『超能力でゾンビと戦うRPG』に見る、テンポの良いゲームを企画するのに必要なもの
RPGと言えばビデオゲームの王道ジャンルとも言えますが、世の中にはユニークな作品も数多く眠っています。
特にApp Storeのように、スマホ向けのゲーム市場は無数に創意工夫溢れるインディーズゲームでごった返しているのですが、『超能力でゾンビと戦うRPG』はかなり異彩を放ったスマホ向けRPGとして、一部の人たちの注目を引いていました。
目次
半分ジョークの『超能力でゾンビと戦うRPG』
中でも『超能力でゾンビと戦うRPG』は、スマホで遊べる作品の中ではインパクトのある作品の1つです。
正当派RPGと思いきや・・・
『超能力でゾンビと戦うRPG』とは非常に収まりの悪いタイトルとなっていますが、その名からも想像できる通り、爽快感を通り越して何が起こっているかわからない、支離滅裂なゲームになっていると言えます。
ただ、胡散臭いゲームのようにも見える一方、ゲームとしては至極まっとうな作りになっています。
超能力に目覚めた主人公が、体制的な世界観の中で戦うというストーリーとなっており、肝心の戦闘シーンも「ファイナルファンタジー」のようなシステムに準拠した、ターン制のスタンダードな仕上がりです。
こういった要所をつまみ上げていくと、良くいえば正統派RPG、悪くいえば凡作止まりとも言える作品なのですが、最大の特徴は、物語が驚くべきスピードで進んでいくというところにあります*1。
通常のRPGでは徐々に仲間が増えていき、様々な葛藤やドラマを乗り越えながらボスを目指すという設定がセオリーとなっています。
この「超能力RPG」も、これらの設定をしっかりと踏襲してはいるものの、間髪入れずにあらゆるイベントが展開されていくため、ストーリーの進行速度は目まぐるしいの一言です。
新しいキャラクターが仲間になったり、敵として立ちはだかったりしたかと思いきや、間髪入れずにまた新しいキャラやイベントが発生するなど、次々に主人公の周りの景色や環境は移り変わっていきます。
もちろんストーリーが無茶苦茶というわけではないため、ゆっくりそれらを追っていけば理解はできるのですが、問題なのはそのテンポです。
明らかに異常なスピードで物語が進行していくため、もはやプレイヤーはそのスピードになすすべも無く追いかけることしかできないような作品に仕上がっているのです。
ドラクエやFFのように落ち着いたRPGを想像していた人にとっては、まさに度肝を抜くようなスピード感に、感情移入の暇もなくプレイを迫られることになるでしょう。
なんだかんだで楽しめる良作品
目まぐるしく展開されるストーリーにはただただ圧倒されるばかりですが、落ち着いて咀嚼してみると、RPGとしては良い作品であることには違いありません。
丁寧なキャラクター設定によって、主人公以外にも多くの人たちがこの世界に生きていることがありありと描かれていますし、勢い任せかと思いきや物語にも緩急があり、マイペースに進めればその物語をある程度飲み込むこともできます。
典型的とも言えるRPGですが、その圧倒的なスピード感によって、ついつい途中で飽きてしまいそうなオーソドックスな展開も、ギリギリ理解できるRPGであるための程よく簡潔な物語として受け入れることができます。
ハイスピードかつ重厚で複雑な物語が展開されてしまえば、プレイヤーの理解の範疇を超えてしまいますが、ハイスピード+単純明快な物語によって、RPGとしては良作に分類することができる作品です。
ハイテンポでゲームが展開する魅力
ユーザーの理解も追いつかないほど、RPGとしては異端のテンポ感で進むこちらの作品ですが、実のところ確実にエンタメ性を捉えている点は見逃せません。
突っ込む隙もないスピード感
「超能力RPG」の異常なスピード感は、物語を深読みする隙を与えることはないため、ありきたりの設定や展開でもあまり悪い印象を与えません。
それどころか、多少雑だったり、明らかに異常なキャラなどが登場した際の「ツッコミ」の隙も与えないため、「今のはなんだったんだ・・・」という余韻さえ与えてしまうコメディ要素を担うほどになっています。
物語そのものは真面目なのかもしれませんが、このようにツッコむ隙も与えないゴリ押しの姿勢を汲み取ると、ある種のコメディRPGに仕上がっているとも言えるでしょう。
タイトルのやたらに収まりの悪いネーミングは、確信犯的にそれを裏付けているとも取れます。
好例は『メイドインワリオ』
このツッコむ隙もないハイスピード感は、任天堂の名作『メイドインワリオ』シリーズが良い例でしょう。
公式サイト:https://www.nintendo.co.jp/n08/azwj/index.html
こちらはRPGではなくミニゲーム集ですが、1つ1つのゲームは約5秒で完結、そしてどこかおかしなキャラクターたちが繰り広げる展開は、まさに「超能力RPG」のような「なんだったんだろう」の連続です。
スピードが速すぎるということで話題にもなった異色作でしたが、そのスピード感がクセになるということで、大きな評価を博した作品となりました。
ハイテンポのゲームを企画するときに考えたいこと
テンポの速いゲームとは一言で言っても、それにフィットするジャンルや嗜好にも傾向があります。
遅すぎるより、ちょっと早いくらいが良い
メイドインワリオは当時、携帯ゲーム機のゲームボーイアドバンス向けの作品として販売されました。
実のところ、携帯ゲーム機とハイスピードゲームの相性はかなり良く、なぜなら「いつでもどこでも遊べて、好きな時にやめられる」という特徴を共有しているためです。
これはスマホゲームでも同じことが言えます。
電車の中の空き時間などでサクッと遊べて、中だるみしないスピード感でゲームを遊ぶことができれば、そのゲームに覚えるストレスは最少限度で済みます。
RPGは長々と展開される重厚なストーリーも魅力ですが、せっかく電車の中で遊びたいのに延々とムービーが続いてしまっては興ざめです。
「超能力RPG」は、そのような不満が生まれる余地さえ与えないスピード感を実現してくれているため、否が応でも遊べてしまう設計になっているのです。
コメディ路線か、アクションか
また、このようなハイスピードな作品は、アクションか、コメディかの二択に迫られる点も押さえておきましょう。
ハイスピードな展開がプレイヤーにもたらしてくれるのは、爽快感と「おかしさ」です。
ストレスなく自由に敵を打ち倒していくことができるアクションか、息つく間もない展開がもたらしてくれる笑いの側面かが強調されることになるため、自分の作りたいゲームをどのような方向性で展開していきたいかによっても、スピード感のバランスを調整していく必要があるでしょう。
併せて読みたい記事
→一発アイデアでも大丈夫。スマホゲームに求められる企画力とは
→ホラーアクションの『CARRION』が示した、ウケる企画の作り方
→スマブラのプロデューサーが考える、面白いインディーゲームの企画の仕方
出典:
*1 ゲームキャスト「フラグを立てては5分で回収する疾風怒濤のストーリー『超能力でゾンビと戦うRPG』レビュー。3時間で圧縮1クールアニメぐらい物語が進むRPG」
http://www.gamecast-blog.com/archives/65930387.html
ライター名:Satoru Yoshimura
プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。
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