クリエイティブなオンラインゲーム『五七五オンライン』から創造性のあり方を考える
リアルタイムで見知らぬ人と一緒に遊べるオンラインゲームは、ビデオゲームのあり方を一新してくれた画期的な技術です。
一人一台となったスマホでゲームをすることが当たり前になった今、これまでになかったようなオンラインゲームも現れるようになってきました。
目次
ルールはいたってシンプルな『五七五オンライン』
『五七五オンライン』はその名の通り、七五調の俳句をオンラインで作って遊ぶことをコンセプトとしたゲームです。
リアルタイムで誰かと俳句を作ろう
俳句を作るゲームと言われても、ピンとこないという人も多いかもしれませんが、このゲームは文字通り俳句を作るだけのゲームです。
プレイヤーは上五の句、中七の句、下五の句を二人で交互に埋めていき、一句を詠むことがクリアの条件です。
5文字7文字、そして5文字と入力する句はなんでも良く、プレイヤーの自由に句を埋め合うことで、趣のある句を詠むもよし、支離滅裂で関係のない句を埋め合い、奇想天外な一句を読むのも自由です*1。
とにかくこのゲームのコンセプトは、オンライン上で知らない人とマッチングし、ただひたすらに俳句を読み続けるということだけなのです。
対戦?協力?新しいオンラインゲーム
『五七五オンライン』には、いわゆる勝利や敗北、あるいはゲームクリアの概念も厳密には存在しません。
1つの句を読み終えたらひとまずゲームが終了し、ただひたすらに気がすむまで句を読み続けるだけで、どちらが面白かったかとか、上手かったかなどというのはスコア化されません。
ひたすらに自己満足でどちらが上手い返しを見せられるかを楽しむようにすれば、それは対戦ゲームなのかもしれませんし、二人で協力して思いもつかなかった秀逸な作品を作ろうとなれば、それは協力プレイなのかもしれません。
『五七五オンライン』は、もはやゲームのプラットフォームを提供するだけで、具体的な遊び方の提案すらも行わないスマホオンラインゲームになっているのです。
『五七五オンライン』はなぜオンラインゲームとして成立するのか?
『五七五オンライン』は想像の通り非常に地味なゲームであるとも言えますが、ゲームの面白さとしては高いポテンシャルを感じさせてくれます。
伝統的でインタラクティブな営みをオンラインでも可能に
『五七五オンライン』が可能にしている、複数人で俳句を詠み、創作するという遊びは、日本でも古くから存在するゲームの一種です。
将棋や囲碁ほど具体的な勝敗は決しませんが、なんとなく「あの人は詠むのが上手だな」などと趣ある楽しみ方は受け継がれてきました。
『五七五オンライン』はそのような趣のある遊びをオンラインで可能にした、とても伝統的なゲームの1つであるともいえるでしょう。
なかなか現代では親しまれることのない歌詠みですが、『五七五オンライン』はちょっとした隙間時間に全国の顔も知らないプレイヤーとマッチングし、俳句だけで心を通わせることができる遊びです。
格ゲーほど暴力的ではなく、かと言ってパズルゲームほど複雑でもない、オンラインゲームの根幹のみを抜き出したゲームであるとも見ることができます。
家庭用ゲームとして遊ぶには、あまりにもボリュームに欠けるゲームですが、スマホゲームであればちょうど良い仕上がりです。
『五七五オンライン』は、スマホのオンラインゲームとしては絶妙なバランス感覚を保っているようにも伺えるでしょう。
俳句の面白さを様々な側面からアプローチ
また、顔を合わせないばかりか、かしこまった空間でもないため、普段ではできないような創造性あふれる俳句を詠むこともできます。
季語を入れないのはもちろんのこと、普段は持ち出せない上司の愚痴や、突飛すぎるトレンドワードなど、カジュアルにプレイできるからこその発想力を生かすことが出来ます。
日本人は世界でも無類のTwitter好きであることは有名ですが、Twitterよりもさらに洗練され、かつゲームとして豊かな発想力と持ち前の「つぶやき力」を試すことができるでしょう。
俳句を気軽に楽しめることで、俳句の魅力や、その新しい可能性についてもインスピレーションを得ることができるかもしれません。
クリエイティブなオンラインゲームを作るために必要なこと
想像もしなかった面白いゲームを作ることは一筋縄では行きませんが、クリエイティビティを育てるためにはどのような取り組みが効果的なのでしょうか。
身近な遊びに目を向ける
『五七五オンライン』は全くもって単純明快なゲームであるだけでなく、誰でも知っている「俳句」をテーマにした遊びです。
「誰も見たことがないようなゲームを作りたい」という気持ちはゲームクリエイターであれば誰しもが憧れる夢でもありますが、面白いゲームは必ずしもゼロの状態から生まれるとは限りません。
まずは身近な遊びに目を向けてみることで、「こうしたらもっと楽しくなるかな」という、工夫する心でアプローチを続けていけば、面白いスマホゲームを作ることも幾分簡単にはなるでしょう。
『五七五オンライン』も俳句を詠むという遊びをオンライン化するだけで、これまでは考えられなかったような遊び方や俳句のあり方を生むきっかけになっています。
大人気ゲームに目を向けて見ても、例えばコジマプロダクションの『デス・ストランディング』なんかは、元をたどると「荷物運び」をゲーム化したものです。
公式サイト:http://www.kojimaproductions.jp/
バランスをとりながら無事に荷物を運ぶことができればゲームクリア、という遊びは、皆さんも小学生の頃なんかにやったことがあるのではないでしょうか。
「デススト」の場合、この荷物運びのスケールを大きくして、大陸を歩かせたり、人類の存亡をかけたものを運ばせたり、壮大なストーリーをバックグラウンドに提供するなどして、大作ゲームへと変貌させています。
そして、プレイヤーが荷物運びに没入感を与えるよう、操作方法にも一工夫を加えて、緊迫化なるプレイングを実現しました。
このように、日常的な遊びを派手にゲーム化するだけでも、人を感動させたり、ワクワクさせるようなゲームへと進化させることができるのです。
おわりに
ビデオゲーム以外にも、日常には様々な遊びのきっかけで溢れかえっています。
新しいゲーム作りのきっかけを探すのなら、他のビデオゲームを参考にしてみるのも良いのですが、普段の生活にもっと意識的になり、「どの生活シーンをゲーム化できるだろう」と発想を切り替えていくことが求められます。
クリエイティブの源泉は、日常への注目にあるともいえるでしょう。
併せて読みたい記事
→クリエイティブなゲームって何だろう?創造性について考えてみた
→トビー・フォックスの成功から学ぶゲーム・クリエイティブに必要な事
→文字を紡ぐという、クリエイティブな遊びを提供するゲームが生む喜びとは
出典:
*1 ゲームキャスト「見知らぬ人と対戦・協力して俳句を作る『五七五オンライン』レビュー。キサマは俺の考えた句の後を継げるか!」
http://www.gamecast-blog.com/archives/65930303.html
ライター名:Satoru Yoshimura
プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。
ゲーム業界経験者が転職するなら
GAME CREATORSを運営しているリンクトブレインでは、ゲーム業界に特化した転職エージェントサービスを提供しています。
ゲーム業界に精通したコンサルタントが、非公開求人を含む3,400件以上の求人の中から、あなたの希望や適正にあった最適な求人をご紹介します。
あなたの転職活動を成功に導くためにサポートいたしますのでお気軽に登録してください!