アングリーバードの世界市場での成功は起業家精神のおかげ?ゲームを大ヒットに導くマーケティングとは
スマートフォンのゲームアプリは、今や私たちにとって最も身近なビデオゲームとなっていますが、中でもAngry Birds(アングリーバード)はそんなスマホゲーのパイオニアであり、今なお世界中で遊ばれ続けている不朽の名作の地位を築きあげています。
日本ではあまりその名を見る機会も少なくなりましたが、欧米圏では現代で最も成功したゲームの1つとして高く評価されており、町中の至る所であの「赤い鳥」を見かけます。
今回はそんなアングリーバードが、旺盛な起業家精神によって単なる「ヒット」から「大ヒット」ゲームへと育っていった理由について考えていきます。
目次
スマホゲームの顔となった「アングリーバード」
スマホを扱う人なら、誰もが一度はその名前を聞いたり、実際に遊んでみたことがあるのではないでしょうか。
日本では他のスマホゲームに比べて少し影が薄いような気もしますが、アングリーバードは世界で最も遊ばれたゲームとして記録になった事もある、モンスター級の作品です。
全世界で30億DLを記録したモンスター作品
すでにやったことがある人にはお馴染みですが、アングリーバードのゲームの内容は、とてもシンプルです。
スリングショット、いわゆるパチンコで主人公である鳥を放ち、進路に立ちふさがる豚を撃退すればクリアという、アクションパズルゲームとなっています。
シンプルでありながら難易度設定の幅が広く、ゲームがマンネリ化しないようなギミックとスコア設計がやり込み要素につながっており、初心者から上級者まで、あらゆる世代とゲームスキルを持った人たちに末長く愛されるようなゲームデザインは、世界中のプレイヤーを魅了しました。
2009年にiOSのapp storeでリリースされて間もない頃に1200万ダウンロードを記録し、瞬く間にiOSアプリの代名詞となりました。
そして一過性の流行ではなくその後も着実にダウンロード数を伸ばし、現在は30億回を超えるDL数を誇る怪物アプリとなっています。
映画やスピンオフなど積極的なシリーズ化も
アングリーバードは一作にとどまらず、その後も続々とシリーズ作品を打ち出していきます。
度重なるアップデートの中で、アングリーバードは初代作品においても新たなコースが続々と増えていきましたが、2015年には「アングリーバード2」という完全新作が発表されました。
初代の正統進化として機能が拡張されただけでなく、ステージ数も600を超えるなど、そのボリュームは初代に引けを取らないものとなっています。
また、季節感を重視したスピンオフ作品である「アングリーバード シーズンズ」や、3D映画の「ブルー:初めての空へ」とコラボした「アングリーバード ブルー」、無重力の概念を導入した宇宙編である「アングリーバード スペース」など、とても一介のスマホゲーとは思えないほどのバリエーションを有しています。
そしてスマホにとどまらず、2013年には「アングリーバード トゥーンズ」として2Dアニメ化され、2016年には「アングリーバード」の名で劇場アニメとなりました。
劇場版の興行収入は世界で350億ドルとされており、これはゲームを基にした映画としては史上2番目の記録となっています。
アングリーバードの声優にも注目
前述したとおり、アングリーバードは2016年に劇場アニメ化され、日本でも公開されています。
2020年1月には、続編として前作で描かれた物語の数年後を舞台とした「アングリーバード2」も公開されました。
本作品は、キャスティングの面でも注力されていた点が印象的です。
本作では、主人公であるレッド役として俳優であり「バイキング」や「有吉ゼミ」などでタレントなどとしても活躍する坂上忍さんが起用されました。
キャスティングの理由としては、主人公のレッドは怒りんぼうであるという特徴があり、同じく怒りんぼうというイメージがある坂上さんと合致したため、オファーされたとのことです。
また、主要キャラクター役として、実力あるキャストが脇を固めている点にも注目です。
鳥たちから伝説の英雄と語り継がれてきた存在・マイティーイーグル役を「ドラゴンボール超」ビルス役やディズニー作品でドナルドダック役などを演じている山寺宏一さんが担当。
第1作での敵役であり、タマゴを持ち去るピッグ軍団リーダーのレオナルド役は「スター・ウォーズ」シリーズでC-3PO役(C-3PO役は野沢那智さんから後継)、「ジョニー・イングリッシュ」シリーズでジョニー・イングリッシュ役を演じる岩崎ひろしさんが演じています。
さらに、その他のキャストも話題性や実力に富んだ顔ぶれとなっており、話題となりました。
映画1作目では、モモイロインコの女の子(鳥)であるステラ役として「ラブライブ!」で園田海未役を演じる三森すずこさん、イケメンの鳥・ジョニーと悪役のブタ・ピッグ7のダブルキャストの1人2役として元サッカー選手で、サッカー解説者やタレントとして活躍する前園真聖さんが出演。
2作目ではレッドの親友であるチャックの妹・シルヴァー役として「アイドルマスター シンデレラガールズ」で輿水幸子役を演じる竹達彩奈さん、イーグル・アイランドの女王であるゼータ役として「NARUTO -ナルト-」シリーズなどで大蛇丸役を演じるくじらさんが出演しました。
シルヴァー役・竹達彩奈さんに関しては、本作が洋画吹替初挑戦となったことも話題を呼びました。
アングリーバードの遊び方とコツ
アングリーバードはシンプルなアクションパズルゲームで複雑な操作は要求されません。
しかし、シンプルさゆえにパズル要素はかなり作りこまれており、高難度のレベルになると簡単にはクリアできないような難問が登場します。
本項では、そんな本作について操作方法と攻略のコツを紹介していきます。
アングリーバードの操作方法
本作の目的は前述したとおりスリングショットで鳥たちを発射し、フィールドにいるすべての豚を倒すことです。
基本操作は非常にシンプルで、スワイプ動作による鳥たちの発射角度の決定、指を離すことによる発射、そして画面タップによる特殊能力の発動の3つとなっています。
鳥はオブジェクトにぶつかることでそれを破壊したり、破壊できなかった場合も衝撃などで動かしたりできます。
オブジェクトは主に登場する氷、木、岩の3種類の他、爆発するTNTや体が跳ね返るラバー、破壊するとボーナス点をもらえるアイテムなども登場します。
オブジェクトは、家や乗り物などの意匠が施されていることがあり、こちらも必見です。
豚は、直接鳥をぶつける他、高所から落下させたりオブジェクトの落下でぶつけたりしてダメージを与える事で倒せます。
さまざまなサイズの豚が存在し、サイズが大きくなればなるほど大きなダメージが必要となるため、オブジェクトを破壊せずに、落下させたり動かしたりして豚にぶつけるといった戦略を練る必要があります。
本作では、鳥たちが活躍する各フィールドをレベル、レベルを包含するものをチャプターと呼んでいます。
プレイヤーは最初からレベルを選択することはできず、個々のレベルを1つずつクリアしていく必要がありますが、一度クリアしたフィールドには何度でも戻って挑戦可能です。
また、各レベルをクリアした際には得点に応じて星を入手できます。
星は最低で1つ、最高で3つ入手でき、必要得点はレベルによって異なっており、すべてのレベルで星を3つ獲得すると隠しステージに進むことができます。
その他、エピソードごとに総得点が記録されるため、ベストスコアを狙うやりこみ要素も有しています。
アングリーバードのパズルを攻略するコツ
鳥たちのスキルと特性を把握する
本作にはさまざまな鳥が登場しており、それぞれ異なるスキルや特性を備えています。
例えば、アプリアイコンにもなっているレッドは特殊能力がなく攻撃力も低いものの、丸い形で弾力が高いという特性によりオブジェクトを弾き飛ばしたり地面を転がったりできます。
その他にも、氷のオブジェクトに強くタップすると3方向に分散するザ・ブルースや木のオブジェクトに強くタップすることで急加速し、威力と飛距離を伸ばすチャックなども存在します。
さらに、ぶつかる以外の方法でオブジェクトや敵に影響を与えることができる鳥も存在します。
ボムは、体が重くあまり遠くに飛ばすことはできませんが、体当たりの威力が高く、氷や石も簡単に破壊できる他、発射後にタップするかオブジェクトや敵、地面に触れて数秒経つと爆発して広範囲のオブジェクトや敵を破壊できます。
マチルダは、タップすると爆発する卵を落下させ、自身は急加速して右上に飛び去っていくというスキルを持っています。
また、スキル発動前は体が重くオブジェクトに当たった場合の威力も弱いものの、スキル発動後は威力がかなり高くなるというスキル発動の有無によって変化する特性を備えています。
さまざまな鳥のスキル・特性を把握し、上手く活用していくことで本作をスムーズに攻略し、より楽しむことができます。
オブジェクトを活用する
本作に登場する鳥、敵、オブジェクトは物理法則に従って動きます。
そのため、何かとぶつかって倒れる、重力に従って落下するといった挙動を見せることがあります。
この挙動をオブジェクトに対してうまく発生させていくことがレベルクリアのカギとなります。
例えば、積み重なったオブジェクトの土台を壊したり、坂道の上にある丸い岩を押して転がしたりすることで効率的に豚を倒すことができます。
高難度のレベルになるほどオブジェクトの活用が重要になってくるので、つまずいた時はオブジェクトの配置やぶつかったときの挙動にも注目してみましょう。
ハイスコアを狙う
本作では、「オブジェクトを破壊する」、「レベルクリア時に発射できる鳥が残っている」といった行動により得点が加算されていきます。
得点や星はクリアの絶対条件ではありませんが、意識してプレイすることでよりクリアまでの距離が縮まります。
「多数のオブジェクトを破壊する=豚を巻き込む期待値が上がる」、「少ない手数でクリアする=ミスした時の保険ができる」というように、高得点を狙ったプレイをすることで無駄がなく効率的にパズルを攻略できます。
それによって多少のミスを許容できるような余裕が生まれ、結果的に安定してクリアできるようになります。
「いかに多くのオブジェクトを破壊するか」、「いかに少ない手数で攻略するか」といったことを意識することで、より効率よいクリアへの道筋を見つけられることでしょう。
アングリーバード開発秘話
もはや老若男女を問わず人気のゲームとなったアングリーバードですが、開発元のRovioにとっては起死回生の奇跡的な作品であったという話も有名です。
52番目に誕生したヒット作
アングリーバードを開発したのは、フィンランドのRovioという当時は小さな会社でした。
2003年の創設から6年間で51本ものゲームを製作したものの、当時大きなヒットには恵まれなかったのです。
ところが2009年、52本目のゲームとなるアングリーバードは、予想をはるかに上回る記録的大ヒットとなりました。
しかし生みの親であるPeter氏によると、ヒットは突発的ではなく、じわじわと口コミでその人気を博すようになったということです*1。
今でこそお馴染みとなったアングリーバードですが、インディーズの新しいゲームがヒットするためには時間、そしてこれまで多くのゲームを手がけてきたというキャリアも重要な意味を持つのです。
タッチスクリーンを有効活用
アングリーバードが評価された点として、まずはタッチスクリーンを有効活用した点が挙げられます。*2
今でこそ当たり前かもしれませんが、この作品がリリースされた2009年という時代は、まだスマホの知名度や普及率も低く、あらゆる分野で「どのようにしてスマホの特徴を活かしていくか」を試行錯誤していたのです。
そこでアングリーバードは、タッチ操作によって物理的なアクションを実現し、プレイヤーに肉体的な爽快感を与えることに成功しました。
今までもボタン操作によって物を投げたり、壊したりするプレイイングはゲームにもありましたが、スマホのタッチスクリーンを活用し、あたかも自分の手でパチンコを放っているような感覚をもたらしたのは、アングリーバードの偉大な功績の1つです。
アングリーバードのマーケティング戦略
そんなスマホゲームの雄となったアングリーバードですが、単なるスマホゲーに留まらない、飛躍的なヒットを記録した背景には、開発者の熱い起業家精神と、マーケティングが功を奏しているという話もあります。
スマホの外へ飛び出したアングリーバード
アングリーバードはスマホのみならず、PC移植版やPS3、Xbox、ニンテンドーDSなど、家庭用ゲーム機や携帯ゲーム機にも移植作品として数々のシリーズが登場しています。
スマホ版とは多少仕様の違いを抱えているものの、その人気は衰えることなく、PC版に至っては2011年より無料公開も開始しています。
インディーズゲーム特有のミクロなターゲッティングではなく、もはやメジャー級タイトルとして、あらゆる年代やプレイヤー層に対して働きかけを行っている様子が伺えます。
ゲーム開発にとどまらないメディアミックスの成功
また、前述のように映画やアニメ作品になっただけでなく、コミカライズも行われています。
さらには子供向けの服やカバンなどのグッズ化も精力的に進めるなど、ゲーム性にとどまらず、アングリーバードのキャラクターをブランド化させる動きも良く見られています。
たとえゲームが衰退した場合も、キャラクター人気が高ければそのライセンスだけで事業は継続することができます。
アングリーバードが積極的にブランド化を進めているのは、そのような理由もあるのでしょう。
日本で流行らなかった理由
全世界で流行するアングリーバードですが、実は日本では海外ほどの熱狂はなく、日本だけを見ているとアングリーバード人気を掴みにくいところもあります。
Ravioは決して日本での展開に消極的であったわけではなく、一時期は日本法人のRavio Japanも設置して、積極的なプロモーションを展開していました。
「パズドラ」でお馴染みのゲーム、「パズル&ドラゴンズ」ともコラボを行うなど、大々的な施策が次々とうたれていたものの、結局は欧米ほどのヒットには至らなかったのです。
その理由としては、やはりデザインの好みの問題と、日本にはすでに世界的なキャラクターがいくつも存在していることが大きいでしょう。
たとえばポケモンは世界で大人気のキャラクターである前に、日本で絶大な支持を誇るゲームキャラクターです。
他にもジブリや漫画作品、あるいは萌えキャラなど、日本にはわざわざ海外から輸入せずとも世界に通用するキャラクターを愛する文化が強く、海外のキャラものはあくまでもサブカルとして受け入られる傾向にあります。
もちろんディズニーのような例外もありますが、それでもアングリーバードは日本人にとって、あまりピンと来るキャラではなかったという感覚的な事情が想像できます。
キャラクターデザインを将来的にブランド化していきたいと考える場合、このような文化的差異による障壁を考慮していくことも重要になるという教訓であるとも捉えられる事例です。
まとめ
アングリーバードはスマホゲーの中でもずば抜けたセールスを記録しているだけあり、ゲームクリエイターにとっては学べる点も多い作品です。
今一度改めてプレイしてみて、気がついてみたことを書き出してみるのも面白いでしょう。
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