アクションゲーム『Stela』に秘められた、面白いゲームの定義とは?
多くのゲーム開発者は「面白いゲーム」を作ることを目指し、日々クリエイティブな業務に身を投じています。
ただ、面白いゲームとは一言で言っても色々な方向性がありますし、そもそもゲームの面白さは人によって微妙に異なる物差しによって測られるので、万人にとって面白いと思ってもらえるゲームを作ることは非常に難しいものです。
そんな中で『Stela』が挑戦しているのは、プレイヤーの主体性に目を向けた、新しいアクションアドベンチャーのあり方の提案です。
目次
穏やかなアクションゲームの『Stela』
Stelaはスタートと同時に暗闇に放り出され、これといった説明もなく、とにかくゴールを目指すことを目指すアクションアドベンチャーです。
https://store.steampowered.com/app/1048600/Stela/?l=japanese
ひたすらに旅を続けるアクションゲーム
Stelaはプレイを始めると、いきなりどこかわからない場所に放り出され、ひたすら前へ前へと進むことを強制させられることになります。
自分は何者なのか、ここはどこなのか、そしてなぜ前に進まなければいけないのかと言った説明は一切なく、ただ「これがアクションゲームである」という前提だけを頼りに、前進することが求められます。
Stelaは2Dスクロールアクションとなっているため、3Dのオープンワールドの作品のようになんでもできる自由が提供されているわけではありません。
しかしなんの説明もなしに放り出されるには、2Dスクロールであるくらいがちょうど良いとも考えられます。
『INSIDE』のインスピレーションが強い作品
そもそも、Stelaにはインスピレーション元となるゲームがあると考えるのが有力で、そのゲームこそが名作と評される『INSIDE』です。
https://store.steampowered.com/app/304430/INSIDE/?l=japanese
INSIDEもまた暗い雰囲気が漂う2Dアクションゲームで、そのアクションの豊かさだけでなく、ダークファンタジーなストーリーと世界観が高く評価されたインディーズゲームです。
INSIDEに比べると、Stelaはチュートリアル的な要素やアクション性が薄いとされることも多いようですが*1、それでもINSIDEにはなかった新しい2Dアクションの可能性についてのチャレンジや、開発者の創意工夫が見られる点は少なくありません。
逆に元ネタが有名なゲームであるからこそ、2つの作品を比較しながら相違点を探るという楽しみ方もあり得る、1つの同人作品のような位置付けで見ることができるのも特徴です。
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『Stela』はアクションゲームなのか
Stelaはアクションゲームとしての要素が見られますが、「アクションゲーム」を遊ぶ気持ちでプレイすると、少し拍子抜けしてしまうところがあるかもしれません。
主人公を直接操作するが、激しい演出やステージは皆無
崩壊した世界で、主人公は時として激しいアクションが求められることもありますが、それはゲームとしては物足りなく、ややステージ設計における創意工夫が弱い部分も見られるとされています。
歩みを進めるごとにステージの雰囲気は目まぐるしく移り変わり、この次には何が待ち受けているのだろうという好奇心は確かに刺激されますが、息もつかさぬアクション性をこのゲームに求めてしまうと、拍子抜けしてしまうこともあるかもしれません。
物語性はやや希薄
また、ステージの雰囲気は激しく変わるものの、それぞれのステージのつながりがストーリーによって保管しきれない部分も多いとされています*2。
確かにステージの雰囲気が変わると、プレイヤーは「確実に自分は前に進めている」という実感を得ることができますが、ゲーム慣れしている人にとって、それだけでは紙芝居のような感覚を覚えてしまうことも珍しくないでしょう。
場面の転換でサウンドによる転換効果にも力が入っているようですが、やはりプレイングそのものに大きな変化がなければ、プレイヤーにその臨場感を完全に伝えることは難しいものです。
プレイヤーを妨害する役割を果たすはずのギミックの層の薄さは、ストーリーへの臨場感や緊迫感に大きな影響を与えることも、反面教師的にこのゲームから得られることの1つということができます。
『Stela』の提示する面白いゲームのあり方
Stelaは悪く言えば「中途半端なゲーム」かもしれませんが、面白いゲームを作るための視座をプレイヤーに提供してくれています。
プレイヤーの想像力と好奇心に依存した作品
INSIDEという名作をすでにプレイしたことがあれば、それとStelaを比較した際の物足りなさがどうしても目についてしまうかもしれません。
しかし、そもそもINSIDEの同人作品的な役割を担っていると考えれば、StelaはINSIDEよりもはるかに主体的に楽しむことによって、その物語を自ら補完することができるかもしれません。
INSIDEはすでに層の厚い世界観とシナリオがしっかりと用意されていたために、プレイヤーはただ与えられた選択肢に沿って、その世界で展開される物語の顛末を見届ける使命のようなものが課されます。
しかしStelaはINSIDEほどの分厚いシナリオは存在しないため、自らダークな世界観に意味付けを行いながら、自分だけのストーリーの奥深さを補完していくという楽しみ方が可能になっています。
INSIDEが映画であるなら、Stelaは観光ということができるかもしれません。
ギリギリクリアできる難易度にあえぎつつも物語を消費するINSIDE、単純な仕掛けをこなし、物語的な抑揚も少ないものの、その世界をじっくりと観察し、味わいながら進められるStelaにはそれぞれ違った魅力があるのです。
山の景色や世界遺産の仏閣を眺めるように、その空間を楽しめるかどうかはプレイヤー次第というわけです。
短時間でサクッと遊べるというスマホ特有のプレイ時間
また、Stelaは10数時間もプレイしなければならない大作とは違い、2時間前後でクリアしてしまえるショートコースとなっているのも嬉しいところです。
これはもちろん容量や製作者の作業時間の問題といった現実的な課題があったこともその要因として考えられますが、抑揚の少ない山の景色を眺めるのは数時間もすれば飽きてしまうのと同じで、シンプルなアクションゲームとしてはちょうど良いボリュームであると言えます。
全体のクリア時間が短い分、ゲーム中にだれてしまうこともないので、その満足度としては相応に高い、くどすぎない作品となっています。
おわりに
面白いゲームを作るのは難しいことですが、「面白さ」の見方を変えることで得られる知見も多いものです。
時には大した評価の得られていないゲームにも目を向け、そのゲームの何がつまらなく、何が面白いのかについて考えてみるのも良い刺激となるでしょう。
面白いゲーム作り関しては、下記記事でも解説しております。
→『マジック:マナストライク』は失敗作?面白いゲームを作る上で念頭におくべきこと
→スマブラのプロデューサーが考える、面白いインディーゲームの企画の仕方
→面白いゲームとは美しいゲーム?『MeltLand』が与えてくれる心地よいプレイング
出典:
*1 ゲームキャスト「終末を迎えた異世界を理由もなく旅するゲーム『Stela』。『INSIDE』系を遊びたいときに選ぶ1本」
http://www.gamecast-blog.com/archives/65952118.html
*2 上に同じ
ライター名:Satoru Yoshimura
プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。
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