのか教えてください。
ざっくりしちゃうのですが、弊社のミッションにも掲げている『人間関係をシンカ(深化・進化)させられる人』に来て欲しいです。
具体的な例を挙げると、周りを巻き込んでコミュニケーションがとれる人は欲しいですね。
ただ仕事をするだけじゃなくてチームの士気を上げる人は重宝されるし……、結局、「この人と一緒に働きたい」と思えるかどうかなんだと思います。
一緒に働きたいと思える人が入れば、またその人を見て、一緒に働きたいと思ってくれた人がダンクハーツに来てくれる。
人間関係をシンカさせる集団になるためには、それが連鎖するしかない。
――面談は、どんな形式でしょうか?
一次面接に私と、プロジェクトに人が欲しいと言っている該当職種のリードメンバーが入ります。
二次面接がプロジェクトマネージャー、スタジオ長、取締役の面接です。
一次では作業者に一番近いまとめ役の人がスキルはどうなのか、私が人柄はどうなのかを見ます。
二次では会社に合うのかどうか、チームに必要か、メンバーとの相性はどうなのか、といったことを見てもらいます。
――面接にチームの作業者が来るのは安心できますね。
私ではどういう作業をしているのか正確に伝えられないのがひとつ。
あとは面接に来た人にとっても、そのプロジェクトに入る可能性が大きいなら、そのプロジェクトの人と話したいと思うので、参加を依頼しています。
開発者が本当に協力的で、事前に私が行う「面接官研修」にもきちんと参加をしてくださるので、「自分は選ぶ立場だと思っていては駄目。
私たちも向こうから選ばれているという意識を持ってください」という話をして、面接の在り方や採用方針を固めることができています。
――中途がメインとのことですが、社員の紹介とエージェントが連れて来る割合はどんなものですか?
去年一年は社員からの紹介がすごく多かったんですが、いまは少し落ち着いた感じです。
現状でいうとエージェントさんからの紹介の方が多いですね。
――悪く思っている会社には誘わないので、仲間を誘えるか、というのは会社を測る上でひとつのベンチマークになりますよね。
――社員の評価に関しても、長谷川さんの工夫があるという話を伺っています。
いまはカオナビという評価ツール、というか人材管理ツールを使っています。
導入したのが去年の9月で、こうしたほうがいいだろうというのを考え、いろいろパーツを使ってカスタマイズしました。
元はスプレッドシートで評価していたんですが、それだと評価を記載している途中なのか、もう終わっているのか、中身を見に行かなくては状況が分からなかったんです。
でもカオナビだと作業が終わってから確定ボタンを押すから、ステータスが明確なんです。
これの何がいいかというと、リーダーの人たちが「更新されているから何かしなきゃいけないのかな?」ってわざわざ確認する必要がなくなったんです。
ほんのちょっとのことなんですが、これがあるのとないのとで、かなりストレスが違うんですね。
私にしても終わっていない人にだけ、対応してくださいというメッセージを送ればいい。
あと目に入る情報の選別は相当考えました。
評価される側は何を基準に評価されるかわからないと不安だと思うので、どういう目標を達成すると評価されるのか、最高点を取るにはどうすればいいかが全員の画面で常に見える状態にしています。
その一方で、一般スタッフにとって評価の時期にしか必要ないものは、それ以外の時期に非表示になるように設定しました。
先日カオナビでダンクハーツのインタビュー記事が掲載されたので、よかったらこちらも読んでみてください。
【URL】https://www.kaonavi.jp/showcase/dnk/
――自分の情報がわかりやすく見えるんですね。
はい。
実際の評価時期はやらなくちゃいけないことをフェーズで分けていて、期間中記載が必要な箇所は水色で表示されるようになっているんです。
評価に関して次に何をやればいいかが一瞬でわかるようになっているので、以前よりわかりやすくなったと思います。
順番にやっていって、最後に上司との面談を行って評価が終わります。
これを半年ごとに行っています。
――きちんと整備されているんですね。
開発がいかに大変かは知っているので、たとえ数分でも開発の時間をどうやって作り出すかというのは考えています。
開発の時間を作るために人事が貢献できる部分もあると思います。
あとは社内掲示板のような場所に評価の流れを全部書いています。
例えば何月何日から何月何日までは目標設定、その際のカオナビの操作はこうというのが全部書いてある。
このシステムを整えてから、チャットで「わからないんだけど」って話しかけられることが減りました。
前は社内の10%ぐらいから言われていたのが、いまは3%くらいですね。
――世の会社は、すべからくそういうところにリソースを割くべきだと思います。
求職者は正当に評価されるのか、というのも気になるポイントだと思います。
うちは半年ごとの評価以外にも面談自体は毎月あって、その結果も逐一カオナビに反映されていく。
どういうところで評価されているのかはずっと見れる状態なので、明確化できていると思います。
社内の教育を外部ともつなげたい
――人事から生む働きやすさについて、よくわかりました。今後はどういう活動を考えていらっしゃいますか?
いまも足りていない部分があるので、ツールにしろ教育にしろブラッシュアップはしていきたいと思います。
その上で、教育については研修関係を整えてベース化できたので、今度は他社さんを交えていろいろやりたいなと考えています。
他社のクリエイターとかフリーランスの人と協力して、うちに研修をしに来てもらうとか、その逆とかができるといいかなと。
作った研修は公開して、クリエイターさんたちに賛同して集まってもらえればうちの知名度アップにもつながるし……この辺は野望ですけどね(笑)。
――ぜひ参加したいですね。
ほかの会社の人事さんに連絡して、「どういう風に研修していますか?」とか聞いたりしています。
あとはうちのベースの研修をやりに行くので、そちらのマネージャークラスの研修をひとつください、みたいな話はしていますが、まだ形にはなっていません。
お金を払って、となるとお互いハードルが高いので、いま考えているのは研修の交換ですね。
自分の会社の人から言われるのと、ほかの会社の人から言われるのって説得力が違う。
そういう意味でも研修をし合うのは効果が高いと思うけど、なかなか苦戦しているところです。
――こういうのは言い続けていたら、そのうち一気に話が進むものですからね。
進むと嬉しいです(笑)。
ダンクハーツは「こういう営業かけていいですか?」って上司に確認すると、すぐいいよって言って頂ける会社なので、そこはすごくありがたいですね。
駄目って言われるとモチベーションもなくなるし、せっかく作った研修がお蔵入りになるのも悲しい。
やはりなんでもそうですが、作ったものを発表できるのは嬉しいことです。
――最後に読者へのメッセージをお願いします。
今回人事が生み出す働きやすさとして、バックオフィスからの取り組みをお話させて頂きました。
ただダンクハーツは、開発者たちも働きやすい環境を作ってくれているんです。
釣り、フィットネス、ダーツ、野球、ボードゲームとか部活動も多く、それによりチームを超えたところに知り合いができるので、異動しても顔なじみがいることが多いんです。
また広報を中心としたレクリエーション部があって、忘年会、花見、バーベキューとかを企画してくれています。
働きやすい環境にしようというのは、みんな自然とやってくれているように思います。
その会社で自分がどれだけ働きやすいかは、正直入ってみないとわからないと思うんですよね。
ただどういった取り組みをしているか、という部分は話せるので、今回少しでも伝わったのなら幸いです。
――ありがとうございました。
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