DEATH STRANDINGのプロダクトローンチに感じた大作ゲームの失敗できない感とマーケティング
2019年11月8日、遂に小島監督の新作、DEATH STRANDINGが発売されました。
私も発売日に入手してから翌朝までプレイするほどハマりましたが、同時にふと感じたのです。
この作品、いつから待ってたっけ?
始まりは2016年6月
DEATH STRANDINGの存在がはじめて発表されたのは2016年の6月にロサンゼルスで行われたE3会場です。
ティザートレーラーはすぐにYouTubeにアップされ大きな話題になりました。
プレイ後に見ればこの動画がボイドアウトした後のビーチのシーンだと分かるのですが、当時は全く全貌が掴めず混乱と期待でいっぱいだったことを覚えています。
そして同年12月に第2弾ティザートレーラーが発表。
当時を思い出すとこれは本当に凄かったです。パンズラビリンスやパシフィックリムで知られるギレルモ・デル・トロ監督やマッツ・ミケルセン氏が登場するものの、全く内容が分からない!
映像的に優れている事は明白なのですが、これは本当にゲームなのか?小島監督は何を作ろうとしているのか?
映像パワーで思いきりパンチを喰らったようなものです。
そして丸1年後、2017年12月には3本目のティザートレーラーが発表。
これも凄い映像美なのですが、やっぱりゲームの内容が分からない(笑)。推測されるのはどうやら敵が見えないらしいぞ、ということくらいです。
それから半年、2018年6月のE3でようやくプレイ画面を含む4本目のティザートレーラーが発表されました。
この動画からファンが予想したとおり、DEATH STRANDINGは配達ゲームでした。
そして2019年5月。5本目のティザートレーラーで発売日が発表されると同時に予約が始まりました。
後は五月雨式に新映像が発表されるので、動画を見ながら期待感を高ぶらせて発売日を待ったものです。
こうして気が付けば2016年6月の発表から実に3年5カ月が経過していました。
これだけファンの期待感を維持できるのは本当に凄いとしか言いようがないです。
あらゆる意味で計算されているし、その計算を成り立たせるだけの映像パワーがある作品は稀でしょう。
なんだこれ、こんなの見たことない!
長期にわたるプロダクトローンチ
発売日まで情報を小出しにしたり教育して期待感や飢餓感を煽ることで、爆発的な販売力を発揮するマーケティング手法の事をプロダクトローンチ(予定販売)と呼びます。
その起源はアメリカで、株式投資の情報教材が始まりだと言われています。
ザ・ローンチ (ザ・ローンチ 世界一効率的に億万長者になる方法)
見込み客をメルマガなどで集め、次々に送るメールで教育して購買意欲を高めて販売する、この方法はスモールビジネスだけでなく、大企業にも取り入れられています。
いくつもの例がありますが、代表的なのはAppleです。
AppleがiPhoneやiPad、AppleWatchといった新型ガジェットを発売すると必ずと言っていいほどこの手法を使います。
なぜか新製品のリーク情報が有名メディアで報道されてから、スペックに関する噂がSNSを駆け巡り、発売半年前くらいから公式発表がされたら定期的にスペックやカラー等が追加発表されて、最後に発売日が決定!という流れですが、見た事がある方は多いでしょう。
ダメ押しとばかりに発売一週間くらい前には何故かロンドンのアップルストアの前に行列が出来て、何日も前から並んでます!という熱狂的なファンの姿が報道されますね。
おそらくガジェット好きの人ほど最初の情報から一連の流れを追っているハズです。
これが代表的なプロダクトローンチで、映画業界でも使われていますしゲーム業界にも取り入れられています。
しかし3年5カ月も引っ張り続ける事が出来たのはどう考えても異例としか言いようがないですし、作品もその新奇性から評価が割れているようです(私は神ゲーだと思います)。
現時点(2019年11月11日)でのDEATH STRANDINGの販売本数は不明ですが、amazonの予約本数やGEOの売上ランキングで1位を取っているので成功を収めている事はまず間違いないでしょう。
【Amazon予約数ランキング】発売直前の『デス・ストランディング』が1位! 『ポケモン ソード・シールド』、『P5S ザ ファントム ストライカーズ』でTOP10を独占【10/27~11/2】
ゲオ新品ゲームソフト週間売上ランキングTOP10 PS4「デス・ストランディング」が初登場1位! 5位にはPS4「ニード・フォー・スピード ヒート」がランクイン
長期化は失敗できないから
DEATH STRANDINGがこんなにも長い間告知を続けてきた事には理由があると思います。
それはプロジェクトを絶対成功させるという強い意志。
3年以上にわたってファンを繋ぎ止めておくのは容易なことではありません。
小島監督がコナミを退社する経緯については色々な噂がありますが、自分のプロダクションを持つという事は様々な制約から自由になる反面、自分でお金を集めて売上の責任を全て負うという事です。
絶対に失敗できないし、成功させるという強い意思があったからこそ、おそらくはほとんどゲームの形が出来ていなかった頃からセールスを考えてティザートレーラーを出したのだと思います。
そこに背水の陣的な必死さを感じました。
同時に長期間にわたって引っ張り続ける事が出来た理由としては映像パワーはもちろん、低コストで情報発信できるYouTubeの存在が大きいでしょう。
従来型のTVCMや雑誌広告では高コスト過ぎて長期間にわたって告知し続けられないですし、柔軟性にも欠けます。
E3で告知した後、YouTubeで継続的に教育して購買意欲を高めて販売するのはまさにプロダクトローンチの王道のようなものです。
直近の例について
DEATH STRANDINGに限らず多くのゲームでプロダクトローンチが取り入れられていますが、最近の例としてはアトラス×ヴァニラウェアがリリースする十三機兵防衛圏が長期化の例としてあげられます。
本作は初出が2015年でしたが、続報が来たのがなんと2017年!
ほとんど忘れられそうでしたが何とか持ちこたえた感があります。
しかしそれから2年間沈黙し、2019年に入ってようやく継続的に情報が発信されるようになりました。
一時はゲームの存在自体が危惧されるほど存在感が薄れましたが、来る2019年11月28日に発売されます。
DEATH STRANDINGは1年以上ファンを放置せず3年5カ月にわたるプロダクトローンチを完遂しましたが、十三機兵防衛圏の場合は発表から4年2カ月が経過しています。
おそらく故意に長期間引っ張ったとは考えづらく、プロダクトローンチを仕掛けたのは今年に入ってからなので、それまでは本当にリリースが危うかったのかもしれません。
しかし今後は意識的に長期間のプロダクトローンチを完遂するマーケティング計画が練られるのではないかと思います。
事前情報へのリアクションの厚さからセールス本数が推測できる可能性もありますし、何より継続的にファンと繋がっておく事はザイアンスの法則的にも有利に働きます。
※ザイアンスの法則:単純接触効果。接触回数の多さが親密さにつながるという心理学。
何よりゲーム開発は大規模化によって失敗が許されないプロジェクトになっています。良いものを作れば売れるというだけでは危険です。
これからもプロダクトローンチに限らず、意識的に様々なマーケティングが取り入れられていくでしょう。
ゲームのマーケティングについては下記記事でも解説しております。併せてご参照ください。
→ゲーム業界で求められるマーケティング知識とは?
→荒野行動から学ぶスマホゲームアプリで肝となるマーケティングのポイント
→アングリーバードの世界市場での成功は起業家精神のおかげ?ゲームを大ヒットに導くマーケティングとは
ライター名:レトロ
プロフィール:雑記ライター。オタクジャンルからマーケティング、宗教を含む幅広い分野にわたる仕事内容と多趣味が高じてライティング業界に参入。SNSやブログ、YouTubeチャンネルでも活動中。
ゲーム業界経験者が転職するなら
GAME CREATORSを運営しているリンクトブレインでは、ゲーム業界に特化した転職エージェントサービスを提供しています。
ゲーム業界に精通したコンサルタントが、非公開求人を含む3,400件以上の求人の中から、あなたの希望や適正にあった最適な求人をご紹介します。
あなたの転職活動を成功に導くためにサポートいたしますのでお気軽に登録してください!