新感覚工場タワーディフェンスゲーム『Mindustry』の設計について解説!
世の中にはいくつものゲームジャンルが存在し、それぞれ固有の面白さを持っています。
しかし『Mindustry』と呼ばれる作品では、異なるジャンルのゲームシステムを融合し、見事に組み合わさり、新しい面白さを生んでいる様子が伺えます。
目次
新感覚工場タワーディフェンスの『Mindustry』
基本的にはタワーディフェンスとなる本作ですが、特徴的なのは資源を生成していくシステムが入念に作り込まれているところです。
資源を採掘し、来襲に備える
このゲームにおいてプレイヤーが従事することになるのは、土地に埋まった豊かな資源を採掘し、少しずつ工場を発展させていくことにあります。
そして工場において組み上げることができるのは、兵器です。
工場をフル稼働させて兵器を作り、迫り来る敵対勢力の襲撃に備え、殲滅するのが目的となります。
現実の工場からも想像できる通り、資源をそのまま機械に放り込めば兵器が出来上がるほど、組み立ての仕組みというのは単純ではありません。
資源を採掘し、資材を精製。そしてパーツを組み立てていくことで、初めて兵器は完成します。
『Mindustry』においてもそのプロセスは再現されており、資源を掘削するところから兵器の組み立てまで、すべての工程をベルトコンベア上に完成させる必要があります。
資源の採掘場所から兵器の製造に至るまで、いかに効率の良いシステムを組み上げることができるか、というシミュレーションができるところに醍醐味があります。
時には敵地へ自ら赴くことも
そして、開発した兵器は直ちに工場を破壊しようと攻撃を仕掛けてくる敵機の迎撃に使われます。
ステージが進むにつれ、少しずつ敵の攻撃は激しくなり、ただ兵器を並べるだけでは太刀打ちができなくなります。
資源にも限りがあり、兵器の製造には限りがあるため、プレイヤーは効率の良い兵器の配置を求められます。
つまり、少ない戦力で効率よく敵機を迎撃できるかという、戦略性の高いタワーディフェンスを楽しむことができるのです。
そして、敵は単体の戦力を送り込んでくるだけでなく、近くに工場を構え、プレイヤーと同様に兵器開発を行っています。
迫り来る敵を迎え撃つだけでなく、戦力を投下してこちらも相手の工場を攻撃し、資源を奪う必要があります。
いつもはただ押し寄せる敵をなぎ倒すだけだったのが、相手の本拠地へと攻め入ることができるという、アクション溢れる展開を楽しむこともできるというわけです。
二つのゲームジャンルを融合した『Mindustry』
今作をあえて別個のジャンルに当てはめて考えてみると、工場シミュレーションとタワーディフェンスという、二つの側面が見えてきます。
工場・採掘シミュレーションの側面
近年、工場や採掘のシミュレーションを楽しめるゲームは、増加傾向にあります。
『Mindustry』のような2Dドットで楽しめる『Factorio』や、3Dの立体的な世界で工場を大きくしていく『Satisfactory』など、結構な名作が軒を連ねています。
Factorioトレーラー
Satisfactoryトレーラー
資源をうまく確保しつつ、工場を大きくしていき、すべての工程がまさに歯車のように噛み合っていく様を眺めるのは、実に壮観です。
このようなシステム構築の楽しみを味わえるのは、工場シミュレーションならではの楽しみとなっています。
だんだんと、自動的に工場が発展していく様子を眺めるのも、趣のある楽しみ方と言えるでしょう。
タワーディフェンス+αの側面
タワーディフェンスは、スマホゲームの普及によって、すっかりおなじみのゲームジャンルとなりました。
兵器を設置し、強力な武器でプレイヤーが攻撃を加え、自陣へと物量で押し寄せてくる敵をうまく撃退するこのジャンルは、手軽に爽快感を味わうことができます。
また、パズルゲームとしての側面もあり、うまく兵器を設置して、手際よく敵を処理していかなければ、あっという間にゲームオーバーにもなりかねません。
その場の判断力はもちろん、二手三手先を計算しながら動かなければいけないのが、タワーディフェンスの醍醐味です。
関連記事
→箱庭×タワーディフェンスの『箱庭神社』が持つ、いいとこ取りのゲーム設計とは
『Mindustry』はこれに加えて、充実した兵器を携えて敵陣へと攻め入っていくことができるという、+αの要素も備えられています。
単にやってくる敵を倒すだけではキリがなく、だんだんとマンネリも生まれてきてしまうものですが、そういった飽きがこない設計も抜かりなく施されているのです。
単なるタワーディフェンスにとどまらない、積極的なアクションシューティングの要素が含まれているのも、この作品の魅力の一つです。
『Mindustry』に学ぶクロスオーバージャンルの設計
二つのジャンルの要素が融合した『Mindustry』ですが、このゲームの独特の面白さは、二つのジャンルがうまく噛み合う設計になっているところにあります。
二つのジャンルがしっかりと噛み合う設計に
従来のタワーディフェンスゲームにおいても、資源の概念は存在することが多かったものです。
ステージが進むにつれて、少しずつ使える資源の量が増え、製造できる兵器も豪華で、なおかつ大量に用意することができるようになります。
後半戦ではド派手な戦闘を楽しむことができるわけですが、『Mindustry』の場合はプレイヤーの工場組み立てスキルに応じて、製造できる兵器は左右されます。
たとえ潜在的な資源に恵まれていても、効率のよい製造ラインを構築できなければ、うまく兵器を生産することができず、敵の攻撃を受けてしまいます。
資源の有利不利もまた、自身の技術に依存するという、従来のタワーディフェンスにさらなる深みを設けることに成功したのが、この作品というわけです。
+αの要素でオリジナル性を確保
また、今作においてはこちらから侵攻するという、従来のタワーディフェンスではあまり見られなかった展開も見られます。
侵攻が可能とはいえ、いつでも自由に攻め込めるわけではありません。工場にやってくる敵を撃退し、侵攻に十分な兵器を揃える必要があるためです。
自陣の防衛も行いつつ、相手に攻め入るための準備も事欠かないという、とても忙しいゲームシステムが採用されているのです。
しかしこの忙しさこそ、タワーディフェンスのマンネリを解消するためにも必要だったと言えるでしょう。
敵の攻撃の切れ目を狙って、確実に侵攻のタイミングを逃さない駆け引きが、このゲームをさらに面白い作品へと昇華しています。
シミュレーションゲームは誰にも急かされない牧歌的な側面がありました。
しかし、タワーディフェンスと組み合わさることで、これまでにない戦略的なゲームへと変貌したのです。
おわりに
ジャンルのクロスオーバーは、新しくもあり、エキサイティングでもある優れたゲームを作る上では見逃せないアプローチです。
どうすれば二つのジャンルを融合したシステムを組み上げられるかという設計に注目すれば、イノベーティブなアイデアを得ることができるかもしれません。
併せて読みたい記事
→詰め込みすぎたゲーム『Craftopia』は理想の設計と言えるのか
→スター・ウォーズ/銀河の英雄に学ぶ、映画世界観を大切にしたゲーム作り
→放置にも技あり。育成ゲーム『モンスタートレーダー』の巧みな設計
ライター名:Satoru Yoshimura
プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。
『Mindustry』公式サイト
https://mindustrygame.github.io/
『Mindustry』ストアページ
App Store:https://apps.apple.com/jp/app/mindustry/id1385258906
ゲーム業界経験者が転職するなら
GAME CREATORSを運営しているリンクトブレインでは、ゲーム業界に特化した転職エージェントサービスを提供しています。
ゲーム業界に精通したコンサルタントが、非公開求人を含む3,400件以上の求人の中から、あなたの希望や適正にあった最適な求人をご紹介します。
あなたの転職活動を成功に導くためにサポートいたしますのでお気軽に登録してください!