生き物の特性を生かして面白いゲームを作るには?
人間以外の生き物をテーマにしたゲームは数多くありますが、『Bomb Chicken』もまたニワトリの個性に強烈なアレンジを加えた作品に仕上がっています。
『Bomb Chicken』DLページ
Nintendo Switch:https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000008565
Steam:https://store.steampowered.com/app/658780/Bomb_Chicken/?l=japanese
目次
魅力的なパズルアクションの『Bomb Chicken』
『Bomb Chicken』は爆弾を産むニワトリを操作し、試行錯誤を繰り返しながらクリアを目指すパズルアクションです。
動画:https://www.youtube.com/watch?v=d8g-Kl_Y8FI
※メーカー・Nitromeより公開されているトレーラー。
爆弾を産むニワトリを操作するユニークなシステム
プレイヤーは、偶然にも誕生した爆弾が産まれてしまうニワトリとなり、そんな身体を与えたフライドチキン店を滅ぼすべく、次々と店舗を破壊していきます。
プレイングは2Dアクションのシステムを採用しており、上下左右と爆弾の設置のみでフライドチキン屋を襲撃し、完全な爆破を目指します。
ゲームはステージ制で進行し、全30ステージにも昇るボリュームを備えている点も特徴です。
単純に爆弾を仕掛けて回るだけでなく、ステージを進めていくごとに頭を遣わされる場面も増えていくなど、パズルゲームらしい繊細な側面を見せてくれるところも見逃せません。
「爆弾を産む」行為に含まれた面白さ
卵ではなく爆弾が生まれてしまうという行為の危うさは、繊細なプレイ感にもうまく表現されています。
『Bomb Chicken』においては、上下左右の移動と爆弾を産む以外の操作方法がなく、スマホで直接操作する場合、移動ボタン以外のタップ操作は全て爆弾となっています*1。
そのため、うっかり画面をタップして爆弾を産んでしまえば、意図せずに自爆してしまう可能性もあるため、くれぐれもボタン操作には気をつけなければいけない慎重さが求められます。
その一方、このゲームでは単純な操作しかできない代わりに、爆弾を用いて様々なアクションも可能となっています。
爆弾を使って敵を攻撃したり、オブジェクトを破壊することはもちろんのこと爆弾の上に乗っかって高所へと移動したり、防御力を生かして盾にしたりといったことも可能なのです。
時間が経つと爆発してしまうため、悠長に爆弾を産んで試行錯誤する時間こそないものの、頭と技術で効果的に爆弾を使用する、スリルと謎解きを楽しめるアクションに仕上がっています。
「ニワトリが爆弾を産む」アイデアはどこからきたのか
それにしても「ニワトリが爆弾を産む」というアイデアには、どのようにたどり着いたのでしょうか。
社会問題×生物の閃き
そのヒントもまた、『Bomb Chicken』のストーリーに隠されていると考えられます。
このゲームでは爆弾を産むニワトリがフライドチキン店を破壊していくという設定が存在します。
しかしもう少し深く説明すると、現代の偏った食料供給事情の弊害という、社会的なテーマ設定が存在します。
ゲーム内に登場するフライドチキン店は、さらなる集客と商品提供の効率化を目指します。
そのため、呪術を使ってニワトリの卵を一瞬で孵化し、すぐに食べられるチキンにしてしまうという行為に及んでいます。
そのような生命倫理を侵した行為の結果として、爆弾を産むニワトリが誕生し、生き物の復讐としてフライドチキン店を次々と爆破している、というのが筋書きです。
現実世界においても、食肉の異常な需要拡大は環境問題の悪化や人体への有害な影響を引き起こすとして、危険視されています。
『Bomb Chicken』はそんな社会情勢からヒントを得た作品で、一見すると呪術と爆弾を産むニワトリという、フィクションらしい設定が使用されています。
しかし、彼らがテーマとしている問題は誰にでも理解できる社会課題であり、現実においても形を変えて近いことが行われていることを示唆しているのです。
「ボンバーマン」など過去の名作も影響を与えたか
社会的なテーマをベースに、ゲームとしてのアイデアを構築する上では、過去の名作からもヒントを得ている様子が伺えます。
爆弾を使った2Dパズルアクションといえば、やはり「ボンバーマン」シリーズが有名です。
爆破の爽快感と、頭を使わされる上に一瞬のミスが命取りという駆け引きについては、今作においても色濃く見られます。
テーマは違えど、名作のゲームシステムは汎用性が高く、新規性の高いアイデアにも十分に応用できることを、このゲームは示しているとも言えるでしょう。
名作が名作たる所以は、優れたゲームシステムを備えているところにあります。
自分なりにそのゲームの何が面白いのかを分析し、エッセンスとして抽出する癖をつけておけば、新しいアイデアが生まれた時に応用させやすくなるでしょう。
ユニークな「生き物ゲー」を作るには
生き物をテーマにしたゲームは親しみやすく、製作者のアレンジ力やセンスが問われるジャンルでもあります。
身近な生物に目を向けてみる
人間とは違う動物や魚、虫などに注目してみる視点は、非常に有効です。
彼らには独自の生態系が存在し、人間とは大きく異なる社会で毎日を生き抜いています。
そして同時に、彼らは人間とは異なる戦いにも身を投じ、過酷な生存競争を生き抜いています。
弱肉強食の価値観がはびこる世界において、弱者は強者から身を隠す術を身につけ、強者は確実に獲物を捕らえる技術を磨きます。
その過程で、彼らは必要に応じた特殊能力を身につけ、様々な方法で敵から身を守ったり、あるいは攻撃したりする手段を手に入れてきました。
これらの能力は、十分にゲーム化する価値のあるユニークさを持ち合わせています。
その生物にまつわる社会背景やユニークなストーリーを探す
生物の弱肉強食の世界に立ち入るようになってきたのが、人間世界の存在です。
人間の乱獲や環境破壊、自然の秩序を乱す繁殖などは、人の社会においても時として批判が飛び交うものである一方、その全てを止められない現実もあります。
そこで、今回の『Bomb Chicken』のような物語の登場です。
ゲームというフィクションの世界で、生物たちに人間の知恵を与え、反旗をひるがえすチャンスを作り出していきます。
生物の反乱というテーマは、この世に生物にまつわる社会問題が存在する限り、なくなることはありません。
彼らがどのような困難に立ち向かい、どうすれば人間に立ち向かうことができるのかを考えることで、自然とゲームのアイデアは固まっていくことでしょう。
生き物を題材にした代表的なゲーム
本項では、ゲームクリエイターズで取り扱った、生き物を題材にした代表的なゲームを紹介します。
生き物の特性を生かした『Bomb Chicken』とは異なる切り口で、上手に生き物たちをゲーム内に落とし込んでいます。
『どうぶつの森 ポケットキャンプ』
任天堂より2017年11月21日から配信されているiOS/Android用アプリで、『どうぶつの森』シリーズのスピンオフ作品です。
開発は任天堂、DeNA、エヌディーキューブとの共同で行われており、『とびだせ どうぶつの森』のスタッフがディレクターを担当しています。
本作では、どうぶつが「人間に都合の良い可愛さ」で作られておらず、人間臭い感情で構成されており、時折見せる人間的な弱さや優しさ、ピュアな可愛さが、ユーザーたちのプレイへのモチベーションとなっています。
『ペンギンの島』
HABBY PTE. LTD.より2019年8月26日から配信されているiOS/Android用アプリです。
舞台となる島でペンギンや彼らの生息地を増やしていくシミュレーションゲームとなっています。
特別派手なアクションこそありませんが、気ままに過ごす大量のペンギンたちの姿に癒される1本です。
1匹ごとの動作こそ大きなものではありませんが、それが群れとなり、異なるタイミングとパターンで動いている様子は、実際にペンギンたちの群れを見ているようなリアリティがあります。
『猫のニャッホ ~ニャ・ミゼラブル~』
ココネよりiOS版が2017年12月18日、Android版が2018年1月15日より配信されているアプリです。
主人をなくして貧困にあえぐニャッホが、相棒のテオとともに生活を再建するというストーリーのパズルアドベンチャーゲームとなっています。
ドラマチックなストーリーや個性の強い登場キャラクターが人気を掴み“Google Play ベスト オブ 2018”キュート&カジュアル部門の大賞に選ばれた他、2019年4月より『きんだーてれび』内でTVアニメ版が放送開始されました。
おわりに
『Bomb Chicken』は単なるパズルアクションにとどまらず、多彩なアイデアと社会的なテーマによって、多くのファンを獲得したゲームです。
ゲームの面白さを考え抜く力と、社会問題や身近な生物に目を向ける視野の広さを持つことが、良いゲームを作るプロセスで大きな役割を果たすことを、暗に伝えているとも言えるでしょう。
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出典:
*1 ゲームキャスト「爆弾を産むニワトリがフライドチキン・チェーンを壊すパズルアクション『Bomb Chicken』レビュー。一見色モノ、遊ぶと軽快操作の骨太のパズルアクション」
http://www.gamecast-blog.com/archives/65960687.html
ライター名:Satoru Yoshimura
プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。
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