「ミニ四駆 超速グランプリ」に学ぶライト層・ヘビー層のニーズを両立させるゲーム作り

 

2020年1月15日に、バンダイナムコエンターテインメントよりTAMIYA/コロコロアニキ完全監修の本格スマホ向けRPG「ミニ四駆 超速グランプリ」がリリースされました。

SNSを中心に、事前登録者数に応じたリリース時のインセンティブを設けるなど、集客機能と宣伝機能を兼ね備えたプロモーションが話題になった作品です。

 

本作は、古くはファミコン時代から連綿と紡がれるミニ四駆をテーマとしたシミュレーションゲームです。

現代風の世界観を舞台に、ゲーム内の通貨でミニ四駆を購入し、パーツガチャを引いてカスタマイズを続けてチャンピオンを目指します。

 

ミニ四駆の漫画作品とコラボしたキャラクターやマシンの登場が目玉となり、世代を超えたファンに訴求していることから、集客面とゲーム性が一気通貫しているアプリゲームとしては示唆に富んだタイトルといえるでしょう。

構成する要素を考察することでライトユーザーとヘビーユーザーの両面にとるべきアプローチが見えてきます。

 

漫画作品クロスオーバーの狙い

ミニ四駆にはもともとコロコロコミックでのコミカライズ、アニメーション、プラモデルをマルチメディアとして展開してきた背景があります。

その為、ゲームソフトが作られる際はその時々で人気を博している作品を原作としたゲームであることがほとんどでした。

本作がこれまでのミニ四駆のゲームと比較して特徴的なのは、こうした特定の原作を持たないゲームであることです。

これにより一つのタイトルだけでなく、複数のタイトルを使用したクロスオーバー的な展開を可能としました。

このこと自体が本ゲームの収益性の鍵となります。

 

ミニ四駆のブームはこれまでに三つの大きな転換期があります。

1987年の第一次ブーム、1994年から始まる第二次ブーム、そして2000年代から現在に至る迄の第三次ブームです。

そのため、特定のタイトルでゲームをリリースする場合は当該の世代以外の層をとりこぼしてしまうことになります。

しかし、アプリゲーム自体をミニ四駆全世代のプラットフォーム的に機能させ、各タイトルを共生させることで、世代で分断されたユーザーをボーダレスに集客できるという最大の強みをつくりました。

これによりソーシャルゲームの生命線である定期的なキャンペーンのネタや、ゲーム本編の展開を広げ、継続的なプレイを実現します。

 

リアルをゲームに落とし込むUX

ソーシャルゲームでは、ユーザーが初めてログインした時、直感的に「続けて遊びたい」と思わせる仕組みを用意することが重要です。

それには「プレミア感」と「序盤の無敵感」が重要な要素となります。

 

「プレミア感」は自分だけが特別待遇を受けていると錯覚させる様々なゲーム内インセンティブです。

例えば「今始めるユーザーだけ」といった触れ込みで用意するゲーム内通貨のボーナスや、レアなアイテムが用意されている様な状況を作ります。

インセンティブは連日ログインボーナスなどへの連続性があり、継続的なログインを促す事でプレイ動機を作ります。

 

「序盤の無敵感」は、ゲーム序盤は思考レベルや技術レベルを問わず快適に楽しめるよう、いわば接待的な難易度を設定するものです。

一般的にゲームのプレイヤーには厳しい条件下で、分析や練習をしながら成長するプレイが好きな層と、ストレスにならない程度に快適に楽しむ事が好きな層とで分かれます。

前者はコンシューマーゲームに多く、後者はソーシャルゲームで多く見られます。

そういった嗜好性の違いから、生活の中のちょっとした時間潰しという役割が多いソーシャルゲームではこの快適さを優先した「序盤の無敵感」が求められます。

 

本作も例外ではなく、ゲームを始めて2時間はログインボーナスでゲーム内通貨を取得し、チューンナップを行ってサクサクと進めることができます。

しかしチュートリアルステージ、接待ステージが終わってからのステージでは突然難易度が上昇します。

しかし、いたずらに難易度が上昇しているのではなく、本来のミニ四駆の原理に則った難易度の調整がされており、ミニ四駆のパーツ毎の特性やギヤ比の概念、加速性能やモーターの扱いといった、マシンが早くなる原理を理解してチューンナップすることが求められます。

本作では、それぞれの部品の特徴を理解しながら進める必要があり、それを適当に設定しているとボスでもない雑魚キャラにすら勝つ事が難しくなります。

 

プレイヤーはこの体験をもとに手元にあるパーツの組み合わせをチュートリアル通りに正しく再設定し直し、ゲームの本当の面白さに向かって行く事ができます。

つまりソーシャルゲームの最大公約数的な面白さを楽しむフェーズから、ミニ四駆本来の醍醐味を楽しむフェーズにプレイヤーを移行させる構造を提供しているのです。

このバランスの取り方が他のゲームにない、疑似ミニ四駆ライフを楽しむ仕掛けになっています。

 

こうしたいわば挑戦的な、しかし本質的な面白さの提供には過去にあった他社のアプリが参考になっていると考えられます。

 

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ミニ四駆である必要性が薄かった事による失敗

ミニ四駆をモチーフとしたアプリゲームがリリースされるのは今回が初めてではありません。

かつてブシモから「爆走兄弟レッツ&ゴー!! ミニ四駆ワールドランナー」というアプリが配信されていました。

 

「爆走兄弟レッツ&ゴー!! ミニ四駆ワールドランナー」は、前述のミニ四駆世代の中では第二世代に含まれるタイトルである「爆走兄弟レッツ&ゴー!!」をベースにしたゲームで、わずか1年をまたずしてサービス終了の憂き目に合っています。

すでにサービスが終了している為、敗因は憶測の域を出ませんが「主にタイトルを絞ったことによるプレイヤーの母数を集められなかった事」、「提供するゲーム性がプレイヤーの求めていたミニ四駆ライフとは乖離していた事」が大きいと推察されます。

 

ソーシャルゲーム然としているゲーム設計ではあったものの、ミニ四駆である必然性が薄かった為にプレイヤーから飽きられてしまった印象があります。

こうした過去の競合タイトルの失敗を鑑みると、本作で行われている「世代を問わないタイトル集め」、「シビアなミニ四駆ライフの提供」は必然であると考えられます。

 

まとめ

本作では、タイトルを一つに絞らずアプリゲーム自体を複数タイトルのプラットフォーム化することで、集客機能とコンテンツ多様性を持たせました。

また、ソーシャルゲームとしての面白さ・快適さを保ちつつ、ミニ四駆そのものが持つシビアな勝負の中にある醍醐味もしっかり再現することでヘビーユーザーのニーズにも応えています。

 

可処分時間の取り合いとなっている昨今のアプリゲーム市場では、新規顧客獲得やリテンションに年々苛烈なマーケティング費用が使われています。

こうした集客機能とコンテンツ自体のエンタメ性に一貫性があるアプリゲーム作りで、ライトユーザーの獲得、ヘビーユーザーの継続的な利用といった一見反することを両立させています。

 

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ライター名:ビットリズム

プロフィール:国産ゲームで産湯を使ったロムネイティブなゲームエバンジェリスト。QOL向上に必要なのはワーク・ライフ・ゲームバランスだと信じている。

 

「ミニ四駆 超速グランプリ」公式サイト

https://mini4wd-app.bn-ent.net/

「ミニ四駆 超速グランプリ」公式Twitter

https://twitter.com/mini4wd_app

「ミニ四駆 超速グランプリ」DLページ

App Store:https://apps.apple.com/jp/app/id1481191686

Google Play:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.bandainamcoent.mini4wdgp

 

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