クリエイティブなゲームって何だろう?創造性について考えてみた
ゲーム批評の文脈で「創造的なゲーム」や、「よくあるゲームの焼き直し」といった評価を目にする事は多いかと思います。
実際、プレイしていて既視感のあるゲームって結構ありますよね。
では、ゲームにおける創造性って一体何なのでしょうか。
考えてみると、意外に奥が深いことに気が付かされます。
創造性ってなに?
クリエイティブとか創造性という言葉は、時に軽く使われがちです。
そこで最初に、本稿における定義をしっかり決めようかと思います。
実用日本語表現辞典とコトバンクで「創造性」を調べたところ、下記の記載が見つかりました。
”創造的であること。何かの真似ではない、独自の有用な案を生み出すこと。また、その度合い。オリジナリティ。「創造性を育む教育」などのように用いられる。”
”新奇で独自かつ生産的な発想を考え出すこと、またはその能力。創造性についてはさまざまな研究が行われているが、いまだにその本態について明快な結論は得られていない”
実用日本語表現辞典の「創造性とは創造的であること」という解説はトートロジーが過ぎるかと思いますが、独自の発想で役に立つという点については両者共通しています。
そして商品の場合、有用性は販売本数に換算するしかありません。
オリジナル性と有用性が両立したものを創造性と呼ぶのなら、売れないゲームは全てクリエイティブなゲームでは無いと言えるでしょう。
マインドシーカーやLSDのように斬新過ぎて売れないゲームや、40年前に販売されていたデジタル時計付ペンのように、新奇でも役に立たないものは言葉の定義上創造性のある製品と認められないという事です。
しかし創造性の要件に売上を含めるのはしっくり来ません。
ク〇ゲーと呼ばれたLSDもアイデア部分をHMD用のVRでリメイクすれば、デジタルトランスゲームとして創造的なコンテンツが出来そうですし、新奇なアイデアで売上が振るわなかったゲームは単にマーケティングに問題があったり技術が追いついていなかっただけ、というケースも相当にあるでしょう。
そこで創造性という言葉を外形的に定義するのはやめて、誰が創造的なのかという視点に切り替えた方がゲームにおけるクリエイティビティについて有益な議論が出来ると思います。
プレイヤーが創造性を発揮するゲーム
まずはプレイヤー側に創造性が求められるゲームとして、代表的なものはマインクラフトなどのサンドボックスゲームやシムシティのようなシミュレーションゲームがあげられます。
このタイプのゲームは、RPGのようにレベル上げやレアアイテムの収集、魔王退治など明確な目標がありません。
プレイヤー自身の創造性によってゲームの面白さが大きく左右されるので、何をしたらいいかわからないのでまったく楽しくないという人がいるくらいです。
ゲームソフト自体は遊び方の枠を提供するに留まり、プレイヤーがmodを入れたり色々な建築物を作るなどして楽しむので、主に創造性を発揮するのはプレイヤーという事になります。
これは間違いなくクリエイティブなゲームと呼べるでしょう。
ゲームの枠組み自体に創造性がある
もう一つのタイプはゲーム自体に創造性があるタイプで、ユーザーにこれまでに無いプレイ体験を与えてくれます。
ゲームは仕組み(ルール)が遊び方を規定します。
こちらのタイプのゲームでは提示されたルールに則って遊ぶことになるので、サンドボックス系ゲームほど何でもできるというわけではありませんが、その提示された遊び方で得られる「プレイ体験が新しい」のです。
私が知る限りほとんどのゲームはこちらで創造性を発揮しています。
単純化すると、DOOMのように敵を倒しながら進むのではなく、隠れながら進むメタルギアソリッドといった違いです。
新しいプレイ体験を提供するために既存のジャンルに何か付け加えるタイプのゲームですが、付け加える「何か」が重要で、間違えるとクリエイティブなゲームどころかク〇ゲー呼ばわりされる事になります。
例えば先日発売された小島監督のDeath Strandingですが、発売から一週間が経過した時点(2019年11月15日)で評価が真っ二つに割れています。
同じゲームで遊びながらも長いムービーと荷物運びをするだけの退屈なゲームだと感じる人と、バランスをとりつつ悪路を歩く事に楽しさを見出す人がいるようです。
Death Strandingの新奇性はトレーラーで見せたビジュアルインパクトだけではありません。
テーマ性、踏破ルートの設定や重量物を背負って歩くプレイ感、プレイヤー間の緩い連帯など様々な要素があります。
個人の感想になりますが、Death Strandingはテーマ性とゲームシステムが高いレベルで融合しており、これまでに無いプレイ体験が得られるゲームだと思います。
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クリエイティブなゲームは賛否両論になりやすい
創造性をプレイヤー側が発揮するのか、ゲーム自体がもっているのかという視点で2つに分けてみましたが、両者の間にはグラデーションがあるので完全に分離することはできません。
先ほどのマインクラフトは、プレイヤーが創造性を発揮すると同時に、全てがブロックで出来た世界という枠組みを作ったこと自体に創造性があると言えます。
また、特に目新しい要素が見当たらないゲームでもクリエイター側が想像しなかったような遊び方をするプレイヤーが現れます。
しかし明らかにクリエイティブなゲームは分かる人には分かるもので、のちに影響を与えたり世間の評価が後からついてきます。
ですので、もし辞書の創造性の項目に一文を付け加えるとしたら「ただし誰もがすぐ理解し受け入れられるものではない」が良いかと思います。
天動説が批判をあびたように、ゲームにおいても本当に新しい遊び方は受け入れてもらいづらいものです。
またゲームの面白さや創造性はゲーム自体に備わっていたりプレイヤーだけが持っているわけではありません。自分(プレイヤー)とゲームの相互作用によって生まれてくるものです。
プレイヤー側にも面白さや斬新なプレイ体験を受け取れるだけの素養が求められます・・・クリエイター側の人には絶対に言えないでしょうけど。
システムや売上などの外形的な要因によらず、プレイヤーの創造性を引き出すパワーが強く、新鮮なプレイ体験を与えられるゲームこそクリエイティブなゲームと呼ぶにふさわしいのではないでしょうか。
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ライター名:レトロ
プロフィール:雑記ライター。オタクジャンルからマーケティング、宗教を含む幅広い分野にわたる仕事内容と多趣味が高じてライティング業界に参入。SNSやブログ、YouTubeチャンネルでも活動中。
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